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   コングラッチェ 21   


コングラでございます。
コッチはコッチで全く春休みが終わりません。いつになったらキョーコちゃんの新学期が始まるんでしょうか。


「天宮さん、その…おばさんも本当に私がご厄介になる事を了承してくれているの?」
「もう、本当に心配性ねぇ。大丈夫よ。ママにメールしたら、了解って絵文字で返事があったし。ほら」

相変わらず軽いでしょ?と蓮の運転で千織の家に向かう後部座席で、千織は笑いながらキョーコにスマホを差し出した。
キョーコは緊張から解放されてほっと息をついた。

「ホントだ、ハートマークまで踊ってる。やっぱり天宮さんのお母さんて可愛いよね」
「可愛い?ただの妖怪トシトラズよ。美容業界のカリスマなんて言われてるから調子に乗ってるのよ」

げんなりとした顔で千織はキョーコからスマホを受け取る。そんな2人のやり取りを、蓮はバックミラー越しに見てくすくすと笑っていた。


「さ、着いたよ」
「あれ?」

ここ…見覚えがあるような…。でもマンションの駐車場なんて、どこも同じような作りなのかな?でも…

「天宮さんの家って、先生のマンションの駐車場と同じ作りなのかな?」
「え?同よ?」
「あ、やっぱりそうなんだー。てっきり天宮さんの家と先生の家が同じマンションなのかと思っちゃった」
「だから同じマンションなんだってば。…あ、そっか。キョーコさん、うちにはエントランスからしか入った事ないし、お兄ちゃんの部屋からは直で駐車場だったもんね。ここの最上階がパパの家で、お兄ちゃんはそこに住んでて、その下がママのモノなのよ。だから同じマンションに上下で住んでるの」
「あぁ、そうだったんだ…」

離婚したって言ってもこんなに近くては実感もわかなかったと千織は飄々と話した。

同じマンションに住んでるなんて知らなかった。だから私が倒れた時、先生は天宮さんを簡単に呼び出したんだ。

「さ、行こう?」
「うん」

キョーコは千織に手招きされてエレベーターへと向かった。


「キョーコちゃん!!!大丈夫?可哀想に、びっくりしたでしょう?」
「おばさん…ありがとうございます。すみません。少しの間ご面倒「ストーーーップ!!」」
「へ?」

千織の母親はペコリと頭を下げたキョーコの頭を左右からガシッと握って、そのまま元の位置へと戻した。

「まずあなたに言っておかないといけないことが2つあるわ。良く聞いて頂戴!」
「は、はいっ」

千織の母の勢いに、キョーコはビシリと姿勢を正した。

「まず、面倒なんかじゃないから!!ここはあなたの家と思って頂戴!遠慮なんか要らないからね?」
「…はい。ありがとうございます」
「そしてコッチが一番重要よ?もしも間違えたら、たとえキョーコちゃんでもお仕置きするからね?」
「おっお仕置きですか?」
「そう!」

なっ何だろう?門限とか?宿題を忘れちゃ駄目とか?

ゴクリと喉を鳴らした。

「いい?私の事は『テンさん』もしくは『ママ』って呼びなさい?もしもまた『おばさん』なんて呼んだら…そうね、そのすべすべのお肌で美容グッズの実験体になってもらうからね?」
「えっ?それって全然お仕置きじゃなくてご褒美じゃないですか」
「分かってないわねぇ。全身隈なくオイルを塗られて、塗心地やら浸透率やらそこらじゅうのデータを取られるんだから。恥辱の限りを晒されるのよ?」
「ひょえっ!ちっ恥辱の限りですか!!」
「千織ったら恥辱だなんて失礼な子ね。私のサロンに来てくれるお客様の為により良いものを提供したいじゃないの。私は美の伝道師なのよ!?」

プリプリと怒る千織の母親を千織は面倒臭そうに見つめている。

「そっそれじゃあ…テンさんって呼ばせていただきます」
「うん!よろしくね!」

可愛い…私より身長も低くて可愛らしい人が先生と天宮さんのお母さんだなんて、本当に何歳なのかしら。
天宮さんもさっき妖怪って言ってたけど…聞かないで黙っておこう。さっそく人体実験されてしまうわ。

「ちょっと、お兄ちゃん。何アイス食べながら寛いでるのよ。そろそろ自分の家に帰りなさいよ」
「良いじゃないか。俺の部屋まだあるだろ?今日からこっちに住むよ。はい、最上さん抹茶アイス」
「あっありがとうございます」

満面の笑みでキョーコにアイスとスプーンを渡す蓮に、千織は眉間の皺をグッと深くした。

「何言ってるのよっ!お兄ちゃんがいたらキョーコさんがゆっくりできないでしょ!」
「でもほら、男手があった方が何かと便利だと思わないか?最近何かと物騒だし。あと虫とか出たらどうするの?対処できないでしょ?」
「…キョーコさん、どうする?私は家族だからどっちでもいいけど、こんな大男がそばに居たらゆっくりできないでしょ?」

蓮に冷たい視線を送っていた千織が振り返ってキョーコを見ると、キョーコはソワソワと視線を泳がせていた。

「えっと…その…」

その様子に千織も少し驚いた表情を見せた。

「よし!パジャマ持って来るよ」
「あっあのっ!!」

キョーコの態度に答えが出ているとばかりに、返事を聞く間もなく蓮は部屋を出て行く。
その様子をテンと千織は残念そうに見送った。

「何だか蓮ちゃん、中学生に戻ったようだわー。」
「中学じゃ済まないわよ。幼稚園児のお泊り会並みよ。キョーコさん、あれが本当のお兄ちゃんだと思ってくれていいから。ってお兄ちゃん、鞄忘れてる!!」

ソファの脇に置かれたままの蓮の鞄を掴んで千織は蓮の後を追った。


「お兄ちゃん鞄!!」
「あぁ、ありがとう」

エレベーターをソワソワと待っていた蓮に千織が鞄を差し出した。

「…なに人の顔を見てニヤニヤしてるのよ。気持ち悪いわね」
「いや、今日社さんに言われたことを思い出してね…。まさか千織とこんな風に話すようになるとはね」

社さん、お兄ちゃんに何を吹き込んだの?…後で本人の口から吐かせなきゃいけないわね。

「そんな怖い顔するなよ。お前が俺と仲良くやっているのが意外だって言われただけだよ。ほら、社さんとは学生時代からの付き合いだから、お前が俺を完全に無視していたことも知ってるし?」
「…別に私はお兄ちゃんと仲良くしたい訳じゃないの。キョーコさんに相応しい男を見定めてるだけよ」
「見定めるって…。お前の御眼鏡に適わなかった奴はどうなるんだよ?」
「そんなモノ、ただの馬の骨よ。粉砕して二度とキョーコさんに近寄らせないだけ。…手段は聞かないでね?」

ニヤリと笑う千織に蓮はぶるりと震えた。

「私、キョーコさんには本気で幸せになって欲しいの」
「そうだな」
「…私、キョーコさんの事を最初は馬鹿にしてたの。不破君なんかに全てを捧げちゃってたし、救いようのない馬鹿女だと思ってた。ううん。蔑んでさえいたわ。でもあの子、頭がいいじゃない?テスト前にノートをコピーさせてもらおうとしたら、分からないところがあるなら一緒に勉強しようとか言われちゃって。…こっちがあの子を利用しようとしてたのに、そんなモノにも気づかない位に、人の事を大切にするの。お人好しなの。いつの間にか生徒会長まで押し付けられちゃって。コッチがハラハラして、書記になんてなっちゃったわよ」

蓮はクスリと笑って千織の話を聞き続けた。
その間にエレベーターは開き、誰も乗せないまま階下へと降りて行った。

「それから不破君を構うあの子をずっと観察するようになって。ショーちゃんショーちゃんって、うるさい事この上無かったわ。そのくせ不破君がキョーコさんじゃない誰かと親密そうにしていても、ぐっと我慢して。不破君の隣に座って肩を抱かれてる女の子を、あの子はほんの少しだけ羨ましそうに見つめて、背中を丸めてため息をついてるのを何回も見かけたの。そんなにその場所が欲しいなら…不破君の隣は自分じゃなきゃ嫌だって思うなら、その女と戦えばいいのにってずっと思ってた」

少し前までよく目にしていた、キョーコがショータローを構う様子を思い返して、蓮の心にドロドロした想いが淀む。

「でも今日、キョーコさんのお母さんの話を聞いて、凄く納得がいったの」
「…何に?」

勿体ぶらずに話せと促す蓮に、千織はふーと大きく息をついて話を続けた。

「…あの子、実の母親に愛されないような子が不破君に…ううん。誰かに好きになってもらえる筈が無いって心の奥底で思ってるのよ。だから人を押し退けてでも前に出よう、不破君の隣を死守しようなんて考えが最初っから無かったのよ。…本当に馬鹿よ」
「千織…」
「あんないい子を放置するなんて、キョーコさんの母親は大馬鹿だわ!!」

千織の目からは悔し涙が溢れていた。

「…だから、お兄ちゃんが本気でキョーコさんを好きだって、幸せにしたいって言うなら私は応援するし、邪魔もしないわ。でも、お兄ちゃんがキョーコさんを傷つけたら…分かってるわよね?命乞いしたって許さないわよ?」
「千織…ありがとう。絶対にお前を失望させないよ」
「フンッ。格好つけてないで早くパジャマ取ってくれば?」

思いがけず聞けた千織のキョーコへの想いに、蓮は微笑んで千織の頭を優しく撫でた。


**


蓮がリビングでノートパソコンを広げて仕事をしていると、背後からカチャリとドアが開く音が聞こえた。
振り返ると、パジャマ姿のキョーコがほてほてと歩み寄ってきた。

「どうしたの?目が醒めちゃった?」
「…お手洗いをお借りしたくて…」
「あぁ、リビングを出てすぐ左だよ」
「ありがとうございます」

他人の家で慣れてなくて起きちゃったのかな。2時か…そろそろ俺も寝るか。

データを保存してパソコンのシャットダウンを待っていた蓮の肩に、ずしりと温かい重みがかかる。

「え?…っわっ!!」

驚いて振り返ろうした蓮は、重心の定まらないぐにゃりとした重みを受け止めそこねてバランスを崩し、そのままラグに倒れこんだ。

「痛…。頭打った」

少し痛む後頭部をさする事もなく、蓮は自分の上に倒れ込んできた、すうすうと穏やかな寝息を立てているモノの背中に腕をまわす。

…寝ぼけたのか。そうだ。最上さんの家は玄関から入ってドアを開ければすぐにベッドだったよな…。
君の家の感覚で言うと、ここがベッドだったんだね。

くすりと笑って、蓮はキョーコの耳元で優しく語りかける。

「最上さん、こんなところで寝たら風邪をひくよ?」
「ん…」

温かい…それに最上さんの甘い香りがする。

蓮は無意識のうちにキョーコをそっと抱きしめる。

「お…さん…」

微かな呟きにハッとしてキョーコの顔を覗き込めば、目尻には涙が乾いてできた幾筋もの跡があった。

最上さん、君は独りで泣いていたの?
不破君の家を出た後、普通そうにしていたのは俺たちに気を遣わせないように、普通を装っていただけだって言うの?気丈に、笑って見せていたの!?

本当は悲しくて悲しくて、どうしようもない程哀しいのに!!

「最上さん…キョーコちゃん…キョーコ…お願いだから独りで泣かないで」

君に寄り添いたいと願っている奴がここに居ることを、どうか気付いて。
もしも気づいてくれないのなら、どんな手段を使ってでも気づかせてみせるから。

だから…

「明日は君の心が少しでも晴れますように…」


蓮はキョーコの涙の跡をそっと優しく唇でなぞった。



つづく。



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