HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  [完]螺旋  »  螺旋 2

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   螺旋 2   


文字にするのが難しいです。
文才無いなぁと凹みつつ恥じ入ってます。


最近やっと食事に関心を持ち始めた蓮に、まともな食事を摂らせてやって欲しいと社に乞われて、キョーコは時間の許す限り蓮の家でその腕を振るった。

同じ局での仕事が重なった時は駐車場で待ち合わせをし、違えば事務所で待ち合わせをした。
それでもやはり人気俳優と新人女優には歴然とした仕事量の差があって、キョーコが蓮を待つ時間は長かった。

そんな待ち時間も台本を読んでいればあっという間に過ぎてしまう。学ぶ事が沢山あって時間が足りないくらいだ。
もっと蓮に近づけるように、もっと仕事がたくさんもらえる女優になりたいと目を輝かせて語るキョーコに、蓮は目を細めて笑った。

そんな2人を見つめていた社が、良い事を思いついたと話し始めた。

「それじゃあ、人の出入りの激しい事務所やテレビ局で蓮を待つよりは、蓮の家で台本を覚えるなり学校の課題をやった方が集中できるんじゃない?蓮も帰ったらキョーコちゃんの料理が出来上がってたらすぐに飯にありつけるし、食べ終わってからゆっくり蓮に演技の相談をする時間が出来るんじゃないかな?」
「それじゃあ最上さんに悪いですよ。まるで俺の帰りを料理を作って待っててほしいって言ってるようなもんじゃないですか」

お前が言わないから、俺が言ってやってるんだろう?

社は心の中で腕を振り回して蓮にロボコンパンチを浴びせた。
そんな社の心情を理解したとは全く思えないキョーコが、神妙な顔で頷いた。

「いえ。社さんがおっしゃる事にも一理あります。お疲れの所をわざわざ敦賀さんに事務所に迎えに来ていただくのも心苦しく思ってました。それにお帰りの頃が分かればそれに合わせて出来立てのお料理を召し上がっていただけますもんね」
「コイツ、キョーコちゃんの手料理を食べるようになって、格段と体調が良さそうなんだよ」
「本当ですか?敦賀さんのお役に立てるなら、私頑張っちゃいます!」
「ありがとう!!蓮、良かったなー。じゃ、キョーコちゃんに合鍵を渡しとけよ」
「へ?…合鍵ですか?」
「鍵も無くどうやって入るつもりだったの。じゃあ最上さん、俺の家の鍵を渡しておくから。どの部屋も好きに使ってくれて構わないよ」

本当に受け取ってしまっていいのか、不安そうに蓮と社を交互に見つめるキョーコに、2人はにこりと笑った。

「それではお預かりします」

そう言ってキョーコが蓮から受け取ったカードキーはとても輝いて見えた。


**


「もしかして最上さん?」
「ひゃっ!」

突然声を掛けられたキョーコはビクリと身を強張らせ、声を掛けた人物を見上げた。確かにその笑顔に見覚えがあった。

「あれ…えっとカワノ君?」
「残念。コウノだよ。久しぶりだなー。えっと中学卒業以来だから、2年半ぶり?」

声を掛けてきた河野はキョーコが通った中学の同級生だった。確かサッカー部の副部長だった筈だ。
女子からの人気も高く、一時期ショータローがライバル視していた為にキョーコも河野の事を一通り調べた事があった。
こそこそと聞き込みをした事を思い出して、キョーコは苦笑した。その体からはいつの間にか力が抜けていた。

通路を挟んだ席に居た河野が、キョーコの隣の席に座った。

「すっごい真剣な顔をしてるるぷを睨みつけている人が居るなぁって思ってよく見たら最上さんなんだもん。びっくりしたよ」
「やだなぁ。変な所を見られちゃったね」
「何か食べたいものでも見つけた?」

千歳空港に到着したキョーコは、ホテルを予約してある札幌へと向かう電車に乗っていた。その車内でキョーコはじっとるるぷを見ていた。
何かを凝視していなければ、涙が溢れだしてしまいそうだった。

だからどんなに真剣にるるぷを見つめても、内容なんて1つも頭に入って来ていない。

「ううん。…美味しそうなものがいっぱいあって選べなくて困ってたの。河野君、北海道は観光?」
「いや、志望校の下見。道大を見てみたくて。…って親には言ったけど、半分以上は受験勉強の息抜き観光だな」

歯を見せて笑う河野につられてキョーコも笑った。

「最上さんは観光?」
「ううん。お仕事なの」
「えっ!?最上さん働いてるの?」

キョーコが芸能人の『京子』だとは知らないのだろう。河野は難しい顔をした。

「もしかして不破君のせいで高校も行かずに働いてるのか?」
「えっ?ち違うよ。ショータローは関係ないし、高校もちゃんと通ってるよ」

きちんと通っているかはかなり怪しいが、仕事の合間に出来るだけ授業は受けているし、補習や課題で何とか単位は確保できている。
そんな環境を与えてくれた事務所には感謝している。

「そっか。なら良かったよ」
「誤解されなくて良かったー」

クスクスと笑うキョーコを、河野はじっと見つめた。

「ん?どうしたの?」
「いや、ちゃんと最上さんと話が出来たなぁと思ってさ」

どこか痛みをこらえる様な素振りで、河野はキョーコから目を逸らした。

「中学の頃、最上さん女子達に結構えげつないイジメに遭ってただろう?それを止められなかった事がね」

ずっと心に引っ掛かっていたのだと言う。

ショータローの事を好きな女子達にとって、ショータローの傍に居たキョーコは目障りな存在だった。
最初はキョーコが話しかけても無視する程度の軽いイジメから、教科書を隠されたり落書きをされたり。段々とその内容がエスカレートしていった。

「俺も見かねてさ。何度か女子達にもう止めるように言ったんだ。それが油に水を注いじまったみたいで、言う前より状況が悪くなって…結局最上さんを助けてやれなかった…本当にごめん」
「そうだったんだぁ…私気にしてないから、河野君も気にしないでね?」
「気にしないって…俺、あの時の事を今でも後悔してた。見て見ぬふりをするんじゃなくて、もっと他にやりようがあったんじゃないかって。そうしたらイジメも止められたんじゃないかって。…不甲斐ない自分が情けなくてさ」

本当にベストは尽くしたのか。もっと自分にやれる事があったのではないか。

葛藤した河野の気持ちが今のキョーコには痛い程分かった。

私もこの数か月ずっとそれを考えてた。そして私にやれる事は全部やったつもり。
…でもきっと、同じ問いをし続けてしまうのかな…

「もー。イケメンがなんて情けない顔をしてるの?もう2年以上前の事なんだから、そんなに思いつめないでよね?イジメを受けた私の方がケロッとしてるんだから。ね?」
「最上さん…ありがとう」

くしゃりと笑う河野に、キョーコはにこりと笑った。

「今だから言えるけど、最上さんの事を遠巻きに心配してる男子が何人もいたんだぜ?」
「え?」
「でも最上さんは不破君しか目に入って無かっただろ?勝手に失恋してる男子が何人居たか。…まぁ俺もそのうちの1人だったんだけどさ」
「えぇ!?もっと早く言ってよー。私、すっごい勿体ない事してたんだね」
「本当だよなぁ」

河野は初めてキョーコに見せた笑顔と同じように、歯を見せて屈託なく笑った。


札幌駅に着いたキョーコは河野と別れ、予約していたホテルにチェックインした。
そしてそのまま部屋のベッドに倒れ込んだ。

私に出来る事は全部やったつもりだったけど…
本当に私はベストを尽くしたのかな?もっと頑張れなかったのかな?


「敦賀さんの心に入り込める余地なんて…好きになってもらえる余地なんて、ひとかけらも無かったのかなぁ…」


答えてくれる人のいない暗く冷たいベッドの上で、キョーコは体を丸めるように膝を抱えて涙を流した。



続く



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。