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   黒猫の希い 7   


「じゃあ、キョーコちゃんは寝る時いつも1人なの?」
「そうよ、1人よ?」
「お父さんやお母さんは?」
「お母さんはいないの。お父さんともほとんど会ったことないし…でもね、ショーちゃんが居てくるから大丈夫よ?」
「ショーちゃん?」
「うん。キョーコのお兄ちゃんよ。あれ?弟?」
「わかんないの?」
「うーん、キョーコの方が先に生まれたのかなあ?」
「こらキョーコ、誰がお前の弟だ。俺が先に生まれたに決まってるだろ。いい加減帰るぞ?」
「えーっまだコーンと一緒にいたいー」


黒猫の希い 7


「おーい、起きてよ。ここは簡易宿泊施設じゃないんだよ。家で寝てくれよ」

蓮はパイプ椅子に座ってキョーコの手を握りしめたまま、ベッドに顔を埋めて眠っていた。

その体勢のまま頭だけを動かして、切れ長の目で黒崎を睨みつけた。

「何回も言うけどこの病院、夜間完全看護なんだよ。面会時間ってものがあるんだよ。完全に無視しやがって。あんた、番記者かっつーの。夜討ち朝駆けとか止めてくれる?」
「…彼女のそばに居たいんです。どうにかなりませんか?」

蓮は起き上がり、キョーコの顔を見つめながら優しく髪を撫でた。

確かに看護師たちが騒ぐのもわかるよ。
見目麗しい人気俳優が忙しい時間を縫うように、大けがで運び込まれた少女にわざわざ5分、10分会いにやってくるんだからな。
…面会時間ガン無視で。

どういう訳か、キョーコは決まって真夜中に目を醒ましていた。毎夜、巡回中の看護師が目を醒ましたキョーコを見つけ、呼ばれた見知らぬ医師にキョーコは身を固くして震え、首元をまさぐる。それがここ数日続いていた。
それを知った蓮が仕事を終えたその足で、0時を過ぎた頃にやって来ていた。


呼吸も安定したと診断され、キョーコの鼻と口を覆っていた酸素マスクが外され、規則正しい音を鳴らしていた心電図モニターも撤去されていた。
彼女の腕に繋がる点滴さえ目に入らなければ、月明りに照らされて穏やかに眠る、恋人に寄り添う青年という図に見えなくもない。


ふーっと黒崎はため息をついた。

「俺はいいんだけどさ、看護師さんたちがお仕事にならんのよ。オタクがいるとソワソワしちゃって。アンタ、人気俳優なんだってな?この部屋の巡回を賭けたバトルがナースステーションではじまっちゃうのよ」
「俺は気にしません」
「そりゃ普段から見られ慣れてるお方はそうかもしれないけどさ、コッチが困るんだよ、仕事にならないんだよ。だから帰って」
「彼女のそばにいたいんです。1人で眠らせたくないんです」
「番犬かよ。何かあればすぐに連絡してやるからよぉ、お願いだから帰ってよ。出来ないって言うなら、明日からこの部屋に面会謝絶のプレート貼り付けるぞ?」

「…必ず連絡下さいね?必ずですよ?」
「へーへー、分かったから。ハウス!」

ビシリと黒崎はドアを指差した。

「…また明日来ます」
「面会時間守ってよー」

蓮は握っていたキョーコの手を布団の中に入れてやり、名残惜しそうに部屋を後にした。


ご主人様を見守るでっかい番犬みたいだな。今にも「クゥーン」って鳴きそうな顔して…おもしれー。
全く、抱かれたい男No.1の人気芸能人様をここまでオロオロさせるなんて、この子は一体何者なんだ?

…お?起きるか?

黒崎がじっとキョーコの顔を見ていると、瞼が震えた。


「うー…」

瞼がゆっくりと開き、黒崎が点けた蛍光灯の明かりを眩しそうに顔をしかめて唸った。

「気分はどうだ?」

黒崎は笑いながら、天井を見つめてぼーっとしてるキョーコを覗き込む。

「今までアンタを運びこんだ奴がいたんだけどな。スゲー心配してた…って俺が言ってることわかるか?」

黒崎をじっと見つめた後、キョーコはコクンと頷いた。

「よし。今日は少しだけ教えてくれ。名前は『キョーコちゃん』で合ってるか?」

何故知っているのかと不思議そうに小首を傾げた後、頷いた。

「年は?」

フルフルと首を横に振る。

「…生年月日は?」
フルフル
「両親は?」
フルフル
「じゃあ、誰か身寄りはいねえのか?」
フルフル
「最後の質問だ。…この傷は誰にやられた?」
「…父さん」

黒崎はピクリと眉を動かした。

「…そうか。嫌なことを聞いて悪かったな」

暗澹とした気分で立ち去ろうとした黒崎の白衣をキョーコは掴んだ。

「ん、どうした?」
「コーン…は?」
「あ?コーン…ああ、青い石ね。俺が預かるって言ったの覚えてたか」

待っていろ、と笑って黒崎は白衣のポケットに手を入れてごそごそと探す。

「あれ…無いな…
あっ!そうだ、アイツに渡しっぱなしだ!!わりぃわりぃ。次来る時、絶対に持ってくるように伝えておくから!」
「ない、の?」
「マジでスマン!」

この通り、と黒崎は顔の前で両手を合わせて見せる。

石が自分の与り知らない所にあることを理解したキョーコは大きな目を見開き、次の瞬間、眉を下げて苦しそうに泣き出した。

「ふぇぇ コーンー」
「うわぁ泣くなよ!」
「うええ コーンーうぁああ~~~コーーンーー」
「ごめん!悪かった!俺が悪かったよ!!」
「うぁああ~~~コーーンーっっく…コーンーコーンー…っひっくっ ぁあーーーーーーーコーンー」
「子供かよ!~あ゛ーーーっ!ちょっと待ってろっ呼び戻すから!まだその辺にいるだろ」

慌てて黒崎はナースステーションへと走った。

何なんだよ!今までおとなしく寝てた癖に、起きた途端にギャン泣きかよ、赤ん坊かよ!
その上あの怪我は父親が負わせただと?これからどうすんだよ!!

「クソッ」

黒崎は駆け込んだナースステーションの電話を取って、胸ポケットの手帳に書かれた、蓮から緊急連絡先としてたった今教えられた電話番号を押した。


「はい…え?キョーコちゃん目覚めたんですか!?」
「ええ、石なら持ってます」
「…えっ泣いてる?ドクター、彼女に何したんですか!」


キョーコが目覚めたという知らせに蓮は慌てて来た道を引き返す。


法定速度通りに走る前の車が苛立たしい。赤信号の停車が永遠の時間にさえ感じられる。



早く… 1分でも、1秒でも早く

君に会いたい




つづく




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