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   黒猫の希い 5   


「全然目ぇ醒まさないな…バイタルは?」
「安定しています」
「今日で5日か。まだ身元もわからねぇし…」

黒崎は蓮が運び込んだ、眠り続ける少女を覗き込んでいた。


黒猫の希い 5



ぽつーん

                ぽつーん



キョーコは薄暗い牢の中で目を醒ました。
時折、周りの壁となっている岩を伝い落ちてくる水滴が地面で弾ける音だけが静寂の中響いていた。


ここは…どこ?


キョーコは自分が寝かされていたベッドから身を起こした。

「痛っ…」

体がまだあちこち痛いという事は、コーンの身代わりになってまだ数日も経っていなのだとキョーコは理解した。

あの日、本来であればリックの元に駆けつけようとした久遠は、バイクにはねられて死ぬ運命だった。
それをキョーコが庇ったことで久遠は死を免れ、代わりにキョーコが普通の生き物であれば即死するような大怪我を負っていた。
死ぬはずだった久遠の運命を、死んだ人間の魂を最後の審判の場に送り届けるだけの、ただの道先案内人である筈の死神のキョーコが変えてしまった。


「大バカだろお前。まあバカなのは昔から知ってたけどよ?」
「バカショー…」

キョーコが起きたことに気づき、牢の格子脇に座っていたショーがキョーコに話しかけた。

「うるせー。お前なぁ…死神が人間の身代わりになるなんて前代未聞の事件だって、珍しくこの世界でお祭り騒ぎだぞ?」
「死神のお祭りって…なんだかハロウィンみたいだね。ショーは何の仮装をするの?」
「あほかっ!そんなほのぼのしたもんじゃねぇよ。お前をどうしてやろうかって皆で騒いでるんだ。一生このままかもしれないんだぞ?最悪、消滅だぞ?まったく親父も頭を抱えてたぞ?親父にとってお前は手のかかる末っ子だからなぁ」

「うん…。でもコーンが助かったなら、それでいいの」

「~~~っいいわけあるか!!!」

ショーは苛立ちを抑えきれずに怒鳴った。

「大体なぁ!あのヤローは自分を庇ったお前を置き去りにして、既に逝っちまってる男の元に駆けて行ったんだぞ!!お前の存在なんてあのヤローの中じゃあそんな程度だったんだ!」
「…いいの。コーンが無事ならそれで私は十分なの」
「何言ってんだ!!アイツはお前の事なんて、とうの昔に忘れてるんだ!!子供の頃にたった数日遊んだだけじゃねぇか!猫のお前の事だって女としけこんだ後、探しもしなかっただろうよ!散々1人でピーピー泣いてる時に寄り添ってやったお前の事を、思い出しもしなかっただろうよ!!」
「いいんだってば!!!」
「~~~っこのクソバカダミーホ女め!!」

ショーはガツガツと足音を立ててキョーコの傍から消えて行った。

「…だって本当にそう思うんだもの…」

誰も居なくなった檻の中で、痛みに耐えながらキョーコは首にかけた革紐に括り付けられた小さな碧い石を握り締めた。


___ いつかコーンに何かあった時、必ずキョーコがコーンを守るからね? ___


私、コーンとの約束を果たせたのかな…

あの瞬間、勝手に体が動いたんだもの。コーンを守らなくちゃって。
生きていれば…生きてさえいてくれれば、コーンなら笑顔を取り戻してくれるはず。きっと優しく笑ってくれるはず。

…たとえそれが私に向けるモノじゃなくてもいい。コーンが幸せに笑ってくれるなら、それでいい。


キョーコは自分に言い聞かせるように想った。


まだ幼い頃、迎えに行った人間にぶたれたり罵られて、死神であることが嫌で嫌で仕方なかった私に、コーンにとっても大切な魔法の石と幸せな時間をくれたんだもの。
大好きなコーンを守れたなら、それで十分だわ。それだけで私は満足なの。

握り締めていた手を開いて、もう一方の指先で碧い石をそっと撫でる。

そうだ、コーンが笑顔を取り戻してるか、ショーにお願いして確認してもらおう。

…私が処分…消滅させられる前に聞けるといいな。


**


「ぅっ…」
「ドクターッ!患者が意識をっ」

激痛のなかキョーコが目を醒ますと、視界にぼんやりと真っ白い天井が飛び込んできた。


…ここはどこ?…暗い檻の中じゃない…


「よぉ。元気か?…5日ぶりのお目覚めだ、お嬢ちゃん」

黒崎がホッとしたように笑いながらキョーコに話しかけた。
その黒崎を目で捉え、キョーコはカラカラに乾いた口を開いた。

「… こ こは?」
「病院だ。もう大丈夫だ。安心しな」

黒崎はキョーコの目にライトを振り、瞳孔の動き確認する。

「よし…大丈夫だ」

キョーコはコクリと頷いた後、いつも首にかけた紐に括り付けてある碧い石を探して、喉元に手を動かす。
しかし、指先に触れる筈の石に辿りつかない。

「な…い…な、い」
「あ?どうした?」

キョーコが咄嗟に身を起こそうとした瞬間、背中に激痛が走り体を丸めた。

「うぁぁあああああああああ…!!!!」
「バカ!急に動くからだ!」

しっかりしろと、黒崎はキョーコの体に手をかけた。

「ほら!お前の首にかかってた石はここにあるから!!俺が持ってるから安心しろ!!」
「コーン…」
「え?…おいっ」

黒崎にしっかりと握らされた石の感触を確認して、キョーコは再び意識を手放した。


**


「よう、キョーコ。元気か?」
「あんたも相変わらずね、ショー」
「まあな!今日は凄いニュースがあるぞ?聞きたいか?」

キョーコの瞳に希望のあかりが灯る。

「まさか…ずっと探してもらってたコーンが見つかったの!?ねぇ、そうなんでしょ!?元気だった?幸せそうにしてた?笑ってた?勿体ぶらずに教えてよ!」
「…クソッ!こんな時も『コーン』かよ。アホバカめ」
「違うの?」
「…お前の処分がようやく決まったよ」

ショーはキョーコからプイッと顔を反らし、怒ったように顔を歪ませて言い捨てた。
キョーコの瞳に灯った希望のあかりは、一瞬で吹き消えた。

「…少し頭を冷やせって言われてから、随分と経ったんじゃないの?」
「そうだなぁ。人間の時間で言うと5年くらいは経ったかな…けど、永遠の中じゃあほんの一瞬の事だろ?」
「それもそうだね。で、私はどうなるの?やっぱり消滅?」

ショーは真剣な眼差しでキョーコを見据えた。

「追放だ。お前は人間に堕ちる。有限の命、無力な…簡単に死ぬ存在になるんだ」
「…そう」
「でもっ!親父から恩情があったんだ。お前が人間になった後、お前に声をかける99人目までにお前が助けた人間、
久遠・ヒズリがいれば、お前は死神に戻れる!良かったじゃねぇか。お前めっちゃラッキーだな!…99/72億だぜ。楽勝だろ!」

無理におどけるショーが可笑しくて、キョーコは軽口をたたいた。

「99人かぁ。イケる気もするけど、私って運が悪いじゃない?コーンが100人目だったらどうしよう。父さん、少しくらい目を瞑ってくれるかな?ね、ショーどう思う?」
「だーーーっ!!うるせーっ!戻ってこいよ!頼むから戻ってきてくれよぉ!!」

泣きそうな顔で地団駄を踏むショーを見て、キョーコはクスクス笑った。

キョーコの心は凪いでいた。

コーンとの思い出を擦り切れるほどに再生しながら永遠を生きるなら、コーンのいる世界で、早々に朽ち果てるのもいいんじゃないかな?
たとえコーンに会えなくても、コーンと同じ種族になって、コーンと同じ空間で生きて

…コーンを想いながら死ねるなんて


私はそれだけで幸せだ。




つづく




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