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   王子は誰だ 26   


おバカを自制してみました。
多分、あと1回で終わる予定です。



「…俺が君をだましてた理由を説明させてほしい」
「それには及びません」

キョーコは寝転んで天上を見つめたまま、あっさりと言い切った。

「及ばないって!?君は俺に怒っているんだろう?」

もう理由さえ聞きたくないくらいに最上さんの中で俺は消去されているって事なのか?

蓮は両手をグッと握り締め、胸に突き刺さる痛みに耐えた。

「いいえ、違いますよ?敦賀さん、勘違いをしてます。収まらない怒りは、自分への怒りです」
「…どういうこと?ずっと最上さんを騙していた仕返しがこれで本当に済んだとでも言うの?」
「仕返し…うーん、それもちょっと違います。マウイカレーはお仕置きですよ?」
「一体どう違うの?」

蓮の動揺を余所に、キョーコは蓮の目をまっすぐ見つめた。

「私、あの後すごく考えました。敦賀さんがコーンだって事を私に教えて下さらなかったのは、何か深い事情があったからだと思うんです。
子供のころの思い出の共有を許さないくらい…再開するまでの10年に、悪い魔法にかかって笑えなくなってしまうような、私の想像もつかない辛い出来事がたくさんあったんだと思います。…私がピュアでなってしまった以上に」

キョーコの話を聞きながら、蓮は事務所の階段でコーンを拾った時の事を思い返していた。
不破への復讐の為に芸能界を目指すと言うキョーコが、はるか昔、京都の河原で遊んだ「キョーコちゃん」だと分かった時の衝撃を。そしてその時、キョーコに自分がコーンであることは絶対に話さない、自分は全ての過去と決別して、演技の為だけに生きるのだと思ったことを。


そんな俺が過去を受け入れて前を見ている。
もう大切なものは作らないと誓ったくせに、気付けば手遅れなくらい最上さんが好きで、そばにいて欲しくて…誰にも奪われたくないって思ってる。
俺に前を見る勇気を、人を愛する心を取り戻させてくれたのも、全て最上さんなんだ…


「だから、別に私は敦賀さんに嫌なことをされたとか、許せない!なんて思ってないです。ただ、ずっと黙っていたなんてヒドイ!っていう怒りは、今まさにマウイカレーで晴らさせていただきました。だからですね」

キョーコは起き上がり、膝を抱えて座った。

「敦賀さん、私が怒ってるから話すんじゃなくて、いつか敦賀さんの肩から力が抜けて、ポロリと話せるようになったら教えてください。それがずっと先でも構いませんから。でも、いつか絶対に教えてくださいね」

膝に左頬を乗せて、蓮を見つめながらキョーコは笑った。

君は笑って俺を陽の当たる方にグイグイ引っ張って行ってくれるくせに、陰から一歩を踏み出す最後の決断は俺に委ねてくれるんだね。

蓮のきつく握り締めていた両手は、いつの間にか開いていた。

「最上さん…君って本当に凄いね…」

一気に緊張を解いた蓮はラグの上にゴロリと再び寝ころんだ。

「いいえ、全く凄くありません。グァムでも、先程も…思い返せばDark Moonの撮影で訪れた軽井沢でも…
敦賀さんがコーンに、コーンが敦賀さんに見えた事なんてたくさんあったんです。なのにそれを私は見抜けませんでした。
もう、節穴かって言うくらいに、私は役者の…敦賀さんの演技を私は全く見抜けなかったんです。正直ショックです」

キョーコは笑顔から一転して、眉間にしわを寄せて、難しい顔をした。

「渋谷で初めてカイン・ヒールに出会った時、凶悪なオーラをまき散らしていたカインを敦賀さんなんじゃないかって疑ったのに、敦賀さんは演技で私の疑念を一瞬で吹き消しました。それを今度はコーンで1度ならず2度3度…。どれだけ私は学習できないバカなんですか」
「いや、それは最上さんの妖精・コーンに対する子供からの刷り込みがあったから「それでもっ」」
「…それでもやっぱり、悔しいじゃないですか。私が全く成長できてないみたいで。雪花として、後輩として、敦賀さんがカインを演じているところと、素の敦賀さんの両面をありがたくも一番近くで見てきてたって言うのに…。情けない自分への怒りでいっぱいなんです」

唇を噛みしめて足首のスウェットをギュッと握り締めるキョーコを蓮はただ見つめるしかなかった。

「最上さん…『コーン』も『敦賀 蓮』も、君に接しているときは、もうどっちも素の俺なんだよ?だから、最上さんを見つめる俺の…2人の目は同じものだったはずなんだ」

愛しいものを見つめる同じ眼差しだったはずなんだ。

はっと弾けるように、何かを思い出したとばかりに、キョーコは頭を膝から離して体育座りから正座に座り直して太腿に腕を立て、鬼の形相で蓮を見つめた。

えぇっ!?最上さん、そこで鬼出現なの?俺の精一杯の気持ちはスルー??

「敦賀さん、その辺りについて、きちんと確認させていただきたいのです」
「…うん、いいよ。何でも聞いて?」
「ぐぐぐぐグァムで私がきききキッ…スを…私がファーストキスを捧げたのは、つまり…敦賀さんなんですよね?」
「…はい」
「じゃ、じゃあ、その別れ際に私にキキキスをしたのも敦賀さんですよ…ね?」
「その通りです」
「そしてさっき…私が好きな人の事を話した相手も、全部全部ぜーんぶ、敦賀さんなんですよね?」
「はい。全部、俺です」

うわぁ、最上さんの顔に怒りが増して、まるで美緒の3乗…コレは相当怒ってるぞ?
…平手打ちくらいは覚悟しておこう。

「敦賀さん、ズルいです!私の気持ち…全部地獄に持って行くつもりだったのに、閻魔様に見せる前に全部残らず敦賀さんの前にきっちり並べて置いてきちゃってるじゃないですか!」

キョーコは怒ったように喋った後、口をグッと一文字に結んで黙り込んだ。

「最上さん?」

急に話さなくなったキョーコに、蓮は心配になって体を起こそうとすると、キョーコは両肩をガシリと掴んでラグの上に押しとどめた。

「…2度目は無いとおっしゃったのは敦賀さんです」
「え?」

蓮が「何が」と言う間もなく、キョーコは蓮に覆いかぶさるようにして、蓮の唇に自分の唇を重ねた。
キョーコの柔らかい唇と自分の頬を撫でるキョーコのサラリとした髪の感触に、蓮はただただ驚き、息をすることも瞬きをすることさえ忘れていた。
この甘い衝撃が永遠に続けばいいと蓮は思った。


キョーコはそっと顔を上げ、震える両手を蓮の肩から離した。


蓮がキョーコを見ると、キョーコは顔を真っ赤に、それこそ全身真っ赤にて、涙目になっていた。
それでもキョーコは蓮をまっすぐに見つめて話しかけた。

「これで3度目です。『2度目は無い』なら、3度目はですね…えーと」
「…3度目はどうなるの?」


眉を下げて、不安そうに蓮を見つめて言い淀むキョーコを、蓮は真剣な眼差しで見つめ返して次の言葉を待った。


「3度目は…返品却下です」
「…いいの?最上さんが嫌だって言っても、もう一生返品するつもりなんか無いよ?今のはナシなんて言わせないよ?」
「結構です。但し不良品かも知れませんよ?すぐに捨てたくなるかもしれませんよ?」
「最上さんなら何でもいい…いや、最上さんじゃなきゃ駄目なんだ。ずっと、ずっと大切にするよ…」

蓮は泣きそうになる自分の顔を見せたくなくて、キョーコの腕を優しく引き寄せて、胸の中に震えるキョーコを抱きしめた。

「つつつ敦賀さん!?」
「最上さん、君のことがずっと前から好きだよ。」


「…… ありがとうございます」


キョーコは蓮の胸に顔を埋めたまま、小さく応えた。


「俺こそありがとう」




つづく。




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