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   コングラッチェ 23   


大分空いてしまいましたがコングラです。
ナーの出た学校、今どうなってるんだろう?と思ってホームページを見たら…
私服校だったのに制服化してました!ビックリ。


「外に散らばったものは大体片付いたし、あとは自分の部屋の掃除かねぇ」
「そうだね。それじゃあ重い物をどかす時とかはみんなが声をかけあうって事でいいね?」

半壊したアパートの大家の号令の元、住人達が後片付けをしていた。
突然身に降りかかった不幸をネタに、和気藹々と毒づき合う妙齢を通り越した女傑たちは大笑いしながらてきぱきと片づけを進める。
そんなおしゃべりが、気落ちしたキョーコの心を少し押し上げてくれていた。

「キョーコちゃんはこの先どうするの?大家さんが斡旋してくれる別のアパートに移るのかい?」
「いえ。昨日一緒にいたお友達の家にご厄介になります」
「男の方の家じゃないの?あの二枚目先生の家に転がり込むチャンスじゃないか。キョーコちゃん頑張んな!おばちゃん応援するから」
「ここ転がり込むだなんてっ!めめめ滅相もございません!!」

真っ赤になってブンブンと首を振るキョーコに、住人達は今更だと大声で笑う。
実際のところ、キョーコが身を寄せた天宮家に蓮が転がり込んでいるんでいる状況なので、住人達の応援通りの展開になっていると言えなくもない。
それを言い当てられたようで、キョーコは真っ赤になってしまった。

「今日は二枚目先生は手伝いに来ないのかい?」
「手伝うって言って下さったんですが、お断りしました。あの散乱状況を見られるのも気が引けますし…」

蓮が新学期の準備で忙しい事は知っている。キョーコのバイト終わりを待っている間も、書類やノートパソコンを広げて仕事をしていた。
そんな蓮をこれ以上手を煩わせたくなかったし、それ以上に、カオス状態の部屋を明るい陽の下で見られるのはやはり恥ずかしかった。

「でも、片づけが終わったら、持ち帰る荷物を運ぶのだけはお願いしちゃいました」
「そうかい。沢山持ち帰れるものが見つかるといいね」
「はい!!」



「とは言ったものの電化製品は全滅だし、ノートもグシャグシャで何が書いてあったか判別つかないなぁ…」

改めて部屋を見回して、キョーコはガックリと項垂れた。
ガラス窓も割れて散乱しているため、土足に軍手を3枚重ねた状態で部屋の中で佇んでいた。

駄目よ!前向き前向き!!

頬をポンポンと叩いて「よし」と気合を入れ直して、濡れてはいても使えそうな洋服類や、引出の中に納まっていたお陰で被害が無い参考書や教科書を袋に詰めていく。
荷物が袋に詰まって行くうちに、拾い集めているものがガラクタなんかではなく、今までの自分を形成してきた一部だと思うと、キョーコの口元は自然と綻んでいた。


この調子なら、やっぱり一人で運べる量じゃないな…

「うーん、本当に先生に迎えに来て欲しいってメールしてもいいのかなぁ」
「しちゃいなさいよ」
「でも、迷惑かけたくないし…」
「分かってないわねえ。何とも思ってない女なら迷惑でしょうけど、好きな女からそんなメールを貰ったら、頼られてるって思うの。逆に連絡が無かったら、そんなに俺は頼り甲斐が無い?って落ち込む繊細な生き物なの。少しは男心を理解してやんなさいよ」
「男心ですか……って!どどどどうして琴南先生がここにいるんですか!」

玄関先でダメ息をつきながら、腰に手をあてて佇むジャージ姿の奏江にキョーコは心底驚いた。

「敦賀先生に頼まれたの。役に立たない大男がうろちょろするよりも、女同士の方が都合がいいだろうって」
「すっすみません!でも1人で大丈夫ですから」
「いいから。1人でやるより2人の方が早いわよ。それに今日は出張扱いで、終わったら帰っていいことになってるし」
「え?」
「飯塚教頭も最上さんのところに行ってらっしゃいって。デスクワークよりいいだろうって」

蓮をはじめ、自分に手を差し伸べてくれる人たちがいた事を実感して、キョーコの鼻の奥がツンとなる。

「…ありがとうございます」
「いいから。ちゃっちゃ終わらせるわよ?」

奏江はキョーコが今にも泣きそうな顔をしている事を、敢えて気づかない振りをした。
そしてコンビニ袋から取り出した手袋をはめて、キッチン周りの片づけを始めた。



「それじゃあ琴南先生が手伝いに行ったのか」
「ええ。本当は俺が行くつもりで教頭に話したんですけど、散乱した女の子の部屋を教師とはいえ男に触られるのは嫌だろうし、まして見られたくない物もあるだろうから、女性に任せろって言われました」
「そりゃそうだよなぁ」

ましてあからさまなアプローチをされてて、しかも憎からず思ってる男になんて、散らかった部屋を見られたくはないよな。

「その代わりに俺ができることをやらないといけないなと思いまして」

そう言うと、蓮は真剣な表情で電話をかけ始めた。


**


「あら?キョーコちゃん、こんな時間にお料理?」

21時を越えて帰って来たテンが、キッチンで鼻歌を歌いながら料理をしていたキョーコに驚いて声をかけた。
オーブンから取り出された、こんがりと焼き目の付いたキッシュからいい匂いが漂ってくる。

「あ、テンさんお帰りなさい」

キョーコが満面の笑みでテンを迎えた。その顔が、今朝までの笑顔とは全く違う、心から楽しそうな笑顔だと言う事にすぐに気づいた。
口元の筋肉を引き上げただけの笑顔ではない、キョーコの本当の笑顔は太陽のように眩しくて、見ている方もつられて笑ってしまうものなのだなとテンは思った。

「今、敦賀先生のお部屋に社先生と琴南先生がいらしてて、お酒を飲んでるそうなんです。先日、アパートの片づけを琴南先生に手伝っていただいたので、お礼に差し入れをと思いまして」
「あぁ、そういう事なのね」


アパートの片づけは結局夕方までかかってしまった。奏江の指導の元、蓮に迎えに来て欲しいというメールを打った結果、口さがないアパートの住人たちが囃し立てるほどに甘々しい笑顔で蓮はやって来た。

「琴南先生、本当にありがとうございました。とても助かりました」
「私は最上さんを手伝っただけで、敦賀先生にお礼を言われるようなことは何もしてませんけど?」
「そんなことありませんよ。俺の大切な人の力になってくれたんですから。礼ぐらいさせてください」
「はわわわわっ!せっ先生!どこ触ってるんですかっ!それに大切って…」

真っ赤になって逃げ出そうとするキョーコの腰をがっちりホールドして、神々しい笑顔で礼を述べる蓮に奏江はげんなりした。

「何だかどっと疲れが出たわ。お礼はそうね…。敦賀先生が収集してるって噂のワイン飲み放題でいいわ。社先生を誘っておきます」
「俺じゃなくて父が収集したものですけどね。それで良かったら」

じゃあね、と手を振りながら奏江は颯爽と立ち去った。


**


「そっか…最上さんが生まれる前に父親は他界してるのか」
「あの稲荷寿司も、父親と一緒に食べた事は無いのね…」

蓮はキョーコの家庭環境を、ごく掻い摘んで社と奏江に話した。父親が他界したのがキョーコの生まれる前である事、母親と疎遠な事、そして今は1つ下の階の千織の家に住んでいる事。
ついでに蓮もそこで寝起きしている事は敢えて教えなかった。

「今、俺が最上さんにしてあげられることは何だろうって、ずっと真剣に考えてるんです。傍に居る事?寄り添う事?彼女の居場所を作ってあげる事?どう思います?」
「寄り添うも何も、まだ最上さんと付き合ってさえないんでしょ?ちょっと引くわー。ワインもう1本開けていい?」
「そうそう。コイツ、最上さんに出会うまでは凄いチャラかったんだけど、いきなり豹変したんだよ。もうストーカーの域!あ、貸して。俺が開けてあげる」
「何言ってるんですか。社さんだって琴南先生を落とすにはどうしたらいいんだろうって毎晩のように相談に来てたくせに。千織に『乙女トーク気持ち悪い』って言われた仲じゃないですか。俺バーボンに変えます」
「バーボン!?ほんと生意気ね。そんな乙女トークしちゃうくらい2人は仲が良かったのね。あ、私も飲みたい」


酔っ払いの本音トークはどんどん進んでいく。


「だから一緒に考えてくださいよ。彼女、すごく健気なんですよ。今日なんて、荷物整理をしてたらアルバムが見つかったって喜んで教えてくれたんです」
「へー、アルバムかぁ。良かったじゃないか」
「全く良くないですよ!!」

蓮は髪をぐしゃぐしゃに掻き毟りながら、バーボンを一気に呷った。

気落ちしているだろうキョーコが嬉しそうにしていたのならば良かったではないか。それをなぜそんなにも声を荒立てる必要があると言うのか。
苛立たしそうに、感情を表に出す蓮に社と奏江は顔を見合わせた。

「…アルバムと言ってもA5サイズのやつが2つですよ。たった2つ」
「それ以外は見つからなかったの?」
「だから…そういう訳じゃなくて、最初からそれしかないんですよ」
「えぇ!?子供の頃の写真とか普通もっと…」

そこまで言って、社は気まずそうに蓮から視線を逸らした。

「…色々と事情もあるでしょうけど、最上さんの気持ちを考えると切ないですよ」

母子家庭で、その母親も仕事に追われて、殆どの時間を親戚の家とは言え他人の家で育ったキョーコに、写真として切り取れるような色褪せない思い出はあまりに少なかった。
心細い想いも散々してきたろう。

「1人はもう嫌だ」

熱に浮かされたキョーコが朦朧とした意識の中で蓮に縋った一言が、蓮の心を更に締め付けた。

「デジカメも水浸しでメモリも駄目になってるだろうから、これが自分の持ってる写真全部なんだって。大事そうにアルバムを見つめながら満面の笑顔を浮かべて…もう俺、思いっきり抱きしめちゃいましたよ」

ガタンッ

慌てた社が肘をテーブルに打ち付けた。ビリビリと電気が走るような痛みに『ノーー!』と悶絶しながらも、社は確認せずにはいられない。

「ちょっっれっ蓮?だだだ抱きしめた!?」
「ええ。苦しがってましたけど」
「れれれれ?」
「社さんうるさい。まぁそうやってジャレついても嫌がらないならいいんじゃない?で、最上さんは?」
「さっき覗いたら、そのアルバムを大事そうに眺めてましたよ」

キョーコの心中を思って、しばらくの間3人は黙ってそれぞれグラスに口を付けた。

「…何か最上さん、可哀想だな。彼女に帰る家があろうが無かろうが、一人ぼっちだったんだな」

社の一言に、蓮の目が座った。

「俺、決めました」
「何を?」
「俺が彼女の帰る場所になります」
「は?」

「プロポーズします!」

「はあああっ!?」

硬い表情で決意を語る蓮を、社は口をカパリと開けて見つめ続けた。

「何それ、単に最上さんが欲しいっていう敦賀先生の欲望じゃないの?」
「違います!そんな邪な思いなんかじゃなくて、彼女に寄り添いたいんです。正々堂々と!」
「お前頭おかしくなったの?そもそも君、最上さんと付き合ってなんか無いじゃん!お付き合いとかすっ飛ばしてプロポーズって!!しかも正々堂々って何に対してだよーっ!!」

何か面白い方向に転がってるわね。流石乙女。

「もういいじゃない。社さん。黙って見守りましょうよ。最上さんも今年18でしょ?結婚も出来るレディなお年じゃない」
「そんな、君まで面白がってどうするんだよ!!」
「でも、敦賀先生は彼女を諦める気なんてサラサラ無いんでしょ?仮に最上さんが他の誰かと付き合ったとしても」
「諦める訳無いじゃないですか!!それに彼女に言い寄る馬の骨なんか、全力で粉砕するだけです!」

だんっと乱暴に、蓮は握っていたロックグラスをテーブルに置いた。

粉砕か。そういや蓮君、食堂で不破君を木っ端微塵にしてたもんなぁ。アレは見事だったよ…容赦無かった。

「それに最上さんに横目を振ってる暇なんて与えないんでしょ?」
「そうですね。横目を振ろうもんなら両頬を持って俺に固定するだけです」
「でしょ?最上さんに逃げ場は無いのよ。遅かれ早かれ、敦賀先生に捕まるしかないのよ。だったらいいんじゃない?」
「いいって、ちょっと奏江ちゃん飲み過ぎなんじゃないの?」

いつの間にか目が据わっている奏江からグラスを受け取ろうとした社の手を、奏江はペシリと叩き落とす。

「少しずつ距離を埋めていくってのが正攻法でしょうけど、一番近くから、少しずつ先生の事を知ってもらたっていいじゃない。彼女が帰れる場所になるつもりなんでしょ?だったら早い方がいいじゃない」

彼女も先生の事が好きみたいだし。きちんと告白すれば彼女だって受け入れる筈よ。それをウダウダ考えちゃう辺りが乙女なのよねぇ。

「琴南先生…俺、あなたの事を誤解してました。もっと打算的で冷たい人間だとばかり思ってました」
「…そりゃどうも。但し彼女の気持ちが追いつくまでは手は出しちゃ駄目よ!」
「手ってどこまでですか?」
「そんなの、今先生が想像した事よ。もしくは毎晩想像してる事と言った方が良かったかしら?」
「…善処します」

「…あの…おつまみをお持ちしたんですけど…ここに置いておきますねっ!」

ドアの外から、居たたまれなそうに震える小さな声がした瞬間、酔っ払い3人はギョッと見つめ合った。

「最上さん!!」

逃げるようにパタパタと走り去る音に、我に返った蓮が部屋を飛び出していった。


「ねぇ、どっちに賭ける?」
「何を?」
「敦賀先生が泣いて帰ってくるか、笑って帰ってくるかに決まってるじゃないの」
「うーん、どうかなぁ。蓮が最上さんを取り逃がすとも思えないけど、ここぞってところで見誤るしなぁ」





「……ちょっと、どういう事なのよ」
「どういう事だろうねぇ」
「空が白じんできちゃったじゃないの!!」
「帰って来ないなんて…まさかの賭け不成立だったね。あははは…」
「モーーッ!アレだけ釘さしたのに!!あのヤローーー!!!」



つづく。



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