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   Hide And Seek 後編   


7日目 16:32

「京子ちゃん、大丈夫?」
「…へ? あ、光さん。大丈夫って…何がですか??」

収録中のバラエティ『気まぐれロック』のメインMC・ブリッジ・ロックの面々がキョーコを心配げに話しかけてきた。
トークコーナーから、ゲストの苦手食材を使った料理をゲストが当てる、『食いしん坊乾杯』へのセットチェンジのための休憩時間。

「なんか、いつもの坊のキレがないっていうか。。ぼーっとしてるというか、ボケっぱなし?」
「ぁわわわ!大変申し訳ございません!」
「今日は朝から収録だもんね。俺だってヘトヘトになってるんだから、1日中着ぐるみ着てたら疲れちゃったよねぇ」
「そうだよ!疲れたろう?セットの交換に時間かかるから、『坊』を脱いで休憩した方がいいよ。」


キョーコは少し休憩を取らせてもらうことを告げて、スタジオ外のソファーに『坊』の頭だけ取り座っていた。

お仕事中なのに、全然身が入らないなんて…。

今日は1日中『気まぐれロック』の収録だった。
以前、蓮に『坊』で数回接しているにも関わらず、中身がキョーコだとバレずに来たのだから、『坊』に隠れてしまえば蓮に見つからない自信があった。
そして、蓮はキョーコをスルーした。


でも、少しは気づいてくれてもいいと思うの。
この1週間、いろいろと変装してきたけど、今日は鶏を被ってるだけよ?
それ以外は素よ?敦賀さん、素うどんはお口に合わないって事?

…やっぱり私、敦賀さんにからかわれてただけなのよ!
そうよ!恋とか愛とか愚かしいものに頭を占領されている場合じゃないわ!
私は仕事に生きる女よ!『坊』を全うするするのよ!

ぺちぺちと両頬を叩いてスタジオに戻ろうとしたキョーコの耳に、ザワザワと乙女たちの黄色い歓声が届いた。
振り向くと、蓮がキョロキョロと…キョーコを探してスタジオ内を隈なく歩き回っていた。
それこそ自販機の影、蓋を取ってごみ箱の中まで確認している。

「あれ…鶏君じゃないか。ここで収録?」
「…敦賀君、きみ、何してんの?探し物?」
「まあ探し物かな…。いつもはすぐ見つかるのに、今日はまだ見つかってないんだ」
「…手伝おうか?何を探してるんだい?」
「ありがとう。でも自力で見つけるよ。探し物は、俺の宝物だからね。」
「………… 宝物って… 寒っ。」
「ははっ。まぁなんとでも言ってくれ。じゃ、また」


敦賀さん、なんか恰好悪い… ふふ。
さっきまでのモヤモヤが消えて、心が急浮上した気がした。



7日目 20:24

かくれんぼ勝負、私の勝ちだもの。敦賀さんに何をお願いしようかしら?

…ご飯をきちんと食べること?

うーん。いざとなると全然思いつかないわ…。蓮へのお願い事を考えながら、キョーコは『坊』をクリーニングに出すため、
『坊』を台車に載せて局内地下を歩いていた。

角を曲がろうとしたとき、覚えのある真っ黒いオーラを感じて、恐々とその先を確認する。


やっぱり敦賀さんだ…。


蓮がブラックホールを発生させて1人佇んでいた。

お仕事で何かトラブルでも…そうよ、あのブラックホールの大きさ…
『DarkMoon』で嘉月が掴めないって悩んでた時と同じ位…それより大きいわ!

何かあったのよ!!…『坊』はブラック・敦賀さんに出会う宿命なんじゃないかしら…



ぷきゅっぷきゅっぷきゅっ

「あれ~~~~今日はよく会うなぁ」

キョーコはもう一度『坊』を着て蓮の前に立った。

「…あぁ、鶏君。仕事は終わったの?」
「うん。お陰様で。って、何を落ち込んでるんだ??思わず引き返したくなるくらい真っ黒いオーラがダダ漏れだぞ?」
「……」
「またなんか役柄が掴めないとか、悩み事?話くらいなら聞くよ?」
「……」
「おーい?」
「……………ない……」
「?聞こえません。」

「宝物が見つからないんだよ!!それこそ庭の石をめくって蟻を探す勢いで局内を探し回ったのに!!」


…心配して損した。

負けを認めるのがそれほど悔しいって訳ですか。
て言いますか、敦賀さん、かくれんぼ勝負であって、宝探しじゃなかった筈ですよ?


「あー、宝探しに失敗したのか。誰かが先に見つけて持って帰ったんじゃない?」
「…なんだって?」

ひっっ!!!魔王が降臨した!

「たたたた例えばだよっ!!そう!!!あとは元々宝なんて存在しなかったとか?」
「そんな事ない!!!」
「ひーっごめんなさい!ごめんなさい~~~~~~~!」

「ごめん。俺の宝物…彼女への気持ちを否定された気がして…慰めてもらってる立場で怒り出してごめん」

「???」

「ほら、前に話しただろう?高校生の女の子…君が『落とせ』って言った子」

「??」

「…覚えてるよね?勿論」
「ヒッ!ハイ。モチロンデアリマス!」
「その子に告白をしたんだ」
「!」
「でも、全く信じてくれなくて」
「………」
「その子が探してる宝物なんだよ」

「… !」

「絶対に見つけられる自信があったんだ…それなのに見つからなくて…」


!!!


あれは本当に告白だったの?好きだ、愛してる、ずっと君と居たい、君しか見えないとか、アレは告白だったんですかぁー!!
ただの嫌がらせかセリフの練習をしてるんだとばっかり思ってたわ!
あれ?…私、敦賀さんに告白をされて…敦賀さんが私の事、好き???


「…鶏君。心の声、口から出てるよ…」

へ?あれ?どうして敦賀さんが『坊』の頭を持ってるの?

「まさか君が鶏君だったとは…。もう何ていうか……そんな事どうでもいいや」


どうでもいいって!!


やっぱり私の事を好きだってことは勘違いだったと気づいたということ???

「ふーっ。やっと見つけた」

ビクビクするキョーコを蓮は抱きすくめた

「でもっ!変装見破れなかったから、私の勝ちですよ?」
「うん。そうだね…でもね、最初から勝ち負けはどうでも良かったんだ」
「?全然わかりません。」
「うん。君が俺の気持ちを分かってくれなきゃ、勝負に勝っても意味なんて無いんだ…」
「…」
「君に伝わるまで、一体どの位かかるか気が遠くなるけど、伝え続けるよ。俺が、君をどれだけ愛しているか」
「……絶対ですよ?」
「うん…言葉で…態度で…体で伝え続けるよ」
「…はい。  …………… カラダ?」
「君が嫌だって、限界だって言っても…ね?」
「???…はい?(頷いていいのかしら?)」




おしまい。





キョーコちゃんは結局蓮に何をお願いしたんでしょう?
…パンツ履いてください!とか?


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   Hide And Seek 中編   


勝負6日目

今日も事務所内をずんずん歩く愛の伝道師

赤・黄・オレンジ・白・ピンク

伝道師・ローリィを色とりどりのバラの花びらが先導する


花びらを撒くベールを被ったローリィの付き人は、足元に花びらを撒くだけでいいのに、クルクル回りながら

『えいっ!!』

と掛け声が聞こえてきそうなくらい、頭上高く花びらを舞い散らせている。


俺との勝負を忘れてメルヘンの国の中にドップリ浸かっているなぁ・・・。

苦笑する蓮。

キョーコの嬉々とする様子に目を細めながら、ローリィに近づく。


「社長のフラワーシャワーガール、随分とかわいいですね?一目で恋に堕ちました。」

なんでバレてるのぉー!
今日なんて、ベールを頭からかぶって、顔もほとんど出してないのにぃぃぃ~~!!

ビックリするキョーコをニマニマ眺めながら、ローリィは蓮に答えた

「そりゃそうさ。ただでさえかわいいのに、恋する男の脳内フィルター越しに見たらそれこそどうなってるか…
ベール越しどころか服のしたも透視してそうだな?」


「・・・・・・ ・・・ ・ !」

意味を理解したキョーコの手が高速移動した先に、蓮は釘付けになり固まった。


「…最上さん、してないから大丈夫。その…服の上から手ブラで恥ずかしそうに見上げられても…」

…萌えるな。


「ぶっ!」

笑い吹き出すローリィ。

真っ赤になって、ポカポカと両手で猫パンチを繰り出すキョーコとじゃれる蓮の楽しげな様子をひとしきり楽しむ。


「残り1日か。最上くんが不利な状況だな。そろそろ覚悟しといたほうがいいかもなー」
「なりふり構わず…秘策で勝負です!」

猫パンチを絡め捕られて蓮に抱きしめられた状態でキョーコはすぅっと息を吸い


「明日こそ絶対勝ちます! 打倒!!敦賀れムガッ!!」


声高々宣言は蓮のギュッと力を込めた抱擁の前に敢え無く撃沈した



勝負7日目

とうとう最終日だわ。運命の日よ。キョーコ。
これさえあれば…彼と一緒だったら、私は絶対勝てる筈よ!


キョーコはTBMの廊下で、トーク番組に出演する蓮の楽屋入りを闘志メラメラ、今や遅しと待ち構えていた。

廊下の先から、社と番組のトーク内容を軽く打ち合わせる蓮の姿が見えた。


「……は来週最終回の番宣で締めてくれ」
「分かりました…あれ?君は…」

蓮が『かくれんぼ』しているキョーコに話しかけた


いざ、勝負!

「…やぁ敦賀君、久しぶり。今日は君、TBMで仕事なんだ?」
「あぁ。撮影じゃないんだけどね…。君はこれから?」
「今日は2本撮り。午前中に1本終わって休憩中さ。1日中拘束されて売れっ子気分だよ」
「クスッ。それは何よりだな。じゃあ、そろそろ行くよ。君も頑張れよ?」
「勿論!じゃあな!!」

大きく手を振ってキョーコは蓮を見送り、軽い足取りで収録スタジオに向かう


ぷきゅっぷきゅっぷきゅっ


敦賀さん、全然気づかなかったわ!
とうとう私、勝ったのよ!


ぷきゅっぷきゅっ


勝ったのに…


ぷきゅっ


なんかモヤモヤする。





敦賀さんのうそつき。



つづく。





   Hide And Seek 前編   


「絶対に嘘です!」
「嘘じゃない!!最上キョーコさん、俺は君が好きなんだ!」
「もー、さっきから!!敦賀さん、本気で怒りますよ?」
「なんでそうなるんだ!!」
「なんでこうなってるか、俺の方が聞きてぇよ…」


こっそりラブミー部の部室のドアの前で立ち聞きしていた砂を吐きそうな甘い喧嘩が、だんだんヒートアップしてきたところでローリィは部室に乱入した。


「だって社長さん!敦賀さんったら、私の事を好きだっていうんですよ?」
「本当の事を言っただけじゃないか!それを君はどうして信じない?」
「信じられるわけないじゃないですかっ!
 『どんな姿の君でも俺は君を見つけて何度でも恋に落ちるよ』だなんて、どこの詐欺師ですか!」
「本気だよ!」

「んー、どんな姿でも・・・か。面白そうだな」

「「…社長?」」

「…よーし、蓮、最上君に愛を証明して見せろや」
「?よくわかりません」


わくわく顔の社長。


「1週間、かくれんぼ勝負だ!最上君は毎日変装して蓮の前に現れる事!」
「変装ですか?」

きょとんとしたキョーコがローリィに問いかけた。

「変装でも仮装でもいいぞ!どんな姿でも見つけると蓮は豪語したんだ。やってもらおう!それで、蓮は…」
「俺は、変装した最上さんを見つければいいんですよね。…いいでしょう。やりましょう。」
「1日でも最上君を見つけられなかったら、蓮の負けだ。んー敗者は勝者のお願いを1つ叶えるってのはどうだ?」
「いいですよ?どうせ俺の勝ちですし」

不敵に笑う蓮に、キョーコは闘志をメラメラ燃やす。

「絶対に逃がさないよ、子ウサギちゃん?」
「!敦賀さん、なんか違うゲームになってますよ!!」



***


勝負1日目

撮影の合間、ADの中に紛れる最上さんをずっと観察していた。
眼鏡をかけて、ロングのウィッグでお団子をつくって、ソバカスを顔に書いている。

ソバカスも魅力的だな…


そんなキョーコが、他のADから渡された大きな衝立を支えきれずによろけた瞬間


ガタっ!!


「え?敦賀さん?」

共演者が慌てて声をかけてくるけど、答える余裕なんて、無い。
慌てて駆け寄り、蓮はキョーコをガッシっと支えた。

「つっ… どこのどなたか知りませんが、あっありがとうございました!」
「最上さんは本物のADさんより働き者だね。どんなことにも一生懸命な君が大好きだよ?」


衝立を陰にして、キョーコの額にキスをした。


「うわぁん!!バレてたぁ! あああああっ明日こそ勝ちますっ!」

真っ赤になったキョーコは捨て台詞を残して走り去った。



勝負2日目

「守衛さん、お疲れ様。」

撮影所入り口の壁際に立つ、警備会社の制服に制帽を被ったキョーコは、シマッタという顔をしていた。

神々しい笑顔でキョーコの耳元で蓮は囁く。

「こんなかわいい守衛さんなら、一生俺だけを守ってほしいな」

そう言ってキョーコの鼻の下に貼っていたちょび髭をペリッと剥がし、チュッと唇にキスを落とした。


「!!!!はれんっ」

剥がしたちょび髭を唇に貼り付けてキョーコの絶叫を塞ぐ。

「じゃ、また明日ね?」



勝負3日目

富士テレビの中を移動中、キョーコを探している途中で騒がしい一団に目を遣った途端、
蓮はピキッと固まった


「くそっ!」


最上さん、何やってるんだ!!ホント、勝負どころじゃないよ!

金髪碧眼の美少女と化したキョーコに群がる男たちの輪に、蓮は華麗にスルーイン。

ひぃぃ!プスプス刺さるような笑顔でご登場~~。
バレてる上にどうしてお怒りなの???なんでぇーーー

『待たせてごめんね?』

蓮はキョーコの頬にキスをし、腰をがっちりホールドして歩き出す。もちろん馬の骨への威嚇も忘れない。

「お嬢さん…。可愛すぎて逆に目立ってますよ?…それとも俺に見つけてほしかった?」

全く、、、油断も隙もない。こんな変装で馬の骨を増産させるなんて、この娘、どうしてくれよう…


「ぅーーーーっそんな嫌味を言わなくてもいいじゃないですかっ!明日こそコテンパンにして差し上げます!!!」

金髪のウィッグを取って怒りながら走り去るキョーコを蓮は困った顔で見つめていた。



勝負4日目

事務所の廊下を掃除する彼女に出会った。

「シンデレラ、またお姉さんたちにいぢめられているの? …迎えに来たよ?このままお城に連れ去りたいな?」
「王子様、ひとちがいですーーーーーーーーーっ」

キョーコは走り去っていった。

こう毎日最上さんに走り去られると、何だかへこむな。。。
蓮はため息をついた。



勝負5日目

2日前と打って変わり、テレビ局内で女性たちが取り囲んだ一山が出来上がっていた。


壁にもたれるキョーコを逃がさないよう、蓮は手を壁につけ、追い詰めて囁いた。

「今日は逃がさないよ?」


ざわざわ

 …蓮と男子高校生がデキてるの??
 …やだ。あの子可愛い…。
 …BLだわ… でもあの2人ならBLもアリじゃない?? 

ざわざわと聞こえる乙女たちの会話


「ビーエルってなんですか?・・・敦賀さんがおっきいって事ですか??」

ビッグなL?それはXLじゃないんですか?などと小首を傾げて聞いてくる男子高校生のブレザーの制服を着た
天然記念物乙女に、どう説明していいのかわからず『そうかもね』と蓮は曖昧に答えた。



つづく。

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続いちゃいます。





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