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   コングラッチェ 35   


コングラです。
書いてるうちにこの流れに。


ドガァン!!

バタバタバタッ

「お兄ちゃん!キョーコさんが居ないの!!!」
「千織、もう少し静かに出来ないのか?」
「だって!!」

予備校の講習を終えて帰宅した千織は、家の中にキョーコが居ないことに気が付いて心底慌てた。
5年振りに母親と会える筈だった昨日をキョーコは指折り数えていた事を千織は知っている。
あからさまにソワソワする様子は無かったが、『すき焼き』と書かれたカレンダーを見つめて微笑んだり、志望校のHPを開いては、冴菜に聞かれた時の為だろう志望理由を書き出していた。


「千織ちゃん…。さっきキョーコちゃんのお母様から電話があって…」
「そろそろ学校に着いたって?キョーコさんと会えたのかしら?」

冷蔵庫からペットボトルを取り出しながら振り返った千織の笑顔が、テンの顔を見た瞬間固まった。

「成田に着いたけど、そのままアメリカに戻るって…お仕事で何かあったみたい。また改めて来るって連絡だったの…」
「まさか日本に到着しておきながら、キョーコさんに会わずにアメリカに帰るっていうの?…何なのよ!!」

千織は手に持っていたペットボトルを力任せに床に叩きつけた。

自分勝手が過ぎる。ショータローといい母親といい、キョーコの周りの人はどうしてキョーコを大切にしないのだろう。
我儘の1つも言わない方が悪いとでも言うつもりなのか?自分たちの都合の良い子でいる事を強いてきたのはアンタたちじゃないか。
キョーコが、母親と会えなかった事に落ちこまない訳が無い。きっと不実な母親と怒る事もなじる事も無く、全く困ったものだと無理に笑って帰って来る筈だ。

不細工な笑顔で。

怒りで涙が溢れそうになる。怒りで口元が震える。

そんな千織を、テンはぎゅっと力強く抱きしめた。

「大丈夫。きっと蓮ちゃんがキョーコちゃんに寄り添ってるわ。蓮ちゃんを信じて2人を待ちましょう。ね?」
「うん…」

万が一キョーコの目に泣いた跡などあれば、蓮にスリーパーホールドを決めてやるのだと指を鳴らすテンに千織はクスリと笑った。

そうよね。お兄ちゃんがフォローしない筈が無いわ。
きっと大丈夫。ううん。絶対に大丈夫!

千織をじっと見つめていたテンがふわりと笑って、もう一度千織を抱きしめた。

「お友達の為に泣いたり怒ったりできる千織ちゃんは私の自慢の子よ!」
「んなっ!バッカみたい!!」

今日のすき焼きは美味しくって楽しい食卓にしようと、顔を真っ赤にした千織にテンは笑いながら張り切って包丁を握った。

結果から言えば、蓮に手を握られたキョーコは笑って帰って来た。
社が蓮の車に10円傷をつけようと暴れていた様子を、可笑しそうに千織たちに話した。
多めに用意してあったすき焼きは、社と奏江のお陰で何とか完食することが出来た。


だから、油断してしまった。
今日も普段と同じように美味しいお弁当を持たせてくれて、笑って送り出してくれたから。

でも、こんな遅い時間にキョーコが部屋に居ない事なんて今までなかった。

母親に会えなかったショックでフラフラと1人でどこか泣ける場所を探しに出てしまったのではないか。
探さなくては。キョーコが居ない事に気付いた蓮が既に家を飛び出して探し回ってるかもしれない。
でも、もしかしたら呑気に部屋にいるかもしれない。とにかく蓮の部屋へ、上の階へ行ってみよう。

ほとんどパニック状態で千織は非常階段を駆け上った。


それなのに!!


「お兄ちゃん…一体何をしてるの?」
「何もしてないよ」

お兄ちゃんが弱ってるキョーコさんを放っておく訳が無い事も、紳士で無い事も分かってたけど!

「馬の骨は排除…」
「違うから。さすがに母親の事で弱ってる最上さんに襲い掛かるほど鬼畜じゃないから」

くたりと目を閉じたキョーコを膝の上に乗せて、ソファに座った蓮が眉を下げて千織を見上げていた。


「…それじゃあ、動画サイトでキョーコさんが小さい頃に使ってた髪を束ねるゴムを、母親が腕にはめているのを見て、泣き疲れて眠っちゃったのね」
「そうだよ。起こすのも可哀想だし、とりあえず起きるまでこのままにしておいてあげようと思ってさ」
「ふーん…」

よく見ればキョーコの腕は蓮の背中に回っている。縋るようにシャツを握り締めて、蓮の胸に顔を預けて目を瞑っていた。

母親に嫌われているのではないか、本当は産まなければよかったと思っているのではないかと、キョーコの心の奥底にあった黒い靄が、この動画を見て一気に晴れたキョーコの気が緩んだのか、大泣きに泣いた。
今まで蓮が見た中でも会心の泣きだったと笑った。

話を聞きながら、千織はじーっとキョーコを見つめ続けていた。

「千織?」
「…うん。色々安心したわ。安心して気が抜けちゃったから、もう部屋に戻って寝るわ。キョーコさんの事お願いね?」
「ああ。目が醒めたらベッドに連れて行くよ」

それを聞いた千織がプッと小さく噴き出した後、すっと腕を伸ばして

キョーコの頬にぷすりと人差し指を突き刺した。

驚いた蓮がキョーコの顔を見れば、眉間に皺を盛大に寄せている。

「千織!?」
「狸ちゃんの事ヨロシクネ!」

クスクスと笑いながら部屋を出て行く千織を、蓮は呆気にとられたまま見送った。

「うぅー…バレてた…」
「最上さん、本当に起きてたの?」

驚いた蓮が確認しようとしても、キョーコは顔を蓮の胸に埋めてしまった。
それでも栗色の髪の間から覗く耳たぶは真っ赤に染まっている。

「先生の体温と匂いと心臓の音が心地よくて、うつらうつらしてたんです。多分本当に寝てました。でも天宮さんの焦った声で一気に目が醒めたんですけど、離れ難いって言うかその…離れたくなくて、寝たフリをしてしまいました」

キョーコの告白に、蓮の心臓はドキドキと破裂しそうな程早くなる。
そして支えているだけだった両手は、力強くキョーコを包み込んだ。

「このまま…俺のベッドに運んでも、いい?」

緊張で掠れる声さえ、キョーコの耳には心地よく響いた。


キョーコは返事をする代わりに、背中に回していた腕にギュッと力を込めた。



つづく



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