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   黒猫の希い 20   


区切りが良いかと思って黒猫話を連投です。


…ん…

奏江はふかふかのベッドで目を覚ました。

さすが社長の家のゲストルーム。寝心地抜群ね。ベッドに入ってすぐに眠っちゃったわ。

ごろりと寝返りを打ってキョーコが居るはずの右隣を向くと、そこは既に空っぽで、キョーコのパジャマが枕元に畳んで置かれていた。
奏江の脳内は、幸せな微睡みモードから一気に現実に引き戻された。

「モーッ!!あの子どこに行ったのよ!!」

急いで起き出すと、サイドテーブルの上には前日キョーコを探し回って汗まみれにしたドピンクのつなぎが、綺麗に洗濯された状態で置かれていた。
数日前に奏江が教えた通りに、ピンと皺を伸ばして畳まれているところを見ると、キョーコが昨日のうちに洗濯機をまわしてくれたようだ。

急いで身支度を済ませて、キョーコを探そうと部屋を出ようとしたその時、ガチャリとドアが勝手に開いた。

「おはよう、モー子さん。朝ごはんが出来たよ!」
「朝ごはん?そんなもの、野菜ジュース…」

きょとんとこちらを見ているキョーコに、奏江はぐっと押し黙った。

そうだ。『朝ごはんは野菜ジュースで十分だ』なんて言ったら、食育に悪い影響が出るわ。この子、バカなんだからその辺の手加減なんて出来ないはずよ。
それよりも。

「って言うか、あんたどこに行ってたのよ。起きたらいないんだもの。びっくりしたわ」
「モー子さん、私がいなくて寂しかった?ごめんね!!」
「どうしてそうなるのよ。本当にモー…」
「ふふ。早く食堂に行こうよ。みんな待ってるよ」
「みんなって誰よ。社長とマリアちゃん?」

上機嫌に笑いながら腕を絡ませてくるキョーコに、うざったいと腕を引き抜きながら奏江はすたすたと歩く。
捕まるまいと振り回す奏江の腕を、まるで猫じゃらしを追いかけるようにキョーコが小走りで追い縋った。

「ううん。蓮と社さんもいるよ。仕事の前に寄ってくれたんだって」
「ふぅん…。本当にマメね」


ダイニングルームに行くと、モー子さんはここ!と蓮の隣の席に座らされた。

「おはようございます」
「おはよう。昨日はキョーコちゃんを探してくれてありがとう」
「いえ…敦賀さんに押し付けられたとは言え、ラブミー部の仕事の一環ですから。それより時間は大丈夫なんですか?」
「うーん。まぁそれ程ゆっくりはしていられないけどね。昨日のお詫びに朝食を一緒にどうかってマリアちゃんから連絡を貰ったんだ」
「あぁ…そうだったんですね」

昨日、急にいなくなった自分のせいでみんなに迷惑をかけてしまったお詫びに、キョーコが皆に何か出来ないかとマリアに相談したのが事の発端だった。
それなら初めての料理をみんなに振る舞ってはどうかとマリアが提案し、それを2人で実行したのだ。

厨房を預かる料理長が、初めての料理ならばと目玉焼きとサラダというシンプルな朝食作りを提案して、今朝の朝食会が実現したのだという。


「…何コレ」
「料理長さんに教えてもらいながら、マリアちゃんと作ったのよ!ね?」
「そうですわ。確かに形は悪いし焦げちゃってるけど…はじめてにしては上出来じゃないかしら?」

目の前に運ばれた、少し焦げた完熟目玉焼きと、かなり厚めにスライスされたキュウリとトマトのサラダ、そして狐色ををやや通り越したトーストに奏江の眉間の皺がぐっと深くなる。

そんな様子などお構いなしに、マリアとキョーコは自慢げに肩を寄せ合っている。

「美味しそうだね。それじゃあいただこうかな」
「美味しそう!?どこがよっ!敦賀さん、貴方おかしいわよっ」

まあまあ、と奏江を宥めて、キョーコたちの得意げな様子をおかしそうに笑いながら、蓮が目玉焼きを口に運んだ。

ジャリッジャリッジャリッ…

「…何だか卵とは思えない音がしたわね…もしかして卵の殻?」

テーブルについていた全員が目の前の目玉焼きに視線を落とす。

「うん…殻だろうね…」

社が笑顔を引きつらせながら答えた。

ジャリッジャリッ…

うわっ蓮、どうしてお前は事も無げにニコニコと食べられるんだ?
まさか大量の卵の殻さえ「俺の為に頑張って料理をしてくれたなんて。こんな失敗も可愛いな。」くらいの、恋のスパイスにしちゃってんの?

社はあんぐりと口を開けて、平然と目玉焼きを食べる蓮を凝視した。

「おっ?そういえば今日は来客が…」
「おじい様っ!ちゃんと食べてっ!!」

いそいそとローリィがダイニングルームから逃げ出す後ろ姿を、マリアが目玉焼きの乗った皿を持って追いかけていく。
社と奏江は、カトラリーを握ったまま目玉焼きを見つめ続けた。

「蓮、どう?不味い?」
「美味しいよ。それにカルシウムまで一緒に取れるなんて、キョーコちゃんは料理の天才だね」
「ほんと?次はもっと入れたほうがいい?」

蓮の笑顔にキョーコもニコニコと笑い返し、2人だけの新婚ホンワカ食卓ムードを醸し出している。

「あほかーーっ!!!これを料理下手と言わずしてどうすんのっ!甘やかすのもいい加減にして下さいっ!!」
「モー子さん、嘘だよ大丈夫。今度は殻が入らないように頑張るから。それより蓮、さっき言ってた良い物って何?」
「あぁ、忘れるところだった。キョーコちゃんにコレを渡そうと思ってね」


**


「蓮君、ソワソワしない」
「…してません」
「しています。大体さー、初めてスマホを手にしたんだから、嬉しくてすぐに使い倒したくなるって。そんなに慌てなくてもメールなんてバンバン来るよ」

お前のメアドしか登録して無かったんだし?

「だから待ってませんって」
「じゃあスマホ、もう預かっておこうか?」
「…」

前日、蓮はローリィに新しいスマホを1台キョーコに用意してもらえないかと伝えたところ、日付が変わった頃には準備ができたと連絡があった。
あまりに早い対応に驚きはしたが、安堵の方が大きかった。

もし昨日のようにキョーコが消えても、すぐ居場所が分かるようにGPS機能が付いたスマホを持たせたかった。

「でもさ、どうして今までスマホを持たせてなかったのさ。電話やメールでいつでもキョーコちゃんと連絡が取れるじゃないか」
「ふーっ。社さん、分かってないですねぇ」

何そのダメ息。しかも人を憐れむような表情!!昨日の切羽詰まった顔の写真を撮っておけばよかった。

「だって、電話やメールなんかじゃなく、て直接触れたいじゃないですか」

あの子の笑顔に、あの柔らかい髪や頬に…それだけで嬉しくて、胸の奥が温かくなるんだ。


「蓮君、そういう見る者のハートを打ち抜くと言うか破壊力満点と言うか、ぶっちゃけ恋する少年のはにかむ笑顔は、1人の時かキョーコちゃんの前だけにしてくれる?」
「社さん、頬を染めて…気色悪いですよ?」
「うん…ゴメン」
「それに何ですか、恋する少年って。俺は別にキョーコちゃんの事そんな風になんて思ってませんよ?」
「はあああっ?お前何ふざけてんの!?」

あんなに1人の子を構い倒して、その上周りを憚らずに好き好きビーム出しといて何誤魔化そうとしてるんだ!?

社が口を開きかけたその時『ピロリーン』とメールの到着音が流れ、蓮は慌ててスマホをタップした。

「フッ!!」

その顔!その愛しくてたまらないモノを見てますって笑顔。好きな子からのメールだって、誰の目にもバレバレだよ?
少しは自覚してくれないと困るよぉ。

「蓮…楽屋を出る前に、その緩みきった顔をどうにかしてくれよ?」
「だって社さん…ほらコレ……あー駄目だ。コレ待ち受けにしようかな?」
「ブフッ!」

蓮が社に見せたメールタイトルが「夕ご飯」の本文に「今日はハンバーグ」と言うすこぶる簡潔なメッセージと共に、水泳用のゴーグルをつけて玉ねぎをみじん切りにしているキョーコが、情けなさそうに眉を下げている写真が添付されていた。



つづく



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