HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  黒猫の希い  »  黒猫の希い 18

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   黒猫の希い 18   


黒猫です。
最近はみんな室内飼いなんですかね。散歩する首輪をしたお猫様を全く見かけません。
お犬様のセルフ散歩も見かけません。
時代ですかねぇ。


「あなた、いったい蓮様の何なの?」

意を決してキョーコの部屋に入って来た小さなお姫様は、腕組みをして、眉を吊り上げてキョーコを見上げていた。

「あ、マリアちゃんおはよう。朝ご飯はもう食べた?」
「はぐらかさないで頂戴。私は蓮様との関係を聞いているの。蓮様はとても優しくて、マリアを大事にしてくれる人なのよ?だからマリアは蓮様が大好きなの」
「そう。じゃあ私と一緒ね」
「一緒になんかしないで!あなたなんかより私の方が蓮様の事をだーい好きなんだから!!」

あれ、怒らせちゃった。うーん…。人と心を通わせるのって難しいね。それにしても、蓮はモテモテだなぁ。

頬をぷっくりと膨らませてキョーコを見上げるマリアに、キョーコは少し眉を下げて笑った。

「…それ、何なのよ。あなた、いつも眺めてるわよね?毎日毎日飽きもしないで。バッカみたい」

マリアは、キョーコがいつも身に付けて大事そうに眺めている碧い石を指差して息巻いた。

キョーコがマリアの家にやって来て以来、マリアはずっとキョーコを観察し続けていた。いくらマリアが完璧に隠れたつもりでも、いつもキョーコに見つかってしまう。


「きっとマリアちゃんもキョーコちゃんと仲良くなれるよ。だから俺がいない時は、キョーコちゃんの事を頼むね」


退院したキョーコがこの家にやって来ることが決まった後、蓮はマリアを膝に乗せて優しく微笑みながらそう言った。

いくら大好きな蓮にお願いをされていても、蓮のお姫様は自分だけだと思っていたマリアにとって、キョーコは蓮を横取りした大嫌いな女の子でしかない。
それなのにキョーコはいつも翳りの無い、太陽のような笑顔でマリアに話しかけてくる。

その光が眩しくて、ぎゅっと目をつむって顔を背ける自分に、マリアは余計に苛立った。

「綺麗でしょ?この碧い石はね、ずっと前にコーンが私にくれた大切な宝物なの」
「コーン?フンッ!変な名前ね」
「ふふ。私がそう呼んでるだけ。コーンはね、私の大切な人なの。早く…早く会いたいなぁ」


**


「はい、社です…えぇっ!?」

社が電話口で驚いたように大声を上げるのを、ヘアメイク中の蓮が鏡越しに見ると、蓮の方をじっと見つめている事に気付いた。

「…ええ。分かりました。それじゃあ、くれぐれもよろしくお願いします」

「社さん、どうかしましたか?何か問題でも?」

通話を終えた社に、秀麗な顔を顰めた蓮が話しかける。

「いや、次の現場だけど…向こうの都合で1時間ほど入りが早まった。…いや、なるべく早く来て欲しいって。参ったなぁ…。俺、コッチの仕事が巻けるように調整してくるよ」
「そうでしたか。すみませんがよろしくお願いします」
「何言ってるんだ。マネジメントするのが俺の仕事だ。悪いけど蓮も集中してなるべく早く終わるように協力してくれ。ってお前はいつもベストを尽くすか」

社は笑って足早に部屋を後にした。

「本当に社さんってデキるマネージャーさんですねぇ」
「ええ、本当に。俺も社さんにいつも頼りっぱなしですよ。社さんが居なかったら、俺なんて何も出来ませんよ」

蓮は本当に頭が上がらないんだと苦笑交じりに話した。


**


「お疲れ様でした」
「敦賀君お疲れ!今日もNG無しか。流石若手実力派No.1だな」
「そんなことありませんよ。周りの皆さんの演技に引きずられただけですよ」
「はは。本当に敦賀君は謙虚だ。それにしても人気者は大変だねぇ、この後にもう1つ仕事が急に入るなんて」
「え?」
「敦賀君の入りを前倒しするから、少しでも早く撮影が終了できないかって、君のマネージャーから連絡があったんだよ」

もう1つ仕事が入ったなんて聞いていない。しかも今しがた終えたドラマの撮影も、現場の都合で前の仕事を巻いてまで早めに入ったのだ。
その撮影さえも早く終わるように社が調整をしていたと言う。事情がのみ込めない蓮は困惑した。

「本日は無理を聞いていただき本当にありがとうございました。お礼は後程、弊社より改めてさせていただきますので。済みませんがこの辺で失礼します」

いつの間にか自分に並んだ社が監督に深々と腰を折っていた。
監督は気にしていないと笑いながら、早く行った方がいいと手をひらひらと振っている。

「失礼します。蓮、行くぞ」

そう言うと、社は蓮の返事も待たずに踵を返してスタジオを出て行く。蓮は慌てて社を追いかけるしかなかった。

「社さん、どういう事ですか?この後に仕事って…。仕事の事は別にいいんです。でも、どうして俺に教えてくれなかったんですか?変な嘘までついて」

訳が分からないと眉を顰める蓮を社はチラリと横目で見た後、すぐに視線を前に戻した。

真剣な表情で前を急ぐ社に、蓮は言いようのない不安に襲われた。

「社さん、説明してくださいよ」
「…これが最善だと思ったからだ。蓮、落ち着いて聞いてくれ。…キョーコちゃんが消えた」

社の声に蓮の足が止まる。
足だけではなく、時間までも止まったかのように、一瞬頭の中が真っ白になった。
考えることを、理解することを蓮の頭は拒否した。

「…消えた…消えたってどういうことですか!!」

蓮の大声に、社はぴくりと眉を顰め、周りに目を走らせる。周囲に、こちらを気に留める様子が無いことを確認してから蓮のそばに寄った。

「…落ち着け。今、社長や琴南さん達が懸命に探している」
「落ち着けって、そんなの無理ですよ。一体何時から…」
「琴南さんが昼食をキョーコちゃんの部屋に届けた時に居ないことに気付いたそうだ」
「そんな…もう9時じゃないですか。社さん、今までずっと俺に黙ってたんですか!?」

そうだ、きっとあの時…。通話中に俺と鏡越しに目を合わせたあの時から…社さんはキョーコちゃんが消えた事を知っていながら俺に黙っていたんだ!

不安な気持ちが、キョーコがいなくなったことを隠していた社への怒りに変換される。

握りこんだ拳は怒りに震え、社を見据える瞳には憤怒の焔が揺れる。それでも蓮は、社に掴みかかりたい衝動を必死に抑えようとしていた。

そんな蓮を社は冷静に、観察するかのように見つめていた。

「…お前に伝えなかったのは、こんな風に取り乱す事が分かっていたからだ。キョーコちゃんが居なくなった事を伝えたら、お前が「敦賀蓮」を保てるとは到底思えなかった。…お前だってそう思うだろう?」
「クッ…」

確かに社さんの言う通りかもしれない。キョーコちゃんが居なくなったと聞いたら、俺は仕事を放りだしてキョーコちゃんを探しに出ていたかかもしれない。
仮に仕事にとどまったとして、果たして仕事を、「敦賀蓮」を全うできただろうか。

きっと…いや、絶対に出来なかった。

落ち着くんだ。この人は『敦賀蓮』のマネージャーとして正しい判断をしただけだ。
そして俺の為に、できるだけ早くキョーコちゃんの事だけを考えられる時間を作り出してくれたんだ。

蓮は大きく息を吐いた。

「…とにかく社長の自宅へ…社さん、急ぎましょう」
「うん。大丈夫だな?」
「はい…ありがとうございます」
「よし。荷物は全部車に積んである。このまま行くぞ?」
「でも衣装は…」
「買い取れ」
「ッはい!」

2人は駐車場へとそのまま走った。


「それじゃあ、本当にどこに行ったのか分からないんですね…」

ローリィの家へと向かう途中、社は今までの経緯を全て蓮に説明した。

奏江が昼食をキョーコの部屋に持っていくと、部屋にキョーコはいなかった。また食事を嫌がってどこかに隠れたのかと思ったらしい。
バスルームやトイレにも居ない。中庭にも姿が無い。まさかこんな所には居ないだろうと思いつつもクローゼットを開けても、やはりキョーコはいなかった。

そしてそこに掛けてあるはずの、1着しかない服も無かった。

ローリィの家にやって来た時に着ていた、蓮がキョーコに贈った花柄のワンピースが無い。そこではじめて外出したのだと気が付いたのだ。

慌てた奏江からキョーコが外出したっぽいと聞いたローリィは、入院生活からやっと解放されたのに、それまでと大差ない療養生活に鬱々として、少し外に出たくなったのではないかと当初呑気に構えていたらしい。
それが3時を過ぎてもキョーコは帰ってこない。

流石に心配したローリィが、黒崎病院へひょっこり顔を出していないかと連絡をしてみたものの、あっさりと否定されたそうだ。その直後にローリィから社のキョーコが消えたという連絡が入ったのだと言う。

蓮は眉間に皺を寄せて、爪の色が白くなる程ハンドルをぐっと握り締めた。

「キョーコちゃん…今どこにいるんだ」

どうか無事でいて欲しいと、蓮はただそれだけを願った。



つづく



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。