HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  黒猫の希い  »  黒猫の希い 22

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   黒猫の希い 22   


黒猫続きです。
ジリジリ感が書ききれません。
難しいです…。


蓮に食べてもらおうって、マリアちゃんと朝から張り切ってお弁当を作ったのにな。
…このお弁当、無駄になっちゃったね。

マリアちゃんが開けたドアの先で、紅い爪と口紅がよく似合う美人さんの隣で蓮は笑ってた。
きっと今頃あの人の作ってきたお弁当を、蓮は食べてるんだろうな。…嬉しそうに。

あの人、蓮の恋人なのかな?
蓮も穏やかに笑ってたし、お似合いだなぁって思ったのよ?

一瞬見ただけなのに、目に焼き付いて離れてくれない程に。

さっきまであんなに蓮に会えるのが楽しみで仕方がなかったのに、今は会いたくない。

今の私は、きっと上手に笑えない。

コーン。私、いつからこんなに嫌な子になっちゃったのかな?
蓮の幸せを…大好きな人の幸せを願えないなんて。



キョーコちゃん、何処へ行ってしまったんだ!!

電話をかけても出る気配が無い。
GPSでキョーコの現在地を確認しても、テレビ局から離れた様子はない。蓮は局内を手当たり次第探し回った。

朝食を作ってくれた時のように、きっとマリアと楽しく調理をした料理の数々を、蓮の驚いた顔を思い浮かべながら、楽しい気持ちごと弁当箱に詰めてここまでやって来たに違いない。

それなのに、他の女性の弁当を受け取ってしまったから。「ご馳走様です」などと食べる意思表示をしてしまったから。
勢いよく視界に飛び込んできたマリアの背後で、同じ色のスカートの裾がたなびいたように見えたのは、やはり見間違いではなかったのだ。
あの時、すぐに気づいていれば。それよりも、差し入れを受け取っていなければ。仮に断り切れずに受け取っていたとしても、彼女を楽屋に招き入れたりしなければ。

蓮の胸に、後悔ばかりが押し寄せてくる。



テレビ局内は広い。それこそ収録中のスタジオにでも紛れ込んでしまえば、その中からたった1人の少女を見つけ出すことなど到底叶わない。

それでも蓮は局内を歩き回っていた。時折かけられる声にも微笑んで視線を送るだけで立ち止まりもせず、視線を周囲に巡らせて、キョーコの姿を探し続けた。


何処に行ってしまったんだ。…このフロアにもいないのだろうか。

「くそっ…」

蓮が顔を歪めて、キョーコを探そうと別のフロアへと移ろうと踵を返したその時



『ニャー』



蓮がつい数秒前に通り過ぎた場所に、茶トラの猫が座っていた。

ペロペロと前足を舐めて毛づくろいをしている様子は、まるでこちらだと手招きしているようにも見える。

どうしてこんなところに猫が?動物番組にでも連れられて来た猫だろうか。
それにしては俺を睨みつけている目つきは相当悪い気がする。手を出した途端、引っかかれそうだ。

呆気にとられて猫を見つめていると、『シャーッ』と威嚇するように一鳴きして、ツンと横を向いてしまった。

やはり野良猫が迷い込んだのか、と思いながら何気なく見た猫の視線の先に、人影が揺れている。

よく見れば、蓮が探し求めているたった1人の少女の栗色の短い髪が壁からヒョッコリとのぞいていた。

「キョーコちゃん…」

あんなところに居たのかと大きく安堵の息を吐き、地下の誰もいない倉庫脇のキョーコが座っている場所まで、一直線に蓮は駆け抜けた。


「キョーコちゃん!!」
「…」

目の前に蓮が現れても、キョーコは無反応だった。

じっと蓮を見つめたまま何も言わずに、ポソポソとお弁当を口に運ぶ。

キョーコの膝の上に広げられたお弁当の中には、俵型のおむすび、いんげんと人参とチーズの豚巻き、ハンバーグ、プチトマト…


今日は紅鮭とツナのおむすびだったよ。
缶詰の果物も美味しいけど、旬の果物はもっと美味しいと思うよ?今度果物狩りたに連れて行くよ。
キョーコちゃんがゴーグルをつけて玉ねぎをみじん切りにしたハンバーグ、俺も食べたかったな。
俺は大人だから、マリアちゃんと違って人参は食べられるよ。
焼いたトマトも美味しいけど、プチトマトもキョーコちゃんみたいに可愛いよね。
明日もお昼はお弁当だよ。


キョーコからのメールに、蓮が好きだと返信した料理や素材を使った料理が、所せましと詰められていた。

こんなにも色とりどりの弁当を作るのに、一体どれ程の時間をかけたのだろう。
きっと朝からマリアと張り切って作ってくれたに違いない。

そのお弁当を今、キョーコは1人で黙々と食べている。

蓮は泣きたくなった。


「マリアちゃんと2人で俺と社さんにお弁当、作って来てくれたんだってね」
「…」
「一緒に食べてもいい?腹ペコなんだ」
「…」
「美味しそうだね。…あんまり美味しそうだから独り占めしたくなっちゃったの?」

何も言葉を返そうとしなかったキョーコの肩がピクリと揺れた。

「…キョーコちゃん?」

「…うん。独り占めしたくなったの…」

肩を震わせて、ボロボロと泣き出したキョーコに驚いて、蓮はキョーコを食い入るように見つめた。

「…蓮の…蓮の隣…あの人…っく…嫌だよぉ…」
「え? …キョーコちゃん?」
「蓮のっ…隣…私……の…」


___ 蓮の隣には私が居たいの ___


キョーコの嗚咽の合間に紡がれる言葉に、蓮の心は高鳴った。

もしかしたら、キョーコのそれは子供じみた独占欲なのかも知れない。
それでもキョーコが初めて蓮を、久遠ではなく蓮を求めたのだ。

久遠と同じ魂を持つ同一人物、己の事だと言うのに、蓮の胸は歓喜に震えた。

「ごめん。キョーコちゃんごめんね?もうキョーコちゃん以外の人を隣に寄せない。俺もキョーコちゃんが隣に居て欲しいんだ」

誘われるような甘い香りも柔らかい髪も、君の笑顔ほどに、君の泣き顔ほどには俺の心を締め付けないんだ。



蓮は弁当が床に落ちるのも構わず、キョーコを引き寄せ、力強く抱きしめた。



続く



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。