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   ユメマボロシ 7   


天使に振り回される敦賀さんを書きたかったのですが、キチンと書けてましたかね?


「え…天使じゃなくなった?」
「『え』じゃないわよっ!この子に願っちゃったんでしょ?天使を辞めろって!!」

蓮は二の句を継げず、自分を睨みつけるカナエを見続けるしかなかった。

「からかわれただけだって言ったら、ムキになっちゃって。『久遠さんはそんなちゃらんぽらんな人間じゃない』って啖呵切って、本当に天界の除籍手続きしちゃったのよ」


「キョーコ、止めなさい!!そんな事をしたらここには二度と帰ってこられないのよ?」
「良いんです!久遠さんと添い遂げるってお約束したんです。私は迷える子羊を救うんです!!」
「おバカーっ!!あれは羊の皮を被った狼よ!キョーコを食べる気満々の腹をすかせた狼なの!モーーー!どうしてそんなことも気が付かないのよー!!」
「酷いっ!久遠さんはそんな人じゃないもんっ!モー子さんが分かってくれなくてもキョーコは突き進むのですーっ!!」
「ぎゃーーー」


キョーコが勢いよく天界の戸籍帳に取り消し線を引いた時の周りの絶叫は凄まじかったとカナエは蓮に教えた。
驚いた蓮がキョーコを見れば、視線を膝に落として、ワンピースの裾を両手でギュッと掴んでいる。

「だって…キョーコちゃん…おうちに帰るって…」

帰る場所も無い癖に、今朝ここを飛び出そうとしたのか!?

「行き場を失くしたってあんたに言えなかったんじゃないの?」
「それじゃあ…それじゃあこの家を飛び出してどうするつもりだったの?」
「…修道院か、日本には神にお仕えする神社があるって聞いていたので、そこで巫女になろうかと…」

危なかった!本当にキョーコちゃんに会えなくなるところだったなんて。それこそ取り返しがつかない事態になるところだったよ。

「まったく。恋しい妖精王子にもう二度と会えないなら、子羊の為に身を捧げるのが運命なんだとか言っちゃって。本当にあんた馬鹿じゃないの?」

キョーコに恋する存在がいたという話に、蓮の眉間がピクリと揺れる。

「…妖精王子?」
「そう。この子が小さい頃に、鷹と衝突して地上に落ちた事があるのよ。その時に出会った妖精に恋しちゃったんですって」
「だって…皆とはぐれて泣いていた私に優しくしてくれて、しかも凄くカッコよくてキラキラしていて、本当に…神の寵児のようだったのよ?」
「ふぅん…」

幼い頃の話とは言え、キョーコが目を輝かせて自分ではない他の男の事を語る様子に、蓮の機嫌が急降下する。

その妖精王子と添い遂げられないなら、俺でも他の奴でもキョーコちゃんにとっては一緒って事?
…だから君は俺の願いを何でも叶えようとしてくれていたの?

「へぇ。それじゃあ、キョーコちゃんは好きでもない俺と結婚しようとしてたんだ?」
「ちっ違います!!久遠さんの事も、添い遂げようって思うくらいにはちゃんと好きなんです」
「ちゃんとって何よ。あんたの中で1番が妖精王子、2番が主、3番が久遠さんって事?」
「あっ、ごめんね?モー子さんが3番でもいいよ?」

俺への気持ちは、モー子さんっていう天使への友愛の情と大差ないって事?
…すっごい傷つくなぁ。

「コーン、今頃何しているかしら。きっと妖精界で素敵なお姫様と結婚していると思うけど、元気にしてるかしら」
「えっ!?」

今キョーコちゃん『コーン』って言わなかったか?

「コーンの話なんてどうでもいいのよ。散々聞かされて耳にタコが出来てるわ。あの時、あんたを見つけるのに1週間もかかったんだから!本当に大変だったわよ。おバカの教育係なんてなるもんじゃないわね」
「ちょっと待って!キョーコちゃんはその妖精王子…コーンの事が好きなの!?」
「だから言ってるでしょ?この子はあんたよりも誰よりも妖精王子の事が大好きなの。愛しちゃってるの」
「愛してるって!!モー子さん!恥ずかしいよぉ~」

真っ赤になったキョーコは、両手で顔を覆ってラグに突っ伏した。


俺の事を…久遠を『コーン』って舌足らずに呼んだ子がたった1人だけいる。あの夏の日…子供の頃父さんの故郷の河原で出会ったツインテールの女の子…。
泣きじゃくっていた女の子が、俺を見た瞬間に言ったんだ。

「あなた、妖精?」

そうだ、確かにあの子の名前は『キョーコちゃん』だった。


…10年以上経ってまた逢えたなんて、本当に夢のようだよ。
しかも君は今でもコーンの事が大好きなんでしょ?それこそ君の大切なご主人様よりも。


だったら、もう道は1つしかない。一本道さ。もう君に足元を照らしてもらわなくても大丈夫。道に迷う事なんてもう無いよ。

だから手を繋いで、横に並んで、同じ歩幅で歩いて行こうよ。


「じゃあ、キョーコちゃんは俺のお姫様になってくれるんだね」
「へ?」

突っ伏していたキョーコが、意味が分からないと思いながら蓮を見上げると、先ほどまでとはなんとなく雰囲気が違う。
しげしげと観察しているうちに、変化した箇所に気づいてあっと息をのんだ。

「えっ!?久遠さんの目が…瞳の色がさっきまでと違う!」
「うん。普段は人間に紛れられるようにコンタクトで隠しているんだ」

キョーコの瞳に映る、コンタクトレンズを取った蓮の瞳の色は幼い頃に恋したコーンの碧色の綺麗な瞳の色そのままで…
ただポカンと、キョーコは微笑む蓮の顔をじっと見続けた。

「だって、コーンは素敵なお姫様と結婚してる筈なんでしょ?だったらコーンの…俺の隣にはキョーコちゃんが居てくれなくちゃ始まらないよ」
「久遠さんがコーンなの?…嘘でしょう?」
「嘘じゃないよ。羽根がもげて飛べないって言った俺を、キョーコちゃんは可哀想だって泣いてくれたでしょ?」
「…本当にコーン?」
「うん。本当にコーンだよ」

至福の笑顔で、蓮はキョーコをそっと抱きしめた。

「…羽根がもげて、俺はもう妖精じゃなくなってしまったけど…天使じゃなくなったキョーコちゃんの事だけは幸せなお姫様にしてあげるから。だから俺の傍に居て欲しい」
「コーン!!」

そう。だから…

「カナエさん。3つ目の願い事を願ってもいいですか?」
「…最後の願い事よ?あんたが愛の演技ができるようになる為に必要な事を願いなさい」

カナエは腕組みをしたまま蓮を見据えている。

「キョーコちゃんを幸せにします。その気持ちがきっと演技に深みを与えてくれると思います。だから…もう天界の誰も、ここには来ないで下さい。特にキョーコちゃんのご主人様…そう、神様とか?」
「ぷっ!何それ」
「キョーコちゃんに里心がついて、帰りたいって泣かれたら俺はどうしたらいいか分からなくなってしまう。それこそ今朝みたいに暴走しかねないし…ね?」
「くくく久遠さんっ!」

蓮の甘やかな笑顔に、キョーコがボフンと音を立てて真っ赤になる。

「もう誰からもキョーコちゃんを奪われないように。そう。キョーコちゃんを大切に慈しんでくれたタイショウって方や奥さんには申し訳ないですが…」
「大丈夫よ。ここに来なくても、上から見守ってるわ」
「…ありがとうございます」
「モー子さんにももう会えないの?」
「何言ってんの!そのつもりで除籍手続きしたんでしょ!甘えるんじゃないのっ!!」
「ふゎい!!」

うりゅっと大きな瞳に涙を溜めて、蓮に抱きついたままキョーコはカナエを見上げた。

「…まぁ、あんたも幸せになりなさいね?久遠さん、もしもこの子を泣かせたら…あなたの命が尽きた時、天使総出で天国の門は閉めさせてもらうから。地獄行きは覚悟しておきなさい?」
「はい。絶対に泣かせませんよ」

しっかりとカナエの目を見て返事をする蓮に、カナエはフンッと息巻いた。

「じゃ、帰るから」
「うん…モー子さん、元気でね?私の事、忘れないでね?」
「モーッ辛気臭いわねっ!!あんたみたいな出来損ないの事を忘れられるわけが無いでしょ。見守ってるから安心なさい!」
「ちょっと気になるんだけど…。キョーコちゃんの教育係って事は、君はキョーコちゃんより随分と年上って事?」
「…大変立派なレディに歳なんて聞くもんじゃないわ。それとも今すぐ天国に送ってあげましょうか?」

ニヤリと笑うと、カナエの影はスゥっと薄くなり、一瞬で消えた。


「…モー子さぁん……」

抱きしめていたキョーコが、心細げに蓮のシャツをギュッと掴んだ。そんな仕草にもキョーコへの愛しさが溢れてくる。

「大丈夫。寂しいなんて思う暇もない位にキョーコちゃんの事を愛してあげるから」
「久遠さん…」

壊れ物を扱うかのように、そっとキョーコを抱きしめて、蓮はキョーコの唇に自分の唇を優しく重ねた。
今朝の荒々しい激情とは全く違う、自分の反応を確かめながら落とされるキスに、キョーコの気持ちもふわりと軽くなっていく。

「久遠さん…コーン…幸せになりましょうね?」
「うん。2人で幸せを作って行こう」

そう言うと、蓮はふわりとキョーコを抱き上げた。

「コーン?」
「うん…今朝の続きって言うか、改めて今から始めよう?」
「あ…そっか。続きですね?分かりました。すぐにご飯の用意をします。少しだけ待っててくださいね?」
「…純真無垢な答えに申し訳ないんだけど、少しも待てる余裕が無いんだよ」
「へ?キッチンはあちらですよ?」
「…キョーコちゃんは今朝と同じ、キッチン先の廊下で続きをしたい?」
「!!!」

蓮が何を言っているのかをやっと理解したキョーコがビクリと身を固くして蓮を見つめれば、キョーコの不安げな視線を絡め取るように、
碧色に光る瞳がキョーコを熱く見つめている。

「夢心地にしてあげるから。だから俺にも夢のような幸せを頂戴?」
「コーン…夢じゃ嫌」
「そうだね。夢じゃない」

恥ずかしそうにギュッと首に回された腕に、蓮はこみ上げる愛しい思いを噛みしめながらキョーコをベッドルームへと運んだ。


**


「只今戻りました」
「ふむ。カナエ君、ご苦労だったな」
「本当ですよ。面倒くさいったらありゃしない。馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけど、あの子を人間にしてやるなんて…本当に主は何をお考えなのですか?」
「何を言う、あの子の愛が久遠・ヒズリの心に愛を取り戻させたんだ!それにずっとキョーコ君は妖精王子に恋をしてたんだ。叶えてやっても罰は当たらねぇだろ?」
「回りくどいと言ってるのです。最初から妖精王子が困ってるから助けてあげなさいと言えば済む事なのに」

そうよ。そうしておけばこんな面倒にならなかったのよ。

「それじゃあ面白味も何もないだろう!ドラマ性も無いじゃないか!!」

本当に何もわかっていないと天上の主はカナエにダメ息を漏らしながら首を振った。

「ある日、突然天使が自分の前に舞い降りて来て、幸せになれってグイグイブンブン振り回されるんだぞ?自分の幸せの為に一生懸命な天使に恋しない奴なぞ居る訳がねぇだろう?」
「でも久遠・ヒズリの場合は夢だと思い込んでましたよ?」
「あれは誤算だったな。ターゲットが寝ている間に会いに行くのは禁止だと注意事項に書いておくか」

は?注意事項って何よ!?しかもターゲットとか言ってるわ。

カナエはびっくりして主を仰ぎ見ると、良い事を思いついたとばかりに目を輝かせている。

「まさか主はあの子のように、これからも地上に天使を派遣する気なんじゃ…」
「勿論だ!!キョーコ君は俺が考えた『世界にはばたけ!愛の使者プロジェクト』の成功事例になったじゃねぇか。愛の使者としてどんどんと天使を地上に送り込んで、愛の尊さを広めていくのだ!セバスチャーン!!選定はどうなっておる!!」

側近のセバスチャンが、次なる『愛の使者』とその派遣先となる『ターゲット』の候補者リストを持ってツカツカと歩み寄るのと入れ替わるように、カナエは頭を抱えながら主の元を辞去した。


本当にとんでもない事を思いつくものね。…まぁ、今に始まった事じゃないけど。
こうなったら、あの2人にはきっちりと『成功事例』になって後に続く使者の希望になってもらわないとね。

「幸せになんなさいよ?」



「うん…私、幸せよ?」

蓮の腕を枕にして夢を見ているのか、幸せだと呟いたキョーコに蓮は満ち足りた気持ちで一杯になる。

「俺も幸せだよ」

キョーコをそっと抱き寄せて、蓮はキョーコの耳元で囁いた。



おしまい。





夢話、これにて終わりです。
色々と書きたいことがあるので、ポロポロと小話で続きそうです。そのうち忘れた頃に…。
次なる『愛の使者』がどこに派遣されちゃうのかとか、キョーコちゃんのその後とか。
でもとりあえずキョーコちゃんが人間になって、敦賀さんが幸せになるの巻はおしまいです。
お付き合いありがとうございました!!



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