HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  [完]コングラッチェ!  »  コングラッチェ 16

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   コングラッチェ 16   


コングラです。
ナーの通った学校、校則でバイト禁止でした。みんなやってたけど。
先生も聞きつけてバイト先にやってきて、「うちの○○に注文取りに来るように伝えて!」って面白がってやってました。
生徒の方が迷惑被るっていう変な先生ばっかりでした。


「キョーコちゃん、バイトって今日までだったよね?」
「はい。チーフさん、長い間大変お世話になりました」
「そうかぁ…寂しくなるなぁ。キョーコちゃんに会えなくなるなんて、俺、絶対に嫌だよ。ねぇ、俺と付き合わない?」
「へ?」
「前からずっとキョーコちゃんのコト、可愛いなって思ってたんだ。今フリーなら俺と…イテテテッ!!」

キョーコにチーフと呼ばれた男が、突然ガシッと掴まれた肩の激痛に驚いて後ろを振り返ると、ニコニコと笑いながら自分を見下ろす大男が立っていた。

「つっ!?」
「すみません、トイレはどこですか?」

大男は獲物の肩を砕かんばかりの力を込めて、決して目は笑っていない笑顔でトイレの場所を尋ねた。

「あっあっち!あっちですーっ!!」
「そう。ありがとう」

大型肉食獣にロックオンされた哀れな獲物は脱兎の如く厨房へと逃げて行った。

「先生ぇー。チーフさんに何したんですか?あの人、とても親切で良い方なんですよ?」
「へぇ…。でも、親切で良い人はお客さんを放って逃げ出したりしないんじゃないかな?」

キョーコは盛大に眉を下げ、頬をぷくっと膨らませて蓮に抗議をした。

最上さん、今の男は下心アリアリの分かりやすい馬の骨だったよ?本当に人を見る目が無いと言うか、疑うことを知らないピュアと言うか…
そんなところも可愛いな。

湧いて出た馬の骨と、その馬の骨を易々と近づけてしまう迂闊なキョーコに苛ついていた蓮の気持ちは、キョーコの可愛らしい抗議の前にどこかへ消え失せて、蓮の頬はゆるゆると緩んでいく。

蓮の乙女心に気付かないキョーコは、もうっと怒りながら『トイレはあちらです!』と指し示して蓮の背中を押した後、ガックリと肩を落とした。
そんな2人の様子を眺めていた女性店員が、くすくすと笑いながらキョーコに歩み寄ってきた。

「ねぇ最上さん、バイトって今日までだったよね?」
「はい。マネージャーさん、長い間大変お世話になりました」
「そうかぁ…寂しくなるわぁ。目の保養が無くなるなんて」
「へ?」
「あの人、ここ1週間ずっと通い詰めてたじゃない?コーヒーのお替りを入れに行ったら…プププッ」
「マネージャーさん…」
「だって、『ありがとう。でも最上さんに注いでもらうから結構です』なんて言われたの初めてだもの!!面白過ぎよぉ」


**


「ちょっと、15番テーブルにすっごいイケメンが来たんだけど!」
「見た見た。芸能人とかモデルなんじゃないの?」
「へー。そんなにカッコよかったんですか?」

仲間たちの興奮した様子に、キョーコも興味がそそられた。

「見目麗しいとはこの事を言うって感じ?…あ、立ち上がってキョロキョロしてる。誰か探してるのかしら?…コッチに手を振ってる!」
「ほわっ!!!」

15番テーブルへと視線を移したキョーコがカパリと口を開けて見つめる先に、笑顔で手を振る蓮がいた。
その神々しい笑顔を振りまく男の横で、お水とおしぼりを持ったフロア担当が困った顔でキョーコを見つめている。

「ちょっと最上さん、あのイケメンと知り合い?紹介してよ!!」
「すっすみません。ちょっと行ってきます!」

慌ててテーブルの傍に駆け寄ると、それまで対応していたフロア担当の女の子が、キョーコを軽く睨んで去っていった。

あわわ。

「最上さんをお願いしたいんだけどって言ったら、あの子急に機嫌が悪くなってしまって。ごめんね?俺のせいで最上さんに嫌な思いさせちゃったね」

それより!そんなことより!!

「つっつっつっ」
「うん。仕事帰りに寄ってみたよ。珍しくこんな時間まで残業になっちゃって。もう遅いし、夕飯を食べて帰ろうと思ってね」
「なっなっ」
「最上さんがここでバイトしてるって千織に聞いたから。まだいるかちょっと心配だったんだけどね」
「…ご」
「うん。注文が決まったら呼ぶから、最上さんが来てね?その制服もよく似合ってる。とっても可愛いよ」
「ひゃうっ!」
「どういたしまして」

ギギギと音を立てて右手と右足、左手と左足を一緒に動かす玩具のような動きでキョーコは蓮のテーブルを離れた。


冬休み初日から、蓮はキョーコのバイト先に通い続けた。仕事終わりで入店し、キョーコのバイトが終わる時間に一緒に帰って行く日々が続いていた。
蓮がキョーコ目当てだと分かると女性店員たちは落胆したが、キョーコの慌て様を見て面白がっていた。


**


「本当に迷惑ですよね…。すみません。もう私も上がりの時間ですから帰ります。本当にお世話になりました」

腰から90度の角度で頭を下げるキョーコに、寂しくなるけど大学受験をがんばれとマネージャーは笑顔で応援してくれた。
仲間たちに最後の挨拶をして回った後、キョーコは着替えを済ませて蓮の座る席へとやって来た。

「先生、お待たせしました」
「お疲れ様。それじゃあ帰ろうか」
「はい!」

蓮はテーブルに広げていた書類を集めてバッグに詰め込んだ。


「お弁当ご馳走様。今日も美味しかったよ」

駐車場に停めてある蓮の愛車に乗り込むと、後部座席に置いてあった紙袋を蓮はキョーコに渡した。キョーコは『美味しかった』という蓮の何気ない一言に、こそばゆい思いを噛みしめながら袋を受け取った。

「お粗末さまでした…あれ?先生、何か重いんですけど、食べ残しました?もしかして、嫌いなものとか入ってましたか?」
「そんな訳無いでしょ。美味しいお弁当は全部お腹に納めたよ」

おかしいな、と思いながら受け取った紙袋の中を見ると、お弁当箱の上に小ぶりな袋が入っていた。
不思議そうな顔をしているキョーコに蓮は気づいた。

「あぁそれ、伊藤先生が家族旅行のお土産だって配ってくれたんだ。クッキーらしいよ。良かったら最上さん食べて?」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます!」
「どういたしまして」

『やったー』と言いながら、ふにゃりと笑うキョーコにつられて、蓮の顔にも笑みがこぼれた。

こんなに喜んでもらえるなら、お弁当箱に毎日お菓子を詰めて渡してみようか。甘い甘いお菓子の虜になって、俺に釣りあげられちゃえばいいのにね?


走り出した車の中で、キョーコは蓮に明日のお弁当のメニューを嬉々と話し始めた。

「先生、明日のお弁当なのですが、お稲荷さんでいいですか?」
「勿論いいよ。お稲荷さんか…そう言えば、随分食べてないなぁ」
「えへへ。私も半年振りです!」
「何だか凄く楽しそうだね?」

キョーコがいつもより楽しそうにお弁当の話をする様子に、少し意外な心持ちで蓮は話を聞いていた。

「はい!実は明日、父のお墓参りに行こうと思ってるんです。私は覚えて無いんですけど、お稲荷さんは父の大好物だったそうで、お墓参りに行く時は必ず持って行くんです。私もそこでご飯食べちゃうんです」
「そう…。じゃあ、明日は最上さんのお父さんと同じお昼を食べられるんだね」

蓮の言葉に、キョーコははっと顔を上げた。

「ん?どうしたの?」

蓮がキョーコの顔を覗きこむと、ほんの一瞬前までそこにあった、花のように愛らしい笑顔がどんどんとしぼんでいく。
綺麗に咲いた花が、まるで早送りで萎んで行き、最後には白いうなじが見えるまでに、膝の上で抱えているお弁当箱に向けて首をしおれさせたキョーコの姿に蓮は慌てた。

「最上さん、どうしたの?俺、何か気に障るような事を言った?」
「…いえ、こちらこそすみません。知りもしない故人と同じものをお昼に、なんて嫌ですよね。先生にはちゃんと別のお弁当を用意しますから。すみません、嫌な思いをさせてしまいましたね。ごめんなさい。忘れてください」

駄目ね、私ったら。先生に言われるまで全然気がつかないなんて。
明日はお父さんと一緒にご飯を食べられる。しかも皆で同じものを食べられるなんて浮かれちゃって、先生の気持ちなんて考えもしなかった。

…そんなお弁当なんて、気味が悪いって思われるに決まってるじゃない。


赤信号に車が停車する。

「それじゃあ、明日は12時ジャストで『いただきます』って言うよ。だから最上さんもジャストに『いただきます』をしてよ」
「え?」

びっくりしてキョーコが蓮を見上げると、蓮はハンドルを握っていた腕をキョーコの頭へと伸ばして、笑いながらキョーコの頭を撫でた。

「明日はみんなでお稲荷さんを食べられるんでしょ?最上さんには悪いけど、もし良かったら少し多めに作ってくれないかな。社先生と琴南先生も…そうだ、千織も一緒に食べさせてやってくれないかな?」
「…嫌じゃないですか?」
「全く。」
「気を遣ってませんか?」
「全然、」
「ほんとに?」
「これっぽっちも。最上さんのお父さんと同じものを食べられるんでしょ?嫌なんて思うわけ無いじゃないか。寧ろ嬉しいよ」
「…ありがとうございます」

『みんなで』、という言葉にキョーコの心がほっこりと温かくなる。少し鼻がツンとして涙が出そうになって、キョーコは慌てた。

「そうだなぁ。早く彼氏としてお父さんの所に一緒に連れて行ってもらえると嬉しいな」
「え?」
「ほら、遊びに行った彼女の家でお父さんと気まずくご飯を食べるってヤツ、よくドラマとかであるじゃないか。あれ、早く経験したいな。最上家で」
「せっ先生…」

蓮のおどけた表情にキョーコの涙は引っ込んで、かわりに笑顔が戻った。


そう。何よりも君のその笑顔が見たいんだ。その笑顔を守る為なら俺は何だってしてあげるよ。馬の骨から君を護るナイトにでも、君を笑顔にさせるピエロにでも。


ピンク色に頬を染めて、キョーコは上目遣いに蓮を見上げながら、小さな声でお願い事を口にした。

「あの…お揚げを買い足したいです」
「了解、お姫様。スーパーにお連れ致します」


青に変わった信号の先へと、蓮はゆっくりとアクセルを踏んだ。



つづく。


Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。