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   コングラッチェ 20   


引き続き、間違った京ことばで申し訳ないコングラです。本当に申し訳ないです。
間違っていると言えば、昔後輩君が名刺交換する時に、○○でござる!ってお客さんに名刺を差し出してました。
ござるって…。


「松太郎!!!!!」

母親の怒声にハッと我を取り戻したショータローが恐る恐るキョーコの様子を窺えば、キョーコは体を硬直させ、瞳からは光を消していた。

しまった、と思っても遅かった。
自分を頼ろうとしない、自分から離れていくキョーコをどうにかこうにか振り向かせたくて、ショータローは絶対にキョーコが反応を示す『母親』と言うナイフを振りかざしてしまった。

「っ…ゴメン…」

蚊の泣くような、か細い声で謝りながら冷や汗を滝のようにタラタラと流すショータローの様子に、蓮と千織はキョーコと母親の溝の深さを感じ取った。


私、やっぱりお母さんに捨てられたのかなぁ…。
良い子じゃないから?テストで100点も取れないバカだから?

…違うよね。小さい頃からお母さんと暮らしてないんだから、私が良い子か悪い子かなんて分かる筈もないもの。
最後に会ったのも中学校の入学式だから…もう5年も会ってないんだぁ。その入学式だって、当日の朝に来て、式典だけ参列してそのまま帰って行ったもんね…。

あれ?「帰る」って変じゃない?

お母さんの帰る場所は私の居る所じゃないって、私、ちゃんと分かってるんだ。

…それじゃあ、やっぱりショーちゃんが言うとおり、私の帰れる場所ってどこにも無いのかなぁ…


父親の位牌を固く握る指先からは、とうに血の気が引いている。それでもキョーコが縋りつけるものは、もう父親の位牌しかないように思えて、握り締めることを止められなかった。


「キョーコちゃん、ほんま堪忍な。うちのアホの言葉なんか忘れてや?反省しとるみたいやし、後できっちりしばいておくさかいに。おばちゃんに免じて許したって?この通り」

申し訳なかったと、ショータローの母親は座卓に手をついてキョーコに頭を下げた。
その姿に、キョーコは慌てた。

「いいんです!女将さん、頭をあげてください!大丈夫です、わかってます。ショーちゃんも、口が滑った事を後悔してるって、ちゃんと分かってます」
「それにな…冴菜ちゃんかて、ほんまはキョーコちゃんと暮らしたいんよ?あの子も…ほんまアホやさかい…でもな、これだけは信じたげて?」

…信じろって…それはちょっと難しいなぁ。

キョーコは返事をせず、へらりと笑って見せようと無理に口角を上げようとした時

「最上さん、もういいから」
「え?」
「こんな時にまで我慢なんてしなくていいよ。良い子でいる必要なんて無い。歪んだ顔で無理に笑う必要なんて無い」
「でも…」
「思いっきり傷ついたんだろう?だったら感情を爆発させればいい。
ほら、天宮さんを見てご覧。自分の事以上に興奮して今にも不破君に躍り掛かりそうじゃないか」

蓮の言葉にキョーコが千織を見れば、闘志を燃やして牙を剥き出しにした山猫のようにショータローを睨みつけていた。

このクソバカ…キョーコさんをこれ以上ない位に傷つけるなんて…怒りで体が震える事って本当にあるのね…

「…一思いに殺されたいって思うような生き地獄を味わわせてやるから覚悟しておきなさい…」
「ああああ天宮さん!?」

いやーーっ!天宮さんの後ろに毒オーラのブラックホールが見えるーっ!!
女将さんもオロオロとしちゃってるわっ!

「まぁ、アレは極端すぎるから置いておいて…。君とお母さんの事は…お母さんが何を考えているのかは、追々きちんと聞けばいい。
聞いて理解した上で、じっくり考えて…その後に最上さんの納得する答えを出せたらいいんじゃないかな?」
「…はい」

先生の言葉がさらさらと心に浸み入ってくる。
…ショーちゃんに傷つけられた所や、お母さんを求めて干からびていた所に浸み込んで…満たしてくれる。
不思議だな…。こんなにも先生の言葉をすんなりと受け入れられるなんて。

キョーコが位牌を握り締めていた指の強張りが解けていく。
蓮はその様子を見てほっと息をついた後、ショータローの母親に笑顔で向き直った。

「さて…最上さんの住む場所ですが、「うちに来ればいいわ」」
「へ?天宮さん?」

突然の千織の申し出に、キョーコも、ショータローの母親も驚いた。
一瞬、ピクリと眉を引くつかせた蓮もすぐに紳士然とした笑顔を取り戻した。

「部屋も余ってるし、うちのママはあんな調子だからウェルカムだって言うに決まってるわ。それにうちは母子家庭だからデリカシーの無い男も居ないから気兼ねも要らないわ」

千織はジッとショータローを睨みつけた。

「チッ」
「これっ松太郎!どこ行くんや!!」

不貞腐れたショータローは蓮たちを一睨みした後、母親を無視して部屋を出て行く。
ショータローの母親も額に手をあてて瞑目するしかなかった。

「ほんにしょーもないアカンタレやわ…申し訳ございません」
「いえ…。それより最上さん、天宮さんの家でお世話になるのはどうだろう?」
「でも…」

不安そうに千織を見れば、さっきまでショータローに闘志を向けていた山猫がそこに居た。

「ひゃぁっ!」
「だから何回言えば分るのよっ!!こんな時くらい私を頼りなさいって言ったでしょーッ!!」
「ふわいっ!!!」

シャーッ!と一括された子リスは尻尾を丸めて蓮の腕に抱きついた。

「こらこら。無闇に小動物を威嚇するものじゃないよ。可哀想に…最上さんが怯えてしまったじゃないか」

蓮は笑いながらキョーコの髪をさわさわと撫でた。

「…まぁ物は試しで、うちで暮らしてみればいいわよ。現実問題、買い揃えなきゃいけない物も馬鹿にならないわ。
服なら私のを着回せばいいし、日用品だって女の子同士の方が色々と都合がいい筈よ。じゃ、話も決まったことだし帰りましょう。キョーコさんも疲れたでしょ?」
「え…う、うん…」

キョーコは千織に曖昧に答えて、ソワソワと落ち着かない様子でショータローの母親を見つめた。

キョーコちゃん、わての誘いを断る事を申し訳なく思ってるみたいやねぇ…。そんなに気ぃ使わんでよろしいのに…。
それにキョーコちゃんも、松太郎の嫁になってくれそうもないしなぁ。

ショータローの母親はチラリと蓮を見た。蓮は相変わらず胡散臭い紳士面で自分を見つめている。

…松太郎程度じゃあ敵わんやろねぇ。キョーコちゃんもさっきからこの先生を頼りにしているみたいやし…。

ショータローの母親は笑いながらふーっと大きくため息をついた。

「わかった。キョーコちゃんに任せるわ。それに困った時に助けてくれるお友だちがいてくれるんやね。でも、うちだっていつでも戻って来てくれて良いんよ?忘れんといてな?」
「…はい。ありがとうございます」
「それと敦賀先生」
「はい」

ショータローの母親は無言でジッと蓮を見据える。

政治家や財界の大物たちが贔屓にする一流の料亭を切り盛りする女将にとって、蓮のような若造の胡散臭い紳士の仮面を剥ぎ取る事など造作も無い事だった。

観念した様子仮面を取り払った蓮は、肩で大きく息を吐いた後、真剣な表情でぐっと腹に力を入れてショータローの母親と対峙した。

「ほんに、うちの娘の事をよろしゅうお頼申します。もしも千に一つでも泣かせたら…その時はわかってまっしゃろな?」
「万に一つだって泣かせたりしません。…最上さんの事は俺が護ります」

「おおお女将さん!?何を言ってるんですかっ!先生も…そんな…」
「誤魔化そうとしても無駄だったって事だよ。大丈夫。今度ここに伺う時は、結婚の報告かな?」
「けけけっ…先生、何を言うんですかぁーーっ。もうどうしたらいいのか分かりません!!」

キョーコは真っ赤になって、困ったように眉を下げて千織に抱きついた。

「全く…。先生は調子に乗り過ぎよ。キョーコさんが困ってるじゃないの」

千織はニヤリと片頬を釣り上げて蓮を嘲笑った。

はいはい。最上さんが俺じゃなくて千織を選んだ事を勝ち誇りたいんだな?
本当に良い性格だよ。


絶対に最上さんの事は俺が護り抜いて見せる。


**


ショータローの家を辞去した後、キョーコたちは蓮の車を停めたコンビニに戻った。

「とりあえず歯ブラシとか、替えの下着とか買った方がいいよね?」
「うーん…家にあるからいいよ。それよりお兄ちゃん、アイス!!ハーゲンダ○ツ箱買いしていいよね?」
「いいけど千織太るよ?最上さんも食べる?君は少し太った方がいいよ?」

いつも通りに接してくれる蓮と千織の態度がキョーコには嬉しかった。

帰り際、ショータローの母親から位牌を包めるようにとタオルも貰った。そこで始めて、剥き出しの位牌を持って悲壮感を漂わせていた自分に気付いた。

…住んでいた所が水浸しになっただけじゃないの。そうよ、電化製品は壊れちゃったかもしれないけど、それ以外は洗って干せば使える筈よ。
大丈夫!教科書だってまだ買ってなかったからセーフだし、参考書とかも机の中だから、多分大丈夫!!

前向き前向き。私の取り柄は前向き!
明日、明るくなったらアパートに行ってみよう。使えるものは全部回収よ!!

「私、抹茶のアイスが食べたいです!!」

キョーコは蓮と千織がいるアイスの棚に歩み寄った。



つづく。



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