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   黒猫の希い 19   


黒猫です。
子供の頃、かくれんぼするとナーはすぐ見つかる子供でした。
室外機の裏とか、結構頑張って隠れたりしたんですけどね。隠れ損でした。


「社長!!」
「蓮、すまない…俺に任せろとキョーコ君を預かっておきながら、気がついたら居なくなってたなんて…本当にすまん」

いつもは何を根拠に?と不思議に思うほどの自信漲るローリィが、焦燥を滲ませて蓮たちを出迎えた。

「まだ帰って来ていないんですね…」
「今、屋敷の人間総出で探している。きっと無事に見つかる筈だ」

体力だってまだ無い。長時間歩けるような体じゃないし、行くあてだって無いはずだ。
大原さん達に会いに病院へ行ったわけでもない。

…まさか家に帰った?大怪我を負わせるような父親の元へ?

馬鹿な。仮に連れ戻されることがあっても、自分から帰る訳が無い!
療養を終えたら俺の家で暮らそうって…キョーコちゃんも嬉しそうにしていたじゃないか。

それなら、彼女はどこに行った?今どこにいる?考えろ…考えるんだ!!

痛い思いをしていないか、泣いてはいないか。今の俺みたいに不安な思いをしてはいないか…。

蓮は不安で押し潰されそうな程にギシギシと軋む胸にぐっと手をあてた。
その様子を社は沈痛な面持ちで見守るしかなかった。

「とにかく探します」

どうか…どうか頼むから無事で居てくれ

蓮たちが表の通りに出て手分けをして走り出そうとしたその時、道の先からとぼとぼと歩いてくるキョーコが見えた。
疲れているのか足取りも重く、俯きがちに背を丸めている。

今にもしゃがみ込みそうな程おぼつかない足取りだった。

「キョーコちゃん!!」

自分を呼ぶ絶叫にキョーコはハッと顔を上げた。

その声の主が蓮だと分かると、まるで疲れなど一瞬で吹き飛んだかのように、嬉しそうに蓮へと駆け寄ってくる。

蓮も力強く地面を蹴り、全力でキョーコへと走った。

1秒でも、一瞬でも早くキョーコ無事を蓮はその目で、その手で確認したかった。

「蓮!!」

キョーコは満面の笑みで蓮の胸に飛び込んだ。そのゴム毬のように弾んだ衝撃を、蓮は渾身の力で受け止めた。

抱きしめた確かな温もりに蓮の緊張は一気に解れた。安堵して大きく息を吸った瞬間、蓮の胸はキョーコの匂いで満たされて、その胸に巣食っていた不安がまるで霧が晴れるように、すぅっと消えて行った。


「蓮…苦しいぃ」

息もできない程の強い抱擁に抗議するキョーコの声で、蓮は我を取り戻してキョーコを離した。

胸に手を置いて深呼吸するキョーコの顔は土で汚れている。身に付けているワンピースもよれよれで、よく見れば転んだのか手のひらと膝に擦り傷がある。

「こんな時間まで1人でどこに行ってたんだ!転んだの!?こんなに泥だらけになって!どこか怪我してない?」

蓮はキョーコの肩を握り締め真剣な顔つきで一気に捲し立てた後、膝をついてキョーコの怪我の様子を確認する。
その傷が深いもので無い事を確認して、蓮はハンカチを取り出しそして、傷口にそっと添えて大きく息をついた。

「蓮…怒ってるの?」

不安そうに顔を歪め、今にも零れそうな程に大きな瞳に涙を溜めて、キョーコは蓮を見下ろしていた。

「…違うよ。怒ってるんじゃない。心配したんだ。凄く…。俺もみんなも。突然消えたキョーコちゃんを、今だってみんなが君の事を探しているんだよ?」

君が居なくなったって聞いて血の気が引いたよ。良かった…見つかって本当に良かった。無事で良かった。

俺の前から突然消えてしまわなくて良かった。


「ごめんなさい…」
「…どこに行っていたの?散歩?道にでも迷った?」

蓮はキョーコを不安にさせないように、優しく話しかけながら服についた汚れたをポンポンと払ってやる。

「…コーンを探しに…」
「え?」

キョーコの答えに蓮の手がピタリと止まる。

恐る恐るキョーコを見上げると、少し残念そうな顔をしたキョーコが自分を見つめていた。

「手がかりも何も無いから、人がいっぱい居るってテレビで見た街に行ってみたの。簡単に見つかるとは思ってなかったけど、やっぱり見つかんなかったよ」
「…ずっと…一日中歩き回っていたの?」
「うん。途中で疲れて公園で寝ちゃったけどね」

風が気持ちよくて、裸足になって芝生で寝てしまったのだと笑うキョーコの泥で汚れた笑顔は、どんな笑顔よりも輝いて見えた。

「キョーコちゃん、もう… 」

蓮が『もういい』と言いかけたその時、

「勝手に1人で行っちゃわないで!!」

蓮の背後から、幼い子供が大声で叫んだ。

「マリアちゃん?」

振り返れば、マリアがしゃくりあげながら、大粒の涙をボロボロとこぼしていた。

「怖かった…怖かったんだから!!マリアがあんな事を言ったせいであなたが…お姉さまがどこかに消えちゃったって思って…とっても怖かったんだから!!」

ママみたいに、マリアが言った一言のせいでお姉さまが消えてしまったんじゃないかって…。
『会いたい』って私が我儘を言ったせいで、ママは私に逢おうとして乗った飛行機事故で死んでしまった。

蓮様に大事にされるあなたが妬ましくて、「コーン」を探しに行けって私が言ったせいで、お姉さままで消えてしまったら…。

まるで私が悪魔の子のようじゃないの!!!

マリアは母親を亡くして以来、はじめて人前で大声をあげて泣いた。



「マリアちゃん…ごめん。ごめんね?」
「私こそごめんなさい。お姉さまに意地悪してごめんなさい。ごめんなさい!!」

キョーコは泣きじゃくるマリアを抱きしめて、背中を優しくさすり続けた。

「それじゃあ、今度私がコーンを探しに行く時、マリアちゃんも一緒に行ってくれる?」
「…仕方が無いから一緒に行ってあげるわ」
「えへへ。ありがとう」

目と鼻を真っ赤にしたマリアに、キョーコはふんわりと笑った。


**


「ふーん。じゃあマリアちゃんと仲良くなったんだ?」
「うん」

未だにひりひりする左頬を押さえながら、キョーコはベッドに潜ったままニコニコと答えた。

キョーコが見つかったという知らせを受けて帰ってきた奏江に、キョーコは思い切り平手で打たれた。
体を半分ねじったところからの会心の平手打ちに、吹き飛ぶキョーコを周りにいた全員が呆気にとられてただ見守ってしまった。

そんな中で、誰よりも早く反応したのは蓮ではなくマリアだった。

「本当にどっと疲れたわ。反対方向を探してたなんてバカみたいじゃない」
「モー子さん、ごめんね。私も疲れちゃった」

そりゃそうでしょう。やっと1人で歩けるようになった程度の癖に一日中人ごみを歩いてたなんて。本当にこの子はバカだわ。

「ねえ、今日はモー子さんもここに泊まるんでしょ?一緒に寝ようよ。このベッド広いし。ね?」
「嫌よ」
「えー。お願いー」
「…寝ぼけて蹴らないでよ?」
「うん、大丈夫。私すごく寝相がいいのよ?木の上で寝ても落っこちた事なんて無いもの」
「木の上?あんた野生児だったのね」

呆れた様子の奏江に、キョーコは曖昧に笑った。



「今日の事は本当にすまなかった。まさかキョーコ君が『コーン』を探していると知ったマリアがヒステリーを起こして、それをキョーコ君もまともに受け取ったとは…」

ローリィは私室で蓮と2人向かい合っていた。
マリアがキョーコの失踪の引きとなった事に、ローリィは苦虫を噛み潰したような顔をしつつも、マリアが感情を吐露し、キョーコに甘えるように抱きついた姿を思い返して、つい口元がつい緩んでしまう。

「キョーコちゃんらしいといえばキョーコちゃんらしいです」

そんなローリィに、蓮もふと笑いながら応えた。


『こんなところで寝ていないで、さっさとコーンを探しに行けばいいじゃない!』

走り去ったマリアの一言に、キョーコはもっともだと頷いて、すぐさま行動に移した。
勿論キョーコにあてなどない。キョーコが探しているコーンこそ自分なのだから。

それでもコーンを、自分を必死に探そうとするキョーコに、蓮の胸は鈍い痛みと、それとは真逆の甘い痛みに苛まれた。

「キョーコちゃん、どうしてもコーンを見つけ出したいんですね…」
「お前、どうするつもりなんだ?見つけ出させてやるのか?」
「…」

蓮の考え込む様子を見てローリィは薄く笑った。

「早いところ覚悟が出来るといいな」
「覚悟、ですか…そうですね。まだ俺にも答えが出せません」
「…分かってねぇな」
「え?何か言いましたか?」
「なんでもねーよ」

お前が自分が誰かを愛してもいいと、幸せになってもいいと、自分を許す覚悟がな。


ローリィはグッとバーボンをあおった。



つづく



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