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   黒猫の希い 10   


1か月以上放置の黒猫話です。今年は拙宅、黒猫話メインで続く予定だったのですが、
全く気配ないまま2月に入ってしまいました。
そんなこんなで今日は2月2日。ニャーニャーの日って事で黒猫話です。



「蓮、飯どうする?次の現場入りまで1時間以上あるからどこか入って食べていくか?」

蓮は車を走らせながらチラリと時計で時間を確認する。

ここからなら10分足らずで病院に着くな…

「すみません、社さん。ちょっと寄りたいところがあるんですが、付き合ってもらえますか?」
「いいけど…もしかしてお前が通ってる『キョーコちゃん』の所か?」
「ええ。今日はこの後ドラマ撮りでてっぺん超えそうじゃないですか。だから今のうちに会いに行きたいんです」
「分かったよ。今日こそ俺にも『キョーコちゃん』に会わせてくれるんだろうな?楽しみだなぁ~。蓮が通い続ける女の子。紫の上って感じ?」
「そんなんじゃないですよ」



黒猫の希い 10



「さぁ、キョーコちゃん、今日からお食事ができるわよ。良かったわね」

部屋に入ってきた看護師の大原が、起きている間、飽きもせず1日中コーンを眺めているキョーコに語りかけ、食事の乗ったトレーをテーブルの上に置いた。

ちらりとトレーに視線を向けた後、キョーコはすぐにコーンに視線を戻した。

「愛理ちゃん、キョーコ、それいらないよ?」
「だめよ、キョーコちゃん。いくら点滴で栄養が摂れてるからって、食べなきゃ体力がつかないわ。少しずつでいいから食べましょう?」

食事…そっか、エネルギー補給の事ね。今まで食事なんて必要無かったけど、人間は食べないと死んじゃうんだ。
ショーはよくプリンとか食べてたけど、本当は必要ないモノなのよね。

死神はその死神たる所以の、背中の黒い翼が大気から栄養補給をしていた。そのため「食べる」行為を必要としない。
食事はいわば嗜好品を口にする程度の位置づけだった。


そういえば私、随分と食べてないわ。最後に食べたのは…

「ほら、キョーコちゃん。難しい顔をしていないで食べましょう!」
「あっ…うん」

トレーに乗ったお椀の蓋を開けて、キョーコは驚いた。

「なにこれ!」
「お粥よ?ほら、ずっと何も食べてなかったでしょ?いきなり普通食だと体が受け付けないのよ。少しずつ慣らして行こうね?」

お椀にあるのは、お粥よりもっと薄い重湯だった。
それをキョーコはスプーンで掬い、恐る恐る喉に流し込んだ。

ゴクン

「…ごちそうさまでした」
「あっこら、ちゃんと食べなさい」
「だって愛理ちゃん、これ変な味がするよ?口がむーってなる」
「あら、キョーコちゃんは梅が嫌いだった?今日は梅が利いてる重湯なのよねぇ。キョーコちゃん、頑張って食べましょう。ね?」

そう言えば、コーンもお母さんのご飯を食べると気絶するって溜め息をついてたなぁ…
そんな思いをしてでもご飯を食べないと生きていけないなんて。

「人間て大変だね」
「ふふっ。そう、大変なのよ?だから食べましょうね」

大原は笑ってキョーコにスプーンを持たせた。人見知りをするキョーコを大原は気にかけ、何かと世話を焼いていた。
ただ1人の見舞客以外来ない、大けがを負った少女が心配でならなかった。


「でも、これはいらないや。ごめんね、愛理ちゃん食べて?」
「えぇっ!って布団に潜らないでちゃんと食べなさい!」

愛理が、被った布団からキョーコを引っぱり出そうとしているのを、蓮は苦笑しながら病室の入り口から眺めていた。

「大原さん、どうしたの?キョーコちゃんは何をそんなに嫌がっているの?」
「あっ、蓮!」

キョーコはすんなりと布団から起き上がり、予期せぬ訪問者に笑顔を向けた。


「うん。仕事の移動中に寄ったんだ。今日は夜来られそうもないから、今のうちに会いに来たよ」
「そうなんだ、ありがとう。蓮は忙しいんだね?」
「ありがたいことにね。それより何を大騒ぎしてたの?廊下にまで大原さんの怒った声が聞こえてきたよ?」
「えっ!ちっ違うんです。キョーコちゃんがご飯を食べてくれないから…もう、キョーコちゃんのせいで私が鬼だって評判になったらどうしてくれるの?」

愛理は真っ赤になってキョーコをジトリと見つめた。

「だって…」
「キョーコちゃん、きちんとご飯は食べよう?食べて早く元気になってよ」

キョーコは口をへの字に曲げて、笑ってご飯を食べるように諭す蓮を上目遣いに見つめた。

「じゃあ、蓮は何食べたの?」
「うっ…今から食べるよ。社さん…俺のマネージャーが今調達してるよ」

きっとコンビニのおにぎりだろうけどね。

それにしても、いつも食事を疎かにして怒られている俺が食事しろって言う立場になるとはなぁ。

蓮は苦笑し、それならばと話しかける。

「キョーコちゃん、病院食が嫌なら何が食べたいの?」
「食べたいもの? …牛乳と缶詰!缶はね、猫の絵なの。パカンって開けるやつ!」

キョーコは目をキラキラとさせて答えた。
その様子に蓮と大原は目を見開いてキョーコを見つめた。

「えぇっ!?即答がそれ?君は一体どんな食生活を送ってきたんだ!」
「…」
「あっごめん!ごめんキョーコちゃん、お願いだから泣かないで」

…だってコーンが私に食べさせてくれてたものなのよ?思い出の味なのよ?

ジワリと涙で潤んだ目で、キョーコは上目遣いに蓮を見つめた。

「…駄目?」
「うっ…ダメじゃない。全然ダメじゃないけど …分かったよ。明日持ってくるから、今日はこれを食べよう?じゃないと大原さんが泣いちゃうよ?」
「えぇ!愛理ちゃん、泣いちゃうの?」
「ふふ。そうね。キョーコちゃんが食べてくれなかったら、悲しくて泣いちゃうわ」
「食べます!だから泣かないで!!」

キョーコはあたふたとスプーンを握り締めて梅味の重湯を口に流し込んだ。
眉を下げて目をギュッとつむり嫌々、それでも愛理の為にとキョーコは必死に飲み込む。

「敦賀さんがいれば残さずに食べてくれそうね。じゃキョーコちゃん、また後でね」

愛理はクスクスと笑いながら病室を出て行った。


「蓮、昼飯買って来たぞ。どうする、車で食べるか?」

愛理と入れ替わるように、コンビニ袋を提げた社がキョーコの病室へと入ってきた。
涙目で重湯と格闘するキョーコと、その様子を優しい眼差しで見守る蓮は、社の存在に気が付かない。

なんだよ蓮、春の日差しのような眼差しを向けちゃって。
…この子が蓮が助けたっていう『キョーコちゃん』か。こんな子を瀕死の状態に陥れる奴が世の中にいるのか…。

社は暗澹とした気持ちをため息と一緒に吐き出し、よし!と気合を入れて蓮に声をかけた。

「蓮、昼飯おにぎりで良かったか?」
「ええ、社さん。ありがとうございます。キョーコちゃん、ここでお昼一緒に食べてもいい?」

キョーコはお椀を両手で持ったまま、社をじーっと見つめる。

すごいクリクリの目をしてて可愛いなぁ。でも俺の事を不審そうに見てるというか、もしかして…俺に怯えてる?

「蓮、キョーコちゃんに俺のことを紹介してくれよ」
「あぁ、すみません社さん。気が回らなくて」

社の困った顔に、キョーコのことで頭がいっぱいだった自分に蓮は苦笑した。

「キョーコちゃん、この人が俺のマネージャーの社さんだよ。大丈夫、凄くいい人だから。俺のお兄ちゃんみたいな人だよ?」
「…蓮のお兄ちゃん?」

ゆっくりと警戒を解いたキョーコは、首を傾げて社を興味深そうに見つめた。
そんな様子に社も笑顔で対応する。

「初めまして、キョーコちゃん。蓮のお兄ちゃんの社だよ」
「…こんにちは。社さんもキョーコと一緒にご飯、食べてくれるの?」
「うん。お邪魔するね?」

そうよね。1人じゃ辛くても、皆でなら乗り越えられる事ってあるわよね。一緒に辛い食事をしてくれるなんて、蓮の言うとおり社さんはいい人なんだわ。

「社さん、一緒に頑張ろうね!」
「う、うん?」

頑張る?あぁ、蓮がちゃんと食事を摂るのを監視しようって事かな。
それにしても可愛いなぁ。いつも自信満々の雌豹たちの獲物にされてるから、こういう反応ってホッとするっていうか癒されるって言うか。
これは蓮じゃなくても構いたくなるよ。

チラリと蓮を見れば、春の日差しどころか蕩けるような笑顔でキョーコを見つめている。
社は驚いて蓮の顔に釘付けとなった。

蓮?お前、もしかしてキョーコちゃんの事…

「社さん、どうかしました?」
「むふーっ!何でもないよ」

一瞬驚いた社だったが、すぐにニコニコと笑いながら、キョーコのベッド脇に蓮が並べたパイプ椅子に座って、昼食として買ってきたおにぎりを食べ始めた。



続く



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