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   Hide And Seek 後編   


7日目 16:32

「京子ちゃん、大丈夫?」
「…へ? あ、光さん。大丈夫って…何がですか??」

収録中のバラエティ『気まぐれロック』のメインMC・ブリッジ・ロックの面々がキョーコを心配げに話しかけてきた。
トークコーナーから、ゲストの苦手食材を使った料理をゲストが当てる、『食いしん坊乾杯』へのセットチェンジのための休憩時間。

「なんか、いつもの坊のキレがないっていうか。。ぼーっとしてるというか、ボケっぱなし?」
「ぁわわわ!大変申し訳ございません!」
「今日は朝から収録だもんね。俺だってヘトヘトになってるんだから、1日中着ぐるみ着てたら疲れちゃったよねぇ」
「そうだよ!疲れたろう?セットの交換に時間かかるから、『坊』を脱いで休憩した方がいいよ。」


キョーコは少し休憩を取らせてもらうことを告げて、スタジオ外のソファーに『坊』の頭だけ取り座っていた。

お仕事中なのに、全然身が入らないなんて…。

今日は1日中『気まぐれロック』の収録だった。
以前、蓮に『坊』で数回接しているにも関わらず、中身がキョーコだとバレずに来たのだから、『坊』に隠れてしまえば蓮に見つからない自信があった。
そして、蓮はキョーコをスルーした。


でも、少しは気づいてくれてもいいと思うの。
この1週間、いろいろと変装してきたけど、今日は鶏を被ってるだけよ?
それ以外は素よ?敦賀さん、素うどんはお口に合わないって事?

…やっぱり私、敦賀さんにからかわれてただけなのよ!
そうよ!恋とか愛とか愚かしいものに頭を占領されている場合じゃないわ!
私は仕事に生きる女よ!『坊』を全うするするのよ!

ぺちぺちと両頬を叩いてスタジオに戻ろうとしたキョーコの耳に、ザワザワと乙女たちの黄色い歓声が届いた。
振り向くと、蓮がキョロキョロと…キョーコを探してスタジオ内を隈なく歩き回っていた。
それこそ自販機の影、蓋を取ってごみ箱の中まで確認している。

「あれ…鶏君じゃないか。ここで収録?」
「…敦賀君、きみ、何してんの?探し物?」
「まあ探し物かな…。いつもはすぐ見つかるのに、今日はまだ見つかってないんだ」
「…手伝おうか?何を探してるんだい?」
「ありがとう。でも自力で見つけるよ。探し物は、俺の宝物だからね。」
「………… 宝物って… 寒っ。」
「ははっ。まぁなんとでも言ってくれ。じゃ、また」


敦賀さん、なんか恰好悪い… ふふ。
さっきまでのモヤモヤが消えて、心が急浮上した気がした。



7日目 20:24

かくれんぼ勝負、私の勝ちだもの。敦賀さんに何をお願いしようかしら?

…ご飯をきちんと食べること?

うーん。いざとなると全然思いつかないわ…。蓮へのお願い事を考えながら、キョーコは『坊』をクリーニングに出すため、
『坊』を台車に載せて局内地下を歩いていた。

角を曲がろうとしたとき、覚えのある真っ黒いオーラを感じて、恐々とその先を確認する。


やっぱり敦賀さんだ…。


蓮がブラックホールを発生させて1人佇んでいた。

お仕事で何かトラブルでも…そうよ、あのブラックホールの大きさ…
『DarkMoon』で嘉月が掴めないって悩んでた時と同じ位…それより大きいわ!

何かあったのよ!!…『坊』はブラック・敦賀さんに出会う宿命なんじゃないかしら…



ぷきゅっぷきゅっぷきゅっ

「あれ~~~~今日はよく会うなぁ」

キョーコはもう一度『坊』を着て蓮の前に立った。

「…あぁ、鶏君。仕事は終わったの?」
「うん。お陰様で。って、何を落ち込んでるんだ??思わず引き返したくなるくらい真っ黒いオーラがダダ漏れだぞ?」
「……」
「またなんか役柄が掴めないとか、悩み事?話くらいなら聞くよ?」
「……」
「おーい?」
「……………ない……」
「?聞こえません。」

「宝物が見つからないんだよ!!それこそ庭の石をめくって蟻を探す勢いで局内を探し回ったのに!!」


…心配して損した。

負けを認めるのがそれほど悔しいって訳ですか。
て言いますか、敦賀さん、かくれんぼ勝負であって、宝探しじゃなかった筈ですよ?


「あー、宝探しに失敗したのか。誰かが先に見つけて持って帰ったんじゃない?」
「…なんだって?」

ひっっ!!!魔王が降臨した!

「たたたた例えばだよっ!!そう!!!あとは元々宝なんて存在しなかったとか?」
「そんな事ない!!!」
「ひーっごめんなさい!ごめんなさい~~~~~~~!」

「ごめん。俺の宝物…彼女への気持ちを否定された気がして…慰めてもらってる立場で怒り出してごめん」

「???」

「ほら、前に話しただろう?高校生の女の子…君が『落とせ』って言った子」

「??」

「…覚えてるよね?勿論」
「ヒッ!ハイ。モチロンデアリマス!」
「その子に告白をしたんだ」
「!」
「でも、全く信じてくれなくて」
「………」
「その子が探してる宝物なんだよ」

「… !」

「絶対に見つけられる自信があったんだ…それなのに見つからなくて…」


!!!


あれは本当に告白だったの?好きだ、愛してる、ずっと君と居たい、君しか見えないとか、アレは告白だったんですかぁー!!
ただの嫌がらせかセリフの練習をしてるんだとばっかり思ってたわ!
あれ?…私、敦賀さんに告白をされて…敦賀さんが私の事、好き???


「…鶏君。心の声、口から出てるよ…」

へ?あれ?どうして敦賀さんが『坊』の頭を持ってるの?

「まさか君が鶏君だったとは…。もう何ていうか……そんな事どうでもいいや」


どうでもいいって!!


やっぱり私の事を好きだってことは勘違いだったと気づいたということ???

「ふーっ。やっと見つけた」

ビクビクするキョーコを蓮は抱きすくめた

「でもっ!変装見破れなかったから、私の勝ちですよ?」
「うん。そうだね…でもね、最初から勝ち負けはどうでも良かったんだ」
「?全然わかりません。」
「うん。君が俺の気持ちを分かってくれなきゃ、勝負に勝っても意味なんて無いんだ…」
「…」
「君に伝わるまで、一体どの位かかるか気が遠くなるけど、伝え続けるよ。俺が、君をどれだけ愛しているか」
「……絶対ですよ?」
「うん…言葉で…態度で…体で伝え続けるよ」
「…はい。  …………… カラダ?」
「君が嫌だって、限界だって言っても…ね?」
「???…はい?(頷いていいのかしら?)」




おしまい。





キョーコちゃんは結局蓮に何をお願いしたんでしょう?
…パンツ履いてください!とか?


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   Hide And Seek 中編   


勝負6日目

今日も事務所内をずんずん歩く愛の伝道師

赤・黄・オレンジ・白・ピンク

伝道師・ローリィを色とりどりのバラの花びらが先導する


花びらを撒くベールを被ったローリィの付き人は、足元に花びらを撒くだけでいいのに、クルクル回りながら

『えいっ!!』

と掛け声が聞こえてきそうなくらい、頭上高く花びらを舞い散らせている。


俺との勝負を忘れてメルヘンの国の中にドップリ浸かっているなぁ・・・。

苦笑する蓮。

キョーコの嬉々とする様子に目を細めながら、ローリィに近づく。


「社長のフラワーシャワーガール、随分とかわいいですね?一目で恋に堕ちました。」

なんでバレてるのぉー!
今日なんて、ベールを頭からかぶって、顔もほとんど出してないのにぃぃぃ~~!!

ビックリするキョーコをニマニマ眺めながら、ローリィは蓮に答えた

「そりゃそうさ。ただでさえかわいいのに、恋する男の脳内フィルター越しに見たらそれこそどうなってるか…
ベール越しどころか服のしたも透視してそうだな?」


「・・・・・・ ・・・ ・ !」

意味を理解したキョーコの手が高速移動した先に、蓮は釘付けになり固まった。


「…最上さん、してないから大丈夫。その…服の上から手ブラで恥ずかしそうに見上げられても…」

…萌えるな。


「ぶっ!」

笑い吹き出すローリィ。

真っ赤になって、ポカポカと両手で猫パンチを繰り出すキョーコとじゃれる蓮の楽しげな様子をひとしきり楽しむ。


「残り1日か。最上くんが不利な状況だな。そろそろ覚悟しといたほうがいいかもなー」
「なりふり構わず…秘策で勝負です!」

猫パンチを絡め捕られて蓮に抱きしめられた状態でキョーコはすぅっと息を吸い


「明日こそ絶対勝ちます! 打倒!!敦賀れムガッ!!」


声高々宣言は蓮のギュッと力を込めた抱擁の前に敢え無く撃沈した



勝負7日目

とうとう最終日だわ。運命の日よ。キョーコ。
これさえあれば…彼と一緒だったら、私は絶対勝てる筈よ!


キョーコはTBMの廊下で、トーク番組に出演する蓮の楽屋入りを闘志メラメラ、今や遅しと待ち構えていた。

廊下の先から、社と番組のトーク内容を軽く打ち合わせる蓮の姿が見えた。


「……は来週最終回の番宣で締めてくれ」
「分かりました…あれ?君は…」

蓮が『かくれんぼ』しているキョーコに話しかけた


いざ、勝負!

「…やぁ敦賀君、久しぶり。今日は君、TBMで仕事なんだ?」
「あぁ。撮影じゃないんだけどね…。君はこれから?」
「今日は2本撮り。午前中に1本終わって休憩中さ。1日中拘束されて売れっ子気分だよ」
「クスッ。それは何よりだな。じゃあ、そろそろ行くよ。君も頑張れよ?」
「勿論!じゃあな!!」

大きく手を振ってキョーコは蓮を見送り、軽い足取りで収録スタジオに向かう


ぷきゅっぷきゅっぷきゅっ


敦賀さん、全然気づかなかったわ!
とうとう私、勝ったのよ!


ぷきゅっぷきゅっ


勝ったのに…


ぷきゅっ


なんかモヤモヤする。





敦賀さんのうそつき。



つづく。





   Hide And Seek 前編   


「絶対に嘘です!」
「嘘じゃない!!最上キョーコさん、俺は君が好きなんだ!」
「もー、さっきから!!敦賀さん、本気で怒りますよ?」
「なんでそうなるんだ!!」
「なんでこうなってるか、俺の方が聞きてぇよ…」


こっそりラブミー部の部室のドアの前で立ち聞きしていた砂を吐きそうな甘い喧嘩が、だんだんヒートアップしてきたところでローリィは部室に乱入した。


「だって社長さん!敦賀さんったら、私の事を好きだっていうんですよ?」
「本当の事を言っただけじゃないか!それを君はどうして信じない?」
「信じられるわけないじゃないですかっ!
 『どんな姿の君でも俺は君を見つけて何度でも恋に落ちるよ』だなんて、どこの詐欺師ですか!」
「本気だよ!」

「んー、どんな姿でも・・・か。面白そうだな」

「「…社長?」」

「…よーし、蓮、最上君に愛を証明して見せろや」
「?よくわかりません」


わくわく顔の社長。


「1週間、かくれんぼ勝負だ!最上君は毎日変装して蓮の前に現れる事!」
「変装ですか?」

きょとんとしたキョーコがローリィに問いかけた。

「変装でも仮装でもいいぞ!どんな姿でも見つけると蓮は豪語したんだ。やってもらおう!それで、蓮は…」
「俺は、変装した最上さんを見つければいいんですよね。…いいでしょう。やりましょう。」
「1日でも最上君を見つけられなかったら、蓮の負けだ。んー敗者は勝者のお願いを1つ叶えるってのはどうだ?」
「いいですよ?どうせ俺の勝ちですし」

不敵に笑う蓮に、キョーコは闘志をメラメラ燃やす。

「絶対に逃がさないよ、子ウサギちゃん?」
「!敦賀さん、なんか違うゲームになってますよ!!」



***


勝負1日目

撮影の合間、ADの中に紛れる最上さんをずっと観察していた。
眼鏡をかけて、ロングのウィッグでお団子をつくって、ソバカスを顔に書いている。

ソバカスも魅力的だな…


そんなキョーコが、他のADから渡された大きな衝立を支えきれずによろけた瞬間


ガタっ!!


「え?敦賀さん?」

共演者が慌てて声をかけてくるけど、答える余裕なんて、無い。
慌てて駆け寄り、蓮はキョーコをガッシっと支えた。

「つっ… どこのどなたか知りませんが、あっありがとうございました!」
「最上さんは本物のADさんより働き者だね。どんなことにも一生懸命な君が大好きだよ?」


衝立を陰にして、キョーコの額にキスをした。


「うわぁん!!バレてたぁ! あああああっ明日こそ勝ちますっ!」

真っ赤になったキョーコは捨て台詞を残して走り去った。



勝負2日目

「守衛さん、お疲れ様。」

撮影所入り口の壁際に立つ、警備会社の制服に制帽を被ったキョーコは、シマッタという顔をしていた。

神々しい笑顔でキョーコの耳元で蓮は囁く。

「こんなかわいい守衛さんなら、一生俺だけを守ってほしいな」

そう言ってキョーコの鼻の下に貼っていたちょび髭をペリッと剥がし、チュッと唇にキスを落とした。


「!!!!はれんっ」

剥がしたちょび髭を唇に貼り付けてキョーコの絶叫を塞ぐ。

「じゃ、また明日ね?」



勝負3日目

富士テレビの中を移動中、キョーコを探している途中で騒がしい一団に目を遣った途端、
蓮はピキッと固まった


「くそっ!」


最上さん、何やってるんだ!!ホント、勝負どころじゃないよ!

金髪碧眼の美少女と化したキョーコに群がる男たちの輪に、蓮は華麗にスルーイン。

ひぃぃ!プスプス刺さるような笑顔でご登場~~。
バレてる上にどうしてお怒りなの???なんでぇーーー

『待たせてごめんね?』

蓮はキョーコの頬にキスをし、腰をがっちりホールドして歩き出す。もちろん馬の骨への威嚇も忘れない。

「お嬢さん…。可愛すぎて逆に目立ってますよ?…それとも俺に見つけてほしかった?」

全く、、、油断も隙もない。こんな変装で馬の骨を増産させるなんて、この娘、どうしてくれよう…


「ぅーーーーっそんな嫌味を言わなくてもいいじゃないですかっ!明日こそコテンパンにして差し上げます!!!」

金髪のウィッグを取って怒りながら走り去るキョーコを蓮は困った顔で見つめていた。



勝負4日目

事務所の廊下を掃除する彼女に出会った。

「シンデレラ、またお姉さんたちにいぢめられているの? …迎えに来たよ?このままお城に連れ去りたいな?」
「王子様、ひとちがいですーーーーーーーーーっ」

キョーコは走り去っていった。

こう毎日最上さんに走り去られると、何だかへこむな。。。
蓮はため息をついた。



勝負5日目

2日前と打って変わり、テレビ局内で女性たちが取り囲んだ一山が出来上がっていた。


壁にもたれるキョーコを逃がさないよう、蓮は手を壁につけ、追い詰めて囁いた。

「今日は逃がさないよ?」


ざわざわ

 …蓮と男子高校生がデキてるの??
 …やだ。あの子可愛い…。
 …BLだわ… でもあの2人ならBLもアリじゃない?? 

ざわざわと聞こえる乙女たちの会話


「ビーエルってなんですか?・・・敦賀さんがおっきいって事ですか??」

ビッグなL?それはXLじゃないんですか?などと小首を傾げて聞いてくる男子高校生のブレザーの制服を着た
天然記念物乙女に、どう説明していいのかわからず『そうかもね』と蓮は曖昧に答えた。



つづく。

------
続いちゃいます。





   ペット飼いはじめました   


梅雨時期なので、雨に絡めて・・・と思って書き出したら、全然違う方向に。



Read More

   手のひらの上 後編   



「大変申し訳ございませんでした。」


蓮は社と奏江を前に、深々と頭を下げていた。


「やー、殺されかけるとは。。恋って恐ろしい病だな」
「ホントに、馬鹿なんじゃないの?」
「申し開きのしようがございません…」

社と奏江が付き合い始めたという告白は、蓮に少しの驚きと大きな安堵をもたらした。

「今日の弁当は、俺たちが付き合い始めた事を知ってるキョーコちゃんと琴南さんが作ったものを、琴南さんが届けてくれたんだよ。
キョーコちゃんは料理上手だから、琴南さんが料理指南をお願いして、二人で作ったんだって。
…要は、俺のおかげでお前はキョーコちゃんの弁当を食えたって訳です」


…それを俺が勝手に勘違いしたんだ


「今日の事は俺が全面的に悪かったですけど、付き合ってること、俺にも教えてくれても良かったんじゃないですか?」

自分のプライベートは教えず、キョーコへの想いを知った上で遊ぼうとする社に、蓮は『ずるい』と抗議した。

「だって!俺のノロケ話なんかしたら絶対お前、俺で遊ぼうとするだろ!それに無駄に自分の状況と比較して闇の国の蓮さんに変身するに決まってる!
仕事に影響が出るんだよ!!」

さすが俺のマネージャー。よくわかってらっしゃる。

「ほんと面倒臭いわね。敦賀さん、いつになったらあの子とくっつく気なんですか?」
「くっつくって…」

なんか話の矛先が変わってきたぞ…

「あの子、『彼のお弁当を作るって素敵な響き~』とか、『ネズミーランドでデートなんて憧れる~』なんて大きな目をキラキラさせて言ってましたよ?
実現させてやったらいいじゃないですか。さっきの勢いで」

キョーコの真似をしながら奏江がずいっと蓮に近寄った。


暴走したことに凹んでいる今、俺にそんな勢いは無いよ。


眉を八の字にさせた困った顔でさえ端正な顔立ちに、普通の女性ならキュン死しているか母性を擽られて抱きしめてしまうところだろう。
しかしそこは恋人ができてもラブミー部に残留する2号。


チッ


えっ!?琴南さん、今舌打ちした???


「いい加減くっついてくれないと、私はあの子と社さんの愚痴を聞き続けないといけないのよ!今まではあの子だけだったのに、今は社さんまで!
もう手一杯なのよっウザいのよっ!!」
「すみません…」
「えっ社さんのせいじゃないです。もとはと言えば俺が「モーッ!どーでもいいっ!!イライラするッ」…はい。すみません」

奏江は般若顔で二人を睨みつけていた。



「…分かったわ。敦賀さん、あなたがヘタレてるんだったら、私がどうにかするわよっ。…あの子に今から告白させてみせるわ。見てなさいっ!!」
「へ?」


言い終わるや否や、ケータイを取出し奏江は電話をかけ始めた。


「…あ、キョーコ?今大丈夫?」
『モー子さぁぁん~~!!きゃーっモー子さんから電話をもらえるなんて、うれしぃ~~っ』
「はいはい。今日は朝早くからお弁当作りありがとう」
『どういたしまして~。私も楽しかったわ~。だってモー子さんのおうちにお泊りできたし、私を頼ってくれるなんて、やっぱり親友っていいわよね~~』

電話から漏れる、自分との電話での会話より数段弾んだキョーコの声に、蓮は奏江にほんの少し嫉妬した。

「社さん、お弁当美味しかったって。過剰なお礼までしてくれたわ」
『過剰なお礼?』
「お礼のキスですって。とってもこゆーい、激しいのをね。社さんなんて天国に片足突っ込んでたわ」
『ギャーっモー子さんの破廉恥っ!!そんな報告いらないわーっ!』
「それで今度の休みにデートすることにしたんだけど」
『っーーー羨ましい~!!甘い響きねーーーーっどこに行くの?』
「まだ決めてないけど、…そうね、あんたが言ってたネズミーランドでもいいかもね。」
『いいなー。私、ネズミーランド自体行ったことないし、大好きな人と行ってみたいなー』
「そうね。大好きな人と行くんだからおしゃれもしなきゃね。服どれ着ようかしら?買いに行こうかな?」
『甘ーい!!いいな~~~~~~~ぁモー子さんが羨ましいぃぃ…むしろ社さんが羨ましい~』


乙女の大好物・恋バナを、目の前の新鋭女優はすべて無表情で言いのけている。
親友でさえ気づかない演技力に男二人は目を瞠っていた。


「じゃあ、一緒に行く?」
『えーっ何言ってるのよ!お邪魔虫になんてなりたくないわよぉ!』
「じゃあ、敦賀さんに告白しなさいよ。」
『!!!なんでここで敦賀さんが出てくるのよぉ』


蓮は話の急展開を見守ることしかできない。
そんな蓮をニヤニヤと社は見守った。


「だって好きなんでしょ?大体があんたの気持ちなんてダダ漏れよ」
『モー子さん、何を言い出すのよぉ~。』
「4人でダブルデートすればいいのよ。そうすれば、あんた私と1日中ネズミーランドを巡れるのよ?」
『…モー子さんと?』
「それに服を買いに2人でショッピングも行かなきゃね。途中でおしゃれなカフェで休憩するのもいいわね」
『何それ、モー子さんとデートできちゃうわけ?』
「そうよ?それ以外にも…そうね、あんたが敦賀さんと付き合えば、社さんがマネージャーなんだから4人でご飯に行ったり、自然な流れじゃない?」
『モー子さんとご飯。…素敵…』
「ね?相手が敦賀さんならあんた、お邪魔虫にならずに私と一緒にいられるのよ?とっとと告白しちゃいなさい。ね?」
『でも、私の告白なんて、敦賀さん迷惑よ…』
「奏江、キョーコと一緒に買い物行ったりデートしたいな………グスッ」

琴南さん、3秒で泣けるんだ…さすが演技派女優だな。

『~~~~~~~~~!!!分かったわ!最上キョーコ!敦賀さんに告白します!』
「ほんと?奏江うれしいっ!」
『モー子さん~~~~~!私、絶対にモー子さんとデートしたいの!!敦賀さんに絶対に受け入れてもらうから、待っててね!!』
「分かったわ。じゃ、がんばって。あ、結果はわかってるから報告はいらないわ。もう寝るし。じゃあね。」


奏江は、用は済んだとばかりに電話を切った。


「じゃ、そう言うことですので、あとは敦賀さん、頑張ってください。」

もう何を言ったらいいか分からないとがっくり落とした蓮の肩を、社がぽんぽんと叩いた。

「蓮…。いいじゃないか。理由はどうあれ、天然乙女が自分から転がってくるんだ。受け止めろ。
そして琴南さんからどうやってキョーコちゃんを引っぺがすかは…受け止めた後考えろ。」


社さんは勿論、俺も最上さんも琴南さんの手のひらの上でいいように転がされてるのか…


「私、そろそろ帰ります。11時には寝ないと美容に『RRRRR....』

蓮の携帯が鳴りだした。

ディスプレイには[最上さん]の文字


「「「早っ!!」」」


ニマニマ笑うカップルはいそいそと部室を出て行った。



さて、あの子の中の『俺<琴南さん』という図式をどうやって変えていこうか。


落ち着きのない鼓動に深呼吸を一つして、蓮は通話ボタンを押した。



「はい。どうしたの?最上さん」
『敦賀さん!こんばんはっ!! …あの…私…』




Fin.


-------
私の中の奏江さんが暴走しました。




   手のひらの上 前編   


「おはよう、蓮」
「おはようございます。社さん」

朝から雑用を済ませた社を、蓮は事務所の駐車場でピックアップした。
いつもは鞄1つの社が、紙袋を後部座席に大事そうに置いた。

「社さん、今日は何だか大荷物ですね?」
「むふふふ。蓮君、気が付いちゃった?気づいちゃったかー?」

このニマニマ顔。どうやら最上さんに関することのようだ。
俺で遊ぶ気満々らしい社さんの頬をねじ上げたくなったが、そんな反応をしてはどんなしっぺ返しがこの有能マネージャーから返ってくるかわからない。
かと言っておとなしく遊ばれるのも癪なので無関心を装っておこう。

「気づかない方がおかしいでしょう。そんな恭しい扱いをしていたら」
「っだよねーーーー!んふふー。実はさ、これ、お弁当なんだよねぇ~~」
「最上さん、事務所にいたんですか?」
「あれ?誰が作ったお弁当かなんて俺まだ言ってないよねぇ。蓮君?」

失敗した、と思ってももう遅い。

「キョーコちゃんの手料理おいしいもんなー。恋のスパイスも入っちゃったらもう、たまらないよねぇ~~
手料理だけじゃなくてキョーコちゃんごと食べちゃいたい!って感じ?もー朝から蓮君のえっちー!」


イラッ


「!~~~~~いひゃいっ!いひゃいよ!!!蓮、ほっぺ捥げる~~~!!」

蓮のほっぺ捩じ上げ攻撃から解放された社は、ヒリヒリする頬をさすりながら抗議の声を上げるも、
やっぱりうれしそうな様子だった。

「で?最上さんじゃなければ誰が作った弁当なんですか?もしや社さん、彼女ができたとか?」


蓮にとっては何気ない軽口のつもりだった。
それなのに、社は急に真顔に戻り、じっと蓮を見据えた。


「急にどうしたんですか?」
「や、これキョーコちゃんお手製弁当だよ? ………蓮、ごめん…俺……いや、なんでもない!それより今日のスケジュールだけど……」

仕事モードにシフトチェンジした社を不審に思いながら、『これ以上は聞いてくれるな』という社の様子に、
それ以上の事を聞けないまま蓮は撮影現場へと車を進めた



***



「敦賀さぁーん、こちらの席あいてますぅー」
「ちょっと事務所に連絡を入れなくちゃいけなくて。すみませんが今日は楽屋で済ませます。」
「えーっ。敦賀さんがいなきゃつまんなーい。」

休憩になり、共演者からのあからさまに媚びを浮かべた[一緒にお弁当]攻撃をごめんね?と躱して蓮は社と共に楽屋に戻った。
普段は食に全く興味を示さないのに、キョーコの手作り弁当…恋のスパイスによって昼が待ち遠しくて仕方がなかった。


「ほれ、蓮」

「ありがとうござい・・・ます?」

キョーコお手製弁当の事をいそいそと受け取ろうとした蓮の目が社の弁当を凝視した。

「?どうした??」
「社さんの弁当箱、俺のより大きくないですか?…5倍くらい」

その差は『当社比1.5倍』なんてものではなく、普通サイズの弁当箱と、2段重。

「ほらっ、弁当箱が無くて、キョーコちゃんの下宿先のだるまやさんのものなんじゃない?」


少し焦った風の社だったが、普通サイズの弁当相手に四苦八苦する癖に、サイズで文句を言うなんて100年早いと至極もっともなことを言われ、
蓮はモヤモヤしつつも、手にあるキョーコの色とりどりのお手製弁当に至福を感じていた。

「…弁当相手に蕩ける笑顔を向けてないで早く、有難く頂きなさい。そしてその笑顔はキョーコちゃんに見せなさい」
「分かってます」
「おっ!認めたね?」


イラッ


「!~~~~~痛いっ!!!箸で鼻をつまむな!!行儀悪いぞ!」

本当は鼻の穴に箸を突っ込んでやりたかったけど、寸前で思いとどまってあげましたよ。
……あれ?社さんの弁当に、俺のにはないおかずが入ってる??


よく見ると、そこかしこに社の弁当にしかないおかずが所狭しと詰められていた。
社は気にも留めない様子で『んまいなー、おいひぃなー』と独り言を言いながらいそいそと弁当を口に運んでいた。

「…なんですかね、この気持ち」
「ん?どうした?蓮?」
「だって社さんの弁当の方が何気に豪華じゃないですか?勿論こっちのもすごくおいしいですよ?でもなんか…
なんか差をつけられてるような気がするんですけど」
「えぇぇっ?そそそっそうかな?」


明らかに目が泳いだぞ?
なんだ??
…最上さんの事を社さんも好きになったとか?

まさか最上さんも社さんの事を?

朝早く、社さんに弁当を渡したくて最上さんは事務所にいたんじゃないか?
…社さんに弁当を作りたくて、その弁当のついでに俺の分も作ってくれたとかそういうオチか?
確かに社さんは仕事のできる優秀な社会人だし優しいお兄ちゃん気質だ。そんな社さんにコロッといってもおかしくないぞ?

真っ青な顔で自分を凝視する蓮を見て、社はため息をついた。

「蓮、変な妄想してないでちゃんと弁当食べろよ。真心をきちんと受け止められない奴の恋路なら、俺は応援しないどころか全力で阻止するぞ?」

厳しい眼で見据えられ、蓮はそれ以上何も言えず、弁当をもそもそと食べた。
さっきまでの幸せだった気持ちに一気に冷水を浴びせられた気分だった。

…いつもなら、どんな料理よりも美味しいと感じるキョーコの料理が、今日に限っては何の味も感じなかった。



*



撮影を終えた後、事務所での雑誌取材を2本こなして今日の仕事が終わったのが21時だった。
休憩の後、社との会話はもっぱら事務的なもので、移動中の車内も私語厳禁状態の重苦しいものだった。
蓮は、子供じみた嫉妬心で、社に不快な思いをさせて悪かったなと反省していた。

「社さん、お疲れ様でした。今日はもう上がりですよね?送りますよ」

いつもなら、日中も運転している蓮を気遣ってタクシーで帰るという社も、しゅんと項垂れる蓮の謝罪を酌んで、『悪いな』と受け入れていた。
少しほっとして普段通りの軽口を叩き合いながら駐車場に向かう途中、廊下で俳優セクションの松島主任に声をかけられた。

「あっ蓮!ちょうどよかった。今度の映画の台本、今日届いたぞ。俺のデスクにあるからちょっと寄ってくれないか?」
「分かりました。・・・社さん、少し待っててもらえますか?」
「はいはい。じゃあ、ラブミー部の部室にいるよ。もしかしたらキョーコちゃんいるかもしれないしなっ」


スキップで消えていく社にほんの少し、


イラッ


とした。

台本を受け取りった後、松島に近況報告という雑談をしていたせいで、30分ほど経ってしまった。
自分が送るといったせいで社を待たせてしまい申し訳ないと思いながら…
部室にキョーコがいるかもしれないとはやる気持ちでラブミー部の部室のドアをノックしようとしたとき、中から人の声が聞こえてきた



「……んっ…社さんっ…こんなところで…ダメッ…ぁ」
「『社さん』じゃんくて、『倖一』だよ?」
「…ゆき…ひ……んっ」



何が起きているのか分かったが、頭が、心がそれを拒絶した。

最上さんと社さんが、そんな関係に??一体いつから???


イライライライライライラッ・・・・ブチッ


頭の中が真っ白になり、次に怒りのような気持ちに襲われて、ただ本能だけが動き出した


ソレハオレノモノダ
ダレニモフレサセナイ ダレニモワタサナイ



ドゴーーーン!!



「うわっ!」
「きゃっ」


ドアをぶち破り、部室に入った蓮は彼女を包み込んでいる男の襟首を掴んで引き剥がし、首を締め上げる。


「うげっっ・・・・蓮っ・・・・堕ちる堕ちるーーーーーーーーっギブギブ!!!!」
「ちょっ敦賀さん!やめてっ!!やめなさいよっ!!モーーーーーーーーーーーーーーッ」



あれ??最上さんの声じゃ…ない?


腕に縋りつく彼女を見ると、キョーコ…の親友の慌てた顔がそこにあった。


???????


社と奏江の顔を交互に見比べる。


?…
!!!


「どうでもいいから… そろそろ 離してくれ…   河岸でじいちゃんが 手を振って…る…」
「きゃーっ社さーーーん!!」




つづく。





小咄のはずが前後編になってしまいました。



   BOOST 5   


コメディ初挑戦(というか、2次初挑戦)でしたが、何とか完結できました。



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   BOOST 4   


甘くなれ…。甘くなってくれーっって思いながら書着ましたが、どうでしょう。



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   BOOST 3   


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   BOOST 2   


コメディになってるでしょうか??



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ナー

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