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   黒猫の希い 13   


黒猫話です。
日本のフルーツ缶にバナナやスイカ、イチゴは無いそうです。理由は缶詰にすると美味しく無くなるからだそうです。
缶に詰めた後、加熱殺菌するらしいんですが、糖度が低いと長時間加熱が必要って昨日、ナーの大好きテレ東でやってました。
ナーは桃缶がナンバーワンです。



「スクラップノートねぇ…」

黒崎はキョーコのベッドに備え付けられたテーブルの上に置かれていたノートを何気なく手にした。
深夜、すやすやと寝息をたてるキョーコの顔をちらりと見て、黒崎は穏やかに笑ってからノートを開いた。

途端、黒崎の顔からは笑みが消えた。

「なんだ、これ… どういう事だ?」

穏やかに眠るキョーコを、黒崎は難しい顔で見つめ続けた。


黒猫の希い 13


「あれ大原ちゃん、楽しそうな顔してどうしたの?今日は普段の3割増しで美人さんになってるよ?」
「黒崎医院長、それはセクハラ発言です」
「美人だって褒めただけでセクハラかよっ!」

ワザとらしく大仰に驚く黒崎に愛理は笑った。

「どうせいつも怒ってばかりです。でも、今日は怒ってる場合じゃないんです。キョーコちゃんから可愛いおねだりがあったんですよ」
「おねだり?寿司が食べたいとか、ラーメンが食べたいとか言い出したか?それなら俺も涙流して喜ぶけどなぁ」
「それは無いですけど。でも、敦賀さんが置いて行った缶詰のお陰で、嫌々ながらも食事をしてくれてます。まぁ完食には程遠いですけどね」


「もう少し食べなさい」
「うぅ…ハイ」

飯塚婦長にチェックされながら、昼食のカレーを何とか口に運ぶキョーコを愛理は思い出した。
テーブルに置いた、いびつな灰色の猫の絵が貼られたフルーツミックスの缶詰をチラチラと見ながら、キョーコは食事をしていた。


クスリと思い出し笑いをする愛理を見て、黒崎も安心したように笑った。

「画伯のお手柄だなぁ。…それならもう高カロリー輸液を入れる必要も無いな。午後の分から抜いてくれ」
「はい!」

食事をしようとしないキョーコに、口からの食事が難しい患者の為の、栄養素を多く含む点滴が施されていた。
キョーコがきちんと食事を摂っているという話に黒崎の顔も柔和になった。

「で、キョーコちゃんに何をおねだりされたんだい?」
「ウフフ。キョーコちゃん、缶詰の猫のラベルを丁寧に剥がして、大事そうに貯めてるんです。それをスクラップノートに残したいからって、ノートをおねだりされちゃいました。ずっと眺めてる石以外にも興味を持ってくれたと思うと嬉しくって…
文房具屋さんに行って、いろんな色のペンも揃えちゃいました」

そう言って大原はパステルカラーのペンとノートを笑いながら黒崎に見せた。


その日の朝、検温の為にキョーコの病室を訪れた大原に、キョーコはモジモジと願い事を口にした。

「愛理ちゃん、お願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「あら、何かしら?」

キョーコは朝食後に食べようと握りしめていた、フルーツ缶の猫の絵を愛梨に見せながら答えた。

「蓮が描いてくれた缶詰の猫の絵を全部残したいの。これを貼りつけるノートとペンを用意してもらえたら嬉しいんだけど…」
「お安い御用よ!」


「ぉお。綺麗な色のペンだな。きっとキョーコちゃんも喜ぶだろうよ。あぁ、領収書は宝田さんに回すからちょうだいよ」
「いいんですー。コレは私からキョーコちゃんへのプレゼントなんです!」

笑顔で愛理はキョーコの病室へと向かった。


**


「キョーコちゃん、点滴もう1本ね。これで今日は終わりだからね。…あら4時!キョーコちゃん、テレビ見る?敦賀 蓮が出てるドラマの再放送やってるのよ!カッコいいわよねぇ敦賀 蓮。私、この間初めて生で見たけど、本当にカッコよくて見惚れちゃった~」

キョーコが首を傾げているうちに、看護師が部屋のテレビの電源を入れ、蓮が主演した刑事ドラマにチャンネルを合わせた。

「やっぱりカッコいいわぁー。これでも見て暇つぶししててね。じゃ、点滴が終わる頃また来るからね」

にこやかに看護師は部屋を出て行き、1人残されたキョーコは画面をじっと見入っていた。


本当に蓮がテレビに出てる。…でもすっごく険しい目をしてる。
いつも優しい目で私を見て頭を撫でてくれる人なのに、こんな顔するんだぁ。
蓮、俳優さんだったんだぁ。

そう言えば、コーンの迎えに行く直前…最後の仕事でお連れしたケンさんも俳優さんだったわ。
凄く優しくて、いい人だったなぁ。『お手間かけます』とか言われちゃって…


コンコン

キョーコが蓮のドラマに見入っていると、病室のドアがノックされた。

「はい」


病室に入ってきた人物に、キョーコは目を見開いて固まった。
ぴかぴかに磨かれた革靴をカツンと鳴らして病室に入ってきた人物は、真っ白いスーツに白い帽子、首からは紫色の大ぶりのストールを垂らしていた。

来訪者はキョーコの様子を観察するようにじっと見つめたあと、帽子を取って挨拶をした。

「はじめまして、キョーコ君」

声をかけられて我に返ったキョーコは、ビクリと体を震わせて布団を被った。


「…フム、これは随分と警戒されてるな。病院だから地味な服で来たが、それが間違いだったかな?」
「いや、それも十分派手だし。っつーか矢沢かよ。キョーコちゃんは初対面の人間には誰にでもああですよ」
「おぉ、黒崎先生」

黒崎の名前にキョーコはそっと布団から顔を出すと、黒崎と飯塚婦長がローリィと朗らかに挨拶を交わしていた。

「先生!」
「調子はどうだ?気分が良いなら、少しは外に出てもいいぞ?」
「ほんと?」

キョーコは大きな目を更に見開いて黒崎に尋ねた。

「ああ。ご飯をちゃんと食べてるご褒美だ。婦長さんに散歩に出してもらえ」

嬉しそうににっこりと笑うキョーコに、普段の毒気も抜かれて黒崎はやさしく微笑み返す。

「宝田社長、すみませんね。お忙しいところをわざわざお越しいただいて」
「いや、黒崎先生には無理をお願いしてきましたし、こちらから伺うのは当然です。挨拶が遅くなり申し訳ない」

キョーコがジッと上目遣いで2人のやり取りを見つめていることに黒崎が気づいた。

「あぁ、キョーコちゃん。この人は敦賀さんの事務所の社長さん。怖がる必要は無い」
「…蓮の?」
「ローリィ・宝田だ。…うむ。随分と良くなっている様子だな。蓮から瀕死と連絡を受けた時はどうなるかと思ったが…元気になって何よりだ」
「若いから回復も早い。順調ですよ」

死神の翼があれば、こんな怪我なんて1日もあれば塞がるのにね…

キョーコは少し寂しそうに微笑んだ。


「キョーコちゃん!」
「あっ蓮!」

仕事を終えた蓮が、勢いよくキョーコの病室に入ってきた。キョーコ以外の人間がいることに気付いて蓮の満面の笑みが凍る。

「しゃ社長…」

そんな蓮の様子に気づかず、キョーコは上機嫌に話しかけた。

「蓮、今日お散歩に出て良いって!一緒に行ってくれる?」
「あぁ悪い、キョーコちゃん。ちょっと敦賀さんを貸してくれ。話があるんだ。すぐに追いかけるから先に飯塚婦長と散歩に行ってな?」
「…はい」

しゅんと項垂れたキョーコの頭を蓮は撫でる。

「大丈夫、すぐに行くから。ね?」
「…ほんとに?」
「本当に。10分で行くよ」

眉を下げて心配そうに見つめるキョーコに、大丈夫だと諭すように蓮は優しく話しかけた。

少し溜めてからコクンと頷くキョーコの様子にホッと息をついた後、黒崎は伴っていた飯塚婦長に目配せを送り、キョーコを託した。

「さぁ、キョーコちゃん。敦賀さんが来るまで私と一緒にお散歩しましょう。花壇にチューリップが咲いてるわよ?」
「ほんと?」

車椅子に乗せられ、嬉しそうに飯塚と話しながら外へと出て行くキョーコを見送った後、黒崎は棚に立て掛けられていたキョーコのノートを手に取った。

「…10分で終わる話なのかね?」
「終わるかもしれないし、終わらないかもしれませんね」

ジッと見据えるローリィの視線を躱して黒崎は2人を病室の外に促した。


「さ、どうぞお掛け下さい」

黒崎は蓮とローリィを病棟の奥にあるミーティング室に招き入れて自身も椅子に座ると、早々に本題を切り出した。

「キョーコちゃんの今後についてです。病院側でも警察で家出失踪人の照会を行いましたが、該当するような届け出は…
正直ありすぎて分かりません。ですが、彼女の怪我は…父親からの虐待による可能性が非常に高い」
「虐待だなんて生易しい物じゃないでしょう!!瀕死の重体だったんですよ!?」
「…蓮、落ち着け」

怒りを露わにする蓮を窘めた後、ローリィは聞きたくも無いとばかりに葉巻の紫煙をフーッと盛大に吐き出した。

「…そんな子の身元が分かったところで彼女が幸せになるとは思えない。父親に罰を下すことはできるだろうが、彼女の傷は癒えないし、そんな場所になど戻してやりたくはない。退院後は然るべき施設に入所できるよう手続きをしようと考えています」
「施設…ですか」

驚いた蓮が会話に割って入る。

「おう。身元は彼女が頑なに口を割らねぇ。この後帰るところも無いくせに、どうするつもりなんだと聞いてみれば、人探しをするとよ」
「人探し?」

蓮は表情を硬くして考え込んだ。

一体誰を探そうと言うんだ?その人物は頼りになるのか?そいつに託せばキョーコちゃんは幸せになれるのか?

…… 俺の手でなくても?

蓮の胸はキリリと痛んだが、そんな蓮の様子に構わず黒崎は話を続ける。


「身内では無いらしいが、クオンなんたらって奴を探すって言ってたぞ?」



続く



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