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   コングラッチェ 19   


話がたいして進まないまま20に王手がかかりました。
これはどこまで続くんだ…いえ、自分の中では決まってるんですよ?
ただ、そこに辿りつくのに横道が発生しまして。。今回も横道を掘り進んでます。


4人はショータローの家へと歩いた。普通に歩けば3分もかからない距離だろう。それをキョーコの足取りに合わせて、全員が無言のまま歩いた。
10分ほどかけてついた先は、繁華街の路地を曲がった所にある土壁の塀で囲まれた料亭だった。ショータローに促されて裏口から入れば、その先には荘厳な庭園が見て取れた。

ショータローの家は日本でも屈指の名料亭だった。建物も江戸時代の造り酒屋を移築して作られたものだと言う。

「なる程…本当に御子息だったんだ…」

千織はショータローにつけられたあだ名に今更ながら納得した。

「うるへー。コッチだ。暗いから踏み石に気をつけろよ?」

ショータローに促されるままついて行くと、普段ショータロー達が暮らしている母屋に辿りついた。

「かーちゃん、連れてきたぞ!」

ショータローの声に和服姿の女性がパタパタと小走りで飛び出してきた。

「キョーコちゃん!心配したんよ!竜巻だなんて…どこも怪我は無いな?」
「はい…大丈夫です。女将さん、ご心配をお掛けしました」
「ほんに良かった…」

キョーコを見つめながらもぴんと背筋を伸ばし、品格さえ漂うショータローの母親にキョーコは腰を折って挨拶をする。

キョーコさんにこういった綺麗な所作を教えたのはこのヒトだったのね…。
それにしても、どうして不破君には何一つ身につかなかったのかしら。つくづく残念な結果ねぇ。

胸元に手をあててほっと大きく息をついているショータローの母親と、その横に座ってブーツの紐をほどいているショータローを千織は残念そうに見比べていた。

「無事でよかった…えと…こちらは?」
「キョーコの担任の敦賀と友達の天宮」

ショータローが不機嫌そうな声で答えた。

「夜分申し訳ございません。LME学園の敦賀と申します」
「あっ天宮です。キョーコさんが心配で付いてきてしまいました」

紳士然とした笑顔で蓮はキョーコに寄り添ったままショータローの母親に挨拶をした。そんな蓮に、ショータローの母も笑顔で応対する。

「申しおくれました。私、松太郎の母でございます。…どうぞ上がって下さいまし」

キョーコたちは10畳ほどの和室に通された。床の間には青磁の一輪挿しに桜の枝が飾られていた。

「ほんに大変やったねぇ」
「はい…。天宮さんとご飯を食べて帰ってきたら、もうメチャクチャで…とりあえずお父さんだけ連れて来ました」
「さよか…」

キョーコの悲痛な表情に、誰も声をかけることができない。そんなキョーコの膝に千織はそっと手を置いた。

…天宮さんが居てくれて良かった…

「無事でよかった。冴菜ちゃんには、わてから話しとくし。安心するやろ」
「え!?母がこの事を知ってるんですか?…大家さんから連絡が行ったのかしら…」

意外そうな顔をするキョーコに、ショータローは顰め面をした。

「連絡なんかつくわけねぇだろ。いい加減学習しろよ」
「…だよね」

お母さんに連絡したところで、今は手が離せないから用件はメールでって言われてお終いよ。
返信なんてすぐに返って来たことなんか無いけど…流石に住むところが無くなったって言ったら、すぐに慌てて連絡をくれるのかな?
…ある訳ないか。

「不破君、そんな言い方して最上さんが傷つかないとでも思ってるのか?だとしたら不破君の方が学習が足りないんじゃないのか?」
「なんだと!?」
「うるさい!先生の言う通りや。松太郎、あんたは黙っとれ!!」
「ちっ」

ショータローは座卓に肘をついて顎を乗せ、不貞腐れた顔を庭に向けた。その様子にショータローの母親はフーッと大きなため息をついた。

キョーコは唇をぎゅっと結んだまま蓮を見上げた。

「キョーコちゃん、ほんまに堪忍え?」
「いえ……本当の事ですし、気にしてませんから」

今更傷ついたりなんかしない。

キョーコは両手を膝の上でぎゅっと握りながら力なく笑って見せた。

「…ねぇ、キョーコさんは不破君と…こちらとどういったご縁があるの?」

それまでずっと黙って話を聞いてた千織がキョーコに尋ねた。

「そっか…言ってなかったね。女将さんは母の従妹なの。そのご縁で、忙しい母の代わりにずっと私の面倒を見てくれてたの。物心がついた頃から中学卒業まで、こちらでお世話になっていたのよ」
「そうだったんだ…」
「だからね、キョーコちゃん、また一緒に暮らさへん?」
「え?」
「…家も目茶目茶なんやろ?こんなバカ息子と一緒に暮らすの、キョーコちゃんは嫌かもしれんけどな、叔母ちゃんあんたの事を放っておけんのよ」

突然の申し出にキョーコは狼狽えた。

でも…そんなことをしたらまた私、このおうちの厄介者になってしまう…。ショーちゃんだって私のことをお節介でうざったいって…。

どうしていいか分からず、キョーコは不安そうな表情で蓮を頼るように見上げた。
蓮もキョーコを見つめ返し、何か口にしようとしたその時


ダンッ!!!


ショータローが両手の拳で机を叩いた。

「ショーちゃん!?」
「いい加減目を覚ませよ!!」
「…何から目を覚ませって言うの?」

「お前、コイツに騙されてるんだよ!お前がガキで何も知らないのを良いことに好き勝手してるだけだ!女なんか選り取り見取りな男がお前なんか相手にする筈なんか無いって前にも忠告してやったろ!?いい加減目を覚ませよ!!」
「でもっ!」
「でもじゃねえ!!」

怯んだキョーコに、ショータローはフンッと鼻で笑って話を続ける。

「あぁ、あれか。お前、コイツが初めての男だから、のぼせてコイツの事しか見えなくなってるだな?お前は本当に馬鹿だな」
「ちょっとショーちゃん!何を言い出すの!?」
「愛してるとかお前だけだとかベッドの中で言われて、ソレを真に受けてんだろ?そんなのその場限りの言葉に決まってんだろ!本気にしたところですぐにお前なんか捨てられるんだよ!!」
「不破君!!何を言い出すんだ!!」

蓮の膝の上に置かれた拳に、キョーコはそっと手を添えた。

「先生とはそんな関係じゃないよ。…ただの先生と生徒だよ。ショーちゃん、誤解してるよ」
「だったら尚更そんな目に遭う前に戻ってこい!」
「戻るってどこに?」
「俺んところに戻ってくれば良いんだよ!」

何を今更勝手なことを言い出すんだ!最上さんの気持ちをコイツは何だと思ってるんだ!!

蓮がショーにつかみかかろうとした瞬間、ただ添えられていたキョーコの手がグッと力を込めて蓮の拳を掴んだ。
驚いた蓮がキョーコを見ると、キョーコは力強い視線でショータローを見据えていた。

「ショーちゃん…。私、今まで何でもショーちゃんの為にってやってきたわ。でもね、気づいてしまったの。ううん、本当は分かってたのに、気づかないフリをしていたの」
「はぁ?何をだよ」

ショータローは怪訝そうにキョーコを見つめる。その視線を正面から受け止めながら、キョーコは話を続けた。

「私がショーちゃんの為ってやっていたことは、本当は自分の為にやってたの。寂しくて、1人は嫌で…。誰かと繋がっていたかったの。半分でも…ううん、少しでも反応を返してもらえたら、1人じゃないって思えたから。こんなにもショーちゃんの為にしてあげたんだから、ショーちゃんも私に何かしてよっ!てずっと心の中で叫んでた」


そう…何かをしたら、ありがとうって言われたかった。褒めて欲しかった。
お弁当を作ったら、美味しかったって言って欲しかった。
誰かに好きって言って欲しかった。
私がここに居ても良いって言って欲しかったの!!

…あれ?全部、敦賀先生が今私にしてくれてる事じゃないかな。
私が作ったお弁当をありがとうって言ってくれて、毎日美味しかったよって言ってくれる。
私のことを好きだって言ってさえくれて…。
私だって先生にありがとうございますって毎日何回も言ってる。


「多分ね、誰でも良かったの。一番身近にいてくれる人なら…きっとショーちゃんじゃなくても…だから…ごめんね」

違う…。今は誰でもいい訳じゃない。先生…敦賀先生じゃなきゃ嫌なの。
自分がして欲しいから何かをしてあげるんじゃなくて、先生の為に何かしてあげたいって思ってるの。

…私、先生の事がちゃんと好きなんだ…

キョーコは座卓の下で握り締めていた蓮の手に指を絡めた。

返す言葉も見つからずに、ただキョーコを穴が開くほど凝視するショータローから視線を移して、ショータローの母親にキョーコは居住まいを正して頭を下げた。

「女将さん、本当に有難いお話だと思っています。でも…申し訳ございません。私はここには戻れません」

そうよ…。天宮さんと先生が私にあったかい感情を注いでくれて、私は1人なんかじゃないって思えるようになったんだもの。
後戻りはしたくない。

ショータローが苛々とした様子で口を開いた。

「じゃあ…じゃあどうすんだよ!ここに帰って来ないなら、どこに行くって言うんだよ!他に行くあてなんか無いくせに!」
「みっミキちゃんのうちにっ「山本ミキは小学校卒業と同時に引っ越して行ったじゃねぇか!頼れる所なんて結局ここしかねんだよ!お前なんか実の親にも捨てられたくせに!!」


鋭いナイフで抉られたような痛みに、キョーコの喉が小さくひゅっと鳴った。



つづく。



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