HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト  »  長編   »  [完]幸せなら態度で示そうよ  »  幸せなら態度で示そうよ 3

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   幸せなら態度で示そうよ 3   


バッタバタです。
どうにかこうにか滑り込み日曜投稿!!


「花嫁…?」

まさか自分の結婚話を場末の酒場で、しかも父母でも宰相でもなく見知らぬ酔っ払いから聞かされることになるなんて。

「うえええええぇっ!王太子殿下がっレン殿下がご成婚だってぇぇぇ!?」
「お。兄ちゃんいいリアクションだね!」

ヤシロの絶叫に男たちがガハハと笑い、茫然としていたレンを一瞬で現実に引き戻した。

「何故!?誰がそんな事を言ったんだ!!一体いつ!?何時何分何十秒?地球が何回廻った時ッ!!」
「ヤシロさん、少し落ち着きましょう」
「これが落ち着いていられますか!!アナタ自分の事なんですよ!分かってるんですか!?」

真っ青になったヤシロがレンの上着を掴んでぐいぐいと揺らす反動で、レンの頭が前後にカクカクと揺れている。

「ヤッヤシロさん!!」
「もっ申し訳ございません!!動揺のあまり我を失ってしまいました。お首は大丈夫でしょうか」

蓮は首を擦りながら苦笑いを浮かべた。

「ええ何とか。それよりそろそろ城…家に帰りましょう。亭主、ご馳走様。お代はここに置いて行くよ」
「へい。まいどー」

レンはヤシロと共に陽気な男たちが集う酒場を後にした。
待たせていた従者から差し出された愛馬の手綱を受け取ると、2人は急いで王城へと向かった。

港街から一気に馬を駆けて帰城するも、既に王と王妃は床に就いており面会は叶わなかった。

結婚話が広まったのがここ数日。伝書鳩が母の危篤を報せた前後だ。
一体何の目的で今まで外交も無かったモガミ国の姫との結婚話が急浮上したのか。
ただの噂話であればそれでよい。それとも自分も与り知らない何かが画策されているのだろうか。

レンの眉間の皺が深くなる。

モガミ国の黒船。
港でそれを目の当たりにしたレンは圧倒された。
これほどまでに大きな船を製造できる技術と経済力。そして鉄で船体を覆った姿と7つの砲門。

モガミ国と戦えば必ず負ける

レンはそう確信した。確かに港に停泊する黒船はたった1隻だ。数で圧倒するヒズリ王国海軍が総掛かりすればこの船を沈める事は出来るだろう。
それでも、黒船を前に一体何隻の船が犠牲になるだろうか。更にこの黒船が船団を組んで極東の国から現れたら。
港町は一瞬で火の海になるだろう。そして剣豪揃いのモガミ国の兵士が上陸を果たし、一気に攻め込まれでもすれば。

考える程にレンの表情は険しくなるばかりだ。

気が付けば窓の外は徐々にしらじみ始めている。モガミ国の思惑を1人考え込んで夜を明かしてしまったのだ。
結局考えても答えは分からない。既にレンが都を離れていた間に議会も何らかの対応をしている筈だ。
それに賢王と呼び名の高い父王が愚策を講じている訳が無い。
レンは大きく伸びをした。一晩中固い椅子に座り考え込んでいたお陰で体中がバキバキと音を立てた。

今からベッドに横になっても、いくらも眠れる時間は無い。それならば気分転換に中庭を散歩しよう。そう思いつきレンは部屋を出た。


まだ太陽は地平線から顔を出していないが、東の空は既に茜色に染まりつつある。今日も天気が良さそうだ。
一晩中悶々と考え込んでいたレンに、早朝の冷えた空気が心地良かった。

緑あふれた中庭を蓮は歩いていた。この中庭は王妃であるレンの母のお気に入りの場所でもある。季節ごとに糸とりどりの花を咲かせる庭は、今は薔薇が見ごろを迎えていた。

父も公務の合間によく訪れては母と2人で散歩をしたり、お茶を飲んだりしている。息子の目から見ても2人は仲睦まじい夫婦だ。
一国の王ともなれば、王妃は周辺国の王女との政略結婚が当たり前だ。それに大国の王ともなれば数多の妾妃がいてもおかしくない。

それがヒズリ王国の王、クーは一途に王妃のジュリエラを愛し、ジュリエラの他に妃は居なかった。
クーとジュリエラはクーの隣国での留学中に出会い、一瞬で恋に落ちた。ジュリエラは隣国の王女で、宮廷での舞踏会で2人は出会った。
「まるで雷が落ちたかのような衝撃だった」と事あるごとに延々と語るクーを、「私だってあなたが運命の方だって一目で分かったわ」と見つめ返すジュリエラ。
そんな2人の微笑ましくも暑苦しい愛情を一身に浴びて、一人息子のレンは育った。

自分も父母の様に、互いを想い合える伴侶といつか巡り合えればとは思っていたが、そう想える女性とは出会えずにいる。
そう思って1人苦笑していると、庭園の先からカサリと衣擦れの音が聞こえた。

顔を上げるとその先に女性が1人、庭園を歩いている姿があった。


少女は咲き誇る花々に夢中でレンの視線に気づかずこちらへと歩いてくる。その少女の長い黒髪は朝日を浴びて艶やかに輝いている。

黒髪…モガミ国の少女か。きっと王城に滞在しているという使節団の随員かその娘なのだろう。
こんな早くから床を抜け出して、供も連れずに1人で散策に出て来るとは、お転婆な少女が居たものだと、レンは自分でも気付かないうちに笑っていた。

しゃがみ込んで足元の露草を指でつんと突いていた少女が、顔を上げた先にあった大輪の薔薇に、『わぁっ』と感嘆する声が聞こえそうな程に大きな目を更に大きくした。
小走りで薔薇の生垣に近づくと、頬を染めてうっとりと眺めている。どうやらこの庭の中で少女の心を射止めた花は薔薇のようだ。
色とりどりの薔薇のなか、少女はピンクの薔薇にそっと顔を寄せた。少女の瞳は爛々と輝いている。

そのピンクの薔薇は、少女の顔より少し高い場所で咲き誇っている。
匂いを嗅ぎたかったのだろう。少女がおずおずと白い指を差し出して、薔薇に触れようとした次の瞬間

「あぅ」

弾かれたように薔薇から指を離し、もう一方の手で握りしめた。どうやら薔薇の棘が指に触れたらしい。

驚いたように指を見つめていた少女が、もう一度薔薇に顔を向けた。
さっきはとても楽しそうだったのに、今はその影もなく、ただ悲しそうに朝露に濡れる薔薇を見つめていた。

あまりに悲壮感漂う表情に、レンは無意識のまま少女の方へ歩み寄ろうと一歩を踏み出した。
その物音にビクリと肩を揺らすと、レンが声を掛ける暇もなく、少女は一目散に来た道を走り去ってしまった。

一心不乱に木の実を食べていたリスに手を出した瞬間、くるりと身を翻して逃げられた事を思い出した。
少女に悪い事をしたなと思いながら、レンは少女が走り去った方を見つめたまま、しばらくの間庭園に佇んでいた。


やがて朝食の時間となり、レンは食堂へと向かった。

朝食は家族で摂るもの。

レンが幼い頃からずっと、どんなに忙しい朝であっても王と王妃、そして王太子は同じ食卓で朝食を摂るのが当たり前だった。
それだけ王が家族を大切にしていると言う事なのだが、時々王妃自ら腕を振るう事だけは止めて欲しいと、レンは幼い頃からずっと思っている。

食堂のドアを開けてくれた給仕係が、今朝は料理長お手製のオムレツですよ、と笑いながらそっとレンに教えてくれた。
視察の旅から還った今朝あたり、母の手料理が振舞われるのではという考えが顔に出ていたのだろうかと、レンは苦笑しながらありがとう、と声を掛けた。

「レン、遅いわよ。待ちくたびれて私の余命が擦り減ってしまったわ」
「申し訳ございません母上。おはようございま…」

朝の挨拶を言いかけたレンの声が詰まる。
拗ねたように口をとがらせる王妃の隣には、淡い象牙色の肌に頬をうっすらと染めて、大きな目でじっと蓮を見つめる黒髪の少女がいた。

それは庭園に居た少女だった。
驚いてじっと少女を見つめるレンに、王妃は輝く笑顔で少女の事をレンに紹介した。

「こちらはモガミ国からいらしたキョーコ姫よ」

キョーコ姫は笑って、王子に挨拶をした。


「にぱぁっ!」


ニコニコと笑う少女に、レンは目を丸くしたまま固まった。



つづく。



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。