HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  [完]幸せなら態度で示そうよ  »  幸せなら態度で示そうよ 2

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   幸せなら態度で示そうよ 2   


連休中日、皆様いかがお過ごしでしょう。
そんな中日に投稿です。


300年もの間、鎖国制度によって外界との接触を絶ってきた極東の島国。
その島国に漂着したマルコ・ボーロはその国での滞在を含めた旅行記を1冊の本にまとめて発表した。


夕暮れ時の酒場で陽気な男たちが店の看板メニューや噂話を肴に酒を酌み交わす。
時折大声で笑う声がそこかしこから上がる。

「モガミ国だっけ?マルコの見聞書によれば黄金の国だもんなぁ。俺も一度でいいから見てみたいさ」
「いや俺は見られなくてもいい。命の方が黄金よりよっぽど大事だ」

黄金の都を想像してにんまりと笑う男に、周りの男たちが首を竦めた。
マルコの見聞書が出版されてからのこの5年、何隻もの船がモガミ国に向けて出港したが、その殆どが海の藻屑となった。

遥々目指して来たモガミ国が見え、乗組員たちが歓喜の声を挙げた途端、それまで穏やかだった海が一変する。

降り注いでいた日差しは徐々に厚い雲に遮られ、間をおかずに冷たい雨が落ちてくる。
霞んで見えたはずのモガミ国はまるで蜃気楼のように消え、暴風雨に視界は遮られる。
紺碧の海の色は黒へ、穏やかだった波は荒れ狂う大波となって船を襲い前後左右に揺さぶり、そして最期には巨大な渦を巻き、海の底へと船体を引き摺り込んでいく。

神に護られた国に、砲弾や武器の類を積んだ船は近づけない。
近づこうとすれば、モガミ国に仇成す者として容赦なく神の鉄槌が下る。
巨大な船をいとも簡単に海の藻屑とする大嵐を、冒険家たちは神風と恐れた。


「そんな国にあのマルコが漂着するなんてなぁ」
「おやっさん、マルコ・ボーロの事知ってんのか?」

訳知り顔の酒屋の亭主がにやりと笑いながら話を引き継ぐ。

「あぁ。マルコはこの港町で手紙の配達人をしておった」

対岸の国に出稼ぎに出た母親を少しでも助けようと夕方は配達の仕事をし、夜は酒場の洗い物を一生懸命にこなす少年だったという。
マルコが母親に会いたさに、夜中のうちに誰にも知らせず小舟で対岸を目指した事を知った時は、港町は騒然としたと言う。

「で、母ちゃんには会えたのかい?」

酒で涙腺が弱くなったのか、グスッと鼻を鳴らす者や目に手をあてて上を向き、歯を食いしばる大男までいる。

「真っ直ぐ進んだつもりでも波に流されて、気づいた時には外海に出ちまってたらしい。漂流していたところを商船に助けられたは良いが、その後商船も時化に襲われて航路を見失ったんだ。そして辿りついた先がモガミ国だったと言う訳さ」

母親を訪ねて三里先を目指していた筈が三千里先まで行ってしまった。

「何だよ!マルコは冒険家じゃなくてただの迷子じゃねぇか!!」
「東方見聞書だってただの放浪記だろ!!」

数分前まで涙目となっていた男たちからマルコへの非難と罵声が飛び交う。

「やってらんねーな!オヤジ、酒だ!!」
「俺にももう一杯くれ」
「まいどー」

この話をする度に酒の注文が増えるから日に2回は飽きずにしてやるのだと、カウンターに座る旅装束の2人連れに亭主はニカッと笑った。

「それにしても、そのモガミ国からあんなおっかねぇ船がやって来るとは肝が冷えたぜ」
「全くだ。鉄の船だぜ?見た事も聞いたこともねぇよ」

モガミ国の船が現れた時、民衆はその色から『黒船』と呼び恐れた。いつ砲撃されるのかと住民達は逃げ惑い、ヒズリ王国海軍にも緊張が走った。
悠然と湾内に侵入する黒船に高まる緊張を、1人の男が一瞬で解いてしまった。

「おーーーい!!」

黒船の船首から、冒険家・マルコが笑顔で大手を振っていた。


「マルコの奴、誰も辿りつけないモガミ国に2回も行って帰って来たんだもんな」
「そうさ。しかも2度目は何と嫁さん連れてきたんだから、今度こそ国の英雄だろ」

違いないと酔っ払いたちが首を縦に振る。

「へぇ。マルコの奥さんはモガミ国の女性なんですか」
「そうみたいですね、ヤシロさん。結婚祝いを用意した方がいいですね」

めでたい話だと笑顔で酒を飲む旅姿の男二人に、酔っ払い達が目を見開いた。

「はぁ!?兄ちゃん達何を言ってるんだ?」
「あんたらここ数日のお祭り騒ぎを知らねぇの!?」

大騒ぎになっている事を知らないと言う2人に、男たち胡散臭いモノを見る様な目つきで窺う。
その無遠慮な視線に、ヤシロが眉を顰めて、ムッとした声で応える。

「仕方が無いでしょう。10日ほど仕事で都を離れていたんです。帰ってみれば黒船騒ぎで街は騒然としているし。それで家にも帰らず港の視察に来たんですよ」
「ヤシロさん」

レン王太子が窘めるようにヤシロに声を掛けた。

「そうかい。そりゃ悪かった。知らなくて当然だなぁ」

港の男たちは口は悪いが、明け透けな気持ちのいい性格をしている者が多い。
笑いながらここ数日の様子を2人に教えた。

黒船はモガミ国からの使節団を乗せた船で、装備に似合わず友好的な態度を示しているという。
モガミ国の人間の身長は、ヒズリ王国の人の身長に比べると20センチ程小さく、また童顔で若く見えるらしい。
小さく、そして若く見える外見のせいか、既に港町の人たちも警戒心を解いて交流をしてる。

「そういや兄さんたちはモガミ国の人たちが持ってる剣を見たか?」
「ええ。腰に大小2本の剣を差していましたね」

見慣れない大小の剣を携えた兵士をレンとヤシロも港で見かけた。
その剣は包丁のように片刃で大変切れ味が良いらしいと、その兵士を遠巻きにコソコソと話す声を耳にした。

「俺はそのすげえ切れ味を目にしたんだ」

酔っ払いが得意げに身振りを交えてレンとヤシロに語りだした。

自分たちよりも小さいモガミ国の兵士が2本の剣を差している姿が滑稽に見えたのだろう。ヒズリ王国の陸軍兵士がからかってやろうと、自分が携えていた剣を抜いて、モガミ国の兵士の剣…刀の鞘を叩いた。

それまで笑顔だったモガミ国の兵士の顔から笑みが消え、刀を抜いた瞬間陸軍兵士の剣を斬った。まさに一瞬の出来事だった。
モガミ国の兵士は顔色を失った陸軍兵士を一睨みした後、刀を鞘に戻した。呆然とする観衆に、騒ぎを起こして申し訳ないと言うように深々と一礼して去って行った。

その出来事から、モガミ国の兵士に対する畏怖と尊敬の眼差しで人々は見るようになり、モガミ国の刀は鉄ではなくダイヤモンドで出来ているという噂が広まった。

「へぇ。凄いですね」

感嘆の声をあげるヤシロに苦笑し、レンは自国兵士の愚行を使節団に詫びなければと思いながら、苦い酒を飲んだ。

「そうなんだよ。そんな凄い国から嫁がやって来たんだよ!モガミ国の使節団長がレン王太子の花嫁になるんだよ!!」


どうだ、とっておきの話だろうとばかりに、酔っ払いがレンに最高の笑顔を向けた。



つづく。



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。