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   ユメマボロシ 2   


前後編のつもりだった小話がですね、どうしたことか続きがポロポロとうさぎの何かのように出て来たので、
カテゴリを分けて、前編としていたものも1話に変更してみました。
良かったらお付き合いください。


ピピピ…

目覚まし時計の無機質な電子音に導かれて、蓮は穏やかに意識を浮上させた。
その腕の中に温かいぬくもりをくれる存在は無くて、勿論広いベッドのどこにも栗色の髪の天使はいなかった。

「やっぱり夢か…」

それにしても随分と都合のいい夢を見たな…リックが俺に今更『立て』なんて言う筈がないじゃないか。

…でも、それでも…

蓮はゆっくりとベッドから起き上がる。

___ もう、静止(とま)らない。前を向いて進んでいこう ___


蓮の目に迷いは無かった。



「おはようございます。社さん」
「蓮、おはよう。今日も目いっぱいの予定が詰まってるけど、頑張って行こう!」
「はい。よろしくお願いします」

あれ?何だか蓮の機嫌が凄くいい?

1つ目の仕事場に車を走らせる蓮を、社は助手席からじっと見つめている。
それに気づいた蓮が、社に笑いながらチラリと視線を投げた。

「どうしました?俺の顔に何かついてますか?」
「いや、顔色が随分いいって言うか、すごく楽しそうだからさ。もしかして良い事でもあったか?って言っても、お前と別れてから数時間しか経ってないもんな。そんな短時間に何かある訳ないか」

昨日なんてここ連日のてっぺん越えのせいで、流石にコイツも別れ際はぼーっとしてたしな。家に着いたら寝る以外の幸せなんて無かったはずだよ。
『抱かれたい男No.1』の癖に、疲れた心を癒してくれる恋人もいないはずだしな…

「何ですか、そんな人を憐れむような目で見て。 …そうですね、良い事なら1つありましたよ?」
「えぇっ!?ナニナニ、何があったって言うんだよ」
「あはは。実は良い夢を見ました」
「夢ぇ!?」
「ええ。とてもいい夢でしたよ」

クスリと笑う蓮を、社はじぃーっと見つめている。

「蓮…なんか俺、お前が物凄く可哀想に思えてきたよ…」

日本中の女性の心を奪っているお前が、いい夢見たなんて、そんなちっぽけな幸せを噛みしめて笑っているなんてなぁ。

「どうしてですか。お陰でぐっすり眠れましたし、今日も1日を大事にしようって思えましたよ?」

そう。…前へ向かって一歩でも踏み出そうってね。

「へぇ。一体どんな夢だったんだ?」
「そうですね…可愛い天使を抱きしめて眠る夢ですよ」
「天使だって?…蓮、早く現実の彼女ができるといいな」
「あはは。…そうですねぇ。昨日夢に見た天使だったら、是非にでも彼女になって欲しいですね。可愛くて温かくて…俺が言って欲しい言葉をくれて…。まぁ夢の中ですから、俺の願望がそのまま夢になったんでしょうけどね」
「理想の天使を抱きしめて一体何を言わせたんだよ!蓮君の破廉恥!!」


**


「敦賀君、お疲れ様!良い写真が取れたよ」
「ありがとうございます。俺も楽しみながらお仕事をさせてもらえました」
「これで今日は上がりだろう?この後みんなで食事に行くんだけど、君も行かないか?」

女性スタッフが、蓮と一緒に食事ができるのでは?と期待に満ちた視線で蓮とカメラマンとのやり取りを見つめている。

「すみません。この後事務所に戻らないといけないので。残念ですがまた今度是非誘ってください」

カメラマンに謝りながら、落胆するスタッフたちにも眉を落としてゴメンと微笑み、蓮はスタジオ脇に控えていた社と一緒に現場を後にする。

はーっと盛大にため息をついて、社はジトリと蓮を見上げた。

「…何が事務所だ。そんな予定無かっただろう?」
「すみません。社さんが仰る通り、この後は家に帰るだけです。でもこんな時間に帰れるのも久しぶりじゃないですか。家でゆっくりしながら台本も読み込みたいですしね」
「そんなこと言って、お前本当は早く寝て昨日の夢の続きを見ようなんて思ってるんじゃないだろうな?」
「……思ってなんかいませんよ。社さん、人を妄想家のように言わないでください」
「ブフーッ!!本当にお前って可愛いなぁ~」

社に心の内を読まれた事に苦笑しながら、蓮は足早に楽屋へと移動した。


**


蓮の鼻腔をふわりと甘い香りが擽る。蝶が花に誘われるように、蓮はその香りの方へと腕を伸ばした。

「……さい。起きてもらえませんかーっ!!」
「…嫌だ…」
「うえーんっ!破廉恥ですぅー!この前だってイモムシみたいにウゴウゴしながらようやく抜け出したのにぃー」

聞き覚えのある声に、蓮はゆっくりと目を開ける。

「…やぁ、キョーコちゃん。久しぶりだね?」
「ご無沙汰しております。…って7日振りですよ?それほど経ってないと思うのですが…」

君に会いたくて、毎日仕事を終えてベッドに入るのを楽しみにしていたのに…
会いたいって思っていたのは俺だけって事?

「それより今何時なの?…真夜中に女の子が1人で出歩くなんて危険極まりないよ」

家を教えてくれたら俺が会いに行くのに。

「…えっと、3時過ぎです。もっと早くこちらに伺うつもりだったのですが、朝ご飯の仕込みをしていたらこんな時間になってしまいました。申し訳ございません」
「ふぅん…料理得意なの?」
「はい!まだまだ半人前ですが、タイショウに教えを乞いながら、精進しております」
「…そうなんだ…俺にも今度何か作ってよ……すぅ…」
「あわわわっ!!会話しながら寝ないでくださいよ!と言いますか、早くこの手を放してくださいぃぃ」
「…でも温かくて心地いい。こんなにもいい夢を手放したくないよ…キョーコちゃんは俺に抱きしめられるのは嫌なの?」

ふええええっ!?この方は何を言い出すのでしょう!!
しかも眉を下げて少し拗ねた風に上目遣いをするなんて。

「嫌…ではありませんが…その、慣れておりませんので、どうしていいか分かりません…って私の事なんてどうでもいいのです!!
それよりも!3つの願い事は決まりましたか?」
「3つ?何だったっけ?……あぁ、薄っぺらい愛の演技が上達するような願い事を3つ叶えてくれるんだっけ…君の主が喜ぶ為に?」

ひょわわっ!今度は怒ってる!!どうしてぇーっ!?

「ああああのですね、主はラブ・モンスターなんです。愛こそ主食、三度のご飯より愛が好きなんです。久遠さんが本心から愛の演技をして下さらないと、主は食事も喉が通らない程に落ち込まれるのです。私たちが作ったご飯を食べて下さいません。今ではタイショウなんて、天使だっていうのが怪しいくらいの目つきで包丁を握っています!」
「そうなんだ…それじゃあ君の周りの人たちの為にも、早く君の主に認められるような演技をしないといけないね」

蓮が初めて前向きな発言をした事に、キョーコは目をキラキラとさせる。

「はい!ぜひお願いします!!タイショウはとっても良い方達なんです。オッチョコチョイな私を、ドジだなぁって笑って許してくれるんです。」
「……ふぅん…。キョーコちゃんはそのタイショウの事が好き…なの?」

キョーコを抱きしめる腕に力がこもる。

「はい!主の次に尊敬しております!!タイショウの奥様も優しくって、私大好きです!」

何だ…そういう意味か。キョーコちゃんが誰かに恋をしているのかと思ってびっくりしたよ。

…俺、今凄くホッとしてないか?それにびっくりって何だ?

「本当にお2人には良くしていただいてます…。でも…主やタイショウの為だけじゃなくて……」

モジモジと蓮の胸の上で言いあぐねているキョーコの様子を、蕩ける様な微笑みで蓮は見つめていた。

やっぱり可愛いなぁ。天使って誰でもこんなに愛しい存在なのかな?

…愛しい?

「あのですね…。ずっと久遠さんの事を天上から観察していました。それこそ24時間監視体制です。真摯にお芝居をされている姿や、皆さんに分け隔てなく優しく接していらっしゃる様子…あと、お食事がおざなりなところとか。とにかくですね、こんなにも1人の人間を隈なく隅々まで観察したのは初めてだったんです!」
「…24時間…隈なく隅々まで……キョーコちゃん、女の子がそんなことを言っちゃ駄目だよ?」

俺は視姦されたい願望は無い!!

「へ?…はい。何が駄目なのかよく分かりませんが、今後気をつけますね。それでですね、それくらい久遠さんの事を見続けたせいか、段々と久遠さんに感情移入をしてしまいました。…本当は1人の人間に執着するなんて、天使失格なのですが…その…」

顔を真っ赤に染めて、キョーコは顔を上げて大きな瞳でじっと蓮を見つめる。

「っ…どうしたのかな?」

可愛い…可愛すぎる…。このままキスしたい。

「待ってますから…… 一日も早く、久遠さんが人を愛せるようになるのを…我が主よりも、タイショウよりも……私が…」

キョーコの決死の告白に、蓮はキョーコを見つめたまま無表情で固まった。

「ごごごごめんなさい!!私ったら何を言ってるのかしら~~っ」

慌てたキョーコは蓮の胸に顔を埋めた。

私ったら思い上がりも甚だしいわ!主よりも願っているなんて、とんでもない言い草よ!
我が主よ、どうか愚かな私めをお許しくださいーーっ!

「キョーコちゃん…俺、願い事が1つ決まったよ…」
「へ!?本当ですか?」

ガバリと蓮の胸から顔を上げ、キョーコは驚いた表情から、可憐な花が開くように笑顔をほころばせた。

「うん…。何か、掴めそうな…胸の中が温かくなるような感覚が分かった気がするんだ…」


主よ!迷える子羊が道を見つけたようです!!



続く



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