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   コングラッチェ 30   


コングラです。
お猫様を書いてたのですが、煮詰まったので回避です。


「キョーコちゃん、やっぱりお母様、ここに泊まって貰ったらどうかしら?ゲストルームだってあるし、何ならキョーコちゃんのお部屋にお布団を敷いても良いじゃない」
「そうよ。どうせ夕飯はみんなで食べる事になったんだし、そのままの流れでうちに泊まればいいじゃない。何日くらいこっちに居られるの?」
「日曜の夜便で帰るって言ってたかな」
「2泊3日!?また随分と弾丸帰国なのねぇ」


ひじきの煮物、だし巻き卵、ほうれん草のしらす和えと具だくさんの味噌汁。

キョーコの作った朝ご飯を、天宮家の面々が揃って食べながらキョーコの母、冴菜をもてなす最後の算段をしていた。

夕飯をみんなで食べようと言い出したのはテンだった。一本気なキョーコの性格だ。きっと三者面談の後にでも、蓮と付き合っている事を、そしてキョーコが身を寄せている天宮家は、蓮の家族であり、蓮も一緒の家に住んでいる事をキョーコは話すだろうとテンは確信していた。
そしてその事に、冴菜が母として娘の身を案じるであろう事も、同じ母親としてテンは理解していた。

だったら、早めに相互理解を深める事と、テンがキョーコの親代わりとして、きちんと見守っている事を冴菜に伝え、安心させたいと考えていた。

「あらー、それじゃあ尚更よ!少しでも長く一緒にいた方がたくさんお話しできるわよ。ね?そうしましょ」
「ありがとうございます。でも、母はホテルを予約してるので大丈夫です。母は人に甘えられない性格なので、固辞すると思います。それに私も、いきなり同じ部屋で寝るなんて、緊張して寝られませんし」
「もーっ!お母様相手に緊張だなんて、他人行儀ねぇ」
「ふふ。そうかもしれませんね。私、きっと実の母よりテンさんの方に甘えてるなーって思います」
「あらっ!もうキョーコちゃんったら、嬉しわー。ママ、何でも買ってあげちゃう!よし!お夕飯は料亭で懐石料理に舌鼓を打ちましょう!ママ奮発しちゃうわ!!」

久しぶりの日本なのだから、料亭でもてなそうと言い出したテンに、千織が絶対に駄目だと却下した。

この周辺で名の通っている料亭と言えば、否が応にも浮かぶのは千織の天敵、キョーコの幼馴染みの顔だ。
千織の頭にショータローの家でもある、冴菜の従妹が女将の料亭が浮かんだのだろうとキョーコは苦笑した。

「翌日のお昼、私もお母さんと一緒に、女将さんに会いに不破家に行くことになってるんだ」
「えっ…そうなんだ…」

ショータローの母親である女将から、キョーコの保護者として三者面談に行こうか、という連絡があったのは1週間ほど前だった。
これまで中学、高校の2年間はずっと女将が付き添ってくれていた。

『うちのボケナスもキョーコちゃんみたいに頭が良かったらねぇ』

毎年決まってため息と共に言われ続けた言葉だ。
それが、今年は冴菜が帰国して三者面談に出てくれる。それを伝えた時の女将の驚きと、自分の事のように喜んでくれている様子が電話越しにも伝わって来て、キョーコは嬉しかった。

夜は料亭の仕事で忙しいから、翌日の昼にでもゆっくりと会いたいと伝えて欲しいと言われ、それを冴菜にそのまま伝えた。
そして 冴菜からはやはり『了解』といたく簡潔な返事があった。

「今まで母が傍に居ない分、女将さんには色々とお世話になったから。改めてご挨拶に行く良い機会だと思ってるのよ」

テンはだし巻き卵を口に運びながら、チラリと蓮に視線を向ければ、蓮も大きく頷いた。
大人な態度を取る蓮に、テンは胡散臭さを感じながらも、「キョーコの彼」となった今、蓮にも少し心に余裕が生まれて来たのかと思うと感慨深かった。

「…お兄ちゃん、一緒に行く気満々でしょ?」
「そんなの当たり前じゃないか。コッチの家で最上さんがつつがなく暮らしてる事を俺も伝えたいし」
「やっぱりねー」

お兄ちゃん、今更不破君がつけ入る隙など無いと言う事を、不破君のお母さんに知らしめたいだけなのね。
ウンザリした視線を蓮に向けながら、千織はお味噌汁を啜る。

「本当に心の狭い男ね。早々にキョーコさんから捨てられるわね」
「えぇ!?そんなことないわよ?先生は私の事を気に掛けてくれている女将さんを安心させてあげようって、忙しいのに一緒に来てくれるって言ってくれているの。先生の心、狭くなんかないよ。凄く広いよ」
「心が狭い上に小狡いなんて、蓮ちゃんがキョーコちゃんに振られるのも時間の問題ねぇ」
「…何の事やら…さて、そろそろ出かけようかな?」

蓮がそそくさと逃げるように立ち上がった。

その胸元には、キョーコが選んでプレゼントしたネクタイが揺れている。


「夕飯の件だけど、やっぱりここでいつもの様にみんなでご飯を食べた方がいいんじゃないかな。いつも通り、普段通りの姿を最上さんのお母さんに見てもらった方が良いと思う」
「そうね。それじゃあすき焼きにしましょ!すき焼きなら私もキョーコちゃんのお手伝いができるしね!準備は任せておいて!!」
「…はい!ありがとうございます」

親子関係を構築し直そうとするキョーコと冴菜を見守り、手を差し伸べてくれる周りの温かい人たちの好意に、泣きそうな程くすぐったい気持ちだった。


**


5限目が終わり放課後となった直後に、マナーモードにしていたキョーコのスマホが机の上で揺れた。
ディスプレイに表示されていた文字はキョーコが思った通り『お母さん』だった。

既に飛行機の到着時刻を30分過ぎている。
冴菜からの到着の連絡をすっとソワソワしながら待つキョーコを見ていた千織は、急いで廊下へと出て行くキョーコを口元を緩ませて見送った。

「もしもし!お母さん、飛行機着いたの?今成田?」

あと2時間もすれば会えるだろう母親の顔を思い浮かべるキョーコの顔は笑っていた。


時間はあっという間に過ぎた。
この日6組目の親子が、面談を終えた教室から渋い顔つきで出て行った。
廊下に置かれた椅子で、キョーコは最後の面談である、自分の順番を待っていた。

「…次、最上さん、お入りください」

蓮の声がいささか緊張しているように聞こえた。きっと初対面となる冴菜に緊張しているのだろう。
蓮のような優しくて頼りになる上にカッコいい人でも緊張するものなのかと思うと、キョーコは不謹慎かな、と思いつつも笑ってしまった。


「失礼します」
「…はい。どうぞ……ってあれ?」

教室に入って、キョーコはそのままドアを閉めた。

そこにはキョーコが1人きりで立っていた。前にも後にも、冴菜らしき人物はいない。

「…お母さんはどうしたの?」
「あーそっか。保護者がいないと三者面談になりませんよね…。すみません」
「お母さんの乗った飛行機が遅れてるとか?良くある事だよ。元々定刻通りに到着しても、成田からならこの時間にギリギリだった筈だろう?気にしなくていいよ」
「いえ。今日、来れないそうです」
「え?」

驚いた蓮がキョーコを見つめれば、キョーコは困ったような顔で笑っていた。

「最上さん、どういう事?」
「さっき母から、今から飛行機に乗るって連絡がありました」

今日最後の面談の予定だったキョーコは、面談用に向い合せた4つの机を、カタカタと音を立てながら元に戻していく。
もう、必要が無いからと。全くしょうがない母だと零しながら。

「それじゃあ、明日家で進路相談をすればいいか。通常は保護者に学校まで来てもらうんだけど、家庭の事情とかで都合がつかない場合、担任が生徒の自宅で面談をするという手段もあるんだよ」
「いえ。必要ないです。あ、女将さんに来てもらおうかな…でも急に来て欲しいなんて、迷惑だろうし…うーん。この際、今から2者面談でもいいですか?」
「いや、でも明日面談できるでしょ?…もしかして最上さん、お母さんの事を怒ってるの?」

今日までキョーコはずっとソワソワした様子だった。それを千織やテンと一緒に、蓮は温かく見守っていたのだ。
久しぶりの再会だと言うのに、1日間違えられていた事を拗ねているのだろう。
やっと会えると思っていた分、落胆も大きい筈だ。だからもういいと。3者面談も2人で済ませてしまいたいと言っているのだと蓮は思った。

「いえ。怒ってはいません。どちらかと言えば、やっぱりという諦めですかねぇ」
「まぁ、日にちを間違えるなんて、ちょっとドジな所は母親譲りなんだね」

クスクスと笑う蓮を見ずに、キョーコは窓の外、空を見上げてため息をついた。


「あの人、成田から電話をかけてきたんです。今からアメリカ行きの便で帰るって」

「…… え?」


どういう事だ?成田から電話って事は、予定通り最上さんに会うために日本に到着したという事だろう?
それなのに娘に会うことも無くそのままアメリカへ帰るって、一体最上さんのお母さんは何を考えている?

困惑し、考えがまとまらずにただ呆然とする蓮に、キョーコは淡々と説明をした。

「よく分からないですけど、今あの人が担当している仕事で、何かあったみたいです。日本に到着した便と同じ機体に乗ると言ってました。何時間乗ってることになるんでしょうねぇ。あ、でもビジネスクラスだったら疲れないのかな?食事もすごく美味しいとか聞くし、案外快適なのかなぁ」

でもきっと仕事の鬼だから、映画を見たり寝る事もせずに、パソコンと睨めっこをしているんだろうと独り言のようにブツブツと呟いているキョーコを前に、蓮は立ち尽くしていた。
何と声をかけていいのか、全く頭が回らない。

「そんな訳で、三者面談じゃなくてすみませんが、このまま面談をしていただけますか?」
「…うん。構わないよ」

否、と言える訳が無かった。

担任の立場で、キョーコの保護者と、キョーコの今後の進路について勿論話がしたい。
でもその保護者と、冴菜と進路について相談したかったのは他の誰でもないキョーコの筈だ。それが叶わないと知った今、キョーコは泣くでもなく、飄々としているのだ。

「…大丈夫です。自分でもどうかと思うくらい、哀しい気持ちは無いんです。私に会おうと日本に帰って来たことは事実ですし、きちんと私の事を考えてくれてる事は理解できてるんです」
「うん」
「でも、帰って来たその足でアメリカに帰って行くなんて…。あの人にとって、やっぱり私は仕事より優先順位が低いんだなぁと…子供のヒガミです。気にしないでください」
「気にしないわけが無いだろう!!」


思わず声を荒げた蓮を、キョーコはぽかんと見つめていた。



つづく。



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