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   ユメマボロシ 1   


ポロリ妄想です。
ずっと眠くて眠くて…そんな眠気の中、ポロンと出てきました。


日付も変わった真夜中、ようやく仕事を終えて家に辿りつく。

シャワーも浴びずに広いベッドにダイブするように横たわり目を閉じると、疲労のピークに達していた蓮はすぐに穏やかな寝息を立て始めた。


ペタペタペタ


眠りかけた蓮の耳に、ベッドに近づく小さな足音が聞こえてくる。
それでも構わずに意識を手放しかけたその時…

「……さん。お願いですから起きてください」
「…」
「久遠さん、お願いしますぅー」
「…ん…」

蓮はやっとの思いで瞼を開くと、すぐ傍に自分を覗き込む少女の顔があった。

…どうして俺の部屋に人がいる?どうやって入ったんだろう…
もしかして俺のファンの子か?…セキュリティ万全の筈のこのマンションに入って来るなんて。ここも潮時か。

栗色の髪の少女に見下ろされながら、蓮は半分夢の中でぼぅっと考えていた。

「久遠・ヒズリさん、はじめまして。私はキョーコと申します」

ペコリと丁寧に頭を下げる、キョーコと名乗る少女に蓮は顔を顰める。

何故この子は俺の本当の名前を知っている?日本で知っているのは社長だけのはずなのに。

…あぁ、これは夢なのか。なるほど、だから居るはずのない女の子に俺は見下ろされてるんだ。
うん、笑顔の可愛い子だな……

すうっと眠りに落ちようとする蓮に、キョーコと名乗った少女は慌てた。

「あぁっ!まだ駄目です!まだ寝ないでください!私困りますーー!」

…夢の中でまで寝るなだなんて、可愛い顔をして随分と酷い事を言うんだな。
しかも凄く困った顔をして。まるで俺がこの子を困らせている悪い奴みたいじゃないか。

「…どうしたの?でも俺、もう何日もほとんど寝ていなくて凄く疲れているんだ。お願いだから寝かせてもらえないかな?」
「はい、それは重々承知しております。久遠さん、貴方はこの国で一番忙しい役者さんで、その演技で多くの人の心を魅了して、皆さんに愛されてます」

夢の中でそんな風に褒められるなんて…自分でそう思っているって事なのか?
…いや、まさか。またまだ上手くなりたい。もっと演技をしたい…

やっぱり俺、相当疲れているんだな。…もうこんな夢も見ない位深く寝てしまおう…。

「うえーん!起きてくださいよぉ。私を1人にしないで下さいー!!」
「……うん…ゴメンゴメン。…で、お嬢さんはどうしたの?」
「キョーコです」
「はいはい。キョーコちゃん」

変なところで律儀な子だな。夢の中なんだから呼び名なんて適当でいいのに。

「申しおくれましたが、私は天使です」
「……うん。本当に天使みたいに可愛い笑顔だよ」

だからもう眠らせてくれないかな?

「あっありがとうございます。えへへ。」

うん…やっぱり笑うと可愛いな。

カーテンから漏れる月明り越しに、白い頬をピンク色に染めてはにかみながら笑うキョーコの様子に蓮の心は奪われる。
甘やかな笑顔でじっと見つめる蓮の視線に気付いたキョーコは、更に慌てて顔を真っ赤にしてキョドキョドと視線を泳がせた。

「えっと…はっ!そうです!私のことは置いておいてですね、今日、久遠・ヒズリさんの前に現れたのには理由があるのです。我が主があなたの事に心を痛めておいでなのです。そのご心痛を私は取り除いて差し上げなくてはなりません」

…俺の為に君はここに居る訳じゃないと言うのか。

「へぇ…じゃ、もう寝ようかな」
「だっ駄目ですー!!まだ寝ちゃ駄目です!」

唇を尖らせて目を閉じた蓮をゆさゆさと揺すって、天使と名乗る少女は自分の話を聞けと強要する。

まったく、自分の夢のくせに俺の意志は罷り通らないのか…。それとも女の子に振り回されたいって願望があるとでも言うのか?

「うん…聞いているよ。で、その君の主のご心痛の種は俺の何だっていうんだい?」
「はい。あなたが人を愛する演技を見るにつけ、我が主は『薄っぺらい演技だ』と、まるでこの世の終わりのような悲しそうなお顔をします」
「…見抜かれてるのか…。君の主はどこか芸能プロダクションの社長で、君はその会社のエージェントか何か?」
「だから違います。私は天の使いです。それより、あなたは多くの人に感動を与えて誰からも愛される癖に、我が主がこの世で一番尊いと日々叫んでおられる愛を拒絶なさっています。どうして頑なに愛を拒絶するのですか?」

キョーコは眉を下げて、それこそこの世の終わりのように悲嘆に暮れた顔で蓮を見つめた。

夢の中で、それも天使になら何を話しても構わないって願望が見せている夢なのか…。
でもきっと懺悔にもならないな。

蓮は自嘲するように顔を歪めて笑った。

「やっぱり私のような若輩者に話す気にはなりませんか。でも私、ずーっと久遠さんを天上から観察していました。それにもの凄く調べました。天界の書庫から貴方の過去帳を引っ張り出してきて、隅から隅まで全部読ませていただきました。普段は一般天使立ち入り禁止の場所なのですが、門番を3日3晩脅して締め上げて…ってどうでもよかったですね。久遠さんが歩んできた今までの人生は、大体把握できています!」

キョーコの自信満々な様子に、蓮は大きくため息をついた。

「そう…。俺の全部を知っているって言うんだね…。だったらもう分かっているんだろう?リックが…俺の親友が手に出来なかったものを…得られなかったものを俺が手にしては駄目なんだよ。誰かとの幸せなんて願っちゃいけないんだ。だから君の主にも芝居が下手ですまないと伝えてくれるかな。分かったらキョーコちゃん、早くお帰り?」
「いえ。帰りません。私、久遠さんの素性調査の過程でお話を伺ったリックさんからの伝言を言付かって参りました!!」
「リックから!?」

この子は何を言い出すんだ!?リックからの伝言だって?

驚愕がゆるゆると蓮の体を這い上がる。
蓮の躰は金縛りに遭ったように硬直して、息をするのもままならない。夢の中だと言うのに、躰の芯まで凍っていくような感覚に陥る。

演じる事を諦めきれずに、おめおめと生きている事を罵倒されるのか?それとも…もういいと……
クソッ!!俺は赦されたいのか?それとも赦されたくないのか?
…どっちなんだ!!!

蓮の悲痛なまでの苦悩と困惑を余所に、キョーコはニコニコと蓮を見下ろして、ゆっくりと口を開いた。


「『立て、クオン』だそうです。見ているコッチがイライラするとおっしゃってましたよ?」
「…」


蓮の様子をじっと見つめていたキョーコが、蓮にワクワク顔で話しかける。

「どうですか?素直に幸せになって、満ち足りた愛を演じられそうですか?我が主に至上の愛の演技を献上いただけますか?」

蓮は力なく首を横に振った。

「悪いけど…。立てって言われても、自分自身どうしたいのかさえ分からないんだ」

素直に…俺は大切な誰かを作って、親友の幸福な未来を奪った事実を忘れたかのように生きて行きたいのか?
…俺はどうしたいんだ!?

キョーコから目を逸らして自問自答しかけた時

「駄目です!前を見ましょう!!」

キョーコは蓮の両頬を両手で包んで、真剣な顔で蓮を見つめている。
その両手のひらから、キョーコのぬくもりが蓮へと穏やかに流れ込み、冷え切った蓮の心をゆっくりと溶かして行く。

「後ろを振り返って立ち止まったり、下を向いたら駄目です。久遠さんの未来は無限大の可能性を秘めているんです!前だけを見て、素直に貴方がどうしたいか考えてください!!」
「前だけを…」

そうです、と蓮を真剣な眼差しで見つめながら、コクコクと何度も頷くキョーコの様子に、蓮の躰から徐々に強張りが抜けていく。
それと同時に疲労感が大波となって蓮に押し寄せる。

「ありがとう…」
「いいえ。天使として当然の事をしたまでです」

…リックに前を向けなんて言われる夢を見られるなんて…

「それでですね、きっと暑苦しいまでの愛の演技を手にするまでには、まだまだサポートが必要だと主は仰いまして。立ち上がった久遠さんが前に向かって一歩を踏み出せるように、ありがたくも主が3つの願いを叶えてくださるそうです!!」
「3つも?君の主は太っ腹だね」

クスリと笑う蓮に、キョーコも笑顔で応える。

「はい!懐の深さは全世界1ですよ!さぁ、どんなことをお望みですか?不肖、キョーコ。久遠さんの願いを主にかわって叶えて差し上げます!」

さぁ、何でもどうぞとキョーコは目を爛々と輝かせて蓮を見つめている。

…うーん……

「……少し考えさせてよ…。もう眠くて…今は何も考えられない…」
「えぇっ!?…そうですよね。急に言われても困っちゃいますよね。それではまた伺いますね」
「ごめんね。でも、もう限界…」

蓮は自分の頬からそっと離れようとした少女の手を縋るように握り締めて、もう一方の腕を少女の腰に回して自分の躰の上に抱き寄せた。

「ふぇぇぇっ!?くくく久遠さん!?」
「うん…君の…キョーコちゃんの人肌って凄く安心出来るんだ…。手のひらから伝わった温もりに、俺は助けられたよ。だから…もう少しだけ、君の温もりを俺に分けてよ…」


温かくて柔らかくて気持ちがいい…手放したくないな…。


「…迷える子羊を導くのも天使のお仕事の1つです。存分にあったまって下さい」
「……ありがとう……」

少し体温が上昇したキョーコの躰を抱きしめたまま、蓮は穏やかな、深い暗闇へと意識を沈めて行った。



続く



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