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   東方の三博士 3   


昼からアップしました。皆様、メリークリスマス!!



「失礼します。キョーコを…娘さんを迎えに上がりました」

暖簾を下ろしただるまやの入り口に、仕事を終えて駆けつけた蓮が頭を深々と下げたまま立っていた。

「敦賀さん…」
「いいからお前は中にいろ。絶対に出てくるんじゃねぇぞ?」

キョーコの返事も聞かずに、大将はカタカタと下駄を鳴らして板場から店の入り口へと向かう。
その左手には小さな壷を持っていた。

店の玄関先で、大将は頭を下げたままの蓮と向かい合い、その瞬間

「けぇれっ!!!」

バサッ

力士よろしく、壷から掴んだ拳いっぱいの塩を、アルマンディのコートを纏った蓮に投げつけた。


はじめて聞く大将の怒声にキョーコは驚いて目をぱちぱちさせて、大将の、普段より大きく見える背中を見守った。

「そわそわしてないでどっしり構えてな」

心配そうに様子を窺うキョーコに、店の後片付けをする女将が笑いながら促した。


「こいつをこの家から送り出すとき、俺はお前に言ったよな?」
「はい」
「こいつが泣いて戻ってきたら、二度とお前の元には返さないと。覚えてるよな?」
「…申し訳ありません。俺の不徳の致すところです」
「こいつはうちの子だ。もうこの家から一歩もださねぇ!」


『うちの子』と言ってくれる大将の想いが嬉しくて、蓮が肝をつぶしていると分かっていても、キョーコの胸はほっこりと暖かくなる。


「こいつがお前のところに帰るって言っても、柱に括り付けてだって帰しゃしねぇ!」

蓮は下げ続けていた頭を戻して、ジッと大将を見据えた。

「なんだ、やるのか?」

大将もひるまずに蓮を睨みあげる。

「…どうしてもキョーコを取り戻したいって言うなら…お前、ここで修業しろ」
「えっ?」
「そんなチャラチャラした気持ちで仕事なんかしてるから変な女が寄って来ていい気になるんだ。お前がキョーコに相応しい男になるように俺が根性を叩き直してやる!」

真剣な目で睨みつける大将を見つめ、蓮は答えあぐねた。


「だめです!!そんなの敦賀さんには無理です!!」
「キョーコ…」

いつの間にか大将の横に歩み寄って自分を否定するキョーコを、蓮は苦痛の表情で見つめた。

「だって、白い前掛けも下駄も敦賀さんには全然似合いません。大将みたいに全然格好良くないです!
真剣に包丁を握る大将の佇まいに追いつけるはずありません。それに、大将の下で修業しても敦賀さんの根性なんて変わりません!」
「キ、キョーコ、お前…」

大将は自分を褒めるように、怒るように喋り出したキョーコに狼狽えた。

キョーコは蓮に歩み寄り、蓮の肩やコートに付いた塩を、手のひらで払い落としながら、話を続けた。


「…だから敦賀さんは今まで通り役者でいればいいんです。役者として真摯であり続ける敦賀さんの、ストイックなまでの根性なんて、変わりようがないんです。
そして全神経を演じることに注ぐ敦賀さんの食生活はおざなりで、乱気流のなかを漂う紙飛行機のようにペラペラだから、すぐ隣でご飯を作る人が必要なんですっ」

キョーコは一気に喋り、眉を下げて不安そうに蓮を見上げた。

「ケーキもご馳走も…作りかけのままだから、冷蔵庫のありあわせのものでしか用意できません。
……それでも私のご飯、食べてくれますか?」

蓮も不安そうにキョーコを見つめて話し出した。

「君の隣で…キョーコのご飯をこの先一生食べていきたいです。キョーコ、不安にさせてごめん」


「バカヤロウ!!!」

大将の怒声が、落ち着きかけた2人の間を割って響く。

「たっ大将?」
「お前、そんな体でこれから台所に立つって言うのかっ!」
「えっ!?キョーコ、どこか具合悪いの?」
「いえ、その」

「ほら、そんな店先でイチャついてないで中に入んな。アンタも、もう諦めて夕飯の支度を手伝っとくれ。
まだ鯖味噌も残ってる。まったくクリスマスもへちまもないご飯だけど、2人で食べて帰りなさい」

慌ててキョーコの体を支えようとする蓮から逃げようともがくキョーコを見て、女将が笑いながら話しかけた。

「さあ、寒いから早く奥にお入り。母体には冷えが一番悪いんだ」


瞬間、蓮の時が止まった。


…今女将さんはなんと言った?


ボタイ?


もしかして … 赤ちゃん?


「キョーコ、本当 に?」

蓮はキョーコを凝視して、掠れる声で一言をやっと絞り出した。

「はい…6週目だそうです」

キョーコは蓮を不安そうに見上げながら自分のお腹に両手をあてる。

「キョーコっ!!」

次の瞬間、蓮はキョーコの小さくて薄い体をきつく抱き締めた。

「敦賀さんっ苦しいっ!離し…」

蓮から小刻みに伝わる振動にキョーコは言葉を失った。


敦賀さん、泣いてる?


「キョーコ、ありがとう。本当にありがとう。ありがとう…」

「産んでも…産んでいいんですか?」
「当たり前じゃないか!凄く嬉しい。本当は叫び出したいくらいだよ!」
「ふぇぇっ…よかったぁ…」

キョーコの体から力が抜けて、蓮に全てを委ねるように体をあずけて、しゃくりあげながら泣き出した。



暫くして落ち着いたキョーコが、抱きしめられたままぽつりぽつりと話し始めた。


「昨日病院に行って、お腹に赤ちゃんが居るのが分かって…凄く嬉しくて、舞い上がって。
でも昨日、帰ってきた敦賀さんは凄く疲れてて話もできなかったし、段々と浮かれていたのが間違いだった気がしてきて…。敦賀さんを困らせるだけかも知れないし」
「そんな馬鹿なっ」

蓮が慌てて口をはさむのを気にせず、キョーコは話し続けた。

「段々怖くなってきたけど、無理やり自分を奮い立たせてクリスマスのご馳走を作って。
でも香川さんと一緒にいる敦賀さんを見かけちゃって…。
もうどうしたらいいか分からなくなって、大将と女将さんに打ち明けたら、敦賀さんときちんと話して、それで本当に駄目だったら、赤ちゃんと戻って来なさいって」

女将さん達…俺にはそんな空気一切感じさせなかったな…

「だからバタバタしちゃって…ごめんなさい。クリスマスなのに何もプレゼントの用意も出来てないんです」
「もう貰ってるよ。キョーコが腕の中に帰ってきてくれた。その上、とびっきりのオマケ付きだ」
「オマケって…」
「俺もごめん。本当はクイーン・ローザの花束を用意してたんだけど、取に行く時間も惜しくて何も持ってないんだ。
本当にごめん」
「私だって、もういただいてますよ?ここに、ちゃんと…」
「キョーコ… 君の全てを愛してる」
「敦賀さん…」

この先、俺は絶対に大切なものを見誤ったりしない。



ひとしきり落ち着いた頃、夕飯の準備ができたと居間から女将が二人を呼んだ。
キョーコが大将の料理で一番好きだという鯖の味噌煮や、蓮根のはさみ揚げ、ほうれん草のお浸し、筑前煮が食卓に並ぶ。

蓮が座ると目の前にグイッとビール瓶が突き出された。驚いて大将を見れば、視線を合わせないまま口をへの字に曲げて、のどで『ん』、と発した。

慌てて蓮がテーブルのグラスを手に持つと、大将は黙ったままビールを注いだ。
蓮もビール瓶を受け取り、大将のグラスに注ぐ。

その様子をキョーコと女将が見守った。

「じゃあいただこうかね?」
「「いただきます」」

大将がグイッとビールを飲む。
キョーコと女将が笑いながら他愛ない話をする。

そうだ、と思いついたようにキョーコがバッグから取り出した1枚の写真を、大将、女将と蓮の3人が揃って覗き込む。
真っ黒の中に小さな白い点が1つ。

「これって…」
「えへへ。エコー画像です」

キョーコがお腹に手を当てて、3人に照れた様子で笑いかける。


多分、過去に家族や誰かと祝ったどのクリスマスや誕生日と比べても、一番普段通りで、一番慎ましいかもしれない。


けれど、この普通の食卓を、俺は絶対に一生忘れない。

こんな特別な時間は二度と訪れないだろう。



「あ、12時回ったよ」

「キョーコ、ハタチの誕生日、おめでとう」
「おめでとう」
「キョーコちゃんおめでとう」

「ありがとうございます!」



神様、願わくば貴方の子を祝福するように

どうか、キョーコの誕生と、産まれてくる俺たちの子に限り無い祝福を




to be continued.





地味だけど、私に出来るクリスマス・誕生日をキョーコちゃんにプレゼントしたかったんです。
受け取ってもらえるといいな。
そして明日、エピローグをアップ予定です。



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