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   コングラッチェ 27   


コングラです。
キョーコちゃんの怪我の縫合数はナーの額が割れたときの縫合数です。。
しかも最後の方は麻酔が切れかけて叫んでました。


「ねーねーキョーコちゃーん。やっぱりあの噂って本当?」
「……どうして私に聞いてくるの?本人たちに聞けばいいじゃない」
「嫌だよ。アイツ絶対に目だけで人を殺せるもん。俺まだ死にたくねーし」

はーっとキョーコはため息をつきながら黒板の文字を消す。
またこの話か。一体何回聞かれれば済むのだろうと思うと悲しくなった。

「敦賀ってクールビューティと付き合ってて、結婚秒読みってマジ?」

駐車場で奏江に盛大に殴られた蓮を見かけた生徒たちの話に、立派な尾ひれと背びれと胸びれがついて、今や真実として校内を駆け巡っている。


その噂話では、蓮の浮気を知った奏江が駐車場で痴話げんかを繰り広げ、居直った蓮に逆上した奏江が蓮を殴ったものの、結局は蓮の浮気を今回限りと許した奏江の手作り弁当を、蓮が腫れた頬を緩ませて食べていた、というものだ。

実際、蓮の容姿に奏江は釣り合う。文句のつけようのない美男美女だ。


女子たちは、少し前に蓮が食堂に持ち込んだ弁当は奏江が作ったものだったのかと騒ぎ立てた。
黒髪のクールビューティに憧れていた男子たちも歯噛みしながら、やっかみ半分で蓮をからかった。
が、そんな男子たちに、蓮は冷たい視線を這わせて、一瞬で口を閉ざさせた。

言い訳をしないところもまた真実だと、肯定しているのだと、憶測を確信に変えさせる一因になった。


「まーねー。琴南先生は綺麗で姉御肌だし、生徒からの人気もあるものね。そんな人がお兄ちゃんと付き合ってるって話になれば、みんな噂の的にして楽しんじゃうわよ」
「そうだよね」

本当にそう思う。敦賀先生とお付き合いしているのは、琴南先生じゃなくて私なんです!と言ったところで、誰も信じてなんかくれないわ。
夢は寝てから見ろって笑われるだけよ。それくらいきちんと分かってますとも。…自分の容姿が先生に釣り合わないくらい、重々承知しております。

「…キョーコさん、大丈夫よね?」
「へ?」
「まさか噂が本当だなんて思ってないわよね?」

少し心配そうに顔を覗き込んでくる千織に、キョーコは笑った。

「大丈夫。そもそも先生が琴南先生に殴られたのだって私のせいだもの」

奏江に『順序だけは守れ』と言われたキョーコは、蓮に噛みつかれて縫われた傷の回復方法についての『順序』を調べた。
そして1週間後、「3日前に半抜糸致しました!そして本日残りを抜糸してもらえます」とキョーコはマスクを取って報告した。
そこではじめて奏江は自分の質問とキョーコの答えの奇妙な上に絶妙なズレを認識したのだ。

そのズレの正体を確認した後、奏江は天を仰いだ。

「…本当に…モーーーーーーっこのオボコがっ!!」

蓮がキョーコを襲ったのだと勘違いして、思いっきり殴りつけた蓮に自分の勘違いを認めたりしたら、今後事あるごとにキラキラと神々しい笑顔で嫌味たっぷり、ネチネチと嫌味を言われ続けるのだろうと思うと、奏江はくらくらした。
キョーコの勘違いっぷりに、ある意味これからの蓮の前途多難な恋の行方に嘆く奏江の様子に、自分の辿っている順序が間違っているのか?とキョーコは首を傾げ続けた。


**


「あれ?今日はタコさんウィンナー抜き?」
「…社先生、人の弁当ジロジロ見ないでください」
「何だよ。少し前は見せびらかしてたくせに」

噂がキョーコの耳に届いた翌日、蓮がいつものようにキョーコお手製のお弁当をウキウキしながら開くと、そこに居る筈のたこさんウィンナーが見当たらなかった。
初めてキョーコがお弁当を作ってくれて以来、よっぽどの事が無い限りタコの形のウィンナーを入れてくれる。

どうしたのかと思いつつも、蓮は深く考えずに食べ進めた。
別にウィンナーが好物な訳ではないし、タコがいなくても十分に蓮のお腹も心も満足させてくれるお弁当なのだ。

「えっ」

白飯をつまんだ拍子に、底の方からスポンとタコが出現したのだ。

予想外の場所から現れたタコに、つい上げてしまった抜のけた声に、社が不思議そうに弁当を覗き込んだ。

「…あーあ。それ、も…彼女、相当怒ってるね。絶対にあの噂を聞きつけたんだよ」
「あの噂って、まさかあの般若…いえ、琴南先生と俺が付き合ってるとかって言う法螺話の事ですか?」
「それ以外何があるって言うんだよ。あーあ。彼女カワイソー。蓮君の不誠実ー。サイテー」

蓮の機嫌が急降下した。

冗談じゃない。最上さんからようやくOKの返事を貰えたばかりだって言うのに。変な噂のせいでギクシャクしたらどうしてくれるんだ。

「社先生…」
「ん?」
「ん?じゃないです。早く何とかしてして下さい」
「どうして俺が?何とかしないといけないのは前だろう?」
「何を他人事のように言ってるんです。社先生、それでいいんですか?好きな人が別の男と噂になってるんですよ!?」
「あー…でも真相を知ってるし?」

飄々と答えながら、学食のカレーを頬張る社を、蓮はジロリと睨みつけた。

「いや、ちゃんと理由もあるんだって」

蓮とキョーコが付き合っている事が例え噂話にでも上らないように、法螺話こそが本当の事のように生徒たちには思わせておけばいいと、2人にとっていい隠れ蓑になる筈だから放っておけばいいのだ、と奏江は涼しい顔で言ったらしい。

「あの人、どれだけ男前なんですか?」
「ホント、惚れ直しちゃうよねぇ。だからお前は早く誤解を解いて彼女を安心させてやれよ?」
「…はい。そうします」

蓮は苦笑しながら、ご飯粒が付いたタコをパクリと口に放り込んだ。


**


「あれ、抜糸出来たんだ?」
「はい!今日病院で」

帰宅すると、玄関まで蓮を迎えに来たキョーコの顔からマスクが外れていた。

女の子の顔に傷は残せないと、治療をしてくれた医師は間隔をできるだけ狭めて縫ってくれたらしく、唇の表面は入念に4針、内側に2針の縫合をしてくれた。
縫合された糸の色は黒く、切り揃えられた端の部分がツンツンと傷に沿って突き出していた。

それを鏡で見たキョーコは、まるで唇から髭が生えたようだと嘆いた。誰にも見られたくないと、それこそお風呂に入る時以外、眠る時さえマスクをずっと付けていた。
食事をするのも大変だろうと、歯を磨いてやろうと蓮や千織が気遣っても、逆に恥ずかしいから放っておいてほしいと逃げ出してしまう。
構いたいのに触らせてくれない子リスを追いかける様な兄妹の耳を、テンは両手で捻り上げながら少しは小動物の気持ちを理解してやれ、追い詰めるなと説教をする。そんな1週間が過ぎていた。

「…もっとよく見せて?」
「ひょわっ」

蓮が両手でキョーコの頬を包み込んで少し上を向かせ、蓮はキョーコを覗き込むように前屈みになる。

赤く色づいている、美味しそうなさくらんぼのような唇の外側ギリギリに、それよりも少し濃い赤い線が刻まれていた。
まるでルビーのような輝きを放つ食べ頃の佐藤錦に、無残な傷がついてしまっているかのようだ。

勿論、蓮はそんな傷程度でその極上のさくらんぼを桐箱から弾き出すつもりなど毛頭ない。
味は絶品。一口食べたら病み付きになる程、最高に美味しい事を承知している。

それでも顔にニキビが1つ出来ただけで、この世の終わりだと荒れ狂う千織と同じ思春期の少女の顔、それも唇に残るかもしれない傷が出来てしまって、キョーコは相当落ち込んでいるのではないか。
ましてその傷は、不本意とは言え蓮がつけてしまった傷なのだ。そんな事を考えるうちに、蓮の気持ちはずるずると地盤沈下していく。

「まだうっすら赤味がありますけど、そのうち消えて傷も目立たなくなるそうです」

だから平気だと笑うキョーコに、蓮の気持ちが少しだけ軽くなった。

「そう……内側も見ていい?」
「へ?」

唇を突き出して見せればいいのだろうか?でもそんな事をしたら変顔になってしまうではないか。そんな恥ずかしい真似はしたくないと考えているうちに、蓮の親指がキョーコの唇に触れ、くるりと内側をめくる。

「ふぉっ」
「ゴメン、痛かった?」
「いえ、もう痛くは無いです」

痛くは無い…痛くは無いけど、居たたまれない。そんなじっくりと見られるなんて、もう身の置き場も無い。
逃げ出したくても、両頬をがっちりとホールドされて顔を背けることさえできない。

キョーコは真っ赤になって目線を泳がせた。

「その…最上さんの耳にも入ってると思うけど、琴南先生との噂…信じてないよね?」
「あぁ…アレですか」

キョーコの本音を探るように、不安そうに自分を覗き込む蓮の瞳を見て、今日、学校で千織に同じように顔を覗き込まれたことを思い出した。本当に千織と蓮は似ているな、流石兄妹だと感心して苦笑してしまう。

「大丈夫です。噂なんて信じてませんよ。私、敦賀先生を信じてます」

蓮の瞳をしっかりと見つめて返しながら、頬を緩ませて答えてくれる様子に、蓮はほっとした。

「それじゃあ、どうしてタコがご飯の海に沈んでたの?…やっぱり怒ってる?」
「違います。…ちょっと違うと言うか…そうなのかな…少し拗ねたって言うか…すみません」

奏江が蓮を殴ったのは、キョーコに怪我をさせた事を怒っての事だとキョーコは解釈していたし、蓮が自分に向けてくれる愛情を信じていない訳でもなかった。
それでも1日に何回も同級生たちにその噂の真相を尋ねられるのも噂話を聞くのも、本音を言えばキョーコは嫌だった。

拗ねてちょっと悪戯をしたくなった結果、タコをご飯の底に埋めたのだ。

そっか…焼きもちか。

可愛い恋人が自分に焼きもちをやいてくれたのだと思うと、蓮は嬉しくて仕方なかった。その喜びが、蓮の顔を無意識のうちにほころばせる。
ついさっき地盤沈下した蓮の気持ちが、元に戻る以上に隆起して見せた。

「触ってもいい?」
「いいですよっ。もう存分に触って下さい!」

悪戯を咎められたと思って、キョーコは半べそになりながら、やけっぱちに言い切った。

その途端

「んーーっ!?」

傷跡を辿るように、蓮がキョーコの唇に舌を這わせた。そしてそのままキョーコの咥内に入り込み、内側の傷にも触れて行った。

「うん…やっぱりちょっと段になってる…」
「触るって…指でじゃないんですかぁーーーっ」

不意打ちだと、卑怯だと蓮の胸をポカポカと叩くキョーコに、蓮はゴメンと笑いながら謝り続けた。


翌日のお昼時、いつものようにお弁当を開けた瞬間、蓮は固まり、一拍おいてぶほっと笑い噴き出した。

ご飯の波間に頭の先だけプカリと覗かせるたこさんウィンナーと腹を捩らせて笑う蓮に、社と奏江が生暖かい視線を送り続けた。



つづく




今食べたいものがさくらんぼだったもので。
さくらんぼ、美味しいですよねー。傷アリ上等。どんと来いです。



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