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   黒猫の希い 12   


こんにちは。ナーです。
皆さんは一生、1種類の果物しか食べちゃ駄目と言われたら何を選びますか?
ナーはバナナ。(即答)でもバナナは主食だから却下と言われました。えーっ!
バナナ以外…。桃か苺かメロン…悩む―。



コンコン

軽くドアをノックして、蓮は消灯時間を過ぎたキョーコの病室に入った。

薄暗い病室で、キョーコは月明かりに碧の石(コーン)をかざしたまま緊張した面持ちで入り口に顔を向けていた。
蓮が壁にあるスイッチを押して無機質な蛍光灯の明かりをつけると、固まっていたキョーコの表情がみるみる緩んでいく。

「蓮!!」
「うん。キョーコちゃん、今晩は。遅くなってごめんね」
「ううん。来てくれてありがとう」

石をテーブルに置いて、ニコニコとベッドの上から自分を迎えるキョーコに、蓮も笑顔で話しかけた。

「キョーコちゃん、ご飯、ちゃんと食べてないんだって?」
「えぇっ!? たたたた食べましたよ?」
「目が高速で泳いでるよ」
「…ごめんなさい」

蓮はキョーコのしゅんと反省する様子に笑いをこらえた。

「今日は何を食べたの?」
「牛乳とパン………に付いてたいちごのジャム」

じっとキョーコを見つめる蓮の眼差しに、キョーコは早々に降参した。

牛乳とジャムだけ!?大原さんが気を揉んでいるのも頷けるな。
そんなじゃ、いつになっても点滴が外れないよ。

キョーコの腕に繋がれている点滴の管をチラリと見て、蓮は顔を顰めた。

「キョーコちゃんがきちんとご飯を食べるって約束をしてくれるなら、缶詰をご飯の後に食べてもいいか黒崎先生に聞いてみるけど…どうする?」
「えぇっ!?ご飯の後って、カンカンがご飯じゃないの!?」

キョーコはびっくりしたように蓮を見つめる。

「うん。ご飯じゃないんだよ」

蓮はキョーコのベッド脇に歩み寄り、袋から缶詰を取り出してキョーコに渡した。

「あれ…。コレ、キョーコの知ってる猫じゃない」
「キョーコちゃん…」


俺の事、嘘つきって言う?それともこんなモノは要らない?


ジッと缶詰を見つめたまま、キョーコは蓮についっと手を差し出した。

「え?何?」
「その袋にもっとあるんでしょ?全部見せてよ」

蓮はキョーコに促されるまま、1つずつ袋から取り出してはキョーコに手渡した。

手渡した缶詰の側面を覆うラベルには、白猫や茶色の猫、茶トラなど様々な手書きの、かろうじて猫だと分かる酷くいびつな猫が描かれた紙が巻かれ、テープで止められていた。

猫の絵の下からは、ミカンやパイン、マスカットといった果物の文字と絵が透けて見えた。


「ねぇ蓮、これって…」
「猫の絵の缶詰だよ?」
「…」

やっぱり駄目か。
でもどんなにキョーコちゃんが望んだって猫缶なんてもの、絶対に食べさせたりなんかしない。


蓮が1つずつ手渡した缶詰を抱きかかえたまま、キョーコは更に手を差し出した。

「ごめん、もう無いんだ。でも、もっと欲しかったらまた持っ……キョーコちゃん?」

キョーコは蓮の腕を掴んで自分の方へとグイッと引き寄せて、そのまま頭をすりすりと擦り付けた。

その仕草に蓮は驚いて固まり、キョーコにされるがまま、腕を差し出し続けた。

「キョーコちゃん…」
「全部、蓮が描いてくれたの?」
「うん。ヘタクソでごめんね。こっちの茶色の猫は社さんが描いたよ。それに色は琴南さんって子が塗ってくれたんだ」
「…ありがとう」

キョーコはもう一方の手で缶詰をギュッと握り締めていた。

蓮は恐る恐るもう一方の手でキョーコの頭を撫でた。
柔らかい茶色の髪の感触に蓮の心はとくん、と大きく弾んだ。

「お気に召していただけましたか?」
「うん。ありがとう」

キョーコは顔を上げて笑顔で蓮を見つめた。

「じゃあ、今日はどれを食べる?」
「黒猫のカンカンがいい」
「クスッ。キョーコちゃん即答だね。でもお嬢さん、なかなかお目が高いですよ?黒猫の缶の中身は桃だよ」

蓮は白桃の缶詰をパカリと開けた。

「じゃあ、2人で食べようよ。キョーコ、桃缶って食べるのはじめて!」
「初めて、か… よし、食べよう。甘くて美味しいと思うよ?」

キョーコは興味津々、最初に匂いを嗅いで、それから恐る恐る一口齧ると、その口元からは笑顔がこぼれた。
その笑顔に蓮もほっとした様子で桃を口にした。


コーンが食べさせてくれた缶詰とは全然違うけど、これはとっても美味しい。
甘くって、でもショーの大好物とは全然違う味がする。私、こっちの方が好きだなぁ。


「ねぇ、キョーコちゃん」
「なに?」
「キョーコちゃんにはまだまだたくさんの『初めて』があると思うけど、焦らずに少しずつ経験していけばいいからね?」
「たくさんの初めてかぁ…。それがこの桃みたいに甘くって、もう一度って思えるものだといいな」
「うん…そうだね」


初めて経験することが、驚くような事でもいい。

でも、どうか辛いものでありませんように。


蓮は嬉しそうに桃を食べるキョーコを見つめながら、そっと願った。



続く



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