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   黒猫の希い 14   


こんにちは。ナーでございます。
引き続き黒猫です。やっとキョーコちゃんの退院が見えてまいりました。



コーン、元気?キョーコは元気だよ。まだ少し背中は痛いけど、段々と良くなってるよ。
それに今、いつもいる部屋じゃなくて外に出られたの。やっぱり太陽の光の下で見るコーンの色はとっても綺麗よ。
太陽の下で見られたなんて…ふふっ。何年振りかな?

コーン、貴方の瞳が曇ることなく、この石のように輝いている事を願っているわ。


黒猫の希い 14


ガタンッ

蓮とローリィは揃って勢いよく椅子から立ち上がった。


「れっ蓮!!お前、まさかっ」
「クオンを、久遠を探すと彼女が言ったんですか!?」

ローリィは蓮を見つめ、蓮は黒崎を見つめ、黒崎はそんな2人をびっくりした様子で交互に見つめた。

「2人とも落ち着けよ。……とにかく座ってくれ」

蓮は黒崎を見つめたまま椅子に腰を下ろしたが、その眼はそんな事よりも早く続きを話せと促している。
その様子をローリィも冷静に見守りながら椅子に座り直した。

黒崎はフーッと大きく息をついた後、話を続けた。

「…キョーコちゃん、クオンて奴がどうしてるか心配なんだって笑いながら教えてくれたよ。最後に会ってから随分経ってるらしいが、それでも会いたいそうだ。今はどこに居るのか分からないけれど、それでも絶対に探し出すってよ。…まったく、人の心配をしてる状況なんかじゃないのによ」

話の最後、黒崎は顰め面を作って蓮に教えた。

「クオンを…」

一言つぶやいて黙り込んだ蓮を、黒崎は不審そうに見つめた。

「敦賀さん。あんた、そのクオンとか言う奴と知り合いなのか?」
「……いえ…はい…」

蓮は曖昧に言葉を濁し、机の上で組んだ両手を見つめて黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「社長、キョーコちゃんは俺が引き取ります」
「……お前なんつった?」
「おいおい!お前正気かよ?ちっとは考えろよ」

ローリィは蓮をじっと見据え、黒崎は驚いて蓮を見つめる。

「彼女は久遠の知り合いなんです。それに彼女のことを俺は…俺が守りたいんです。お願いします」

蓮の覚悟を決めた真剣な眼差しを受け止め、しばらくの間睨み合った後、ローリィは目を瞑り背を椅子に預けた。

「社長!どうかお願いします!!」

蓮は深々とローリィに頭を下げ、キョーコを引き取らせてほしいと懇願し続けた。

「ちょっと待て。最善の策を今考えているところだ」

ローリィと蓮との間のぴんと張りつめた空気を感じながら、黒崎は2人に話しかけた。

「ちょっとこれを見てもらえますか?」

蓮とローリィが黒崎に向き直ると、机の端に置いていたノートを黒崎はつっと2人に差し出した。

「これ、さっき先生がキョーコちゃんの部屋から持ち出したノートですよね?」
「まだ始めたばっかりのスクラップノートだ。キョーコちゃんが看護師の大原に頼んでノートを用意してもらったそうだ」

スクラップノート?…一体何をスクラップしていると言うんだ?

不思議に思いながら表紙をめくり、蓮は目を見開いた。

「キョーコちゃん…」

ノートには、病院食をきちんと食べたという1行と、そのご褒美の缶詰の果物の絵と共に、美味しかったといった文字がカラフルに踊っていた。
そしてその絵の横には、缶詰の側面を覆っていたラベルである、蓮が描いた不恰好な猫のイラストが貼り付けられていた。

俺のへたくそな絵を、こんなに大事に扱ってくれてるなんて…。

じわじわと胸の奥底からこみ上げてくる想いに戸惑いながら、蓮はカラフルなノートを読み進めていく。

そんなノートに書かれた文字に、無意識のうちに浮かんでいた蓮の笑みが固まった。

「これ…何ですか?」
「…やっぱり普通は分かんないよなぁ」
「え?」

不思議そうに顔を上げれば、黒崎は眉間を寄せて難しい顔をしたまま腕を組んでいた。

「タイ語だな」
「え?タイ語…ですか?」

驚いて横に座るローリィを見れば、黒崎と同じく、硬い表情でキョーコのノートに目を落としていた。

「それだけじゃない。こっちはギリシャ語、なんだアラビア語まであるじゃねぇか。…ん?こっちの青いペンで書かれた言葉は俺も分からねぇな」
「それでもやっぱ宝田さんはすげぇな。俺は英語とドイツ語で精一杯だったのに…」

黒崎は苦笑しながら煙草に火をつけた。

まだ書かれて間もない2ページ、2日分のノートには、おびただしい数の言語が隙間なく躍っている。
単語ごと、1節ごとに違う言語を組み合わせている箇所さえあった。

「これだけの言語を操れるんだ。相当の教育を受けているんだろう。それなのに …一体どういう親だったんだろうなぁ」
「フム…」
「…それよりここ、ここには何て書かれてるんですか?」

苛ついたように蓮が指をトンと突いて差した部分には、赤いペンで大きくハートが描かれた中に、蓮の知らない記号のような文字が躍っていた。

「あぁ、それはゾンカ語。ブータンの国語だ。ブータン、お前知ってるか?いい所だぞー」
「それより早く訳してください」
「分かったよ。全く、お前はせっかちさんだなぁ…」


興味深そうに文字を見つめていたローリィの顔から好奇心が徐々に消え、最後は微笑みとなった。


「キョーコ君が退院したら、まずは俺の家で引き取ろう」
「え?…いえ、俺が引き取ります」

いきなりの事に戸惑う蓮に、まあ聞け、と目配せをしてローリィは話を続けた。

「黒崎先生に聞いた話じゃ、キョーコ君は食事を嫌がるそうじゃないか。お前だって食事をカロリーなんちゃらや、なんとかインゼリーで済ますような男だ。そんな2人が一緒に生活してみろ。あっという間に2人して餓死だ。そうだな…キョーコ君が元気になって、お前の家の事を一切合切できるようになったら、ハウスキーパーでも付き人という形ででも、お前が引き取ればいい」

勿論、キョーコが自発的に食事をきちんと摂るようになる事が最低条件だとローリィは付け加えた。

「社長…」
「何より退院直後じゃあ、彼女の身の回りの世話が必要だ。家にいる時間などほとんどないお前に出来る訳が無いだろう。キョーコ君の為にも俺の家で静養した方がいい」

それよりも、とローリィはキョーコの書いたハート部分を読み上げた。


はじめて食べた桃は甘くてとっても美味しかったです。
私の為に猫の絵まで描いてくれて蓮、ありがとう。蓮はとっても優しくって、まるでコーンのようです。
コーンと蓮、どっちも大好きです。
あと、猫の絵を蓮と一緒に描いてくれた社さんと、琴南さんも大好きです(会ったことないけど)。


「…世話係、できる限りラブミー部にご用命を貰えませんか?」
「そうだな。琴南君にも聞いてみよう」


蓮は無表情のまま、読めないハートの中の文字を見つめ続けた。



続く



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