HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  黒猫の希い  »  黒猫の希い 9

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   黒猫の希い 9   


こんばんは。よれよれナーでございます。
年末、皆様慌ただしくされていることと思います。ナーも慌ただしくしてますよ。ちゃんと。ゴニョゴニョ。
年末だけど変わらず黒猫をアップです。
単に『9』って数字を新年に持ち越したくなかったので。
なんか苦しそうだから。もうキョーコちゃんが苦しくないように。
少しずつ、蓮とキョーコちゃんの距離が近づけばいいな、と思いながら書いてます。
来年も引き続き、よろしくお願いします。


「よぉ、キョーコ。生きてるか?って…あれ、今日は猫じゃないんだな?折角ネズミを持ってきてやったのに」
「あ、ショー。コーン、見つかった?」
「お前さー、笑いを取ろうとしてやってる俺様に対して、普通それを開口一番で聞くか?」
「うん。だって面白くなかったし」
「…ムカつくなぁ。少しは過労気味の俺をいたわってだなぁ」
「で?どうなの?コーンは?」
「そんなに気になるなら自分で探せよ!!」

「…できないからお願いしてるのに……ショーの意地悪…」


黒猫の希い 9


蓮がキョーコの病室に戻ると、キョーコは目を覚ましてベッドの上で起き上がっていた。

キョーコはコーンと呼ぶ碧い石を月明かりにかざし、指先でそっと撫でていた。
コーンが手元に戻ったことを自分に実感させるように、愛しそうに、撫で続けていた。


「…その石、そんなに大事なんだ?」

ビクリとキョーコは体を硬直させて、病室の入り口でキョーコに微笑みかける蓮を怯えた瞳で見つめた。


ズキリ

どうしてそんなにも人を怖がるの?そんなにも嫌な思いをしてきたの?


俺が君を守ると誓うから


「キョーコちゃん……怖がらないで?」

どうか、俺だけは怖がらないで。

願うように、祈るように、蓮はキョーコを優しく見つめ続けた。

暫くジッと蓮を見つめた後、キョーコは思いついたように口を開いた。

「コーンを持ってきてくれた人…だよね? あなたは、誰?」
「…覚えてない?」

キョーコは不安そうに、それでもコーンを自分の手元に戻してくれた男を首を傾げて見つめ続けた。

蓮は顔をくしゃりと歪めて、悲しそうに笑った。


そうだよな…
キョーコちゃんが、俺がコーンだって気が付く筈がない。
10年も会ってなかったんだ。その上、髪や瞳の色も変えている。

俺だって最初はこの子があの「キョーコちゃん」だって事に気が付かなかったんだ。
黒髪は茶色に染めてるし、泣くか笑うかの両極端だった顔は苦悶を浮かべてたんだ。

まして、あんな大怪我を負って…

俺があげたあの石を黒崎医師から見せられなければ、俺はこの子があの『キョーコちゃん』だって事にも気づかずに終わっていた。
きっと…傷を負った君の事だっていつか忘れていた筈だ。


蓮は自嘲した笑いを浮かべてキョーコに語りかけた。

「俺は、敦賀 蓮。あの日…君が怪我をして倒れていた所を見つけたんだ。声をかけたのを覚えてないかな?」


…確か、翼を落とされた傷のせいで動けなくなって…目の前が真っ暗になりかけた時に、最後の1人…99人目にとうとう声をかけられちゃったんだ…。
そうだ、心配そうに、でも…

迷惑そうに声をかけられたんだ。


死神だったキョーコは、人の喜びといったプラスの感情よりも、訪れた死に対する恐怖や怯え、いきなり閉ざされた人生への怒りや悲しみといった感情に晒されてきた。
その悪感情寄りの波動を、あの雨の中で声をかけた蓮からも、キョーコは敏感に感じ取っていた。

キョーコはじっと蓮を見つめる。

「ん?何?」

どう見ても、コーンの瞳の色と違う。
神秘色の…碧の瞳じゃない。髪だって金じゃなくて黒だし、名前だって違う。
少し、似ている気がしたのになぁ…


やっぱり空振りだ。99人目までに、コーンには会えなかったんだ


「そりゃそうよね」
「キョーコちゃん?どうしたの?」

蓮は瞳に暗い影を落としたキョーコに驚いて、それまでキョーコが怯えないようにと保っていたキョーコとの距離を一気に縮めて
キョーコの傍へと近寄り、心配そうにキョーコの顔を覗き込んだ。

「ううん。何でもない…です。助けていただいて、ありがとうございました」

キョーコは言葉づかいを改めて、迷惑を顧みずに自分を助けてくれた蓮に礼を述べた。

もう蓮に怯える様子は既になかった。

そうよ、死にかけの死神を嫌々でも助けてくれたのよ?心配そうに声をかけてくれた、99人のうちの1人なんだもの。
この人はきっと、凄くいい人なんだ。

「キョーコちゃん、そんなに畏まらないでよ…。ずっと君と…キョーコちゃんと話がしたかったんだ」

キョーコは不思議そうに蓮を見上げた。

「どうして?…それに、えっと…つるがさんは、どうして私の名前を知っているの?」
「キョーコちゃん、蓮だよ。」
「…れん?」

蓮はたどたどしくも自分の名前を呼ぶキョーコを、嬉しそうに目を細めて笑った。

「うん。蓮って呼んで?名前はね…怪我で意識が朦朧としたキョーコちゃんが教えてくれたんだよ?覚えてない?」

蓮はキョーコに嘘をついた。
チクリと胸が痛んだが、蓮はそれに気付かないフリをした。

「うーん…。覚えてない、です」


俺は過去と決別して今を生きているんだ。
たとえ大切な思い出の中の君にであっても、俺がコーンだと名乗るわけにはいかない。

名乗ったら、自分が自分でいられなくなってしまう…


「そう。あんまり深く考えちゃ駄目だ。今は怪我を治すことが重要なんだから。
…何も考えなくていい。ゆっくり休めばいいんだよ」

俺のそばでゆっくりと…
そう、俺が君の宿り木になるから、ゆっくりと羽根を休めればいい。そしていつか、羽ばたいて行けばいい。

「ゆっくり休んで…怪我が治ったらキョーコちゃん、何がしたい?」
「え?」

突然の質問にキョーコは驚いて、目をぱちぱちと瞬かせる。

「体が本調子になったら、キョーコちゃんがやりたいことをやればいいよ。
俺はそれを応援するから。ほら、元気になった後のことを考えた方が、早く良くなりそうじゃない?」

ね、と蓮はキョーコに笑いかけた。

「蓮は優しいね。…まるでコーンみたい…」
「キョーコちゃんっ」

目を見開く蓮に、キョーコは穏やかに笑って目を閉じた。


そうだ、別に望みが絶たれたわけじゃない。私はコーンと同じ世界にいるんだ。

コーンを見つけよう。
誰の手でもなく、自分の手で、足で。コーンが笑って生きているのを、自分の力で見に行こう。

もう一度、絶対に会うんだ。夢の中じゃなくて、ちゃんとコーンに会うんだ。

なんて幸せな目的が出来たんだろう!


コーン、絶対に会いに行くからね。その時は笑って手を大きく振って、私を迎えてね?




つづく




Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。