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   コングラッチェ 15   


今日から3月、そろそろ卒業式シーズンですね。
進路の決まった子たちでしょうか。平日の通勤電車に千葉ネズミーランドへと向かう学生さんが増えました。
楽しそうでいいなぁと思う一方、電車の乗車率アップへの貢献は勘弁してくだしゃいと思っちゃう駄目人間です。



「社先生、おはようございます」
「…おはよう。蓮、お前が飯を機嫌よく食べる日が来ようとはなぁ。しかも職員室で」
「ええ。昨日は雑務があったので準備室で食べながら仕事をしてたんですが、今日はこっちで」
「いや、そういう話をしてるんじゃないんだけどさ…。ま、いっか」
「そりゃ機嫌よく食べますよ。なんせ彼女の手作りですよ?」
「全く…。名前を出せないのを良い事に『彼女』なんて言いやがって。まだ付き合ってもいないくせに」
「ん?社先生、何か言いました?」
「いーえー。何も言ってませーん!」


キョーコは蓮と千織のお弁当を作りを3日前から続けていた。

「それじゃあ、数学準備室にお届けしますね」
「駄目よ!誰かに見られでもしたらどうするのよっ。キョーコさんの命は無いわよ!?」

キョーコさん、本当に何も考えてないの?まさか、お兄ちゃんが女子生徒から獲物の如く狙われている事に気づいてないんじゃない?
そうよ、この子はほんの少し前まで盲目的にショーちゃん・ラブだったんだ。あのバカしか目に入って無かったのよ。
…ちょっとこれ、お兄ちゃんとの関係を周りに察知されでもしたら本当に危険なんじゃない?ついこの間まで『ショーちゃんショーちゃん』言ってた癖に、手のひらを返したようにお兄ちゃんと仲良くしてるなんて噂が広まったら…。
キョーコさん、校庭に埋められるわね。間違いなく。

そんなキョトンとした顔してても駄目よ。嫉妬に狂った女の怖さは尋常じゃないんだから。私だって妹と分かってる筈なのに、お兄ちゃんの元カノから色んな嫌がらせを受けたんだから。…ふふっ。勿論倍返しじゃ済まさなかったけどね。
どうしよう。そうなる前に一番厄介そうな西園寺さんあたり、1回ヤッといた方がいいかしら…

「こら千織。今絶対に危ない事を考えただろう?危険な顔つきになってるぞ?」
「うるさい。もとはと言えばお兄ちゃんがアホだからいけないのよ。もっとうまく立ち回ってくれれば私がこんな苦労なんてしなくて済むのに!!」
「上手く立ち回れか…。それじゃあ、学校に向かう前に最上さんの家に寄るよ。そこでお弁当を受け取れば問題ないだろう?」
「へ?」
「本当は最上さんごと学校まで車に乗せて行きたいところだけど、『破廉恥教師』のレッテルを貼られて学校をクビになりそうだし、飯塚教頭のお説教も千織の激怒も怖いしね」
「そんなっ。それじゃあ毎朝先生が大変です。私、ちゃんと誰にも見つからないようにお届けしますから」

押し問答の末、結局、毎朝蓮がキョーコの家に寄ってお弁当を受け取ることになった。


**


「最上さん、おはよう」
「おはようございます。わざわざお弁当を取りに寄って下さってありがとうございます。こんな寄り道なんてしなければ、もっと家でゆっくりされてる筈なのに…」
「そんな事気にしないで。俺の為に弁当を作ってもらってるんだ。これくらいなんでも無いよ。それに毎朝最上さんの笑顔も見られるなんて、朝が待ち遠しい位だよ」

蓮の本音がダダ漏れた甘い言葉に、キョーコはアパートの玄関先で顔を真っ赤にして俯いた。

朝から何て心臓に悪いの。こんなの先生にとって社交辞令よ。キョーコ、本気で受け止めちゃ駄目よ!?
ショーちゃんにお弁当を作ってあげてた時なんて、私が口を開くより先に『サンキュー』の一言でお弁当をひょいっと持って行かれてたから、先生にこんな風に言ってもらえると、なんか全身がむずむずすると言うか身の置き場が無いと言いますか…。そう、言われ慣れてないのよ!

俯いて髪から覗く耳まで赤くしているキョーコを、蓮は神々スマイルで見つめていた。

「本当はもっと話していたいけど、そろそろ最上さんも駅に向かわないと遅刻をしてしまう。そうだ、駅までだけでも乗って行かない?」
「いえ、結構です」

そんなにきっぱりと断られると少しヘコむなぁ。

「それよりお弁当と一緒におむすびを入れてありますから、朝ご飯として食べてくださいね」
「え?」

慌てて渡された袋の中を覗くと、お弁当箱の上にラップで包まれたおむすびが1つ乗っていた。

「え…これ…だって…お昼ご飯のお弁当…」

朝ご飯にと、おむすびまで用意されていたことに蓮の思考が追い付かない。

「ご迷惑かとも思いましたが、先生は朝はコーヒーだけだって天宮さんから聞きました。空腹の状態でコーヒーを飲むなんて胃に良くないですし、何より食生活を改善したいなら朝ご飯をきちんと食べるべきです。本当はきちんと一汁三菜召し上がって欲しいところなんですよ?だからせめてこれくらいは食べてください」

最後は家庭科の教師のように、バランス良い食事の重要性について腕を組んで真剣に語りだしたキョーコを、蓮はじっと見つめていた。

蓮の脳内では、エプロンをしたキョーコが鼻歌混じりにおむすびを握り、握り終えたおむすびを皿に置いた後、ご飯粒のついた指先をキョーコはそのまま口に運んでいた。

どうしよう。今すぐ抱きしめたい。俺の為に朝飯まで作ってくれるなんて…。

「最上さ「ギャーッ本当に遅刻しちゃう!!じゃ、先生。ちゃんと食べてくださいね!!」」

蓮がキョーコへの溢れる想いを再確認している間に、スマホで時間を確認したキョーコはペコリと頭を下げ、慌てて駅の方へと駆けて行った。

「長期戦、上等だよ」

蓮はクスリと笑った後、受け取ったお弁当の入った袋を大事そうに助手席に乗せた。


**


「で、今日はサンドイッチロールなんだ?本当にうまそうだなぁ。蓮君、1個ちょうだいよ」
「駄目です」

ラップにくるまれたハムとチーズが巻かれたサンドイッチに手を伸ばそうとした社の手の甲を、蓮はペシリと叩いた。

「イテッ」
「俺の朝飯に手を出そうとするからです。そんな輩、例え社先生であろうと容赦しませんよ?」

モグモグとツナが巻かれたサンドイッチを食べながらコーヒーを飲む様子を、社は可笑しそうに眺めていた。

「まぁいいけどさー。どうせ暫くの間、そんなお前を見る事も無いだろうし?」

社の声にピタリと蓮の動きが止まる。

「だって今日、終業式じゃん。終業式が終わったら学生諸君は春休みですよ。2週間くらいはもが…彼女とも会えないし、彼女が弁当を作ってくれることも無いだろ?だって自分の弁当のついでにお前の分も作ってるわけだしさ?」
「弁当はどうでもいいんです…いや、勿論嬉しいです。本当に今も至福を噛みしめてます…じゃなくて、2週間も彼女に会えないという事実の方が俺には堪えます。社先生、どうにかならないですかね」
「こればっかりはどうにもならないんじゃないの?彼女にも都合があるだろうしさぁ。ほら、春休みだし家族で旅行に出るとか予定があるかもしれないよ?」

確か不破が最上さんの母親は海外だと言ってたな…。休みの間に会いに行く予定があるかもしれないな。それならそれで最上さんにとっても有意義な休みになるだろう。

「蓮君、何悟りきった顔つきで笑ってるの?お弁当を作ってもらえる間柄になって少し心に余裕が生まれちゃった?」
「そうですね…。2週間くらい俺、耐えてみせますよ」


**


「それじゃあキョーコさんとは同じクラスになりそうね?」
「ほんと?」

キョーコは千織の教室に来ていた。相変わらず朝ご飯として食べようとしていたチョコパ○を千織から取り上げて、代わりにおむすびを手渡した。

「これ…。」
「うん。中はツナだよ。今日はお昼前に学校が終わっちゃうから、天宮さんと私のお弁当は持って来てないの。だから代わりに朝ご飯を持って来たの」
「ありがとう…。でもまさかお兄ちゃんと同じものじゃないわよね?」
「大丈夫!天宮さんが色々と気を遣ってくれてるんですもの。私もそこまで馬鹿じゃないわ。せん…お兄さんにはツナサンドにしたよ」

ニコニコと笑うキョーコに千織はほっと息をついた。

「…クラスだけど、国公立理系なんてどうせ1クラスしか無い筈だもの」
「良かった!!穂奈美さん達は私立文系だって言うから、知り合いが全くいなくなるんじゃないかと思った」

3年次のクラスは志望校によって編成される。大きくは国公立理系と文系、私立理系と文系に分かれ、終業式後に廊下の壁に貼られることになっていた。

「それじゃあ、春休みに教科書とか一緒に買いに行こうよ」
「別にいいけど、キョーコさん休み中はずっと家にいるの?」
「うん。3月いっぱいって言うか、あと1週間はバイトを入れてるけど、4月からは受験もあるからバイトも辞めちゃうしね。予備校に通うつもりもないし、独学でどこまで出来るか分からないけど、受験一本に絞らないとね」
「私も頑張らなきゃ。…それはそうと、バイトって前から行ってるファミレス?」
「そう。朝から夜まで無理言ってシフトに入れてもらっちゃった。最後だもの。しっかり稼ぐわよ!」
「ふーん。じゃあ、お弁当もこれで食べ納めね。新学期になったらまたよろしくね?」
「勿論よ!それにこれからは一緒に教室で食べられるね!」

キョーコはチョコパ○を食べながらニコニコ笑った。


**


「え?アメリカ行かないの?」
「どうしてアメリカなんですか?それに私、パスポートなんて持ってませんよ?」

終業式の後、偶々生徒会室の前を通りかかった蓮が中から聞こえる音を不審に思いドアを開けると、キョーコが1人で資料を棚に戻していた。聞けば1人で掃除をしていたという。それならばと蓮もキョーコを手伝いながら話をしていた。

「いや、最上さんのお母さんはアメリカにいるって聞いたから、休みの間に会いに行くんだと思ったんだ。じゃあ、お母さんが日本に帰ってくるとか?」
「そうでしたか。行かないですし、母も帰ってきませんよ? うーん。汚れがなかなか落ちないなぁ」

外を向いて窓を拭きながらきっぱりと母親と会うことは無いと言い切るキョーコの声に、蓮は手に持っていた本を机に置いた。

「…それじゃあ最上さん、春休みはどうするの?」
「天宮さんにも聞かれましたが3月はバイト三昧で、4月からは受験勉強一本です。そうだ、先生は土日以外は学校に出勤されますよね?土日以外は今まで通りお弁当を作りますから、取りに寄ってくださいね?」
「え?」
「だって食生活の改善ですよ?休み中に元の食生活に戻るなんて駄目ですよ。きちんとサポートさせていただきますからご安心くださいね」
「でもそれじゃあ、最上さんの食べるお弁当のついでに作ってもらう筈なのに、最上さんの負担になってしまうだろう?」
「…やっぱりご迷惑ですよね。すみません。忘れてください。 …うーん落ちないなぁ」

もうショーちゃんの顔も見たくないから不破家でおばさんの手料理を食べることも無いだろうし、お母さんだって帰ってくるわけが無いし…。
春休みの間も先生や天宮さんに会えると思うと、1人じゃないって思えて楽しかったのになぁ。私ったらいつの間に依存体質になっちゃったのかしら。

「最上さん、窓の汚れはとっくに落ちてるよ」
「先生…」

いつの間にか蓮はキョーコの後ろから、そっとキョーコを包むように抱きしめていた。

…汚れは私の心だ。疎遠な…会えない母の事を聞かれて、お弁当は要らないって言われて卑屈になった私の汚い心が窓の汚れのように見えてたのよ。

「本当は2週間も最上さんの笑顔にも会えないし、美味しいお弁当も食べられないんだなって落ち込んでいたんだよ。最上さんのご厚意に甘えて、お弁当をお願いしてもいい?」
「っ…はい、喜んで!たこさんウィンナー、2つ入れておきますね?」
「うん。買い物も一緒に行こう」

拭いた窓越しに、一点の曇りもない澄み切った青空をキョーコは笑顔で見つめていた。



つづく。



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