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   母強し 素うどん   


素うどん、ナーは好きです。天ぷらやお揚げとかいらないです。
そんなこんなで讃岐うどんを食べよう!と、何の下調べもせずに香川県に行った愚か者です。
まさか車で巡らなくてはいけなかったとは…。


『よし!メイク完了よ! 自分の腕に感動さえ覚えるわ』
『ひょわーっ。ありがとうございます!!』


クー主演のハリウッド映画の撮影が始まって既に数日が経過していた。
映画は妖精界を滅ぼそうとする悪魔との攻防を描く、ファンタジー大作で、クーは悪魔との死闘を繰り広げる、妖精界の王を演じる。

クーが主演を務めることは1年以上前から決まっていたが、その端役にクーはキョーコを捩じ込んだ。

通行人Aならぬ、通行妖精A役。

セリフがある訳でもない。平和な森に突如現れた悪魔から逃げ回る妖精のうちの1人だ。

これを『親子共演』と宣伝文句にするのはどうかというレベルだが、映画の話題性にはもってこいだ。
それにクーの娘は通行妖精A役なのだ。大勢と逃げ惑う姿をスクリーンに1秒でも映してやれば、娘と共演したいというクーの我儘も満たされるだろう。そんな思惑で作成サイドはキョーコの出演を快諾した。


『まぁ、なんて可憐な妖精なのかしら!!キョーコ、こちらを向いてママにもっとよくお顔を見せて?』
『ジュリママ、これはハリウッド・コスメ・マジックよ。素うどんに伊勢海老の天ぷらが盛りつけてあるようなモノなのです』

鏡越しに拝謁するママの方が眩いくらいにお綺麗です!
素肌の上にお化粧が3ミリほどの地層で施されているような気がするわ。何だか皮膚呼吸が上手く出来ないと言うか、密閉されていると言うか。
笑ったりなんかしたらポロポロと塗りたくられたものが剥がれ落ちそうで恐い位です。

『素うどん?分からないわ。でも天ぷらは分かるわよ?』

ソウデスヨネ。妖精界の女王様たるもの、素うどんなんてお召しになられませんよね。

『でもきっと上に盛った天ぷらの美味しさを引き出すベースのようなモノでしょ?ベースが極上だから天ぷらも美味しいんじゃなくて?』

ハッと息をついて振り返ると、ジュリエラは慈愛に満ちた表情でキョーコを見つめていた。

本当に私ったら駄目ね。ついつい卑屈になっちゃった。
そうよ!素うどんが美味しくなかったら、どんなに極上の天ぷらだって美味しく頂けないわ。うどんのコシやツルンとした舌触り、そしてダシの効いた汁があってこその極上天ぷらなのよ!!

素うどんたる私が笑わなかったら、極上のコスメ・マジックを台無しにしてしまう。
まぁ、高級店の素うどんじゃなくて、駅の立ち食いコーナーの素うどんで恐縮ですが…。ジュリママが可愛いって言ってくれるんだもの。ちゃんと心から笑わなくちゃ。

そうだ、お夕飯は天ぷらを揚げようかな?

『ジュリママ、ありがとう。キョーコ、ママの事が大好き!!』
『キョーコ!何て可愛らしい笑顔なの!!あぁ、マイ・スィート・エンジェル!!!!!!!』

ふにゃりと笑って抱きついてきたキョーコに、ジュリエラは身震いしながら顔中にチュッチュとキスを落とす。

『ぎゃーーーっ!!折角のメイクの上にキスマーク付けないでぇーーーーーーっ』

メイクアップアーティストの絶叫を余所に、ジュリエラはキョーコの顔中に真っ赤なルージュのキスマークを踊らせた。


『クー、どれがお前の娘だ?』
『やぁジョニー。ねじくれた角か。羊みたいだなぁ。メーって鳴いてご覧?』
『あはは。悪魔の角をつかまえて羊とは、随分と余裕だな』

コーヒーを飲みながら休憩していたクーの隣に、全身黒づくめの衣装のハリウッドスターがドカリと座った。
悪魔が妖精の森を進軍するシーンの撮影がもうすぐ始まる。その進軍の先頭に立つ魔王役の男だった。
クーの視線の先に、スタッフの説明を熱心に聞くたくさんの妖精役の少年少女たちの姿があった。

『あの子さ。奥の方…金髪の一際長いウィッグを被った子。可愛いだろう?』
『あぁ、美人だな。それよりクー、お前に娘なんて居なかったよな?もしかして隠し子か?』
『冗談でもよしてくれ。もしも俺に隠し子なんて居たら、ジュリエラの寿命はとうに尽きてるぞ?』
『それはそうだ。じゃあ養女か?』
『いや。本物の娘だよ。…近い将来な。多分、きっと…… もしかしたら…』

今回のキョーコを拉致というジュリエラ・ショックが久遠のヘタレにどう作用したのか。クーも掴み切れていなかった。

大切な存在が自分の目の前から突然消えたのだ。しかも実の母の手によって。
もしそれが自分なら、ジュリエラが同じように攫われたら、パニックにならないわけが無い。
それなのに息子からは、キョーコが現れたらすぐに日本に送り返してくれと連絡があったきりだ。

そして送り返すと約束したキョーコが、未だにクーとジュリの傍に居る事、更に映画に出演する事をメディアにだってオープンにしている。
まだまだ帰す気など無い事を明言しているのも同じなのに、久遠からの連絡は一切無い。

息子は一体何を考えているのだろうか?

考え込んでぎゅっと寄った眉間に、悪魔の黒い爪がトスと刺さった。

『痛い痛い。ジョニー、痛いって』
『やっと思考の小部屋から出てきたか。ニヤニヤしながら眉間に皺寄せるなよ。気持ち悪い。そろそろこっちはスタンバイだ。お前の娘の演技が楽しみだよ』
『おう。うちの娘に喰われるなよー』

笑いながらセットの方へと向かうジョニーをクーは見送った。



森の中、開けた花園で戯れる妖精たち。微笑みながら色とりどりの花を摘む者や、身を横たえて午睡を楽しむ者。
その中で、黄金色の緩やかなウェーブを描く髪がクルクルと回り、光を反射させている。

出来上がった花冠を大事そうに胸に抱いて、微笑みながら仲間の周りを踊るように回転しながら走る少女に、自然と目が行く。

花を摘んでいた一人の少女の頭上にそっとその花冠を置いて、とても似合うと言うような笑顔に、花冠を捧げられた少女も、屈託のない笑顔を見せた。

この場に居る全員がキョーコの演技に一瞬で魅了された。


さすが我が娘だ。台詞も与えられていない無名の新人の癖に、現場の空気を支配したぞ。
なんだ、あの監督の嬉しそうな顔は。ダイヤの原石を発見したような顔をして…。言っておくが見つけたのは俺だぞ?

そっと隣にやって来たジュリエラの手を握り締めながら、クーは満足そうに微笑みながらキョーコの演技を見守った。



そんな妖精たちが戯れる穏やかな時間は終わりを告げる。
鳥たちが一斉に飛び立ち、穏やかに降り注いでいた陽も翳り、花園に突風が吹き付ける。

森の奥からはザッザッとこちらへと向かって来る不穏な物音と、馬の嘶きが聞こえてくる。

何か得体の知れない悪い事が起きようとしている。

そう感じ取った妖精たちは、不安そうに身を寄せ合う。


森を抜けて現れたのは、黒馬に跨った黒装束の集団  ……悪魔たちの進軍だった。


その姿を見た妖精の瞳が恐怖で歪み、1人また1人とその場を逃げ出す。

妖精たちが恐慌をきたして逃げ惑う。

1人の妖精が逃げ遅れた。ついさっきまで元気にクルクルと、花冠を胸に抱いて無邪気にはしゃいでいた少女だ。
恐怖で足が動かないのか。大きな瞳を更に大きく見開いて、身を竦ませている。

見開いた少女の視線の先には、酷く美しい、何の感情も持たない人形のような顔があった。

闇よりも闇色に染め上げた何も映さないと思っていた瞳が少女を捉えた瞬間、その瞳にゆらりと仄暗い炎が灯り、能面のような顔が歪んだ。

獲物を見つけたと、口角を上げて残虐な微笑みを浮かべている。


少女の口元を覆っていた震える両手が外れた瞬間、養成所で培った声量を如何無く発揮し、腹の底から絶叫した。


「いーーやーーーっ!!びーーーーじぇーーーーーっ!!!!」


絶叫して、ようやく体の強張りが解けた妖精の逃走が始まった。
背後からは、黒馬を下りた悪魔が、舌なめずりをしながら少女を追いかける。

「…もう逃がさないよ?」
「ひぃっ!」

どうしてどうしてどうしてーーっ!!どうして敦賀さんがっB.Jがいるのーっ!!
B.Jなの?カインなの?敦賀さんなのーっ!!
でもでも…っ今の容姿より何より纏ってるオーラが怖いっ!!

大魔王様が降臨なさってるーっ!!うえーーーーーん!!!


真っ青になって、足を縺れさせながら必死に悪魔から逃げようとするキョーコの姿を、監督たちは迫真の演技だと唸った。
これほどの実力を持った若手女優がいたとは。そしてスタッフの耳打ちによってもたらされた、あれはクーの娘だという情報は二重の驚きだった。

演技力、美貌、そしてクーとジュリエラの娘というネームバリュー。3つを兼ね揃えたサラブレットが、今まさに目の前で演技を繰り広げている。

『…ノーカットだ。このまま彼女メインでまわし続けろ!!』

監督の鼻息は荒く、スタッフの気迫も漲った。


『あら?あの真っ黒いオーラを放っているのは…もしかして?』
『久遠みたいだね。……あぁ、俺は息子とも親子共演が出来たようだ』
『まぁっ!クーばっかりずるい!!私だってクオンとキョーコと共演したいわ!!!』
『…… うーん。キョーコは素に戻ってしまったね…あぁ、久遠も素のようだ。全く…2人とも役者失格だな』


「捕まえた。……ずっと帰って来ないから迎えに来たよ」
「つつつ敦賀さんっ」
「まったく…君にはお仕置きが必要だよね?」

ぐぃっと腰を掴んで引き寄せたキョーコの耳元で、蓮はそっと意地悪く囁いた。

「ひっ…ごっごめんなさいっ…ゆゆゆ許してください…」

キョーコは突然の魔王のお迎えに歯をガチガチと鳴らすほどに震えている。

「駄目だよ。許さない」
「ふぇっ」

ニヤリと笑う蓮にキョーコの緊張は振り切れた。

フツリと視界が閉ざされ、キョーコは気を失った。


悪魔は意識を失った妖精を嘲笑うと、己の腕という檻に捕えた真白い存在を黒く染めていく事を楽しむように、恍惚の表情を浮かべながら妖精の胸元にむしゃぶりつき、1つ、また1つと紅い所有印を散らした。



つづく のか…。




おかしい。今回で完了予定だったのです。
それに今回は母はあまり強くない…。反省。



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