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   黒猫の希い 30   


ちょっと時間が無くて、色々と直したいけど勢いで投稿です!


「キョーコちゃん」
「社さん!」

朝、蓮に渡しそこねたサンドイッチを抱えて、キョーコは蓮がドラマの撮影を行っているテレビ局の廊下をパタパタと笑顔で社に走り寄った。
マンションを出る前に蓮に電話をし、昼食を渡し忘れた事と、お昼までに届ける事を話した。

「でも1人で来れる?」
「うん。赤坂なんて地下鉄乗り継げばすぐでしょ?」
「でも…」
「もー、でもでも言わないで。大丈夫だから。着いたら電話するね。あ、蓮は電話出られないよね。社さんに電話するね。じゃあね!」

一方的に切られた電話を、蓮が嬉しそうな、困った顔で見つめている姿を、社は笑って見守っていた。



「すぐ会えてよかった!はい、お昼。2人分入ってるからちゃんと食べてね」
「ありがとう。サンドイッチだって?今から昼が待ち遠しいよ」

えへへ、と笑うキョーコに社は目を細めた。

「蓮はお仕事中?」
「そう。今ちょうどリハーサルが終わって本番中。…ごめんね。蓮に会わせてあげたいけれど、キョーコちゃんはもうすぐカインの付き人生活が始まるだろう?だからあんまり蓮と一緒に居るところを、外部の人に印象付けたくないんだ」

蓮とキョーコが一緒にいた事で、万が一にもカインの正体が蓮だと分かってしまうような事は避けたい。
だから楽屋には連れていけないのだと、申し訳なさそうにキョーコを見つめる社に、キョーコは笑顔を作って頷いた。

「そうだよね。じゃ、私帰るね。社さんも忙しいのに呼び出してごめんね。あ、お弁当ちゃんと食べてね!」
「いつもありがとう。それと、来週から始まるカインの世話で緊急事態が発生したら駆けつけるから、いつでも連絡してね」
「うん。でも緊急事態って?」
「うーん、ほら、撮影が押して次の蓮としての仕事に間に合わなそうだとか、撮影所に向かう途中でおまわりさんにカインが職質されて警察に連れて行かれそうになったりとか?」
「やだ、社さん。そんな事起きないよ」

クスクス笑うキョーコに、ヤシロは大真面目な顔をわざと作って否定する。

「いや、可愛いキョーコちゃんを連れて歩くカイン・ヒールなんて、誘拐犯に間違われても仕方が無いよ」
「あー、極悪オーラ放ち過ぎだよね?」
「でしょ?」

ひとしきり笑った後、それじゃあと社に手を振って去っていくキョーコの後ろ姿を見送った。


蓮に会えなかった。
キョーコは落胆するも、自分のせいで蓮の仕事に支障をきたす事だけは避けたい。してはいけないと強く思った。
テレビや雑誌越しに見る蓮は、キョーコの目からも眩しい程に輝いて見えた。
そんな蓮の足を引っ張る事などしてはいけないのだと、キョーコは理解している。

蓮に会えなかったことは残念だとは思う。それでも蓮の為に作った昼食を食べてもらえる事に、キョーコは浮かれながらテレビ局を出ようとしたところで、前からやって来た人に正面からぶつかった。

「へぶっ!」
「あぁ、悪い」
「いえ…こっちこそ…ごめんなさ…痛い…」

朝はおでこをぶつけて、今度は鼻…。次はどこをぶつけるんだろう?

「お前…キョーコ!?キョーコじゃないか!」

打ち付けた鼻を押さえて、ツーンとする痛みからじんわりと滲んでくる涙を拭っていると、つい今不愛想な謝罪をしてきた相手が、驚いたような声音でキョーコの名前を呼んだ。
その声に顔を上げると、驚いたように目を丸くした後、嬉しそうにキョーコを見つめるかつての仲間の顔があった。

「えぇっ?」
「久しぶりだなぁ!元気だったか?」
「どどどどうしてミロクがここにいるの!?」
「ミロク、知り合いか?」

ミロクの隣に並んでジッとキョーコを見下ろす紫の瞳にキョーコは怯み、無意識のうちに一歩後ずさった。
その様子にミロクは眉を顰めて隣に立つ男を睨みつける。

「レイノ、怖がらせないでやってくれよ。コイツは俺たちの末っ子なんだ」
「…ふぅん。お前以外に『堕ちてきた者』に出会うとはな…」

ミロクはキョーコが生まれるよりずっと前からその世界、死神界の住人だった。
他の死神よりも多くの仕事を、多くの死者を涼しい顔で導いていたミロクのたなびかせるほど長い、夜の闇を吸ったようなかつての黒髪は金髪に変わっている。

驚愕がゆるゆるとキョーコの背中を這い上る。

「……ミロク、どうして…どうしてコッチにいるの?さっきお前以外って私の事…まさか…まさかミロクも…」

『堕ちてきた者』と言われて、キョーコはミロクがキョーコと同じく、既に死神では無い事に思い至った。
真っ青になって自分を見つめるキョーコの頭を、ミロクは穏やかに笑いながら優しく撫でた。

「…お前が檻の中にいる間にな。でも俺は望んで堕ちてきた。後悔はしていない」
「そんな…どうして…」
「コイツに出会ったからかな?」

ミロクは隣に立つレイノをちらりと見た。
2人の泰然とした様子にキョーコは少しずつ落ち着き、そして目をキョロキョロと漂わせた。

「そうなんだ…人間になる事を決断するくらいその人の事…そうよね…愛に性別なんて関係ないよね…。うん。応援するよ」
「全然応援するって顔じゃないし。コラ、一歩引くな。そんなんじゃ無いから」
「え…じゃあどうして?」
「死神でいる事に倦んでたところを悪魔に囁かれたってところかな…。そんな事よりお前、どうしてこんなところにいるんだ?」
「うん。お弁当を届けに来たの」

蓮に。
蓮の喜んだ顔が見たくて。

それだけを思いはにかむ様に笑うキョーコを、ミロクはジッと見つめて納得したようにに頷いた。

「あぁ、昔お前が助けた男か」
「え?コーン!?」

どうして自分がテレビ局にいる事がコーンに結びつくのだろう。
何を言い出すのかと、キョーコは眉を顰めてじっとミロクを見つめた。

「だってそいつ、役者を目指してたんだろう?夢が叶って役者になれているなら、ココにいてもおかしくないだろう」

どうして今まで気が付かなかったのだろう。
幼い頃から、コーンは父親のような立派な役者になるのだと、父親が目標だと目を輝かせていたではないか。
きっとコーンならば自分の夢を実現させている筈だと、キョーコもずっと信じていたのに。

それなのにコーンを探す場所を、人がたくさんいる場所に限定していたとは。
キョーコは目から鱗が落ちる思いだった。

なんて大マヌケなのだろうと、キョーコは自分を罵りたい気持ちで一杯になった。

呆然とするキョーコに、ミロクはニヤニヤと笑いながら会話を続ける。

「お前、本当にそいつの事が好きなんだな」
「えぇ!ちょっとミロク、何を言い出すの!?」
「だってお前、さっき弁当を届けたって言った時の表情。あれは恋する乙女の顔だったぞ」
「おお乙女!?」
「その男の事が恋しいって、好きで堪らないって顔をしてたよ…良かったな。コーンに幸せにしてもらえよ?」
「ちっ違うよ!お弁当を届けた相手はコーンじゃないよ。コーンじゃなくて…私の…」

ミロクが言う通りなのだろう。
死神界から放り出された自分を支えて寄り添ってくれる、大きな存在。ただ傍に居るだけで安心させてくれる人。
名前を優しく呼ばれるだけで、くすぐったい程の幸せな気持ちになって、笑顔が溢れ出してしまう。
蓮の笑顔を見るだけで、胸がいっぱいになるし、その笑顔を守る為なら何でもするし、何でも出来るような気持ちにだってなる。


大切なコーンに早く伝えたい。

泣いてばかりだった幼い私にコーンが寄り添ってくれたように、今、蓮が私に寄り添ってくれている事を。そして好きな人が出来た喜びを。

今なら誰にだって胸を張って言える。声を大にして叫びたい気分でさえある。


そう。蓮は私にとって


「大切な人だよ」




続く
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