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   偶然と必然 8   


10話以内で終わる筈と言ってたのに、あと1話で終わるのか微妙です。


「はーっ」

蓮の盛大なため息に、貴島は眉をひそめた。

「ちょっと今日は溜め息?もしかして、彼女と上手くいってないのか?」
「…そんなことない」

そう。そんな事は無い…筈だ。

昨日の夜だって、割といい雰囲気になって…

ちょっと調子に乗って『キョーコもエッチが好きなくせに』と言ったのが良くなかった。
好きじゃないと言うキョーコに、好きだと認めさせようとムキになって盛り上がって。

「好きじゃないなんて言うなら、止めちゃうよ?いいの?」
「…っ…敦賀さんの意地悪!」

意地悪って!止めないでって事だろう!?そこからはもう本能のまま…
あれは煽ったキョーコが全面的に悪いと思う。

…そうなんだよ。結局お互いを知ろうなどという、建設的な会話は1つも成立しなかった。

「俺は一体何をしているんだ…」

折角、彼女の方から色々と俺の事を知りたいと、躰だけじゃない繋がりを求める様な素振りを示してくれたのに。
俺だって色々と知りたい事が山積みだって言うのに。本当に俺は馬鹿だ。痛すぎる!

彼女を前にすると、自分がただの馬鹿になるのは何故なんだ?

他の女性にはもっとスマートに接していた筈だ。それなのに、キョーコを相手にすると自分が制御不能になるなんて。
やっぱり俺は彼女に溺れているんだろうか。…いや、既に溺死寸前だ。

「はーーーっ」
「景気悪いなぁ。よし!俺が奢るからメシ行こう。隣のビルに旨い定食屋を見つけたんだ。その調子じゃ仕事にならないだろうし、少し早いけど混む前に行こうぜ」

貴島に無理矢理連れ出されて、蓮はランチへと向かった。
オフィスビルの2階までエレベーターで降り、更に1階へはエスカレーターで移動する。
まだ12時より随分前の為か、エスカレーターも人はまばらだった。

蓮はぼーっと視線を漂わせていた。そんな蓮の目に、上下に揺れる栗色の髪が映った。

「あっ…」

あれは、キョーコ!?

エスカレーターの先、オフィスビルの1階に、キョーコが居たのだ。
綺麗に化粧をしていて、蓮が知っているキョーコよりも数段大人っぽい。
そして会社の制服だろうか。サーモンピンクのベストにチェックのタイトスカートを履いたキョーコが、大きな封筒を抱えて、辺りをキョロキョロと辺りを見回している。
その表情は不安そうで庇護欲をそそられた。

何故こんなところにキョーコが?まさかこのオフィスビルで働いているのか?

蓮の頭の中は疑問符だらけだった。

確かにキョーコから働いているとは聞いていたが、職場やどんな仕事をしているかまでは聞いていなかった。
そしてまさか職場がこんなにも近かったとは、夢にも思わなかった。

驚いた様子で固まった蓮を、不審に思った貴島が蓮の視線を辿る。そしてその先に佇んでいるキョーコを目に映して、『おぉ』と感嘆を漏らした。
その声に片眉をピクリと引き攣らせ、蓮は現実に引き戻された。

「見た事の無い制服だけど、あの子敦賀君の知り合い?すっごい可愛いじゃん!紹介してよ!!」

貴島の目にキョーコを晒したことに、蓮は舌打ちしたい気分だった。
自分以外の誰にもキョーコを見せたくない。自分だけの存在にしたい。

「…お断りだ」
「ん?何か言った?」

何かを見つけたのか、はっと驚いたような表情をして、キョーコは走り出した。

蓮はエスカレーターの追い越しレーンに出て駆け降り、キョーコを追った。
後ろから蓮を呼ぶ貴島の慌てた声が聞こえるが、蓮は無視した。応じる余裕が無かった。

キョーコはその先に歩いているスーツ姿の男を追いかけているようだ。
きっとキョーコが手にしている封筒を、その男が忘れたのだろう。

キョーコの呼びかけに、その男が振り向く。

その瞬間、キョーコが何かに躓いたようで、ぐらりと体が傾いて、前のめりに倒れて行く。


駄目だ!この距離じゃ間に合わない!!


キョーコが転ぶと思った寸前、キョーコは追いかけていた男の胸に抱き止められていた。

転ばなくて良かった、という蓮の安堵は一瞬で霧散した。

男が抱き止めたキョーコを放そうとしないのだ。
放そうとしないどころか、その腕が背中に回り、力が込めてキョーコを抱き締めている。

蓮の頭にカッと血が昇った。

誰なんだ、その男は!
まさか、キョーコが無意識に名前を紡いだ『ショーちゃん』なのか!?

ふざけるな。キョーコは俺のものだ!!

叫び出しそうになるのを何とか堪えようと、爪が食い込む程に握り締めた拳が震えている。

蓮は激情を今にも爆発させそうになるのを必至に抑えながら、キョーコ達の元に近づいて行く。


「失礼」

そう抑揚のない声で言うと、蓮はキョーコを抱いていた男の腕を剥がして、力いっぱい捻り上げた。

「っ!!イテェよっ!なっなんだアンタッ!!」
「…俺の代わりにキョーコを助けてくれてありがとう。礼を言うよ」

ニコニコと、どす黒い微笑を浮かべる蓮の端正な顔を見上げて、捩じ上げられた腕の痛みに暴れていた男の動きがピタリと止まった。
蓮は男の腕から手を離してキョーコへと振り返る。
蓮はチリチリと身を焦がすような嫉妬をどうにか押さえ込んで、ポカンと自分を見上げるキョーコを抱きしめた。

その途端、停止していたキョーコの脳が動き出した。

「へ?…!!つっ!!」
「キョーコ、怪我は無い?足は挫かなかった?」
「だっ大丈夫です!って言うか!!どどどどうして敦賀さんがこんな所に居るんですか!?」
「このビルにオフィスがあるんだ。キョーコもここで働いてるなんて知らなかった」
「いえ…それは…って!!どうして跪いてサンダル脱がしてるんですか!?」
「足を捻ってないか見せてご覧。ほら、昨日も足腰が立たない程に無理をさせたろう?俺のせいで転んだんじゃないかと思って。心臓が凍る想いだったよ」
「ふぎゃっ!!ななななっ何を仰ってますの!?ゆっ夢は寝て見てください!」
「つれないなぁ。止めちゃ嫌だってあんなに可愛いおねだりを「んきゃーーーーっ!!」」

絶叫と共にキョーコの手が蓮の口を塞いで、これ以上喋るなと顔を真っ赤にしてブンブンと首を振った。


「カーーーーーーーーット!!!!」


ん?カット?

蓮が声のした方に顔を向けると、生暖かい視線や痛々しいモノを見る様な視線を投げかけならワラワラと近寄ってくる人たちや、何故かカメラを抱えた人物が複数居る。

「キョーコ?」
「…」

状況が今一つ理解できない蓮が困惑気味にキョーコを見れば、キョーコは燃え尽きたように床の一点を見つめている。

「オラーーッ!!貴様、何してくれてんじゃァ!!」

蓮たちの周りを取り囲む微妙な空気を割って、蓮たちの傍に怒気を孕んで歯ぎしりをする、サングラスをかけた男がドスドスと近寄って来た。
スカルが描かれた黒いTシャツにダメージパンツ、アーミーブーツを履いたチンピラ風の男から、キョーコを遠ざけようと蓮は一歩前に出る。

蓮とチンピラ風の男が無言で睨み合うこと数秒…。チンピラ風の男の口元がふよふよと動き、我慢の限界とばかりに噴出した。

「ブハーーーーーッ!!!腹がっ…腹が痛ぇーっ!!」

男は腹を捩らせて笑い続けた。

「ククッ…NGはNGだけどよ、いいモン撮らせて貰ったぜ!!これで今年のNG大賞はいただきだな!」
「なっ!?黒崎監督!どっどうか門外不出でお願いします!!」

デッドブルーに顔色を染めたキョーコと、ニヤニヤと笑う男のやり取りを蓮はただ見守るしかなかった。

「ギャラリーも山のように居るし、無理無理」
「そこを何とか!」
「それに、こんなオモロイもんをお前の所の社長だって見逃す訳がねぇだろ?諦めな」
「いやぁーーーーーーーーーー!!敦賀さぁん…やってくれましたねぇー」

床にへたりこんだキョーコはえぐえぐと泣きはじめた。



…どうやら俺は色々とやらかしたようだ。



つづく。



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