HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  黒猫の希い  »  黒猫の希い 17

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   黒猫の希い 17   


黒猫です。
捻り出した感がアリアリです。でももう自分でも捏ねくり回してよく分からなくなってきたので、
えいやーっ!で投稿です。コッソリ再度捏ねくるかもしれませぬ…。


「不安がらなくても大丈夫。この家の人たちがキョーコちゃんを温かく迎えてくれるから」
「うん…」

キョーコの静養先となるローリィの家が近づくにつれてキョーコの口数は徐々に減り、最後は喋ることを止めてしまった。

ローリィの私邸だという英国風の洋館は、全面スクラッチタイルが貼られた3階建てで、2階のバルコニーが玄関正面に設けられた重厚な意匠の洋館だった。

「ようこそ、キョーコ君。今日からここが君の家だ。安心して療養に専念してくれ」
「お世話になります…その…色々とご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

出迎えたローリィに挨拶をするキョーコの緊張が、ぎゅっと握られた手から蓮に伝わる。蓮は苦笑いを浮かべてキョーコを見下ろした。

あれほど社長の家は安心していい場所なんだと、大丈夫だと伝えたのになぁ。

「ふぅむ。以前会った時よりも怯えていない様子だが、やっぱりキョーコ君は蓮の方が良いようだなぁ」
「えっ」

キョーコが蓮に全幅の信頼を寄せている事に、蓮はローリィの言葉でやっと気が付いた。キョーコが他の誰よりも蓮を頼りにしていると言う事に蓮の心は浮き立ち、キョーコの手を握る指に自然と力がこもった。

「この子は琴南君だ。ここでの生活は彼女が面倒を見てくれる。安心して彼女を頼ってくれたまえ」

歳も同じだからお互いすぐに馴染むだろうと、ローリィは隣に立っていた奏江を紹介した。

「はじめまして、琴南です」
「…はじめまして。キョーコです」

ふぅん。コレが敦賀さんの恋しい子なんだ。…何ていうか、普通の子ね。
職業柄、いつも押しの強い美人に囲まれていたり完璧な『敦賀 蓮』を求められるから、普通の子って言うか、寧ろその反対の子に惹かれるのかしら?…何よ、オドオドしちゃって。聞いていた通り極度の人見知りみたいね?

うぅ…凄くジロジロと見られてる。美人さんなのに目が怖い。
琴南…琴南…聞き覚えがあるような…確か前に蓮が言ってた…

「もしかして、カンカンの絵に色を塗ってくれた人?」
「は?…あぁ、敦賀さんのヘッタクソな猫だか狸だか分からないモノに色を塗ったわね」
「やっぱり!どうぞよろしくお願いします!」

緊張から蒼白になっていたキョーコの顔に、ぱぁあっと笑顔が戻り、親しげに奏江を見つた。

何よ、さっきまで警戒心バリバリだったくせに、猫の絵を手伝ってやったってだけでニコニコしちゃって。
そんなにあの猫の絵がお気に召したって事?…随分と変わった子みたいね。

「どうやら大丈夫そうだな。まずはキョーコ君の部屋に案内しよう」

ローリィに促されて屋敷の中に入ると、赤い絨毯が敷かれた広い玄関ロビーの天井にはクラシックなシャンデリアが飾られている。

「きれい…」

自然光にさえキラキラと輝くシャンデリアにキョーコがうっとり見惚れていると、ふとこちらの様子を窺う視線に気づいてその視線の主を探した。

あれ?小さな女の子がいる。ふわふわのドレスを着て、髪もふわふわしていて可愛いな。

柱の陰に隠れながら、顔を半分ほど出してじっと見つめている少女に、キョーコはにこりと笑いかけた。

「ふんっ」

途端にぷいっと顔を横に向けて、少女はパタパタと走り去ってしまった。

あれ、私あの子に嫌われてるっぽいなぁ。

「気にしないでくれ。今のは孫のマリアだ。あの子は蓮の事が大好きなんだが、その蓮が自分ではなくキョーコ君に付きっ切りなのが気に入らなくて癇癪を起こしてるだけなんだ。根は悪い子じゃないんだがな。まぁそのうち打ち解けて仲良くなるだろう」

キョーコは少女が消えた先をちらりと見た後、部屋はこちらだと促すローリィの後に続いた。


**


「モーッ!!ちゃんとご飯食べなさいッてば!それまで缶詰なんか食べさせないわよ!!」
「もう十分食べたよ!」
「そんな量、食べたうちに入らないっ。何が不満だって言うのよ!美味しいじゃない!」

その日、昼食に用意されたサンドイッチはキョーコが口に入れやすいようにと1口大にカットしてあった。
ローリィ宅の専属料理人が、食の細いキョーコを気遣って、味や栄養、彩りは勿論のこと、食べ易さやキョーコの気を引く演出までしていた。

スモークサーモンとクリームチーズに、パストラミと野菜のサンドイッチなんて、こんなに豪勢なランチを何だと思ってるのよ。
その上、この子の好きな缶詰を使ったフルーツサンドまで添えてあるのに。それを一口食べただけでもういらないですって!?
怪我人だろうが何だろうが、そんな我儘なんて赦さないわよ!!

毎日毎日何なのよっ!!出された食事の半分も食べようとしないなんて!専属の料理人が作った料理を毎食食べられるなんて、夢のような生活じゃないの!それをろくに食べずに、下手な猫の絵の缶詰の方を美味しそうに食べるなんて、一体どんな味覚をしてるのよ!


キョーコの身の回りの世話を、蓮が勝手にラブミー部への依頼として受けたとばっちりを奏江はもろに受けていた。
一日中、分刻みでの仕事をこなす蓮がキョーコの世話が出来る訳もなかった。ほんの少しの時間、キョーコの顔を見に立ち寄るのが精いっぱいだった。
女優と言ってもまだまだ駆け出しの奏江のスケジュールには大幅な余裕があった。学校や俳優養成所でのレッスン以外の時間、奏江はキョーコの世話をしていた。世話と言っても、歩く訓練にと中庭の散歩に付き合ったり、キョーコの話し相手になる程度だ。
そもそもキョーコの衣食住はローリィ邸の使用人たちによって、快適に保たれている。

どうして完璧すぎる居住空間にいるこの子の世話が必要なの?しかもどうして私なのよって思ってたけど、すぐに納得したわ。
お世話の9割は、この子にご飯を食べさせる事、つまりお目付け役が必要って事だったのよ。

鬼の形相で迫る奏江を、キョーコは上目遣いで見つめる。

「だってこれ、口の中にへばりつくもん…気持ち悪い」

へばりつく?妙な事を言い出す子ね。
…さっきからこの子、スープや飲み物も摂らずにサンドイッチしか食べてないんじゃない?

「ちょっとこれを飲んでから食べてみなさいよ」

奏江はコンソメスープの入ったカップをキョーコに差し出した。

「えーっ」
「モーーーッ!口答えしない!!」
「ふゎい」

怖いよぉ。モーモー怒られながら食べなくちゃいけないなんて、やっぱり食事なんて嫌いだよ。

奏江から受け取ったスープをコクンと一口飲んだ後、グッと口元に運ばれたサンドイッチを、キョーコはギュッと目をつぶって齧った。

「…あれ?口の中にへばりつかない」

どうして?さっきまで、とっても呑み込みづらかったのに、スープを飲んだだけでこんなに変わるものなの?

「まったく。パンなんだから口の中の水分を持っていかれるのなんて当然よ。美味しいでしょ?残さずに食べなさいよね」
「うん。…モー子さん、ありがとう」
「どう致しまして。…ってモー子って何よ?」



「それじゃあ、琴南さんとは随分と仲良くなったんだね」
「うん。最初モー子さんと会った時、ショッキングピンクのつなぎを着ていたから、この人頭大丈夫なのかな?って思ったんだけどね」
「ちょっと、猫の絵を手伝ったってだけで不審者扱いからいきなりお友達モードにギアチェンジした頭を持ってるあんたに大丈夫かなんて言われたくないわよ。それにこのつなぎだって好き好んで着ている訳じゃないんだからね?」
「はいはい。分かってますよー」

蓮はキョーコと奏江の会話を笑顔で見守っていた。
仕事の合間を縫って深夜でも駆けつけていた病院とは違い、ローリィの家に蓮が寄ることができるのは、朝仕事に行く前か、次の仕事までのほんのわずかな合間だったが、蓮はそれでもキョーコに会いにやって来ていた。

それにしても敦賀さん、残念なくらい絵が上達しないわねぇ。それともふざけてるのかしら。

キョーコの部屋で、蓮は懲りずに猫の絵を描いている。キョーコは蓮の横にちょこんと座り、蓮の絵をニコニコと眺めている。
その様子を奏江は残念そうに見つめていた。

「1人で歩ける時間も長くなって来たし、そろそろ家事を覚えなさいよ」
「うん!」

ローリィの家での療養生活を終えた後、キョーコは蓮の家で暮らす予定なのだ。それまでの間に、家事全般を教えて欲しいとキョーコは奏江にお願いをしていた。

「え…いいよ。家事なんて。掃除はハウスキーパーがいるし、洗濯はマンションで24時間受け付けてるし。食事は…まぁ、猫のカンカンがあればいいんじゃない?」

最後の食事は置いておくとして…何よっこのセレブ思考は!!

「…ふぅん。敦賀さんはこの子の事を何もできない、ただの役立たずだと思ってるのね?」
「えぇっ!?蓮、そうなの?確かに今は何もできないけど…。でも頑張って覚えるよ。折角蓮の傍に居られるなら、少しでも蓮の役に立つようになるから!蓮は何がして欲しい?掃除?アイロンがけ?靴磨き?あっ洗濯?」

キョーコは怒ったように蓮に詰め寄った。

別にキョーコちゃんに何かしてもらおうなんて考えてなかったよ。
ただ俺の傍にいて欲しいって。それしか考えてなかった。
でも…。俺の為に何かをしてくれるキョーコちゃんが見られるなら、それはそれで楽しみだな。

家事に奮闘するキョーコを想像して、蓮はその日が来るのを待ち遠しく感じた。

「どうして料理を抜かすのよっ!アンタが一番覚えなくちゃいけないのは料理と食事の大切さよ!!ロクなものを食べないなんて、美容にだって悪いんだからね?」
「うー… そうよね。蓮、ラーメンを美味しそうに食べてたもんね。…うん。料理も覚えるよ。モー子さん、明日から教えてね?」

「マリアちゃんも一緒に料理習う?」

部屋のドアからこっそりと様子を窺っていたマリアにキョーコが声をかけると、マリアは慌てて走り去って行った。

「うーん。なかなか難しいなぁ」

今まで自分から誰かに興味を持つことなんて無かったのに、マリアちゃんに関してだけは積極的だよな。
そうやって少しずつでも自分から扉を開いて、外の世界に足を踏み出してくれればいいんだけどな。

首を捻るキョーコに蓮は目を細めた。



つづく



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。