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   黒猫の希い 23   


久しぶりに黒猫です。
それなのに区切りの都合、短くてすみません。
しかも文才なくて凹んでます。


こんなにも心から欲しいと願う存在<モノ>なんて、今まで出会ったことがなかった。


血を流して今にも事切れそうだった君が、まだ穢れない頃の大切な記憶の中の少女だと分かってから、ずっと大切にして来た。

真綿で包み込むように、慈しむように。

キョーコちゃんの傷が癒えるまで、俺は彼女の宿り木となろうと思った。
いつかキョーコちゃんが自分の羽根で自由に飛び立てるよう、それまでは俺が支えようと。


でも、違う。違う事に気付いた。…気づいてしまった。


慈しみたいんじゃない   愛したいんだ。



____ 俺はこの子の事が好きだ ____



腕の中にすっぽりと納まってしまう程に小さく愛しい存在に、蓮の心は震えた。


RRRR…


キョーコを抱きしめていた蓮のスマホが、2人以外誰もいない地下の倉庫脇で鳴り響いた。
その音に、蓮の腕に抱かれていたキョーコの肩がビクリと揺れる。

おそらく、電話の主は社だろう。
社とマリアは、突然消えたキョーコの行方を心配しているに違いない。
2人を安心させるためにも、キョーコが見つかったことを早く伝えるべきだと言う事は分かってる。

そして

この電話が、『敦賀 蓮』としての仕事の呼び出しであることも分かっていた。

それでも、自分の胸におさまる温かくて、愛おしいものを手放したくない。
心の底から、蓮は社からの電話に出たく無いと思った。

あと少し…もう少しだけ、このままで居させてほしいと。

「蓮…電話…鳴ってるよ?お仕事なんじゃないの?」

キョーコの声に、はっと瞼を開くと、そこには目を真っ赤にしたキョーコが、蓮を不安そうに見上げていた。

「…ごめん。多分社さんだと思う」

そう言って蓮は名残惜しく思いながら、キョーコから腕を離して、ジャケットのポケットからスマホを取り出した。
蓮はキョーコに優しく笑いかけ、空いていた片方の手でキョーコの手を握り締めた。

少しでもキョーコのぬくもりに触れていたかった。

「やっぱり社さんだ」

通話ボタンを押してスマホを耳元にあてた。

「はい…ええ、見つけました。…大丈夫です。…はい。戻ります」

タイムアップを告げる社からの連絡に、蓮は目を閉じて大きく息をついた。

「そろそろ出番だって。…さっきの楽屋に戻らないと」
「うん」

そう小さく頷いてキョーコが落とした視線の先に、蓮がキョーコを抱き寄せた拍子に床に落下した、色とりどりだったおかずが転がっていた。

キョーコの顔がくしゃりと歪んた。

あ、また泣いてしまう、俺のせいで泣かせてしまう。

蓮がそう思った次の瞬間、キョーコが口許を緩ませて笑った。…笑おうとした。

「今度お弁当を作るときは、ちゃんと食べてもらえるように連絡するね」
「待ってる…いつでも待ってるよ」

そう言うと、蓮は散らばったお弁当の前に膝をついた。

「いいよ。片付けは私がやるから。私、お掃除だって覚えたのよ?だから蓮は早く社さんのところに戻…って蓮?」

蓮はお弁当箱からこぼれ落ちずに残っていた、一口サイズのおむすびを摘むと、ひょいと口に放り込んだ。

「蓮っ!」

大声を上げたキョーコを見上げると、キョーコは大きな目が転がり落ちてしまうのではないかと思う程、目を見開いていた。
驚いて一歩も動けないキョーコに、蓮は優しく笑いかける。

「何だか食い意地が張ってるみたいで格好悪いよね」

そう言いながら、またひとつ、残っていたミニハンバーグを口に入れた。

「蓮、もういいから止めて!こんなの食べてお腹を壊しちゃったらどうするの?」
「平気だよ。床に触れたわけでもない。どうしてもキョーコちゃんのお弁当を食べたかったから食べただけだよ」

そう言って蓮はおどけた顔でキョーコを見つめると、顔を真っ赤に染めている。
よく見れば、困ったような嬉しそうな、何ともいえない表情をしていた。

「~~っもう!いいから早く戻って!」
「うん。それじゃあキョーコちゃん」

振り仰いだキョーコの頬に、蓮は触れる程度のキスをした。

「ひょわっ!!」
「御馳走様。凄く美味しかったよ」
「あっうん。」
「…じゃあ…行ってくる。仕事が終わったら、真っ先にキョーコちゃんに会いに行くから」
「うっうん。」

蓮の姿が消えた後も、キョーコは蓮が触れた頬に手をあてて、蓮が走り去った廊下の先を茫然と見つめていた。


その時



「ニャー」



キョーコの足元で、茶トラの猫が力無く鳴いた。
それは、行方が分からないキョーコを必死に探していた蓮が、廊下で出会った迷い猫だった。


「ね、お弁当、落としちゃったけど食べる?」

針金のように細くしたジト目で猫に睨まれて、キョーコは笑った。

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ、ショー。仕事は終わったの?」

猫に話しかけながら、キョーコは床に落としたものを拾い集めた。

「ショー、また髪の毛茶色に染めたの?その色だとカラスになれないでしょ?茶色いカラスなんて見たことないよ。本当にアンタは学習しない男ねぇ……ププッ!やっぱりコッチの世界に居る時は雀に紛れてるの?」
「…」
「ありがとう。私を心配して来てくれたんでしょ?」
「…」
「ショー、私今、すっごく顔が熱いんだけど…熱でもあるのかな?」
「フーッ」
「…アンタ、今ツッコミ入れたでしょ? …… だって私、今までずっとコーンの事しか考えて無かったのに。コーンだけが私の全てだったのに」


それなのに、今は蓮の事を考えると、胸がギューッてなるの。
蓮が触れた頬が、まだすっごく熱いの。


「…ショー、私どうしちゃったのかな? どう思う?」


キョーコが苦しそうな表情で、助けを求めるように振り返ると、猫の姿はどこにもなかった。



続く



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