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   王子は誰だ 25   


暗い妄想してたら針が振り切れておバカに戻りました。



ショーのライブ会場から自宅に戻った蓮は、まずキョーコに連絡を取ろうと、置き忘れたスマホを手にした。
電話帳を開こうとパネルを操作するが、画面は黒いままだった。

「バッテリーが切れてる…」

急いで充電器をコンセントに差し込み、スマホを起動させる。

まずは最上さんに電話だ。そして直接謝罪して話を聞いてもらえるようにお願いを…何て言えばいい?
さっきはごめんね?…誠意が感じられない。まずは開口一番ごめんなさいだろう。姿勢は?
日本の心・土下座か?いや、土下座なんてしてもカメラが無いんだ、伝わらないだろう!!じゃあせめて正座?


ピンポーン


蓮がどうやってキョーコに電話をかけようかと悩んでいると、来客を告げるチャイムが鳴った。

「誰だ、こんな時に…」

蓮はイライラしながらモニターを確認して一瞬で固まる。
そこに映っていたのは、今まさにどう電話をかけようかとシミュレーションを繰り返していた相手、キョーコだった。
蓮は急いでドアフォンを手に取った。

「最上さん、どうしたの!?」
「今晩は。お食事を作りに参りました」
「…ありがとう。どうぞあがって?」

キョーコが到着するのを、蓮は玄関前で待った。
まさかキョーコから会いに来るとは夢にも思っていなかった蓮は、内心パニックに陥っていた。

…まずは謝ろう。話はそれからだ。受け入れてもらえるかなんて、最上さんに委ねるしかないんだ。


エレベーターから現れたキョーコは、淡いピンク色のワンピース姿だった。
その右手には、来る途中で寄ってきたのだろう買い物袋を提げていた。

「こんばんは。一旦家に帰って着替えて参りました」

一瞬キョーコに見惚れた蓮は、謝罪の言葉が出遅れる。

「…お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「もちろん、どうぞ」

平静を装い、蓮はキョーコを迎え入れる。
キョーコが歩くたびに膝丈のワンピースの裾が揺れて、キョーコの細い足を引き立たせている。

「これ、フェリックスさんに頂いてしまったワンピースです。どうです?似合ってますか?」
「え…」

最上さんの可愛らしさを引き立てて、確かにとてもよく似合ってる。これをあの王子が見立てたのか…。
似合っているけど、他の男のプレゼントを褒めたくない。見とれた自分が忌々しい。

蓮の胸に黒い嫉妬が焦燥感が生まれる。
蓮が答えに窮している様子に、キョーコはジトリと蓮を睨むように見据えた。

「…敦賀さん、エプロンを忘れました。この服、汚したらクリーニングに出さないといけないんです。洗濯機で洗えて、
もし汚してしまっても困らないような服を貸していただけませんか」

キョーコは「勿論貸してくれますよね?」と言外に有無を言わさない様子で蓮に要求した。

「分かった。少し待ってて」

蓮はすぐにクローゼットから戻りキョーコに服を渡した。

「お待たせ。Tシャツとスウェットでいいかな?」
「構いません。申し訳ございませんが、着替えたいのでゲストルームをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「うん。どうぞ」

キョーコは頭を下げて着替えを受け取り、ゲストルームに消えた。

…どういうことだ?一旦家に戻って、わざわざあのワンピースに着替えて来たっていうことだろう?
ならどうして俺の服を着る必要があると言うんだ?本当にエプロンを忘れただけなのか?

蓮が理由を考えているうちに、着替えを済ませたキョーコがリビングに顔を出した。。
見れば明らかに体に服のサイズは合っておらず、スウェットの足は何回も折り返し、Tシャツの首回りは鎖骨が見えるほどに開いている。

「それでは料理に取りかかります。本日のメニューですが、敦賀さんが食べたいと念じたハンバーグカレーです」
「…はい」
「私、子供の頃からの知り合いの、妖精王子にカレーのルーをあげたんです」
「うっ…はい」
「敦賀さん、もしかしたらお持ちではないでしょうか?」
「…持ってます」

蓮は観念したように、テーブルの上にスマホの横に置いてある辛口カレーのルーをチラリと見た。

「よかったー。絶対にあると思いつつ、もしかしたら、コーンが妖精界に持って帰ってるかもって、0.5パーセントくらい
思ってたんです。でも多分大丈夫だろうなぁって、ルーを買ってこなかったんです。…これでカレーが作れますね!」

ぐっ…何も言えない…。
そして最上さんの笑顔から繰り出される、プスプスと刺さる光が痛い…

「では、できたらお呼びしますので、それまでお寛ぎ下さい」

キョーコはにこりと笑顔でカレーの箱を手に取って、キッチンへと消えて行った。

ヘビの生殺しってやつだな。(違いますよ?)

どうすることもできず、蓮はソファに座って謝罪のシミュレーションを繰り返していた。

最上さんの許してくれる顔がまったく浮かばない…。
そしてこの状況は何だっていうんだ?怒りをぶつける前の…そう、嵐の前の静けさってやつなのか?
もういっそ一思いにバサリとヤッて欲しいよ…。


「お待たせしましたー。できましたー!」

キョーコが弾んだ声で料理の完成を告げる。
食欲をそそるいい匂いと共に、鼻歌まじりにキョーコがどんとテーブルに置いたものは…

超特盛りのカレーだった。カレー皿の下に敷いたトレーには、ルーがなみなみと溢れている。
更に小山のように盛られたカレーの上には、蓮のラッキーナンバーとしてキョーコにインプットされている数字のハチ、
無限の記号に整形されたハンバーグが乗っていた。

「最上さん、これはもしや…マウイカレー?」
「違います。私の持てる力の全てを駆使して、腕によりをかけて作りましたので、マウくはないと思います。
ただ、量がマウイ並みなだけです」
「…たいへん失礼いたしました」
「はい。それではどうぞ召し上がれ?」

これが最上さんの怒りの度合いって事か。ならば甘んじて受けないといけないよな…。
意を決して、蓮はスプーンを握り締めた。

蓮は必死にカレーを食べた。最初美味しく感じていたカレーも、半分の量を越えたあたりからよく分からなくなった。
ひたすら山を崩し、無限の記号に噛み付いた。
ふと蓮が正面に座るキョーコを見れば、キョーコも同じ量のカレーを黙々と食べていた。



…苦しい。って言うか死ねる…。



なんとかカレーを胃に流し込み、2人は息も絶え絶え、ラグに身を投げ出していた。


流石にしんどい。もう水一口だって入らないし、動く気力さえない…

「ねえ、どうして最上さんもこの苦行に付き合ったの?」

蓮は思ったままを率直に尋ねた。

「敦賀さん、『人を呪わば穴二つ』って故事を知ってますか?
人を呪うなら、呪う方もそれ相応の代価が求められるのです。だから敦賀さんを苦しめる私は同じように苦しむのです…
本当に苦しいです。うぅっ」

キョーコは蓮の横に寝転んで、天井を見つめたまま答えた。

こんな時でさえ…

「最上さん、まじめと言うか律儀だね…」
「でも、これだけでは私の気は収まりませんっ」
「…はい」
「もう1つ、敦賀さんに私を騙した罰を受けていただきます」
「なんなりと。甘んじてお受けします」


蓮は全てを受け入れる覚悟で、仰向けのまま目を閉じた。


「今日は私がお借りしたこのスウェットとTシャツを着て寝てください」
「…は?」

思わぬ罰に蓮はガバリと身を起こしてキョーコを見下ろすと、キョーコは襟ぐりを掴み上げてクンクンにおいを嗅いでいた。

「調理中に思う存分、カレーの匂いを吸着させました。寝ながらこのカレー臭を嗅いで苦しめばいいんです。
カレーに追いかけられる夢でも見ればいいんです。これは嫌がらせです。復讐です」

最上さん、それは全然嫌がらせじゃないよ。いやいや、むしろ着たら駄目だろう、変質者じゃないか!

「…本当は一発、いえ数発、怒りにまかせて敦賀さんを殴ろうと思ったんです。でも役者の顔なんて殴れないし、
ボディに入れても私の拳が痛いだけと思いまして。ならば内側から一発当ててやろうと思い、胃を攻撃させて
いただきました」
「…とても威力のあるパンチだったよ。全く動けないよ」
「お粗末さまでした」


してやったり、と笑うキョーコに、怒りの影は無かった。


「それで、怒りは収まったのかな」
「いいえ、まだです。まだ足りません」

蓮は精一杯の勇気を振り絞り、キョーコを見つめた。

「…俺が君をだましてた理由を説明させてほしい」




つづく。





マウイカレーのイメージはですね、『山梨 ぼんち 中華丼』で検索してみて下さい。
学生の頃、富士山行った帰りに山梨出身の友達が連れて行ってくれたんです。
ギャフーンでした。



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