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   黒猫の希い 2   


「もしもし、社長、こんな時間に申し訳ありません。蓮です。ちょっと面倒な拾い物をしてしまいまして…助けてください」
「えぇ、焦っています。瀕死の少女なんです。救急車を呼ぶのも憚られますし、どうにかならないでしょうか」
「…黒崎総合病院ですね?分かりました。連れて行きます」


黒猫の希い 2


弱い雨が降り続く中、蓮が少女を車に乗せて指示された病院の駐車スペースに辿りつくと、そこにはストレッチャーを
準備した看護師が数名待機していた。

「「イチ・ニッ・サンッ」」

看護師たちは、助手席から手際よく少女をストレッチャーに乗せる。少女は気を失ったまま、何の反応も示さなかった。

「すぐに処置室に運べ!」

蓮は運転席で看護師たちをただ見守っていた。
ストレッチャーは迅速に、慎重に病院内へと消えて行った。

「…医者の黒崎だ。詳しい事情は知らないが、宝田社長から瀕死の重体患者を受け入れて欲しいと連絡をもらって
ここで待機してた」
「はい…よろしくお願いします」
「で、身内か?」

黒崎は煙草の煙を吐き出しながら、到底医者とは思えない砕けた口調で少女について蓮に尋ねる。

「いえ…。自宅前に倒れていたのを見つけて…その、血まみれだったので…」
「なんだ、他人か…。悪いが一応状況が把握できるまで居てくれるか?」

このまま帰るのも少女の様子が気にかかるし、どうせ寝られそうもない。

「ええ。構いません」


蓮は処置室前の長椅子で白い壁を眺めながら、まんじりとした時間を耐えていた。

あの子は助かるだろうか。相当な量の血が出てたぞ?事故か?事件か?
…面倒事に巻き込まれたんだろうか?拙いな…

秀麗な眉を顰めて考え込んだ。


「お待ちどーさん」
「ドクター…」

処置室のドアが開き、黒崎がひょいっと顔を出した。中に入って来いということらしいと理解し、蓮は腰を上げた。
少女は再度ストレッチャーに乗せられ、どこかへ運ばれていった。

「処置は終わったが、山は越えてねぇ。ICUに運ばせてもらった」
「山、ですか?」
「わかんねぇか?命のヤマだよ。山を越えなきゃ谷だ。オダブツ。あんたが運び込まなかったら、今頃死んでたかもな?」

やはり彼女に声をかけたのは正解だったのだと蓮は深く息をして緊張を解いた。

「事件性が濃厚だ。彼女、何か言ってなかったか?」
「いえ、助けてくれとか…そういった事は口にしなかったですね」

少女が気を失う前に話した2、3言を蓮は思い出していた。

「…確か99人目がどうとか言ってましたけど」
「何だそりゃ?」
「さあ、俺にもわかりませんよ。で、どうなんですか、あの子の怪我は」
「怪我なんてもんじゃねぇよっ!」

黒崎は唾棄するように顔をしかめて舌打ちをした。

「背中に抉られたような裂傷が左右に並んで2本!!脊椎に達するほんの手前って部分もあったぞ?
よくも何の手当もせずに生きてたよ!」

そんな酷い状態だったのかと蓮も驚愕した。

「あんたもとんでもねぇ拾い物をしたな?」
「…なんて返していいか分かりません…とりあえず病院に引き渡せて安心しました」
「そうだよなー。別にあんたの知り合いじゃないもんな。引き渡して清々したってところだよな?」

鼻で笑うように言い放った黒崎から、蓮は少しムッとして目を反らす。

「そういう意味では…また来ます。何かあれば宝田に連絡をお願いします」
「はいよー。悪かったな?こんな時間まで付き合わせて」

蓮は軽く頭を下げて処置室を後にした。

知り合いでもない、ただの行き倒れの少女を蓮は病院に連れて行き、命を繋いだのだ。
褒めて欲しいわけではないが、『清々しただろう?』などと嫌味を言われるとは思ってもいなかった。
何とも後味が悪い幕引きだと蓮は思った。

…あの子、俺の初恋の子に少し似ている気がしたのは気のせいか。
黒い髪をツインテールにした、メルヘンが大好きだった女の子…ある訳ないか。



「いいなぁー。コーンは天使みたいに綺麗な金色の髪に碧い瞳で」
「俺、キョーコちゃんの黒い髪と黒い瞳はとっても綺麗だと思うよ?」
「そうかなぁ…でもキョーコ、こんな風に生まれたくなんかなかったよ。みんなの嫌われ者じゃなくて…皆に愛される
天使に生まれたかったよ。神様って不平等で意地悪だよ」

ジワリと女の子の大きな目に涙が貯まる様子に慌てた。

「キョーコちゃん泣かないで?キョーコちゃんが泣くと俺まで悲しくなるよ」
「コーン…」
「俺だけは何があってもキョーコちゃんの味方だから」
「嘘よ。私の味方なんてこの世界にいないわ!今日だってほっぺを叩かれたのよ?みんな私のこと嫌いなのよ!」
「そんなことないよ!!絶対に俺はキョーコちゃんの味方だよ!キョーコちゃんが大好きだよ!
そうだ、その証拠にこれをあげる」

差し出したものを手に取ってキョーコは首を傾げる。

「わぁ。綺麗な石…これ、なぁに?」
「俺の宝物だよ。この石はね、悲しみを吸い取って元気にしてくれる魔法の石なんだよ?」
「えっ魔法!?そんな大切なものをキョーコにくれるの!?」
「うん。俺、笑ってるキョーコちゃんが大好きなんだ。だからこの魔法でキョーコちゃんがいつも笑顔でいられるといいな」
「ありがとう、コーン。本当にありがとう。コーン、大好き!」

碧い石をギュッと握り締めて、腫れた頬を更に紅潮させて嬉しそうに笑うキョーコにつられてコーンも笑顔になった。

「いつか…もしもコーンに何かあった時、必ずキョーコがコーンを守るからね?」
「キョーコちゃん?どういう意味?」

キョーコは答えず、コーンが渡した宝物を太陽の光にかざして、ひたすら見入っていた。



「キョーコちゃん、今頃何してるかな…」

白じんできた空を覆うどんよりとした厚い雲の下、蓮は病院から去って行った。



つづく




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