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   コングラッチェ 31   


コングラ続きです。
リアルが忙しくて、今週はもうアップできないかもしれません。
飲んだくれてる訳じゃないですよー。キリリとお仕事ですー。


「ほらっ!行くよ!!」
「行くってどこ…ほにゃっ!?ちょっと先生!?」

蓮はキョーコの手を取ると、そのまま走り出した。

「先生痛いよっ!!放して下さい!!」

キョーコの訴えを無視して、蓮はキョーコの手を掴んだまま全力で廊下を走った。殆ど宙を飛ぶように、蓮に引っぱられるままキョーコは走らされた。
周りの生徒たちは、蓮の全力疾走と、手を掴まれて引っ張られる、真っ青な顔のキョーコの姿に目を丸くしていた。

ひょえぇぇーっ!!誰か先生を止めてくださいぃぃ!!
先生もっ!!足の長さの差を考えてくださいぃーーっ

「先生!もう限界ッ限界ですっ!足が縺れて転びそうですーっ!!」
「ごめん!もう少しだけ頑張って」

蓮は校舎を駆け抜けて、そのまま教職員用の駐車場に停めてある愛車にキョーコをポイッと押し込むと、自分も運転席に乗り込んだ。
エンジンをかけて、ブォンとアクセルを一気に踏み抜く。
急発進させてハンドルをぐっと切ると、後ろの方でガリリと何かが擦れる、あまり聞きたくない音がした。

「せっ先生!?今ガリッって音しましたよ!あれ、誰の車なんですか?」
「…社先生の車。後で謝っておくから平気だよ」

全く平気ではないと思いますーっ!!


車の中で、キョーコは蓮に一体どうしたのか、どこへ向かっているのかを繰り返し問い質したが、いくら聞いても蓮は答えてくれない。
そのうち首都高に入ると、制限速度を大幅に超える8気筒エンジンの力を存分に見せつける疾走に、硬直したキョーコは質問どころではなくなった。
歯を食いしばって悲鳴を上げそうになるのを必死に耐えるだけだった。

そんな中、一瞬で通り過ぎる標識の中のマークがキョーコの網膜に焼き付いた。

本当に先生…バカなんじゃないの?
面談の予定時間に、今から飛行機に乗るってあの人から連絡があったのに…あれから1時間は経ってるのよ?もう離陸してる筈じゃないの。
それなのにこんな必死になって…空港に…あの人の元に私を送り届けようとしてくれるなんて。

キョーコは前方を見据える蓮の横顔を、涙が溢れそうになるのを我慢しながらじっと見続けた。



「アメリカって、ここからだと右手ですかねぇ?」
「ごめん…間に合わなかったね」

飛行機の離発着を見渡せる空港の屋上のフェンスの傍で、キョーコと蓮は、どんよりとした雲が覆う夕暮れ時の空を見上げていた。


「いえ。ありがとうございます。何だか、すっごくスッキリしてます」
「スッキリ?」
「はい。今まであの人…お母さんに追い縋った事って無いんです。行かないでとか、行っちゃ嫌だとか」


『どうして聞き分けられないの?』


そう眉間に深い皺を刻みながら言われると、キョーコは冴菜が自分の事を疎ましいのだと思ったし、冴菜の決心が変わることが無い事を悟り、小さな手で必死に掴んでいた冴菜の腕を、自分から手放した。
足早に、そして振り返ることなく去っていく冴菜の背中がジワリと溢れる涙で歪んで、最後は見えなくなる。

それが幼いキョーコにとって、母との再会の後に必ずやって来る、苦しくて堪らない時間だった。

その背中を泣きながら追うことは無かった。そんな事をしても結果は変わらないと諦めていたし、縋った手を振り払われるような、今以上に辛い思いをしたくなかった。予防線を引いたのだ。


そうやってどこかで自分を守って、殻に閉じこもっていた私の手を取って全力で走ったり、先生が苛々しながら車を暴走させたり。
こんなにお母さんを必死に追うなんて、子供の頃から考えても初めてだわ。
始めから諦めていた私の代わりに先生が、お母さんを追ってくれたんだ。

それでも、冴菜を乗せたアメリカ行の便は今から30分ほど前に離陸していた。

「諦めずに必死に追うって、なかなかですね」

キョーコは疲れたと言いながらフェンスにもたれた。
その顔は、本当に憑き物が取れたようにスッキリとした笑顔だった。

「今度…いつか私がアメリカへお母さんを追いかけて行って、その勢いでお母さんの背中にとび蹴りしたり、鉄拳を振るったりしてやっても、バチは当たりませんよね?」
「うん。傷害罪で訴えられちゃうかもしれないけど、本気で喧嘩してみるのもいいんじゃない?」
「うわぁー…お母さんならサラっとやりそうです」

クスクスと笑うキョーコの笑顔に安心して、蓮はフェンスにもたれながら座り込んだ。

「でも最上さんがどれほどお母さんに会いたかったかを叫べば、陪審員もお母さんも許してくれるんじゃない?」
「…そうですねぇ。情に訴えてみますか」

追おうと思えば、追えるのだ。
今度はコッチから会いに行ってやろう。今まで寂しかったと、本気で叫んでやろう。
そしてもう、お母さんの後ろ姿を追うんじゃなくて、必要だったら自分から会いに来るから、もう心配なんてする必要は無いと言ってやろう。

私には、手を掴んで放してくれない、私を大切にしてくれる人がいるのだと。
そして私も、この人の手を今度こそ…追い縋ってでも絶対に絶対に離してやるもんかと、お母さんで学習できたのだと言ってやるんだ。

そうだ。嫌味の1つでも残して来よう。

『お母さん、ありがとう!』と。


どこかへと旅立っていく飛行機を眺めながら、キョーコは思いに耽っていた。
そんなキョーコのそばで、蓮は何も言わずに座り込んだまま、同じように空を見上げていた。

「…先生…」
「ん?」

暫くして、キョーコは蓮に声をかけた後、蓮の目の前にしゃがみ込んだ。
蓮が視線を合わせれば、キョーコは笑っていた。その笑顔は屈託も無く、いつも通りのキョーコの明るい笑顔だった。


「大好きです」
「…うん」


初めてキョーコの口から飛び出した『好き』という言葉に、蓮は固まった。
ただの好きじゃなくて、『大』好きだと。

今までは蓮のキョーコへの明け透けな愛情表現を、キョーコは真っ赤になって受け入れるばかりだった。
その仕草に自分を慕う素振りを見つけて、それだけで蓮は満足していたし、どんどん追い込んでやろうと思ってさえいた。
それなのに、硬直した蓮の唇に、そっとキョーコの唇が触れて離れて行った。

「ごめん。…今すぐ押し倒したいんだけど」
「!!そっそれは却下です!!」
「それじゃ、もう1回…もう1回してよ」

ぴんと背中を反らして後ろに倒れる勢いで、蓮から離れようとするキョーコの細腰と背中に蓮は腕を回してがっしりと掴んだ。

「…キョーコ…」
「その呼び方は反則です…」

真っ赤になって目を伏せたり蓮を見上げたりと、迷った様子を見せていたキョーコの覚悟が決まったのか、蓮の肩にそっと両手を置き、切なそうに自分を見つめる蓮の顔へと、自分の顔を近づけていく。

自分の唇への柔らかい接触と鼻腔を擽る甘い香りに、キョーコを抱いていた蓮の腕は、無意識のうちに力が入っていた。



つづく。



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