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   黒猫の希い 4   


「ふふっ。コーン、大好きよ…」
「おい、キョーコ。そんなところで寝こけてるんじゃねぇよ。仕事だ」


黒猫の希い 4


キョーコが嫌々目を開けると、ショーがキョーコの眠る木の下に立っていた。
太い枝に身を預けたキョーコは、長く豊かな黒髪をかき上げ、ゴロリと寝返りを打った。

「いい夢見てたのに…」
「何だよ、またクオンの夢か。どうでもいいから仕事だ。行くぞ」
「ちょっと、行くぞって。私、今さっき帰ってきたところなんだよ?ちょっと人使いが荒すぎない?」

口を突き出してキョーコはショーに抗議した。

「あちらさんが2人なんだよ。迎えも同じ数必要なんだ、仕方ねぇだろ」
「だからってあんたと2人で仕事なんて…」
「ぶちぶちとうるさい奴だな。時間がねぇ。飛んでくぞ?」
「えーっコッチの姿はあんまり好きじゃないんだけどなぁ」
「文句ばっか垂れてんじゃねぇよ」

2人は仕事場…夜の向こう側へと、カラスの姿で目指した。


キョーコとショーは死神だった。


予め定められた限りある命の終焉を迎えた人間を、最後の審判の場へと送り届けるのが死神の役目で、
それを永遠という時間の中で繰り返す。
死神に寿命は無い。但し、何かの拍子に消滅することがあった。消滅こそが死神に訪れる永遠からの脱却、死だ。
それがどんな条件で起こるのか、誰も知らなかった。
1人の死神が死ぬと新たに1人の死神が生まれる。そうやって死ぬまで死神としてあり続ける運命を、2人は
生まれながらに背負ってショーとキョーコも生まれた。

生まれの近い者が他にいなかったこともあり、ショーとキョーコは文句を言い合いながらも寄り添って生きてきた。


「ショー、首捻ったの治った?」
「当たり前だろ?あんなの寝れば治る。おもっくそ首締め付けやがって。
『死にたくない!』って喚くから、『お前はすでに死んでいる』って言ってやったら、えらい目に遭った」
「…やっぱりバカショー。」

終焉のその時、自らの死を受け入れられる人間など一握りだ。多くは放心したまま死神に手を取られて送られるが、中には
取り乱して暴れ、死神にありったけの罵詈雑言を浴びせ、更に暴力を振るう人間もる。
暴力を振るわれても死神にはどうすることもできない。暴れる人間を制止できるような強い力や特別な力があるわけではない。
ただ死者を送り届ける…死神としての職務を全うするしかない。
そのかわり、死神は驚異的な治癒力を持っていた。

…いくらすぐに治るからって、痛いものは痛いのよ。

「まったく。痛覚をなくしてくれればいのにね」
「同感だな…さて、ターゲットはあの2人だな?」
「今回の仕事は…手帳、手帳っと…リック・スチュワートに久遠・ヒズリ、ね。轢死って…2人揃って轢死なんて可哀想だね」
「死神に見放されるほど運悪くなくて良かったじゃねぇか。…あぁ、アイツらだ」

キョーコとショーは真夜中の倉庫街の屋根から、カラスの姿でその時を見守っていた。

1人は数人を相手にメチャクチャに暴れていた。既に意識無く血まみれで横たわる者や、腹を蹴り上げられて蹲る者たち。
これでよく死人が出ずに済んでいるという惨状だった。それを止めようとしてターゲットの2人目が駆けつける。

「久遠、やめろっ!」

あの暴れてる人、凄く無感情な瞳をしてる。何もかも、すべて壊れてしまえって…よっぽどつらい、悲しいことがあったのね…
あの瞳、コーンと同じ色をしてるのに、見るのがつらいほどとても悲しい色に見えるわ。
そんな人を今から送らないといけないなんて、気が重いなぁ

「カー(俺、血の気の無い方とったー)」
「カッ…」

ずるい!と言う間もなく、その瞬間が訪れる。

暴力から逃げ出した1人を追いかけて、ターゲットが走っていく。それを更に追いかけ、ターゲットの2人目が道路に出た瞬間、
猛スピードの車に弾かれて2人目…リックの体が宙を舞った。


バサッ


ショーが飛び立つ。


「ドン」という鈍い衝撃音に久遠は足を止めて振り返る。
久遠の目には、リックが宙を漂い、放物線を描いてゆっくりと硬い地面でバウンドする様子がスローモーションで
コマ送りをするかのように映った。

キョーコはその場を一歩も動けない久遠と、既に躰から離れたリックの魂に寄り添うショーを見ていた。


「イヤーーーーーーーーッ!!」


リックの恋人、ティナの悲鳴が耳をつんざき、久遠に正気が戻る。

「リック…?」

久遠はリックの元に駆けつけようと、ふらふらと渡り切っていた道路を戻ろうとする。

「リック…リック」


キョーコが見つめる久遠に浮かぶ悲痛な表情に、クオンの顔が重なる。
親の七光と言われて正当に評価してもらえないと、自分の演技力が足りずに役を降ろされたと、
わざと足を引っかけられて転んだと…
悲しそうに、苦しそうに自分の頭を…黒猫に化けたキョーコの頭を撫でながら語ったクオンの表情と同じだった。


嘘、嘘でしょ?まさかコーンなの?
コーン、クオン … 久遠!

キョーコの中で答えがはじき出されたまさにその時、久遠がリックの元へと、よろめきながら道路に踏み出した。
久遠に気付いて減速した車の脇をすり抜けたバイクが、猛スピードで突然久遠の前に現れた。

久遠がバイクの存在に気づいて動きを止めた瞬間


「だめーーーーーーーーーーっ!!」


キョーコは渾身の力で宙をすり抜け、久遠の正面に躍り出た。


突然飛び出したものを避けきれずに衝突したバイクは、バランスを崩し久遠を紙一重で躱した後転倒し、火花を散らして
道路を滑っていく。

一瞬の出来事に、久遠は少しの間何が起きたのか分からずバイクを呆然と見ていた。

「うぅ…」

バイクの運転手がうめき声を上げながらよろよろと立ち上がる様子を見て、ようやく久遠は我に返る。

自分を助けたものは何だったのか。

バイクに弾かれ、目の前に横たわる小さな黒い塊にぼんやりと視線を移す。

「なに?…動物?」

よく見ればバイクが轢いた黒い塊は黒猫で、手足をだらりと伸ばし、口からは血を流してひくひくと痙攣を起こしていた。
そして久遠が昔可愛がった黒猫と同じ、3本の脚先がまるで靴下をはいたように白かった。

その3本の靴下は今、赤い色に染まりつつあった。

「まさか…ソックス?ソックスじゃないか!俺の代わりに轢かれたのか?ソックス!!」

ソックスの傍に座り込み、抱き上げようとした久遠の震える手が寸前で止まる。

轢かれた…そうだ、リック!

「ごめんソックス!ちょっと待っててくれ!俺の親友があっちで…リック、リーック!!」

久遠はソックスと呼んだ瀕死の猫をその場に残して、リックの元へ駆けて行った。


倒れたまま、揺れる眼球でキョーコは久遠を追う。

コーン、コーンは無事なのね?生きてるのね?どこも怪我してないのね!?
良かったぁ…本当に良かった。コーンは生きてる。私、コーンを助けられたんだ!!

あれ…? コーン、どこに行くの?コーン、行かないで!
コーンの顔が見たいよ。コーンの笑った顔を、もう一度見せてよ。私を撫でた後、いつも笑ってくれたじゃない。

コーン…私が血塗れで汚いから、もう撫でてくれないの?

…私が死神だから、やっぱりコーンも私のこと嫌いになっちゃったの?


キョーコの目から涙がこぼれ落ちる。



「キョーコ!!!この大バカッ何やってるんだ!」

ショーの声を聞いた次の瞬間、キョーコは雷に打たれるような衝撃と共に意識を失った。




つづく




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