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   コングラッチェ 28   


お久しぶりにコングラです。
偶然と必然は中休みです。飽きたわけじゃないんですよ?
素直なキョーコちゃんに出会いたかっただけなんです。


「三者面談かぁ。ダル過ぎる…はっきり言って面倒くさい」

HRで配られた三者面談のお知らせのプリントを手に、千織はキョーコの隣で眉間に皺を深く刻んで呟いた。

「でも私たち3年だし、三者面談って言うより進路相談だよ?」
「そうじゃなくて。うち、毎日がほぼ三者面談なのよ?今更必要ないでしょう」
「毎日…ふふっ。そうよね」

兄の蓮が担任なのだ。千織の成績や学校での生活は筒抜け状態だ。
それに母であるテンも、キョーコは詳しくは知らないが、美容業界では超がつくほどの有名人らしい。
いつ休んでいるのだろうかと思うほど、精力的に駆け回っている。

今更3人で膝を突き合わせてする話など無いし、あったとしても自宅で三者面談が可能なのだ。
テンが忙しい中、わざわざ学校まで来る必要も無いだろう。


それでも、とキョーコは確信している。


「でも、きっと…ううん。絶対にテンさんは来てくれるよ。話だけじゃなくて、この階段で天宮さんが転ぶフリをして、私を追いかけてきたショーちゃんにごみ箱を投げつけたんだなぁとか、天宮さんの学校生活の様子を肌で感じたいって思ってる筈よ」
「…何だか嫌な例えね。しかも嬉々としてその状況を説明するお兄ちゃんと、遠い目をして引き攣った笑いを浮かべてるママがすっごくリアルに想像できるわー」

机に突っ伏した千織が、カラカラと笑うキョーコを渋い顔のまま見上げた。

「私の事より…キョーコさんのお母さんは?…その…来るの?もっもしもなら、ママが保護者って事で四者面談する?って!あぁそれこそ日常風景!!」

キョーコの様子を気遣うような千織の視線が、キョーコは嬉しかった。
千織はキョーコの薄い親子関係を気にしてくれているのだ。キョーコを傷つけないように、少しでも心が痛い思いをしないようにと。

「ありがとう。でもね、母が来てくれるらしいの…。その…先生が連絡を取ってくれたみたいで。日程が決まったら連絡しなさいって言われたの」

エヘヘと照れ笑いするキョーコに、千織は安堵した。
キョーコと母親が疎遠らしいことは千織も知っている。そしてキョーコが母親を求めている事も。
そのキョーコが笑いながら母に会えることを教えてくれたのだ。

「そうなんだ。…良かったね」
「うん。天宮さん、ありがとう。本当に私、天宮さんの友達で幸せよ?」
「ッ…とっ突然何を言い出すのよっ!!」

千織はみるみるうちに真っ赤になって、プイッとキョーコから目を逸らした。

こんなにも自分の事を心配したり、自分の事のように喜んでくれる千織に、キョーコは感謝してもし足りない。

素敵な親友が出来た事を、一番最初に母に報告しようとキョーコは思った。


キョーコはその日のうちに、冴菜にメールで三者面談の日時を伝えた。
どうせメールでは、機械的な文章でしか返事が返ってこないと言う事は過去経験済みだ。

少し経って、冴菜から『了解』という想定ドンピシャ、これ以上無い簡素な返信があった。

その二文字に、相変わらずだなという諦めの気持ち以上に、本当に来てくれるのだと思うと、心が浮き立った。

キョーコが母親と会うのは5年ぶりだ。何を話せばいいのだろうか。まあ進路相談なのだから、今までの学業の話がメインなのは当たり前だ。
それでも…もしかしたら面談の後に、近況を語り合う時間があるかもしれない。

私、お母さんと2人だけで話すなんて絶対に無理だもん。緊張して何も話せないよ。
…先生についていて欲しいな…。

でも、そうなったら、先生の事をお母さんに何て説明すればいいのかな。
好きな人が出来ました?…先生とお付き合いさせてもらってます?

イヤイヤ。お母さんだって信じないわよ。あんなイケメンが、平凡を絵に描いたような私とお付き合いだなんて。

…仮に100歩譲ってそれを信じてくれたら、お母さんは何て言うのかな。
不束な娘をよろしくお願いします?それとも、まだ嫁にはやらんって父親みたいな事を言うのかな?
お母さんのポーカーフェイスが崩れる様なんて、想像もつかないよ。
もしかして、教師の癖に生徒を誑かしたとか、青少年保護育成条例違反だとか、先生を訴えて晒し者にするかも…あわわわっ!!
って、それは無いか。今まで実の子をほったらかしてきたんだもの。それこそ条例違反じゃないの。


「ねぇ、コレとコレ、どっちがいいと思う?」
「へ?…っ先生、一体いつの間に!?」

リビングで参考書を開いたまま、母の事を考えていたキョーコの横に、蓮が2本のネクタイを持って座っていた。
蓮の右手のネクタイはブルーのチェック、左手には臙脂に黒の細いストライプが入っている。

「最上さんが1人で難しい顔をしたり、笑ったり百面相を楽しんでる間に?それより、ネクタイを選んでよ」
「うーん…。どっちもお似合いだと思いますけど…」

キョロキョロと2本のネクタイを見比べながら、思案顔を浮かべるキョーコを、蓮は嬉しそうに見つめている。
その表情たるや破壊力満点。最愛の彼女が自分の事だけを考えてくれている様子に、目を細めて蕩ける様な笑顔をしている。
もしもキョーコが蓮の首より上を見上げていれば、真っ赤になって逃げ出している筈だ。

しかし悲しいかな、今のキョーコには、蓮の首より上へ興味は一切無い。

「うーん…ちょっと貸してください」

そう言ってキョーコはネクタイを受け取ると、蓮の方に向き直って、首元に交互に2本のネクタイをあてた。

臙脂の方がいかにも『先生』って感じかな。でもブルーのチェックの方が清潔感があるかなぁ。

蓮の首元にネクタイをあてる度に、キョーコの手が蓮の胸元をトンと優しく触れて行く。

「…拷問…」
「? 何か言いました?」
「ううん。何でもないよ…」

キョーコの細い体を抱き締めてしまいたい衝動を、蓮は何とか押さえ込んで、キョーコがネクタイを選んでくれるのを待った。

「…すみません。私、選べません」
「え?どうして?」
「だって、どっちもお似合いだと思うんです。だから…明日はこれで、明後日はこちらって言うのはどうでしょう?」

困ったように上目遣いで蓮を見上げるキョーコに、蓮は我慢の限界とばかりに顔を落として、チュッと唇にキスをした。

「っ!!また不意打ち!」
「不意打ちはそっちだよ。そんな上目遣いで俺の事を見て。心臓を撃ち抜かれたよ」
「んなっ!?」

「お兄ちゃんキモいー。寒いー。って言うかリビングでイチャつかないで」
「…折角いい雰囲気だったのに、小姑が帰ってき「チッ!!」」
「あああ天宮さんお帰り!!」

胡散臭い笑顔の蓮と真っ黒いオーラを纏わせた千織の間で、キョーコはあわわと冷や汗を垂らした。

「んもーっ!久しぶりに早く帰ったのに兄妹喧嘩なのー?ママの愛の鉄拳制裁が必要なのはだぁれ?」

小さな体に不釣合いなほど大きなバッグを肩にかけたテンが、リビングのドアを開けてため息をついていた。

「だって!お兄ちゃんがっ!駄犬が見境なく発情しかけてたのよ!?」
「見境なくって何だ。俺がマウントしたいのは最上さんだけだ!」

ガンっ! ゲシッ!

「「~~~~~~っ!!」」

テンの見事なまでの鉄拳が千織の頭に、延髄蹴りが蓮に入った。

「まったくもー。2人ともお下品は許さないわよ?分かったわね?」
「「…ごめんなさい。」」

ラグの上で悶絶しながら転がる兄妹を、仁王立ちで両手を腰に当てて見下ろしながら、テンは「よし!」と大きく頷いた。

パカリと口を開けて唖然と三人のやり取りを見守っていたキョーコに気付いたテンは、キョーコの両手をそっと握った。

「キョーコちゃん、本当にお下品な子たちでごめんなさいね?千織ちゃんはね、可愛いキョーコちゃんに我慢が出来なくて押し倒したいなら、時と場所を選びなさいと言っているの。そして蓮ちゃんはね、そんな事を考える余裕なんて無い位にキョーコちゃんが今すぐ欲しいって言ってるのよ?」
「!!!!!」
「2人とも、もうちょっとロマンティックな言い方が出来ないのかしらねー? …あら?キョーコちゃん?」

キョーコは首まで真っ赤に染まって、ぐにゃりとラグに倒れ込んだ。

「…絶対にママにも鉄拳制裁が必要だと思う…イタタ。」


**


「あらー!じゃあキョーコちゃんのお母さま、三者面談に来るのね!」
「はい。久しぶりに会えるみたいです…これも先生のお陰です」

エヘヘと照れ笑いするキョーコにテンは目を細めた。

「だから、最上さんのお母さんと会う日のネクタイを最上さんに選んでもらってたんだよ」
「あぁ、そういう事だったんですね?…どちらも素敵ですよ?」

千織はラグに放り出されたままの2本のネクタイを一瞥して顔を顰めた。

「それ、元カノから貰ったヤツじゃないの?」
「え?」

部屋の体感温度が5度ほど急降下したのは気のせいではない。

「蓮ちゃん…あなたって子はっ!!」
「いや、違うよ。これは自分で買った……か?」

はて?と首を傾げる蓮に、千織は大きくため息をついた。

「その青い方は、お兄ちゃんの金融系の就職が決まったお祝いに、当時付き合ってた子がお兄ちゃんにプレゼントしたやつ。赤い方は去年のクリスマスに匿名で学校の下駄箱に入ってたやつ!!」
「…なる程。だから箱に入ったまま新品で置いてあったのか…」
「やだー。蓮ちゃんったら本当に最低だわ!いただいた物と自分で買った物の区別もつかないなんて。そしてそんないわくがあるものを、愛してやまないキョーコちゃんに選ばせようとするなんて、信じられないわ!!」
「キョーコさんも。こんな無神経な女の敵、罵ってやればいいのよ!」
「…本当に申し開きの仕様がありません。…最上さん、ごめん。嫌な思いさせちゃったよね」

小さくなって、情けなさそうにキョーコを上目遣いで見つめる蓮に、キョーコはプッと笑ってしまった。

初めて見る蓮の子供のような仕草に、キョーコは可愛いな、と思った。

別に蓮がモテるのは周知の事実だし、思い出の品として取っておいた風でもない。だったら大切に使ったらいいのに。
そう思ったが、それを言ってしまったら、テンたちに愛情が足りないと嘆かれかねない。それならば、とキョーコは考えた。

「…それじゃあ今度の土曜日、私に先生の時間と体を下さい」
「っ喜んで!!」
「一緒にデパートに行ってください。その…私にネクタイを選ばせてください。あっでも高いのは無理ですよ?」
「え…俺にプレゼントしてくれるの?」

思ってもいなかったキョーコからの言葉に、蓮たちは目を丸くしてキョーコを見つめた。

「はい。元カノさん達に、ちょっとジェラシーです。だから…私も先生にネクタイを選んで差し上げます」

エヘヘ、と笑うキョーコを抱きしめようと、フラフラと伸ばした蓮の腕をかすめて、テンがガバリとキョーコを抱きしめた。

「もーーっ!!キョーコちゃん!あなた何てキュートなの!!私のお嫁さんになって!!」
「ふあぁぁっ!テンさん苦しい~~っ」
「母さん、最上さんが苦しがってるじゃないか。早く放して俺に渡して!!それに最上さんは俺の嫁で、母さんの義理の娘になるんだよ!」


キャーキャー騒ぐ3人を横目に、千織はネクタイを拾い上げてニタリと嗤った。
そして持って来た鋏でジョキン、と躊躇なく裁断し、満足そうにごみ箱へと放り投げた。

よし。お兄ちゃんの部屋の大掃除をするいい口実が出来たわ。コレをきっかけに、疑惑の品々を一掃して、キョーコさんがこの先お兄ちゃんの部屋で快適に過ごす環境を整備してあげなくちゃね。

「フフフ」


天宮家の愛情を陰日向から一身に受けて、キョーコは翻弄されながらも満ち足りた一日を過ごした。



つづく。




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