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   コングラッチェ 33   


明日から多くの地域でお盆ですね。
実家に帰省される方、旦那様の実家に帰省される方、帰省を受け入れられる方、普段通りの方。
色々な過ごし方をされる事と思います。 うん。ファイトー!!

冴菜さんの話です。。
間違ってもBOOSTのハッチャケ冴菜さんじゃないです。


「ようこそおこしやす」
「お忙しいところすみません」

蓮はショータローの家に来ていた。
キョーコの叔母であるショータローの母親、蓮の目の前に座る料亭の女将を訪ねていた。

蓮が通された部屋は、以前キョーコと一緒に訪れた離れの一室だった。
前回は桜が飾られていた床の間の白磁の花瓶には、小さな露草が可憐な花を咲かせていた。

「かまいまへん。元々土日は昼の営業はしておりまへんさかいに。それに本当でしたら今日は冴菜ちゃんに会う予定でしたし…キョーコちゃんは落ち込んでませんでしたか?」
「大丈夫です。彼女は強い子です。それに俺をはじめ、周りの人間が彼女を支えていますから」
「そうどすか…少しばかり安心しました」


昨日の夜、テンが冴菜をもてなそうと大量に買い込んでだすき焼きの材料は、社と奏江を交えた食卓で完食した。
流石に全員がはち切れそうなお腹を抱えて、〆のうどん投入は諦めざるを得なかったが。

大勢で囲む食卓に、キョーコはいつも以上に楽しそうに笑っていた。
こんなに美味しいすき焼きを食べ逃すなんて、お母さんは勿体ない事をしたと笑っていた。

昨日のうちに冴菜本人から女将にUターンするという連絡があったと言う。
怒りを通り越して、呆れてため息しか出なかったと女将は力なく笑った。

冴菜と5年ぶりに会う筈だった時間に会って欲しいと、今朝早く蓮から女将に連絡が入ったのだ。


「今日お越しになった件…私にお聞きになりたい事とは、やはりキョーコちゃんのお母さん…冴菜ちゃんの事でっしゃろな」
「はい。こんな事を他人の俺に聞かせたくないと思われることは十分承知しています。それでも、俺はこの先ずっと彼女を支えて行きたいんです。
彼女は母親を求めている。いつだって手を伸ばしています」

出来る事ならその手を母親の元へと届けてあげたい。
でも、そうする事で一層キョーコを傷つける事になるのではないか。
もしも昨日空港で冴菜に会えていたら、キョーコは幸せになっていたのか、それとも不幸になっていたのか。

「俺が彼女の為にどうすべきか分からなくなってしまったんです」

蓮の苦悶に歪む表情を、女将は黙ってじっと見つめ続ける。

「以前、最上さんと一緒にこちらに伺った時、あなたは最上さんのお母さんを庇う発言をされていました。あなたなら、その答えを教えてくれるのではないかと思って来てしまいました」
「…キョーコちゃんから、お父はんの事についてどの程度聞かされてはるんですか?」
「お母さんと同じ弁護士だったと。最上さんが生まれる前に病気で亡くなったと聞いています」
「さよか…」

そう言って女将は座卓の上に置かれた湯呑を手に取った。

どうして母親の話をしているのに、父親の話になるのだろうか。
蓮は、墓前で父親と一緒にお稲荷さんを食べるのだと嬉しそうに話してくれたキョーコの笑顔と、12時の時報と共に頬張ったお稲荷さんを思い出していた。

蓮の物思いに耽る複雑な表情をじっと見つめていた女将は、大きくため息をついてお茶を飲むと、背筋をピンと伸ばしてゆっくりと話し始めた。

「キョーコちゃんのお父さんは、病気で亡くなったんじゃないんです。本当は…」


当時、最上夫妻が働いていた小さな弁護士事務所で、地元選出議員が絡んだ贈収賄事件の訴訟に取り組んでいた。
小さな町工場の社長が、議員に金を渡して口利きをお願いしたという”良くある話”の1つの筈だった。

だがこの事件を調べて行くうちに、その町工場の部品が海外の軍需産業を支える技術の1つとなっていた事、
その関係図は、国政に携わる大物議員の名前や国内外の企業が入り組んだ複雑な様相を呈していた。

自分たちの手に負える様なものではな事に気付いた弁護士事務所は、この件から手を引こうとした。
利権が絡み合い過ぎているのだ。
未だ全体像も把握できない巨大な闇にとって、自分たちが振りかざすちっぽけな正義など痛くも痒くもない筈だ。
逆に自分たちが踏み潰されて跡形も無くなるだけだではないか。
この件は見なかったことにしよう。原告団にも証拠が足りないと伝えて力になれない事を詫びよう。

そう結論づけたが、唯1人の男はこれを是としなかった。

彼の眩しい程の正義感が、頷くことを許さなかった。

それがキョーコの父親だった。

出産を控えた冴菜は、この贈収賄事件の控訴を諦める判断を機に、弁護士事務所を辞めた。
冴菜も控訴断念の判断は悔しかった。でもそれ以上に冴菜は幸せを掴みたかった。穏やかな環境で子供を出産したかった。

もうすぐ生まれる子供の事で冴菜の心は満たされ、幸せの絶頂にいた。

だが、その幸せが夫の死であっけなく消えてしまった。


冴菜は駆け付けた病室で、夫と無言の対面をした。


頭の中は真っ白で、何も考えられなかった。 ああ、目の前で眠っている夫が愛したのはこの色だ。
ぼうっと佇む臨月の冴菜を支えながら、目に涙を溜めた婦人警官が声を震わせて夫が病院に運び込まれた時の状態を教えた。

深夜、帰宅途中の泥酔した夫が足を滑らせて、歩道橋から転倒したと。
頭を強く打ち、即死だったという。

冴菜は病院で死因を聞かされた瞬間、真っ白だった世界が真っ黒に塗り替えられた。

夫は殺されたのだ。

夫は下戸で、どんな席でも酒は1滴も飲まなかった。そんな夫が気絶する事なく、千鳥足で歩けるはずがない。

一体誰が、何のために夫を?

そう考え続けた通夜の席で、冴菜が辞めた弁護士事務所の所長がポツリと零したのが、例の贈収賄事件だった。

冴菜は夫が1人で町工場の贈収賄から連なる巨額の献金問題を調べている事に気付かなかった。
少しでも夫の性格を考えれば分かった筈なのに。
目も眩む程の真っ白い正義感を、お目出度いなぁと苦笑しながら愛していたのに。
そんな人が原告団を裏切るような事をするはずが無かったのだ。

もうすぐ子供が生まれるのだから、危ない橋を渡らずに済んで良かったなどと思っていた自分が心底卑しい下等な人間に思えた。
もうすぐ訪れる筈だった、親子3人の生活を夢見ていた自分に腹が立って仕方が無かった。

そして冴菜は、夫が最後まで立ち向かおうとした巨大な闇に立ち向かう事を決心をした。

出産後、冴菜は夫のように握り潰されないようにと国内最大級の大手弁護士事務所に籍を置き、日々の仕事の傍ら証拠集めに没頭した。
そしてキョーコが10歳の頃、冴菜は更なる証拠を求めてアメリカへと渡った。


泣きながら追い縋るキョーコを振り払って。


夫が1人で証拠集めをしている頃、幸せな家庭を夢見ていた自分が許せない冴菜は、その幸せの象徴だったキョーコを抱きしめられない。
抱きしめたら最後、夫の不名誉を晴らす事も、夫が追い続けた不正を暴く事も出来なくなってしまう。そう思い込んでいる。

願掛けみたいなものだ。
夫が辿りつけなかった闇に、いつか必ず夫が振りかざした正義の光を突き刺してやるのだと。
そしてそれが叶ったら、一目散でキョーコの元に帰ろう。それまでは、キョーコの母親にはなれない、なってはいけないのだと思い込んでいる。


「ほんま、冴菜ちゃんはアホやろ?」


そう女将は蓮に話し、哀しそうに笑った。




つづく。




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