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   コングラッチェ 10   


こんにちは。日曜の夕方、皆様いかがお過ごしでしょうか。
ナーは今から笑点見ちゃう。笑点とサザエさん。そしてサザエさん症候群に陥る(ドーン)

黒猫話のイメージモデルの、足先のみ白い別嬪黒猫様(野良)に遭遇し、ほんの目の前を横切られました。
脅迫を受けたので、早々にアップしようと思ってます。

さて、コングラですが、なんだかんだで10話目に突入してしまいました。
今回は回想です。



ショータローとの鉢合わせに、蓮と千織は私語厳禁状態の車で自宅へと向かっていた。
蓮はハンドルを握り締めて、渋い顔で前方を見つめたまま、助手席に居る千織に話しかけた。

「千織、ごめん…買い物に行くのを忘れてた。悪いけど先に1人で帰ってくれないか?」
「…いいけど、この貸しは大きいわよ?それについさっきまで馬鹿と大騒ぎをした後なんだから、ご近所の手前、キョーコさんの部屋に近づいちゃ駄目よ?」
「えっ!? …いや、買い物…」
「チッ」

千織は凍て付く視線で一瞥し、蓮を黙らせて話を続ける。

「独り暮らしを良い事に遊んでいる悪い子だとか、口さがないオバサン達に変な噂を立てられでもしたら、キョーコさんに迷惑がかかるんだからね?分かってるの?」
「…はい」

蓮は目を泳がせながら、キョーコがいつも使う駅のロータリーに車を停めた。

「じゃ、オプションでこれも渡しておくから。…数学のテストのヤマと引き換えだからね?」
「…ヤマでいいんだ?」
「100点と引き換えでもいいけど?じゃあまたね、敦賀センセ」

蓮は千織に渡された紙に苦笑しながら、駅の中へと入っていく千織の後ろ姿を見送った。


**


千織たちの気配が消えた後、しばらくの間玄関で立ち尽くしていたキョーコは、カーテンが引かれた薄暗い部屋の中に入り、ラグの上で膝を抱えて座り込んだ。

キョーコは、ショータローが蓮を庇った自分に見せた、驚きとショックと怒りがない交ぜとなった怒気と、自分を見下ろす憐れみと蔑みを含んだ表情を思い返した。

ショーちゃん、本当はあんな風に私のことを思ってたんだ。四六時中追いかけ回されて、ウザいだなんて…。
安芸先生にも私のこと、お節介だって言ってたもんね。
10年来の恋心も、あいつにとっては踵に貼りついて離れないガムみたいなものだったって事よね。

…もうショックじゃないって思ってたけど、やっぱり面と向かって言われるとキツイなぁ。


ジッと座っていると、冷たい空気の中、ふわりと漂う香りにキョーコの鼻がくすぐられた。
そんなものが部屋に置いてあったかと、キョーコが顔を上げて周りを見渡すと、テーブルの上に卒業生からのプレゼントとして投げられた、小薔薇の小さなブーケが無造作に置かれていることに気付いた。キョーコはそのブーケを手に取って、すーっと大きく香りを吸い込んだ。

「いい匂い…」

そうだ。敦賀先生が学校の屋上で私にくれたんだ。
すごく昔な気がするのに、まだ花だって萎れも枯れもしてない。まだ昨日の出来事なのよねぇ…。
屋上でのキスとか…あれは本当に現実だったのかな?今まで天宮さんと先生の家に居た事だって、本当は夢の中だったんじゃないのかな?

熱のせいで、都合のいい夢を見ていただけなんじゃないの?

「うん。きっとそうよ」

キョーコは1人納得した。

だって私は地味でつまらない上に、面倒くさい女なんだもの。
ショーちゃ…ショータローに失恋したショックで、ショータローよりもカッコ良くて、比べ物にならないくらい優しくて、女子からモテモテの先生が実は私のことを好きだって、おとぎ話のような妄想をしちゃったのよ。

えへへ。凄く楽しい妄想だったなぁー。


キョーコはブーケをギュッと握り締めた。


…違う。妄想なんかじゃない!
この香りは先生の胸の中で嗅いだ香りだもん。先生が屋上でギューッって抱きしめて慰めてくれた時の香りだもん!!

「ふぇぇっ…」

RRRRR…

キョーコが泣きかけた瞬間、通学に使っているバッグの中で電話が鳴りだした。
慌ててバッグからスマホを取り出してみると、登録されている知人以外からの電話らしく、ディスプレイには見覚えのない番号が表示されている。

なによっ!こんなタイミングで電話だなんて!!
もしも何かの勧誘だったり間違い電話だったら、絶対に許さないんだからっ


「もしもし?…」
「お嬢さん、泣く必要なんてないよ。折角の可愛い顔が台無しだよ?」
「ふぇええっ!?つっ敦賀先生?」

どうして?私、先生に番号なんて教えてないのに?
そっか、天宮さんが…でもどうして?。
って言うか、どうして泣いてるってわかったの??

キョーコは周りをキョロキョロと見渡した。
突然の蓮からの電話にびっくりするあまり、キョーコの涙は引っ込んでいた。

「どうしてっどうして泣いてるって分かったんですか?」
「やっぱり。…声が鼻声だったからね。あ、別に君の部屋を覗き込んでるわけじゃないからね?勘違いしないでよ?」

クスクスと笑う蓮の声に、キョーコもつられて笑った。

「昔々、あるところに何事もソツなくこなし、割とモテて、人生なんて楽勝だって世間を舐めきった男がいました」
「へ?先生?」

何の前触れもなく、蓮は昔話調の語り口で話をはじめた。

「ある日、男の常日頃の態度に業を煮やした母親は男に説教をしようと、実家に男を呼びつけました。男も渋々と実家にやってきました」

先生、何の話をしているの?おとぎ話?それとも何かの作り話?

キョーコの困惑を無視して、蓮は話を続ける。

「男の両耳を引っ張り上げながら、母親は男に言いました。真剣になったことの無い人間を、誰が真剣に心配したり、真剣に愛してくれると思うのか。
お前の人生は薄っぺらい、吹けば飛ぶような軽いものなのだ。このハート・チンチクリンめ」
「プっ」

ハート・チンチクリンって何よ?

「母親の言葉によって、男は自分が本当は何者でもない、空っぽの人間だと言う事を悟ったのです。そして母親の堰を切ったような、とても最上さんには聞かせられないような暴言の数々に打ちのめされて、男は膝をついて項垂れました。もちろん家族は、そんな男の様子にはお構いなしです」

でも、その男のお母さんは、息子の事を思ってお説教をしただけで、反省をさせたかったんでしょ?
…別に冷たいわけでも、無関心でもないはずだわ。私のお母さんと違って。

キョーコは自分でも気づぬうちに、ギュッと唇を噛みしめていた。


「どの位そうしていたでしょう。放心する男の耳に、自分を心配する鈴の音のような可愛らしい声が届きました。『どうしたんですか?具合が悪くなっちゃったんですか?』
驚いて見上げると、見知らぬ女の子が眉をひそめて自分を見下ろしています。困惑する男の額に、女の子は迷わずに自分の額をくっつけました」

あれ?何か私、天宮さんの家でそんなことをやったような記憶があるような無いような。
もしかして、先生はずっと自分の事を話していたの!?

「男に熱が無いことにホッと息をつきながら、気づかわしげに女の子は男を見ていました。男は自分を本気で心配する女の子に釘付けになりました。下心なく自分に近寄ってくる女の子に、男は今まで出会ったことなどありませんでした。男は女の子に心配してくれてありがとうと声をかけました。すると、女の子は男に笑いかけました。まるで花のような笑顔でした」


本当にあの時の笑顔は例えようもないくらい可愛くて、今思い出しても俺は柔らかい光に包まれた気持ちになるんだよ。
そしてその花を俺の手で大切に守りたい。自分の庭で咲かせ続けたいって思ってるんだ。

「男はその笑顔に一瞬で心を奪われてしまいました。 …ねぇ最上さん、窓のカーテンを開けて外を見てくれないかな?」
「はっはい」

困惑したように蓮の話をただ聞いていたキョーコは、蓮に言われるがまま部屋のカーテンを開けた。
何が見えるのだろうかと周りを見渡すと、ベランダの先に見える細い路地に停めた車の脇に立ち、スマホを耳にあてたままこちらの方向を見つめる長身の男が手を振っていた。

「せっ先生!?」
「うん。本当はあの時の最上さんのように、額をくっつけて熱が無い事を今すぐ確認したいんだけど、ご近所さんに最上さんが何を言われるか分からないって千織に言われてね。
俺が何か言われるのは全く気にしないんだけど、最上さんの事を言われるのは嫌だから、今日はここからで我慢するよ」

ご近所さんか…。
色んなことに配慮してくれる先生と天宮さんは、私なんかより本当に大人だなぁ。

「今日、アイツ…不破君に言われたことに、君が傷つく必要なんて一切ない。少し前の俺のような薄っぺらい人間の言葉に、君みたいな子が心から血を流す必要も理由も無いんだ」
「…はい」

キョーコが自分の言葉を理解してくれた様子に、蓮はホッと息をついた。

「それにね、どうせ真に受けるなら、君を真剣に好きだって言っている俺の言葉をちゃんと受け止めてよ?」
「なっ!先生!!」

何を言い出すのよっ!いきなりそこに話が飛ぶの!?

キョーコは真っ赤になって狼狽える。

「…少しでも心が軽くなったかな?離れ難いけど、ずっとここにいると不審者扱いされかねないから、そろそろ行くね。
でも、本当にまた体調が悪化したら、この番号に電話かけてよ?夜中でもいつでもいい。駆けつけるからね」

「えっ……… はい。ありがとうございます」

「うん。じゃあね。嫌な夢は全部、俺と千織で食べてしまうから。ゆっくり休むんだよ?」

蓮は通話を終了してキョーコに向かって手を振り、車に乗り込んだ。



私、先生に今、なんて言おうとしたの?どうしてそんな事を思ったりしたの?


『えっ?先生、もう行っちゃうの?』


勝手に口から飛び出しそうになった言葉に困惑しながら、キョーコは走り去る蓮の車を見送り続けた。



つづく。



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