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   黒猫の希い 21   


黒猫です。
ちょっと長くなってしまったので途中で切ってます。
ダラダラですみません。続きは明日アップ致します。


「なんかキョーコちゃんの料理の腕前、もの凄く上達してないか?凄いって言うか異様って言うか、鬼レベル?」
「やっぱり社さんもそう思いますよね。料理初日のあの目玉焼きと比べると…もう何て言うか、言葉も出ませんよね…」

今日のお昼だと送られた写メに、ラムチョップのマスタードソース掛けと自家製のクルミパンとサラダを前に、取り上げられそうになる缶詰を死守しようと両手で握り締めているキョーコが写っている。

因みに今朝送られてきた写メは、マリアのリクエストだと言うパンケーキだった。
添付された写メには、フルーツ猫缶の生クリーム和えを山盛りにしたパンケーキと共に、天井知らずの高カロリーだと眉間にシワを寄せる奏江が写っていた。

「2週間足らずでパンも焼けるようになったのか…本当にキョーコちゃんって凄いね」
「まあ、社長の家の料理人たちがついていますからね。色々と手伝って貰ってるんでしょう」
「それにしても…俺たちの昼飯とは雲泥の差だな?」

手に持った、冷えたロケ弁に視線を落として溜め息をつく社に蓮は笑いながらスマホを向けた。


**


「うーん…」
「お姉さま、どうなさったの?そんなに難しい顔をして」

学校から帰ったマリアがキョーコの部屋に一目散でやって来た。
いつもであれば、マリアに笑顔で「お帰り」と優しく声をかけてくれる筈なのに、キョーコはマリアに気付かずテーブルに顎を乗せて、ジッとスマホと睨めっこをしていた。

「マリアちゃんお帰りなさい。これ、蓮が送ってくれたんだけどね…」
「あら、社さんじゃない」

キョーコがマリアに見せたスマホには、蓮が昼間送信した、ロケ弁を持った社が写っていた。

メールにも、こちらは冷めたお弁当だと書かれていた。

「社さんったら随分と情けない顔をなさって…。きっとそのお弁当、あまり美味しくないのね」
「えっ?美味しくないの?」
「ロケ弁でしょ?マリアも何度かおじい様と食べたことがあるけど、普通のお弁当よ」

キョーコは「普通のお弁当」がどういうものか分からなかった。食事を必要としない死神に、そもそも食の概念は乏しい。
社が手に持っているものは、さしずめ1食分を1つのプレートに押し固めたモノのように思えた。

なんとなく、キョーコが入院中に食べた病院食のワンプレートを思い出して複雑な気持ちになった。
キョーコにとって病院食は「食べないと叱られるモノ」という位置づけだった。


「そうね、お姉さまのお料理の方がうーんと美味しいもの…そうだ!!」

マリアは良い事を思いついたとばかりに両手を体の前でパシリと合わせた。

「今度の土曜日、お姉さまの作ったお弁当を蓮さまにお届けしましょうよ!!」
「え?届けるって…蓮の職場に?」
「そう!!サプライズプレゼントよ!!その日の蓮さまのスケジュールはおじい様に聞けばすぐ分かるし、きっとおじい様なら面白がって手伝ってくれるわ!」

すぐに聞いてみると言ってマリアはパタパタと嬉しそうにキョーコの部屋を後にした。

テレビに映る蓮は、普段キョーコに見せる顔とは全く違う。纏うオーラさえ別人のように思えた。
俳優という仕事が本当に好きなのだろう。仕事に打ち込んでいる蓮を見てみたいという好奇心は元々あったが、こんなにも早くそのチャンスが舞い込んでくるとはキョーコも思っていなかった。

それに自分から蓮に会いに行けると思うと、自然とキョーコの口元がふよふよと緩んだ。

驚いてくれるだろうか、それとも喜んでくれるだろうか。

「そうだ、蓮が好きなものを詰めてあげよう!!」

そこでハタリとキョーコの動きが止まった。

蓮は一体何が好きなのだろうか?殻の入った目玉焼きでさえ笑いながら美味しいと食べてくれた。
病院に居た頃、移動途中に顔を見せてくれた時はおむすびを食べていたが、あれは好き好んで食べている様子ではなかった。

蓮は何が好きなのだろう、何が嫌いなのだろう?甘いものは好きだろうか。何を作ったら蓮は喜んで食べてくれるだろうか。

蓮の喜ぶ顔を思い浮かべて、キョーコはほんわかと心が温かくなるのを感じた。


**


「マリアちゃん、本当にこの格好、変じゃない?」
「変じゃないわ。とても似合ってるわよ。それに私とお揃いなのよ?」
「うん…。マリアちゃんはとっても可愛いけど…」

2人が着ていたのは、マリアが用意したアイスブルーの生地をふんだんに使った、スタンドカラーのクラシックメイド服だった。
胸元までのヨーク切替には、ピンタックとレースのリボンが施され、肩口にはフリルがあしらわれている。
パフスリーブの袖先はには飾りボタンがついている。あとは淵にフリルの付いたエプロンを着ければ完璧だ。

マリアは膝丈、キョーコはロング丈で、どこぞのカフェのような雰囲気は一切ない。

「大丈夫!絶対に可愛いもの。蓮さまも褒めてくれるわよ!!」
「ふふ。そうだといいな」

マリアとキョーコはローリィの側近、セバスチャンの運転で蓮がドラマの撮影を行っているテレビ局に辿り着いていた。

フリフリの衣装を着たアイドルや大きな猫の着ぐるみがポテポテと歩いていたり、スタッフたちが走り回る活気あふれる様子にキョーコは興味津々で、フラフラとスタッフの後を追おうとするのをマリアが何度も呼び止めた。

「お姉さま!今日ここに来たのは蓮さまにお弁当を差し入れするためでしょ?見学は差し入れが済んでからよ!!」
「ふゎい」

全く、どちらが年上なんだとマリアがプリプリと怒る様子に、キョーコはクスクスと笑いながら蓮の楽屋を目指した。


「あっ!マリアちゃんあったよ!!」

蓮の名前が貼られた楽屋を見つけ、キョーコとマリアは満面の笑顔で笑い合った。

そして蓮を驚かせようと、マリアが勢いよくドアを開け、そのままの勢いで一歩を踏み出した。

マリアが開いたドアの隙間からその先の光景を見た瞬間、キョーコはふわりと横跳びをしてドアの前から入り口脇の壁に移動した。

「蓮さま!!!」
「えっ?…アリアちゃん!?」

テレビ局にいる筈のない、可愛らしい小さな訪問者に蓮と社は目を丸くする。


満開の笑顔で飛び込んだマリアの表情が一瞬で固まった。


「あらぁ。可愛らしいお嬢さんね。敦賀さんの恋人かしら?」


キョーコは咄嗟に隠れた楽屋入口の脇で、両手に抱えていたお弁当をぎゅっと掴んだ。


蓮の隣に見知らぬ女性が座り、テーブルに置いた蓮の左手の上に、綺麗な赤いネイルが施された白く細い指を重ねていた。
そのすぐ脇に、紙袋が置かれていた。

ネイルとお揃いのような真っ赤なルージュを引いた口元は魅惑的な弧を描いている。

「…それじゃあ私はこれで。迷惑だったら構わずに捨ててくださって構わないわ」
「いえ。…お弁当ご馳走様です」

蓮の返事に微笑を浮かべて、女性は蓮の楽屋を出て行った。


「…今の人、確か女優の新田綾加…あの人が蓮さまにお弁当を作って来たの?」
「うん。受け取らないなら捨てるって言うから…ね」

ジロリと、非難を含んだ突き刺さるマリアの視線を受けながら、蓮は困ったように眉を下て答えた。

「ふーん。受け取ってしまわれたのね…。蓮さまは誰にでも優しいから勘違いさせてしまうのではなくて?」

綾加は蓮にしなだれかかるように身を寄せていた。明らかに蓮狙いなのに、蓮は拒否する姿勢を取るどころか、相手を煽っているようにさえ見えた。
マリアの冷たい視線に蓮が苦笑した。

「ごめんなさい。これからはもっと意思表示をします」
「本当ですわ!嫌なら嫌だと言いなさいませ!!」

あれくらいの接触、蓮にとっては日常茶飯事だ。
それに分かりやすいアピールの分、こちらが必要以上に反応を示さなければ、蓮にその気が無い事を察して離れて行ってくれる。
そうやって蓮は拒否の姿勢を貫いたのだが、マリアには分かって貰えなかったようだ。

「それより今日はどうしたの?社長と一緒に来たの?」
「いいえ。おじい様じゃないわ。…あら?お姉さま?」

一緒に来たのにどこへ行ってしまったのだろう?とマリアはドアの外をキョロキョロと見回す。

「えっ!?キョーコちゃんと来たの?」
「ええ。でも…居なくなっちゃったみたい」

社が驚いたようにガタリと立ち上がってマリアと同じように楽屋の外を見渡した。

「お姉さまと2人で蓮さまたちにお弁当を作って来たのよ。それなのに蓮さま、他の人のお弁当を受け取ってしまわれたでしょ?怒ってでどこかに行ってしまわれたんじゃ…」
「おい、蓮!!」


今日は何を食べたの?
果物、何が好き?
人参食べられる?
豚と牛、どっちが好き?
焼いたトマトって美味しいと思う?
明日もお弁当なの?


数日前から急にキョーコから届き始めた一言メール、その殆どが、蓮が何が好きか、何が食べたいかを探る内容だった。
この前の朝食会のように、きっとキョーコが蓮のために食事を作ろうとしている事は分かっていた。
キョーコからのメールがこそばゆくて、蓮は気づかないフリをして質問に返信を続けていた。

でもそれが弁当で、わざわざマリアと届けてくれるとは思いもよらなかった。

「俺、探します!もしかしたら戻ってくるかもしれない。社さんとマリアちゃんはここに居て!!」
「蓮さま!!」

蓮は勢いよく楽屋を駆け出した。



続く



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