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   潮騒 2   


初めての海は、低気圧接近中の日本海でした。波打ち際で、従妹と転げ回ってた気がします。
因みにナーは、グアムやハワイといった海外の海辺に行ったことがありません。
なのでグアムの夜の海がどの程度暗いかも分かりませーん。雰囲気…雰囲気です。


「大丈夫。ちゃんと手を繋いでいるから心配いらないよ」

初めて海に来たのだと、嬉しそうに波打ち際で水の感触を楽しんでいたキョーコにもっと海を楽しんで欲しくて、自分が子供の頃遊んだ同じ色の海に招待したくなって、蓮は少し強引にキョーコを真夜中の海へとエスコートした。

ひゃあーー!冷たいっ!!一体どうしてこんなことになってるの!?

「敦賀さんっどこまで行くんですかっ!」
「行ける処まで行ってみようよ。今ならどこまででも行けそうな気がしない?」
「無理無理!絶対に無理ですぅー!」

敦賀さんはまるで子供みたいに楽しそうだけど、私にそんな余裕なんてありません!
波に体が持って行かれそうだし、服を着たままだからすっごく動きづらいよぉ。ぷはっ!私、ほとんど溺れかけてるんじゃないかしら!?

1人で散歩に出かけるより、夜の海に入っちゃってる今の状況の方がよっぽど危険だと思いますーっ…っあっ!!

「敦賀さん!もう私、足が着きません!!沈んじゃいます。もう行かないでください~ぃ」

まだまだ先へと進んで行こうとしている蓮に、キョーコは慌てて懇願した。
もうこれ以上進まないで欲しいと、蓮に握られていた手にキュッと力を込めて、岸の方へと必死に蓮を引っ張ろうとするキョーコに、蓮は悪戯っ子のように笑いかけながら、キョーコの腰を取って抱き寄せた。

「ちゃんと抱えているから大丈夫だよ」

キョーコの懇願を無視して、蓮は更に一歩、また一歩と深みへと進んで行く。

海に入るの初めてだし、足がつかない所なんてプールでさえ入ったこと無いのに!!

やだやだっ怖いっ!

パニックに陥ったキョーコは藁をも掴む思いで、蓮の首に両腕を回してしがみついた。

キョーコからの突然の抱擁に驚いて、蓮の動きがピタリ止まる。

「最上さん!?」

慌ててキョーコを見れば、目をギュッとつむって、自分に必死に縋りついていた。
恋しい少女からの抱擁に、蓮の腕に力が籠る。

「最上さん、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ?」
「むっ無理です!足がつかないし、それに真っ暗で怖いです!」

蓮の首元でイヤイヤと首を振るキョーコを安心させようと、まるで子供をあやす様に蓮は軽く背中をさすりながら耳元に囁いた。

「ほら、目を開けてごらん?…大丈夫。コーンの国に繋がっている海なんでしょ?だったら怖い事なんて無い筈だよ」
「…コーンの?」

コーンの…妖精界への入り口がこの海のどこかにあるって言うの?どこ?どこにその扉があるの?

蓮の一言でキョーコの心に余裕が生まれ、固く閉ざしていた瞼をゆっくり、そぉっと開く。

瞬間、その美しい光景に息をのんだ。

空に浮かんでいる月から注がれる銀色の淡い光が漂う波に反射して、辺り一面の暗闇を優しく照らしていた。
波打ち際から見えた海と空の暗闇の融合は、そこには無かった。

「綺麗…」

ゆらゆらと揺らめいて柔らかく輝く水面に、今まで感じていた暗闇への恐怖や戸惑いが、一瞬でキョーコの心から霧散した。
少し遠くに見える、ついさっきまで蓮とじゃれ合っていた砂浜に打ち寄せる波音は、『ようこそ』とキョーコに語りかけるようにさえ聞こえる。


ザザーン … ザザーン … ザザーン … 
楽しい? キョーコちゃん、海を楽しんでくれている?


うん、お招きありがとう。昼間の海も綺麗だったけど、夜の海も素敵だね。


たゆたう月明かりにうっとりと見とれたキョーコの鼻を、潮の匂いとは違う、いつも自分を安心させてくれる爽やかで、少しだけ甘い香りが擽った。

あ…敦賀さんの匂いがする…。穏やかで、私を安心させてくれるこの波音と同じ…ううん。もっと…

キョーコは無意識のうちにすぅっと香りを吸い込んだ後、ふと顔を上げる。
そこには月明かりによって陰影を深く刻んだ、まるで彫像のように端正な、キョーコが吸い込んだ香りよりも更に甘やかなマスクが間近にあった。

「つつつつ敦賀さん!!」

ふぎゃ!近いっ近すぎます!

驚いて腕に力が入った事で、キョーコは自分が蓮の首にしがみついている事を理解した。

「ごっごめんなさい!」

わわわ私ったらどさくさに紛れて何て事をっ!!キョーコのバカバカ!破廉恥娘!!

キョーコはボフンと真っ赤になり慌てて手を離そうと腕の力を弛めた瞬間、押し寄せた波に体をすくわれそうになる。

「キャッ」
「最上さん!」

蓮はぐっとキョーコを抱き寄せ、キョーコも再び蓮の首に必死に腕を回した。 

自分が蓮にしがみついている事に、自分がキョーコにしがみつかれている事を急に意識してしまった2人の体温が一気に上昇する。


みみ密着してます!!心臓がドラムロールのように鳴ってます!!~~っどうか敦賀さんに気付かれませんように!!

ヤバい。最上さんに俺の鼓動が伝わってしまうんじゃ…鎮まれ、俺の心臓!!


「あっあのっ…敦賀さん…」

真っ赤になって恥ずかしそうに肩を竦めながら、忙しなく視線を彷徨わせるキョーコの仕草に、蓮の胸が切なく捩じ上げられる。
キョーコを抱きしめた腕に、自然と力がこもる。

ふぇぇっ!?どうして?ナニユエここでギュウなのーーー!!


「…分かった?」
「へ?」

敦賀さんが何を言いたいのか全然わかりません!どうしてこんな状況になっているのかも全然わかりませんー!!

目をぐるぐる回して、気絶寸前にまで混乱しているキョーコには、蓮が何を言いたいのか全く理解できなかった。
そんなキョーコを、蓮は優しい眼差しで包み込んでいる。

「今、心臓の音が重なったよ?」
「うっ嘘です!」
「…どうして嘘だなんて言うの?」

蓮は自分の心臓から溢れ出るキョーコへの恋心を嘘だと言われたように感じて、ムッとした声音で理由を尋ねた。

「だって私、今もの凄くドキドキしてて、もう自分でも何を言っているのか分からない位に緊張してます!!耳だって、もうほとんど自分の心臓の音しか聞こえません!」
「…それじゃあ、今度は聞こえるようにもっと近くで俺の鼓動を聞いて?もしそれでも聞こえないなら、感じてよ」

蓮はキョーコと自分との寸分の隙間をも埋めるように、キョーコの背中が軋むほどに強く抱きしめた。

苦しいっ!それに恥ずかしいーーー…


   ドクンドクン
      ドクンドクン


あれ…敦賀さんの心臓の音? 私の心臓と同じくらい早いなんて…もしかして敦賀さんも凄くドキドキしてるの?


   ドクンドクン
    ドクンドクン


躰越しに2人の鼓動が互いに伝わる。


   ドクンドクン
   ドクンドクン


「あっ…」
「ね?今重なったの、分かったでしょ?」

コクンと小さく頷くキョーコの、伏せた睫毛が少し震える様子に蓮は心を奪われ、そのままキョーコを抱きしめ続けた。

もう、私は敦賀さんに恋してるって自分で認めてしまったのだから…。
報われない恋だって分かってるけど…こんな風に抱きしめられたら、勘違いしちゃいそうで自分が怖いよ。

「もう離してください…」
「でも離したら足がつかないでしょ?それに最上さんがまた波に攫われてしまうよ。俺の腕の中から攫われるなんて、例えそれが他の男じゃなくても絶対に許せない。…許さないよ」
「…そんな奇特な人、いる訳ないじゃないですか」

敦賀さん、好きな子がいる癖に…。

キョーコが押し黙ってしまったのを、蓮は緊張しているせいだと思った。

「俺だって緊張してるよ?ほんの悪戯心で最上さんを引きずるようにして海に入っちゃったけど、まさか首に巻き付かれるとは思ってなかったからね」
「スッスミマセン!だからもう…」
「うん。もうダメ。俺が限界」

蓮は優しくキョーコの鼻先にチュッとキスをした。

「ひゃっ!?つっつ敦賀さん!?」
「最上さん、好きだよ。」

蓮からの突然の告白に、キョーコは悲しそうに蓮を見つめる。

「…敦賀さん、酷いです。これ以上私をからかわないでください」
「からかってなんか無い。俺は真剣だよ。それとも最上さんは俺の事を、何とも思ってない子をこんな風に抱きしめたりキスできる男だと思ってるの?今だって最上さんと同じくらい心臓がドキドキしてるの、伝わったでしょ?ねぇ、最上さんも俺と同じ気持ちだと思っていい?」
「同じって…」

大きな瞳を潤ませて、不安そうにじっと自分を見つめるキョーコの姿に、蓮の血潮は狂おしい程に騒ぐ。

こんなにも華奢なくせに柔らかくて、もう少し力を入れれば壊してしまいそうなくらい儚い存在なのに…君は俺の心を捕えて締め付けて離さないんだ。

「ずっとこうして最上さんを抱きしめていたい。俺だけのものにしたい。大切にしたい。愛したい。…キスしたい」

蓮の熱い視線を受け止めた、キョーコの瞳からポロリと零れ落ちた大粒の真珠のような涙を、蓮は優しく唇で拭った。

「敦賀さん…」
「沈黙は肯定だって前、教えたよね。違うなら今すぐ否定して?」





蓮の顔がゆっくりと、不安に震えるキョーコに近づく。

チュッ

1度目はリップ音を立てたバードキス

「好きだ…」

2度目は柔らかい唇でキョーコを包むような優しいキス

「愛してる」
「…私も、です」


穏やかな潮騒が奏でる月明かりの下で、すべてを貪るようなキスを交わした



つづく ?



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