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   偶然と必然 9   


むー。なんだか説明くさい回になってしまいました。
納得行かずにこねくり回しましたが、傷口を広げる一方です。
次でラストです。


出演者用の控室として用意されていた、オフィスビルの会議室に蓮とキョーコ、そしてキョーコのマネージャーの社の3人が、微妙な空気を醸し出しながら座っていた。

口火を切ったのはキョーコだった。

「実は私、女優業をしておりまして…」
「…そうなんだ…ごめん。知らなかった」
「えっ!?」

信じられないモノを見る目つきで、キョーコの隣に座る社が蓮を凝視した。

「え?そんなに驚く事なの?…もしかしてキョーコって有名人?」
「いえ。駆け出しの新人です」
「何を言ってるんだ!キョーコちゃんは実力派の人気女優だよ!!」

キョーコは、ドラマや映画では主役を演じる若手実力派女優だった。当然CMにも引っ張りだこで、テレビに映らない日は無かった。
そんな『京子』を知らない人間がこんな身近に居ようとは。社は口元を引くつかせた。

「君、本当に『京子』を知らないの?京都の『京』に子供の『子』だよ?ほら、去年の大河ドラマの主役だったじゃないか」
「うーん…テレビ見ないしなぁ」

首を捻る蓮に苛ついた社が、今まで京子が出演してきたドラマや映画を次々と挙げていく。が、蓮はそれら全てに悉く首を捻った。

「じゃあ、キョーコちゃんが殺人鬼を演じた『TRAGIC MARKER』はどうよっ!!海外にも配給されて、アクションの評価もすっごく高くて『第2のミラ・ジョボビッ○』って言われてるんだけどっ!」
「うーん…俺、単館映画しか観ないし、DVD借りないし…」
「それなら銀座にあるアルマンディの旗艦店なら分かるだろ!あそこの看板!!キョーコちゃんはアジア地区で唯一のアルマンディの専属モデルなんだよ!?」
「へぇ…キョーコがモデル…」

蓮がちらりとキョーコの全身を見渡して、クスリと笑った。
その笑いに、それまで神妙にしていたキョーコがピクリと反応する。

「~~~っ!悪かったですね!!ナインペタンもCGでどうにでもなるんですよっ!!」
「キョーコちゃん!CGの事は内緒だから!!それにその顔もやめなさい!」

唇を盛大に突き出して蓮をジトリと睨みつけるキョーコを、社が慌てて制した。


**


「あ、そうだ社さん。一緒に暮らそうって言ってくれてる方がいるんで、そろそろホテルを引き払おうと思います」
「ふーん。よかったねぇ……

  なんだすとーーーーっ!!!」

昨日、移動中の車内でコンビニのおむすびを食べているキョーコが、蓮の家に住みたいとペロンと言い放ったのだ。
まるで今思いついたというかのように、キョーコが放った爆弾を受け取り損ねた社は、危うく急ブレーキを踏むところだった。

事務所の看板女優が、いつの間にやらどこかの馬の骨と付き合ってたとは。
キョーコのマネージャーとして四六時中行動を共にして来た社にとって、まさに青天の霹靂だった。

キョーコが恋をする男が万が一にでも現れたのなら、その恋を全力で応援しようと社は思っていた。但しそれが馬の骨であれば論外だ。
今までキョーコに言い寄ってきたドラマの共演者や芸能関係者たちのように、キョーコに気づかれないよう、塵芥の如く排除しようと心に誓っていた。

そう思って、キョーコに一緒に暮らすつもりの男の事を問い質したのに、年齢やどんな仕事をしているかも、出身地もその男の趣味も、何を聞いても知らないと言う。
首を傾げるだけのキョーコに、社は車を大きく蛇行させ、後方の車から激しくクラクションを鳴らされた。

社の頭の中に、馬の骨確定という文字が躍った瞬間だった。
もしも本当にキョーコがその男と住むと言うのならば、その前に馬の骨を粉砕すべく膝を詰めて話そうと決意した。

その矢先にコレだ。

オフィスビルの1階を借り切って撮影している最中、見目麗しい闖入者が現れたのだ。

誰も静止することなく、この男はカメラの前に立っていた。

キョーコを追う秀麗な男を、スタッフがドラマの出演者と勘違いしたのは致し方ないかもしれない。
それほどまでに堂々と、カメラに目もくれずにキョーコだけを見つめて撮影現場に現れたのだ。

台本通りであれば、主人公が忘れた書類を渡そうと追いかけ、転びそうになったヒロインを主役が抱き留めて思わず抱擁してしまうというシーンだった。
それなのに、主役以上にヒーロー顔をした闖入者が主役の手をねじ上げて、自分とキョーコの世界という名の舞台から降ろしにかかった。

撮影中のシーンにそんな続きなどあったかと不審に思いながら、恐る恐る現場を取り仕切る黒崎監督の傍に寄れば、モニターを見つめながらニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて呟いた、『ハプニング万歳』という声に社はフリーズした。



撮影をストップした黒崎が笑いながら転げまわる床に座りこみ、えぐえぐと泣くキョーコをあやす蓮の傍に、ヨロヨロと社が歩み寄った。

「キョーコちゃん…」
「うぅっ…」

キョーコが社を見つめる縋るような視線に、蓮がピクリと反応した。
近づいた社の目に触れさせないように、キョーコを自分の胸の中におさめて、ギロリと社を睨みあげた。

蓮に抱かれて気を失った恋しい少女が紡いだ自分ではない誰かの名前。
その名前の持ち主を想像するだけで、蓮の心はドロドロした怒りにも似た気持ちに支配され、自然と男を見る目に力が籠った。

「…君が『ショーちゃん』なのか?」

ひいぃぃっ!何このヒト!目つきが凶悪過ぎる!でもそれよりも!!

「心外だ!俺をアホ太郎と一緒にしないでくれ!!」
「え?」

一瞬で蓮の凶悪な目つきとおどろおどろしいオーラは消え去った。


そして現在に至るのだ。


社の目の前に居るキョーコより4つ年上の25歳のこの男はそこら辺の芸能人よりもよっぽど整った顔をしている。きっと今まで女に不自由した事など無いだろう。
そしてドラマの撮影に利用しているこのビルに入っている、誰もが一度は耳にした事のある一流商社で働いていて、残業も多くテレビを見る暇も殆ど無い。当然、芸能情報にも疎い。その結果、奥さんにしたい芸能人、そして恋人にしたい芸能人No.1の京子の事を知らないと言う。

なのに

キョーコを見つめる目は何処までも甘く優しくて、この子の事が大好きだと声高々に宣言しているようだ。
対するキョーコも緊張を解いてリラックスしているのか、撮影現場では絶対に見せない素の自分を曝け出している。
『春風のような笑顔』ではなく、カラカラと屈託なく笑う、ハタチそこそこの女の子の笑顔を向けていた。


普通の会社員が、普通の女の子に恋をした、か。

そんな事を考えながら、社は事務所に連絡をしてくると言って席を立った。


「それにしても、うちの社長に何て報告しようかなぁ」

自らを愛の伝道師と豪語する社長が、事務所の看板女優に降ってわいたスキャンダルをもみ消すとも思えない。
それこそ大フィーバーで踊り狂う様子がありありと浮かんでしまう。

奥さん、彼女にしたい芸能人No.1のキョーコちゃんが、実は恋やら愛なんてものは破滅への序曲に過ぎないと豪語する子だなんて、事務所のトップシークレットだったしなぁ。
あんなに可愛いのに、幼馴染みのあのクソアホ太郎のせいで、恋愛なんて一生しないって言い切ってた子に、ぶっとい馬の骨が現れたんだ。きっと社長も踊り狂うよ。

明日のスポーツ紙の一面が刷り上がる前に、キョーコが所属する俳優部の松島主任を筆頭に対策会議をしなくては。
勿論社長抜きで。

社は蟀谷を押さえながら事務所へと連絡を入れた。



つづく。



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