HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  中編   »  [完]潮騒  »  潮騒 1

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   潮騒 1   


2話完の小話になるか、妄想が続くかまだ微妙な感じですが、妄想がポロリとこぼれてきました。
2015.07.19 続いたのでカテゴリを分けました。(4話完です。)


やっぱり誰もいない。そりゃそうよ、昼間だって誰もいなかったんだから。

「えへへ」

キョーコはコーンと再会したグアムのビーチへと1人やって来ていた。
ドラマ『BOX "R"』の撮影予定が入っているため、明日キョーコは蓮より一足先に日本へと帰る。

帰る前に、どうしてももう1度ここに来ておきたかったのよね。

日本でのヒール兄妹の生活と同様に、グアムでも同じ部屋で過ごしているカインが、まるで繭のようシーツに包まって眠りについた事をそっと確認して、キョーコは部屋からこっそり抜け出していた。

海の彼方先を見渡せば、その先は地平線と空の境目も曖昧に暗闇が広がっている。その狭間から押し寄せる波が奏でる潮騒は、こちらへおいでおいでと優しく手招きしているように聞こえた。

靴、濡れちゃうよね?流石に替えの靴は持って来てないし、脱いでおいた方が安全よね。

キョーコは脱いだフラットシューズを砂浜に置いて、ザザーンと小さな波が押し寄せては引いて行く波打ち際を、裸足になって歩いた。

「結局海には入れなかったけど、お仕事だし仕方ないわよね」
「こら。こんな夜中にベッドを抜け出して何をしてるの」
「うひゃっ!!」

急に後ろから声をかけられて、キョーコはびくりと肩をすくめた。恐る恐る後ろを振り向くと、そこには困った顔の蓮が腕組みをして立っていた。

敦賀さん!?
びっくりしたっ!心臓が家出するかと思ったわ。

「ッ…」

『敦賀さん』と言いかけて、キョーコは慌てて口元を両手で押さえた。

今私の前にいるのは兄さん?それとも敦賀さん?どっちなの?もう少し近寄らないと暗くて表情も分からないわ。
私はセツで返すべきなの!?

「全く…駄目じゃないか。真夜中に女の子が1人でこんな人気の無い所にやって来て。何かあったりしたらどうするの」
「敦賀さん…」

兄さんじゃなくて敦賀さんだ…。

キョーコの緊張が一気に解けた。

眠りに落ちかけた時に、隣のベッドで最上さんがもそもそと音を立てたのに気付いたんだ。足音を忍ばせてヒタヒタと歩いて行くのを、トイレかと思って眠りに意識を手放そうとしたら、パタンと部屋から出ていくんだから驚いて飛び起きたよ。
慌てて追いかけて本当によかった。

蓮は腕組みをしていた両手を腰にあてて、ゆっくりとキョーコに歩み寄る。

「こんな夜中に女の子が1人で出歩くなんて、まったく危機管理の欠片も無いじゃないか。『襲ってください』って言ってるのも同然だよ!」
「すみません…申し訳ございませんでした」

シュンと謝るキョーコの様子と、その無事な姿に蓮はほっと息をついて、お説教モードを解いた。

「どうしたの?眠れなかった?」
「いえ…そういう訳ではなくて…」

モジモジと居たたまれなそうに膝をすり合わせるキョーコの足元を見て蓮は笑った。

裸足か。最上さん、確か初めての海外だったんだよな。着いた初日に少しだけミス・ウッズ…テンさんの眼を掻い潜って散歩していたところに俺と…コーンと出会って、そのままお茶をしただけだしな。
あとはずっと雪花としてカインの世話をしていたんだ。

「そうだよね、綺麗な海だし泳ぎたかったよね。仕事とは言え、少しくらい羽を伸ばしてあげられたらよかったね。ごめんね?」
「そそそんな滅相もござません。ここがどこであろうと、私はお仕事で来てるんです。セッちゃんとして敦賀さん…カインのお世話を放り出してそんな不埒な真似が出来る訳がございません!」

最上さんらしいな。

青い顔でブンブンと首を振るキョーコに、蓮はクスリと笑って話を続けた。

「それじゃどうしたの?真夜中にベッドから抜け出して、こんなところまで歩いて来るなんて」
「えっえっと、その…」

ん?と話を促す蓮にキョーコは根負けした。

「どうしてもコーンにお別れをしておきたかったんです」
「え?」

仕事を、カインの世話をそっと抜け出してまでキョーコがどうしてもやりたかった事に、蓮は驚いた。

「私がグアムに到着した日、コーンに再開できたってご報告しましたよね。そこの岩場の先から、コーンが現れたんです。だから再会できたこの場所に、お別れを言いに来たんです」

妖精界に帰ってしまったから、もうここに居ないのは分かっているのだけど、と少し寂しそうにキョーコは付け加えた。

わざわざ俺に…コーンに挨拶に来てくれたんだ…。

蓮の心にまた1つ小さく恋の炎が灯る。

「そっか…。 また……すぐに再会できるよ。きっと、必ず」
「はい!!」

キョーコの満面の笑みに、蓮はコホンと1つ咳ばらいをした。

「えっと、そのワンピース、可愛いね」
「ふえぇっ!?」

キョーコは蓮に見て欲しくて持って来ていた、白いワンピースを着ていた。

久しぶりに会う敦賀さんに、少しでも可愛くおしゃれした私を見て欲しくて持って来たけど、結局気恥ずかしくて着られなくて、スーツケースの肥やしのまま持って帰るつもりだったんだけど…コーンにお別れの挨拶するために着て良かったな。

「ありがとうございます」

思いがけず蓮に誉められたキョーコは、頬をほんのりと赤らめてはにかんだ。

照れ隠しにキョーコは似合ってますか?とその場でくるくると回って見せた。
愛しい少女の愛くるしい姿に、よく似合ってるよと蓮は笑った。

「それはそうと、どうして裸足になってるの?」
「えっと…すみません。お仕事だなんて偉そうなことを言った癖に…。コーンにお別れするついでに、せめて波打ち際で海を堪能しておこうと思いまして。私、実は海って初めてなんです」
「え?」
「波の音って、凄く心地いいものなんですね」

キョーコが預けられていた不破家は、京都で指折りの格式ある老舗旅館だった。盆地特有のうだるような厳しい暑さの中とは言え、夏休み時期は多くの観光客で賑わう。当然、連日満室の宿泊客の対応に追われる大人たちがショータローやキョーコを海に連れて行ってやる余裕は無かった。
自分が他所様に預けられている身だという事を理解していたキョーコが、どこかに行きたい、海に行きたいなどと大人を困らせるような事を言えるわけも無く、旅館の裏手の、その先にあった河原での水遊びが、幼いキョーコには精一杯だった。

でも、だからこそあの場所でコーンに出会えたのよね。

幼い頃の、コーンと遊んだ宝物のような時間を思い出して微笑みながら、キョーコはパシャパシャと海水を少しだけ蹴り上げながら蓮の前を歩いて行く。


「最上さん」
「はい、何でしょう?」

キョーコが返事をしながら振り向いた瞬間

パシャリ

「はひやっ!」

蓮は手のひらですくった海水を、キョーコの鼻先にひよいっと放った。
びっくりしたキョーコが蓮を見ると、蓮はしてやったり顔で笑っている。

「上手いこと鼻にだけ命中したね」
「もう!敦賀さんやりましたね?」

パシャリ

「わっ」

今度はキョーコが蓮の顔に水をかけた。

「えへへ。お返しです!」
「やったな?」

クスクス笑いながら、今度は蓮が両手で一杯の水をすくう。

パシャッ

「にやっ!やりましたね?私の倍もある大きさの手でめいっぱいの水をかけるなんて、大人げないと思います。敦賀さんがその気なら…えいっ!」

バシャリッ

「わっ!!体全体にかかったよっ。最上さん、覚悟は良いかな?」
「むむ。望むところです」



波打ち際で戯れる男と女の10分後…



「うえぇ。しよっぱい…」

いつの間にかバシャバシャと本気で水を掛け合い続けた結果、2人は全身ずぶ濡れ状態になっていた。

「すごいビショビショになっちゃったじゃないでしかぁ」
「あはは。ほんとだね。髪から水が滴ってくるよ」

うー。髪もビショビショだし、服だって体に張り付いて気持ち悪いくらいに濡れてるわ。まさかこんな事になるなんて思いもしなかった。

「なんか私たち、まるで海から上がったみたいですね」

困った顔で自分のずぶ濡れ具合を確認しているキョーコを見て、蓮はピンとひらめいた。

「……これならもういいんじゃない?」
「へ?何がですか?」

何を言っているのかさっぱり分からない、とキョーコが小首を傾げながら見上げた蓮の表情は、まるで悪戯を思いついた少年のようだった。

「海、入っちゃおうよ。海が初めてだって最上さん言ったよね?」
「つつつ敦賀さん!?」
「いいから、行こう!」
「ふえぇぇぇっ!?」

蓮に腕を引っ張られて、キョーコはそのまま夜の海へじゃぶじゃぶと入って行った。



つづく




Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。