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   ユメマボロシ 4   


夢と現実が曖昧になったこと…。
子供の頃、夢の中でゲームを買ってもらって、起きてそのゲームを探したことがあります。
ナーにも可愛い子供時代があったという話です。


「仕方ない…そろそろ戻るかぁ」

テレビ局のカフェテリアの時計をチラリと見た後、社は意を決して席を立った。

でもまだ蓮の奴寝てるよなぁ。

仕事の合間に楽屋で仮眠が取りたいなんて、相当疲れてるよな。
もしかして悩み事のせいで夜もろくに眠れないとか?出来ることならもう少しでも寝かせてやりたいけど…。

楽屋へと向かう社の歩みがノロノロと遅くなる。

でもそろそろ出番だしな。起きぬけの顔で収録になんか出せないし…頬に畳の跡が付いた顔なんてカッコ悪いよなぁ。
プププッ。それはそれで人気が出そうだな。超完璧俳優のちょっと残念な姿っていうのもアリだよな?

コンコン、と控え目なノックをして社が楽屋のドアをそっと開けると、蓮は大きな体を畳に横たえて、入り口に背を向けていた。
手前にあるテーブルで視界が遮られていて良くは見えないが、熟睡しているようでゆっくりとした呼吸にあわせて肩が上下していた。

おっ。畳跡チャンス。

「蓮、そろそろ…」

ぐっすりと眠る蓮にそっと近づこうとした社が数歩進んだところでピキリと固まった。


…蓮が巻き付いてる物は一体何だ?

シーツ?抱き枕?いやいや、そんなもの持って来ていないし、楽屋に置いてあるはずもない。

それに蓮が足を絡めている白い布から見えるのは……人の足じゃないか!!

恐る恐る首を伸ばして覗き込むと、大きな肩の陰に、ほよほよと蓮の穏やかな寝息に揺れる栗色の髪が見えた。





社は回れ右をして楽屋を出ると、そっと閉めた楽屋のドアにもたれ掛かった。

…落ち着け、俺。驚いている場合じゃない。
蓮に好きな子が出来ようが誰と付き合おうが構わな…くはないが、今はそんな話はどうでもいいんだ。


アイツ、神聖な職場に女の子を連れ込んで何ばしちょるとかーーーーーっ!!!!!


わなわなと震えながら、社はガンガンともう一度ドアを叩いた。

「蓮、入るゾッ!!」

勢いよくドアを開けると、そこには蓮が先程と同じ体勢で寝ていた。但し蓮は何も抱き締めてはいないし、栗色の髪の少女の姿も見当たらない。

社はあんぐりと口を開いたまま横たわる蓮を凝視した。

「ん…。そんなに大きな声で起こさなくても…時間ですか?」
「あ、あぁ。…すまん。そろそろ起きてくれ。」

のそりと身を起こした蓮は両手を天井に上げて大きく伸びをして見せた。
そんな蓮には目もくれず、社は楽屋の中をキョロキョロと見回して、ハンガーに架かった蓮の衣装の裏にも人が隠れていないことを確認している。

「どうかしましたか?何か探し物ですか?」
「いや…。気にしないでくれ。…お前がセコセコ働いてる間に俺も仮眠取ろうかな?」
「はは。そうしてください。仮眠のお陰で頭もスッキリしましたよ」

幻覚を見るなんて、俺も相当疲れてるんだなぁ…。そりゃあそうだよ。日本一忙しい俳優のマネジメントをしているんだから、日本一忙しいマネージャーだと言っても過言じゃな筈だ。…うん。疲れてるんだ。

「…明日は午後からオフだ。もう少しだけ頑張ろうな。俺。」

社は眼鏡を外して目頭をグリグリと揉みながら、自分に言い聞かせるように呟いた。


**


うつらうつらしていた蓮が横たわるベッドが僅かにたわむ。

…あぁ、キョーコちゃんが今日も添い寝をしにやって来てくれたんだ…。

ふわりと香るキョーコの匂いに、蓮の胸がきゅっと締め付けられる。

「…やぁ、キョーコちゃん。今日も来てくれたんだ…毎日良く続くね?」
「すみません。起こしちゃいましたか?…続くって…久遠さんが願った事じゃないですか。それを違えるだなんて、我が主が許して下さるはずがありません」
「本当にキョーコちゃんは君の主が好きなんだね。ねぇ、君は俺よりもご主人様の方が好きなの?」

俺の為じゃなくてご主人様の為に、君は今ここに居るの?

ジリジリとした焦燥に蓮は閉じていた瞼を開くと、真っ赤になったキョーコがフルフルと震えながら蓮を見上げていた。

「久遠さんっ!あなた何をおしゃるんですか!?私がお仕えしているのはこの世の創造主ですよ?たとえ喜怒哀楽の”哀”を”愛”にしておけば良かったと、日に3度は床を転げ回っておられようが、唯一の存在なのです!!それを…そのお子達である人のあなたが何という発言をなさるのですか!!」

キョーコの怒りを鎮めようと、蓮は宥めにかかる。

「ゴメン、キョーコちゃん。そうだよね、天使の主人と言ったら神様だよね?その…君が全幅の信頼を寄せているご主人様に嫉妬しちゃったんだよ」
「…久遠さん、あなた今、嫉妬したとおっしゃいました?」

キョーコは真っ青になってがくがくと震えはじめた。

赤くなったり青くなったり忙しいな。本当に見飽きないよ。
よく笑ってよく怒って。感情を素直に出して、全身で伝えようとしてくれる。…うん。ずっと見ていたいな。

「久遠さん、嫉妬なんて感情を持ってはいけません。それは罪です。あぁ7つの大罪ってご存知ですか?」
「えっと…傲慢、憤怒、怠惰、嫉妬、強欲、色欲、暴食…だっけ?」
「そうです!その嫉妬などと言う感情に久遠さんが支配されるだなんて…恐ろしい事です!せっかく愛を取り戻し始めた心にそんな感情は毒にしかなりません!さぁ、今すぐそんな悪感情からは決別しましょう!!」
「でもこればっかりは、1人ではどうにもならないよ…」

哀しそうに笑う蓮の肩にガシリと両手を置いて、キョーコは真剣な表情で蓮を見下ろした。

「久遠さん!!私はあなたの足元を照らす光となると誓いました!私を信じて頼って下さい!!
久遠さんには私が付いていると言ったのを、もう忘れちゃったんですか?それとも私なんかじゃ、頼りにならないですか?」
「…手伝ってくれるの?」
「勿論です!」
「ほんとに?」
「本当です!天使に二言はございません!!」

それじゃあ…。

「2つ目のお願いが決まったよ」
「ふえええぇ!?今ですか?」
「今じゃなきゃもう駄目だ…手遅れになってしまうよ」

手遅れ?手遅れになってしまうですって??
久遠さんが悪に心を染めてしまっては、また愛を拒絶するに決まっています!

「そんなの駄目です!!」
「俺もこんな感情を抱き続けるのは嫌だよ。でもこの願いが叶えば、俺は『嫉妬』っていう大罪をこの先一生犯さずに済むと思うんだ。それに、絶対に『人を愛する』事が出来るよ」
「本当ですか!?…分かりました。仰って下さい。今すぐマッハで叶えて差し上げます。さぁ!!」

「キョーコちゃん…。人間になって、俺と一緒に暮らしてください」


・・・


「ふえぇぇぇっ?久遠さん!?あなた一体何を言い出すんですかーーー!!!」


反応までに随分と時間がかかったな?

「だって俺は君の主に嫉妬してしまったんだよ?だから君をもうご主人様の処になんか帰したくないんだ。もしも夜が明ける度に帰ってしまうなら…きっと俺の嫉妬は際限なく膨れ上がって、最後には俺も悪魔になってしまうんだろうね…」
「そっそんなの駄目ですぅーーーっ!」
「それにね、『人を愛する』ようになるのだって、今のままじゃあもう駄目な事が分かってしまったんだ」
「えぇっ!?そんなぁ…」

キョーコは悲嘆に暮れた顔で蓮を見つめている。

「でもね、キョーコちゃんが人間になってくれれば…人を愛することになると思うんだ」
「へ?…久遠さん、意味がよく分かりません」

頭にハテナをたくさん浮かべながらキョーコは小首を傾げて蓮を見つめた。

「だから…。俺はキョーコちゃんが好きなんだ。きっと愛してる。…もう君以外を好きになんてなれないよ」

今度は頭にびっくりマークをたくさん浮かべながらキョーコは目を見開いている。

「くくく久遠さん、あなた正気ですか?」
「正気だし本気だよ。俺、君に不自由させない程度には甲斐性もあると思うんだ。結婚して君に似た子どもと幸せに暮らすのっていうのはどうかな?」
「えぇっ?でもでも、私たちまだ出会って間もありませんし、きちんと会話をしたのだって、たったの3回ですよ?」
「いいんじゃない?それとも天使は移り気なものなの?キョーコちゃんは軽子(ケーコ)ちゃんなの?」
「そっそんなことありません!何ですかケーコって!!」

うん。テンポのいい会話も心地が良いな。
…絶対にこの子が欲しい…キョーコちゃんしかいらないよ。

「…駄目?」
「そっそんな可愛い顔してっ!!まるで悪魔の誘惑のようです!!」
「神の子に向かって悪魔だなんて酷いなぁ。キョーコちゃん、俺に愛する心を取り戻して欲しいんでしょ?」
「そっそれはそうですが…」

もうひと押しか?

「俺はもうキョーコちゃんしか愛せないんだ。もしもキョーコちゃんがこの願いを受け入れてくれないなら、きっと…いや、絶対に一生このまま『薄っぺらい愛の演技』しか出来ないんだよ…君のご主人様もがっかりするだろうね…」

そう言うと蓮は哀しそうにキョーコから目を逸らした。

「久遠さん…」
「キョーコちゃんは俺の事、嫌い?」
「ふええぇっ……」

蓮は熱くキョーコを見つめると、その視線を一身に受けたキョーコは顔を真っ赤に染めて蓮の本心を確かめるようにか細い声を絞り出した。


「久遠さん、本当に私の事を…その…本気なのですか?」

「本当に…神に誓ってもいい。君のことが好きなんだ。もう会えるのが夢の中だけなんて我慢の限界だよ」


「…分かりました。私も覚悟を決めました」

…引っかかったか?

キョーコは蓮の抱擁から抜け出し、蓮の横にぺたんと座った。
蓮も起き上がり、キョーコの正面に座り直す。

「キョーコは人間となって久遠さん、あなたと添い遂げましょう。どうぞ末長くよろしくお願いいたします」

キョーコは三つ指をついて蓮に頭を下げた。

天使のくせに、大和撫子風なんだね!!

「こちらこそよろしくね。絶対に他の男になんか心を奪われちゃ駄目だよ?」
「だから私はケーコじゃないって言ってるじゃないですか!!」
「うん…でも君が可愛いから心配なんだよ」
「またそんな調子のいいことを言って…」

あれ?俺、独占欲が物凄く強い男だったのか?
…面白い発見だな。

蓮はくすくすと笑いながら、頬をぷくっと膨らませているキョーコの両頬を摘んでプスッっと空気を抜いてから抱きすくめた。

「さ…そろそろ寝ようか。…あぁ、夢の中で寝ようなんて可笑しいね」
「?はい。久遠さんお休みなさい。いい夢が見られますように」
「これからは…寝ても醒めても君と一緒にいられるなんて…本当に夢みたいだよ」



続く



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