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   コングラッチェ 29   


先生とデートな話、書くつもり無かったんですけどね。
寄り道が寄り道を誘って気づけば29です。。怖っ。


「はーい。出来上がりよー!」
「ふあぁっ…テンさんって、魔法使いだったんですね…」
「やだーっキョーコちゃんったら何を言い出すの?」
「だって…鏡の中の人、一体誰ですか?私じゃありません!もしかして特殊メイク!?」
「何を言い出すのかと思えば、変な子ねぇ。ほんのちょっとキョーコちゃんの良さを引き出しただけよ?」
「だってだって…」
「もー。キョーコちゃんったら」

テンは愛用のメイク用品をポーチに仕舞いながらクスクスと笑った。

「…そうね。それがキョーコちゃんの3年後くらいの姿かしらね?少しだけ大人っぽく仕上げたから。うふふ。普段はキョーコちゃんって可愛らしい印象でしょ?たまには違った魅力で蓮ちゃんを翻弄してやんなさい。まー、蓮ちゃんはいつだって翻弄されてるようだけど?」

翻弄って…。テンさん、いつも翻弄されてるのは私の方ですよ?

蓮のネクタイをキョーコが選ぶと言い出した、蓮にとっては思いがけないキョーコからのデートの誘いに、テンは惜しみない協力を申し出た。
申し出たと言うよりも有無も言わさない勢いで、すやすやと寝ていたキョーコを早朝から叩き起こしての朝風呂からボディマッサージ、ヘアカットからのメイクを今漸く終えたところだ。

「テンさん、そろそろ朝ご飯の用意を致したいのですが」
「大丈夫よー!チョコパイを置いておいたから心配ないわ!」
「ふえぇぇっ!?」
「それより今はコッチが大事なの!キョーコちゃんの初デートなのよ?私がプロデュースしないでどうするの?」

キョーコはテンの勢いに終始されるがまま、精神力だけで耐え抜いた。


「そろそろ用意でき…わっ!何それ、本当にキョーコさんなの!?」

部屋に入ってきた千織が、目を丸くしてキョーコの全身を見つめた。

キョーコはテンのメイクによって大人美人に仕上げられていた。

普段は降ろしている前髪も、ワックスで斜めに流し、スッと伸びた理知的な眉に涼やかな目元。唇は赤味の強いグロスで濡れている。
服装もゆったりとしたVネックのノースリーブに黒のタイトスカートと、普段のキョーコでは選ばない大人じみた洋服だった。

「うっうん。自分でも信じられないけど、私みたい。服もね、普段と違う感じになるようにって、テンさんが用意してくれたの」
「…そうね。これなら誰に会ってもキョーコさんだなんて気がつかないわよ。私だってスルーするわ」
「うん!別人だもの。これなら誰に会っても誰も最上キョーコだなんて思わないわ!ばれる心配なんて皆無よ」

そんな自信満々に胸を叩かなくても…。そういうところがキョーコさんなのよねぇ。

「さ。お兄ちゃんならエントランスで待ってるから」
「え?駐車場じゃなくて?」
「乙女はキョーコさんと手繋ぎデートがしたいんですって。だから車じゃなくて電車だそうよ。ここから駅まで結構距離あるのに、バカよねー」

先生と手を繋いで歩けるんだ…。ちょっと、ううん。かなり嬉しいかも。
あれ?私も意外に乙女なのかも。

「じゃ、行ってきます!」

テンと千織に見送られて、キョーコはショールを羽織ってエレベーターに乗り込む。そして備え付けられた鏡で自分の姿をもう一度確認する。

うん。これなら知り合いに会っても私だってばれる心配はないわ!安心よ!!
…あれ?じゃあ、エントランスに居る先生も気がつかないのかな?

うーん。そんな気がしてきたわ。だって、お化粧なんてしたことなかったし、しかもプロが別人に仕立て上げたメイクなんだもの!

エントランスに到着したエレベーターからキョーコが一歩踏み出すと、脇に置かれたソファに蓮が座っているのが目に入る。
それと同時に、蓮が一瞬驚いたように目を見開いた次の瞬間、満面の笑顔を浮かべて立ち上がり、キョーコへと歩み寄った。

「随分と母さんに遊ばれたみたいだね」
「…先生、私だって分かるんですか?」
「勿論。普段の最上さんと全く違うけど、違わないよ?」

こんなにメイクとか、普段だったら絶対に選ばないお洋服とか着てるし、バッグだってテンさんにお借りしたブランドモノで、
普段の、素の最上キョーコなんて1つも見当たらないのに?
…あれ?もしかして魔法でさえ隠しきれない貧乏臭さが滲んじゃってる?

挙動不審に自分の体を前後左右確かめたり、匂いをクンクンと嗅いでいるキョーコに蓮は噴き出した。

「ん?」

蓮はどうして笑っているのか、それに普段のキョーコと変わらないと言うのはどういう事だろうと、キョーコは小首を傾げて蓮を見上げた。

「ほら、そんな仕種とか。俺を真っ直ぐに見つめてくれる視線も、いつもの最上さんだよ。勿論、いつもと違ってちょっと大人っぽくて、それはそれで可愛いとは思うけどね」
「…やっぱりどんな魔法をかけてもらっても、中身までは大人美人にはなれないって事ですねぇ」

キョーコは残念そうにため息をついた。

「まったく…そういう意味じゃないのになぁ。…ま、いいか。それより折角変身したんだ。早く出かけよう」
「はい!」
「そうだ、いつもと違うなら今日は名前で呼んでもいいかな」
「なっ名前ですか?」

付き合い始めても、キョーコは蓮の事を「先生」、蓮はキョーコの事を「最上さん」と呼んでいる。
改めて呼び方を変えるのも気恥ずかしい気もするし、千織からは無意識のうちに変えた呼び名が人前で口を滑ってでも出てこないよう、変えるべきではないと忠告されていた。
キョーコはなる程と頷き、蓮はあからさまに抵抗したが、最後は渋々了承した。

その呼び名を、今日くらい変えたいと蓮が言い出したのだ。

「…はい」

勿論、キョーコだって嬉しい。キョーコは上目遣いで蓮を見上げて、真っ赤になりながら応えた。
その様子に、蓮は蕩けるような笑顔でキョーコを見つめる。

「ありがとう。キョーコ」

蓮が優しくキョーコの名を呼んだ瞬間、キョーコの体がコキンと固まった。

「!!!ややややっぱり駄目です!!」
「…どうして?」

ムッとした蓮がキョーコの顔を覗き込むと、キョーコは顔を真っ赤に染めてプルプルと震えていた。

ただ好きな人に自分の名前を、「キョーコ」と呼ばれただけでこんなにも幸せな気持ちになるなんて。
これ以上名前を呼ばれたら、私は生まれたての子馬のように足がカクカク震えちゃって歩けない自信があるわ! 

「…それじゃあ、ハニー?」
「へ?」
「嫌ならマイスイートにする?」
「どどどうしてそうなるんですか!!」
「だって変装してるわけでしょ?だったら普段通りに呼んだら意味がないでしょ」

面白そうに、からかうように蓮に覗き込まれて、キョーコの肩から力が抜けた。

「…もういいです。『キョーコ』でお願いします」
「よかった。ちょっと『ハニー』は俺も恥ずかしかった。 さ、キョーコ、行こう」
「はい!」

蓮が差し出した手を、キョーコは素直にとって握ると、蓮が力強く握り返した。

キョーコは自分の名前が特別なものになった気がした。
普段からテンや千織、学校の友人たちにも呼ばれているのに、蓮から呼ばれただけで、これほど心が浮き立つとは思っても見なかった。
チラリと蓮の顔を窺えば、蓮は目を細めてキョーコを見つめている。

先生の恐ろしく整った顔が、甘く崩れるのを知ってるのは、私だけ…だよね?
今なら先生の事を名前で呼んでも怒られないよね?今だけ…

「あの…」
「ん?」
「れっ…れ…… ~~~っ … 何でもないです。それより…こうやって歩くのもいいですよね」

…無理でした。私にはハードルが高すぎます。

自分の不甲斐なさを誤魔化すように、キョーコが話を繋げようとすると、蓮は繋いでいた手をグッと引っ張り、キョーコを自分の方に引き寄せる。
そして繋いでいた手を、指を絡ませるように繋ぎ直した。

「こうやってキョーコと歩きたかったんだ」
「…なんだか凄く恥ずかしいです」

蓮の名前を呼べずに、自分の情けなさに意気消沈したキョーコの心は、蓮の笑顔の前に吹き飛んだ。


**


デパートでキョーコたちは目的のネクタイを選んだ。
すぐに接触できる距離で、「うーん」「どうしよう…」「はぁ…」など悩ましげな声を聞かされる身にもなって欲しいと蓮は悲鳴を上げそうだった。
この場が公共の場で無ければ、キョーコが歩く純情さんでなければ。細腰に手を回したい。艶やかな唇を絡めとりたい。
そんな本能と蓮は闘っていた。そしてその激闘の中、蓮の首元に蝶ネクタイや派手なアスコットタイをあてて噴き出すキョーコに見惚れる店員を一瞥して馬の骨を牽制するのも忘れなかった。

そして蓮はその闘いを耐え抜き、ぐったりとソファに沈み込んでいた。
ようやく選び抜いたネクタイを、キョーコは折角だからとラッピングをお願いし、出来上がりを待っていた。

あれ?最上さん、どこに行ったんだ?…まさか馬の骨がちょっかいを?
眉間に皺を寄せて立ち上がり、辺りを見回すと、通路を挟んだ先に1人で佇むキョーコが見えた。

蓮が近寄ると、そこは女性用のヘアアクセサリー売り場だった。色とりどりのアクセサリーが、綺麗にディスプレイされている。

「…今朝、テンさんが毛先を揃えてくれたんですけど、結構髪が伸びたかなって」
「そうだね。少し伸びたね。…髪、伸ばさないの?」
「うーん…どうしようかな」

蓮がキョーコの髪を指先で遊んでいるが、キョーコはそれを気にする風でもなく、ディスプレイされている、キラキラと光るヘアアクセサリーをウットリと見惚れている。

「キョーコは昔からショートカットなの?」
「いえ。小さい頃は髪を伸ばしてて、よくツインテールにしてました。お母さんに結って貰ったり…そうそう。赤い苺とウサギのチャームがついたゴムが、私のお気に入りだったんです」
「へぇ。…とっても可愛いかったろうね」
「えへへ。どうでしょうねぇ」

キョーコの一番のお気に入りだったゴムも、七五三を終えた直後にショートカットにしてからは使うことも無くなり、いつの間にか無くなっていた。

「あ…コレ可愛い」

キョーコが手に取ったのは、布の端がリボンになっている苺柄のシュシュだった。リボンの部分がウサギの耳に見えなくもない。
子供の頃に大切にしていたゴムと重なる気がした。

「じゃあそれ、買ってあげるよ」
「えっ」

そう言うと蓮はキョーコの手からシュシュを取り、レジへとスタスタと歩いて行く。
驚いたキョーコが慌てて蓮を追いかける。

「いっいらないですよ?私の髪、まだ結うほど長くないですし…ってセン……れっ蓮さん?聞いてますか?」

キョーコの呼びかけに、蓮の動きがピタリと止まった。

「……聞きたい」
「へ?」
「もう一度聞きたい」

ノーーーーーッ!!
私、今何を口走りました!?もしかしなくても先生のお名前を呼んだりしちゃいましたか??
ペロンと私、言っちゃいましたか!!さっきはどんなに頑張っても出てこなかったのに、ポロリと出て参りましたね!!

「いっ今のはですね、バレちゃ駄目という無意識でですね、そのあのっ」
「ね、さん付けも要らないから、『蓮』って呼んでよ」
「はっ恥ずかしすぎますーっ!!」
「お願いだか「無理無理!!無理です!!」」
「…そんなに言うなら…」

「すみませーん。ここにディスプレイされている髪留め、全部くださー「蓮ーーーーーーーっ!!」」
「よし!」

お腹を抱えて笑いながらも、もう片方の手で涙目になったキョーコの頭を撫でる蓮を見つめながら、
キョーコは蓮の事を、目的の為なら手段を選ばない、本当に子供のような人だと、ぐるぐる回る頭の中で考えていた。



つづく。



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