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   ユメマボロシ 3   


夢ってメチャクチャ暴走しますよね。
少し前に見た無茶夢は、凍った海の上をのんびりスケートで滑走してました。
…スケートは子供の頃に2回しかやったことないんですけどね。


「胸の中が温かくなるような感覚…それこそ恋の前兆です!さぁ、その感覚をもっと掴む為の願い事をどうぞ仰って下さい!!」

微笑む蓮に目を輝かせながらキョーコは願い事を促した。

「うん…。寝る時は、こうやってキョーコちゃんを抱きしめて眠りたい」

「へ?」

キョーコは大きな目をぱちくりさせて蓮を凝視した。

久遠さんはキラキラと神々しい笑顔で一体何を仰っているのでしょう?

「えっと…私、主のお食事の準備があるので、そろそろ帰らないといけないし…それに、嫁入り前の身で男性とこうやって寝床を共にするのも問題だと…じゃなくて!!」

キョーコは頭をブンブンと振って、大真面目な顔で蓮を見つめた。

「久遠さん。一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「うん。いいよ」
「どうして私を抱きしめて眠ることが、久遠さんが人を愛する心を取り戻すことに繋がるのでしょうか?」
「えっ……それは…」

君を手放したくない。ずっとこの腕の中に抱きしめていたいと思ったのは

…君の事が…キョーコちゃんが好きだから?

ずっと抑えてきた感情を、俺はこの夢の中の天使相手に解放しようと思ってるのか?

蓮は急に自覚した自分の恋心に動揺して、無表情のままピシリと固まった。

「久遠さん、どうしました?ご気分でも悪くされましたか?」
「ううん。何でもないよ…」

もしかして久遠さん、人を愛することに怖気づいたんじゃないかしら…。
今までずっと立ち止まっていた場所から一歩を踏み出すのは、とっても勇気がいる事よね?

ううん。絶対そうよ!!溺れる者は藁をも掴むって言うじゃないの。だからこんなにも不安そうな顔をしてるんだわ!
久遠さん、誰でもいいから傍にいて欲しいって思ったのよ!

それなのに…

キョーコのバカバカ!!
「どうして?」なんて久遠さんに尋ねるなんて!迷える子羊を更に迷走させてどうするのよ。天使失格よ!!

泣きそうな顔で、自分の頭を両手でコツコツと叩き始めたキョーコに、固まっていた蓮が慌てて声をかけた。

「何してるの!止めなさいキョーコち「わかりました!!!」」

ん?
この子は何が分かったんだ?…俺の気持ちに気付いたって事?

…いや。何かを決意したような、この真剣な顔は告白を受けた女の子の顔じゃない。寧ろ判決を聞く被告人のようじゃないか?

「久遠さん、本当にそれが1つ目の願い事でよろしいのですね?」
「……うん。俺は本気みたいだよ?」

じっと蓮を見つめていたキョーコが、勢いよく蓮の腕から抜け出した。

「えっ!?」

突然腕の中から飛び立った小鳥に蓮は悲しそうな顔を向けると、キョーコはベッドから降りて床に膝をついて、目を閉じ胸の前で祈るように両手の指を組んでいた。

「キョーコちゃん?」

蓮の動揺を余所に、少しの沈黙の後キョーコはゆっくりと目を開いた。

「…1つ目の願いは主に届きました。久遠さんが迷わずに前へと進めるように、私が足元を照らす光となりましょう」

決意を全身から溢れさせながら、キョーコは蓮を慈愛に満ちた表情で見つめている。

足元を照らす光ってどういう事だ?君は俺の告白をどう受け止めたんだ?
…全然分からない。分からないけれど、夢に整合性を求めても仕方が無いか。

「それでは失礼しますね?」

そう言うとキョーコは蓮のベッドへとモソモソと潜り込んで、蓮の胸にぴとりと顔をつけた。

「ッ…キョーコちゃん!?」
「この前はお布団越しでしたけど、これからは温もりがきちんと届くように、こうやってお布団の中で一緒に眠りますから、どうぞ安心してお休みください…うーん。もっと伝わるように服は脱いだ方がいいかしら?久遠さんも脱ぎます?」
「いいから!そのままで十分伝わるから!!」
「そうですか?じゃあ、服のままで失礼いたします」

今だって理性を総動員させているって言うのに、裸の君を抱きしめたりなんかしら、本能が暴走するに決まってるじゃないか!!
こんな状態で安心して眠れって…寝られる訳が無いだろう!!

まさか俺は君にとって子供のような存在なのか?…そうだ。天使なんて見た目と年齢なんて比例しなさそうだよな?
…本当は世間の酸いも甘いも極めた齢(よわい)数百歳の大変立派なレディだとか?

「ねぇ、キョーコちゃん。君は何歳なの?もしかして俺より年上、とか?」
「えっと…地上の暦で言うと、今年18歳になります。…もしかして、久遠さんは新米駆け出しの天使なんてお嫌でした?もっと上手に子羊を導かれる上級天使をご希望でしたか?」

不安そうに眉根をギュッと寄せたキョーコに見つめられて、蓮は慌てて首を横に振った。

「違うよ。俺の前に現れたのがキョーコちゃんで本当に良かったと思ってる。キョーコちゃんじゃなかったら、こんなに早く願い事なんて思いつかなかったよ」

そう。こんな風に抱きしめたいなんて思わなかったはずだよ。

「エヘヘ…。じゃあ良かったです。私も久遠さんに出会えて良かったです」

哀しそうな表情から一転して笑顔になったキョーコに、自分に会えて良かったと言われた蓮の心臓はドクンと跳ね上がる。
無意識のうちに、蓮はキョーコに腕を回して抱きしめていた。

「本当にキョーコちゃんは温かいね」
「どうせ子供体温です。 久遠さんの願い事を1つ叶えて差し上げられたからでしょうか…安心したら、私の方が眠くなってきてしまいました…。ふあぁぁ…」

あくびまで可愛いく見えるなんて…。恋の病って、相当進行が速いぞ?
俺、夢の中で天使に手を出さないか心配になって来たよ。
…夢なら手を出すのもアリかな?

チラリとキョーコの顔を窺えば、もう限界とばかりに目をこすっている。

…今日のところは可愛い寝顔を見ることに専念するよ。

蓮はクスリと笑いながら自分の腕の中で半分眠りに落ちたキョーコの髪に顔を寄せて、優しく子守唄のように囁いた。

「お休み。キョーコちゃん。俺の腕の中で、いい夢を」
「…おやすみなさい…久遠さ…」


**


「ちょっと蓮、こっちに来い」
「…なんでしょう、社さん」

いいから、と眉間にしわを寄せた社に促されて、蓮たちは打ち合わせの席を外した。

「お前、なんて顔をしてるんだよ!」
「は?」
「気づいてないのか?今のお前の目つきはまるで華厳の滝のツララのようだぞ!相手が怯えてるじゃないか!!」

ほらっと窓に映った自分の顔を見るように促されて、ようやく『敦賀 蓮』の仮面が剥がれかけていたことに気付いた。
打ち合わせをしていたテーブルを振り返れば、今まで話をしていた担当者が不安そうにチラチラとこちらを窺っている。

「…すみません。ちょっと考え事をしていました」
「ここは職場だ。本性はきちんと隠せ」
「いや、本性って…。すみません。すぐに立て直しますから」

蓮は苦笑しながら自分の両頬をペチペチと叩いた。

「おい、大丈夫か?何か心配事とか悩みがあるなら相談に乗るぞ?」
「ありがとうございます。でも大丈夫です」

…夢の話をどうやって説明すればいいんだ…。


夜、ふと気づくと自分の腕の中ですやすやと穏やかな寝息を立てているキョーコの体温に安心して深い眠りへと落ちる。
それなのに朝、眠りから醒めると抱きしめていたはずの天使は跡形もなく消えていて、ぽっかりと胸に穴が空いたような喪失感を味わう毎日を繰り返していた。

まぁ、俺の妄想の産物なんだけど…。キョーコちゃんが分け与えてくれる温もりを感じながら眠れるだけで十分幸せだと思っていたのに、朝になるとそんな幸せなんて始めから無かったのだと実感させられる毎日に苛々してるなんて。

恋って、人をどんどんと欲深くさせていくものなんだな…ってまさか俺、夢の中の天使に恋い焦がれてるのか!?

…駄目だ。重症だ。


蓮は顔に手を当てて、がくりと項垂れた。



続く



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