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   螺旋 5   


更新が滞ってすみません。
そして螺旋です。間が空いてしまいました。ほんとすみません。
そして冬がやってきましたね。そんなこんなでPC画面のテンプレートをいじってます。
画像とかまだちょっと変えたいと思ってるのでしばらく落ち着かなそうです。



初めての恋に破れ、捧げた想いを踏み躙られた時、清水を湛えた泉は一瞬で干上りその底はひび割れた。

そして蓮に出会い、芝居へのひたむきな情熱やその人柄に触れて。

キョーコは恋をした。

もう二度と恋なんて愚かな感情にとらわれない。そう必死に言い聞かせていた筈なのに、キョーコの心の奥底にある枯れ果てていたはずの泉は自分でも気づかぬうちに、いつの間にかまろやかな清水がゆっくりと湧き、泉を潤わせていた。
大好きな人の笑顔を見る度に、一緒に過ごすほどにその泉の水嵩は増えていて、キョーコが気が付いた時には、今にも溢れそうなほどだった。
ほとんど手遅れの状態。それでもキョーコは必死に押さえ込んでいた。

なのに

とうとうあの日キョーコは蓮の瞳に捕われ、そしてその逞しい腕に抱かれて、泉には睡蓮の花が咲き誇った。
蓮がその唇でキョーコの白い肌に朱い華を咲かせるごとに。

蓮が自分の気持ちに応えてくれた。想いを受け止めてくれたんだと思うだけで、キョーコの震える様な歓喜に呼応して、清らかな泉が陽の光を浴びてキラキラと水面を反射させる。
眩しい程の光の中で、蓮の花が一輪、また一輪と花開く。

幸せだと思った。感謝の気持ちでいっぱいだった。
もう、これ以上何も望むことなんて無いと思った。

それなのに


『きょーこちゃん』


その一言、最愛の人の口から紡がれたたった一言によってキョーコの世界が暗転してしまった。

清水を湛えていた泉にぽたりと落とされた毒が水面を滲ませた。
泉は枯れない。枯れるには泉は、蓮への想いは育ち過ぎていた。

枯れない代わりに清廉だった泉が濁り、美しく咲いた花はまるで腕を伸ばして縋る様に、陽の光を浴びようと真っ直ぐ上を向いていた筈なのに、段々と萎れて行く。


蓮とのそれまでと変わらない他愛ない会話やベッドで情事に見せる熱い眼差しに、もしかしたら蓮が『きょーこちゃん』ではなくキョーコを見てくれているのではないか。蓮の心のほんのわずかな隙間にでもキョーコの居場所が生まれ始めたのではないか。
そんな期待が胸によぎる。

情事の後、蓮は自分の腕の中で眠ってしまったと思い込んでいるキョーコの髪を優しく撫でる。
何度夜を重ねても同じように撫でるのだから、それが蓮の癖なのだろう。男らしい筋張った長い指で、汗で濡れてしっとりとした茶色い髪を何度も愛おしむ様に。


そして幸せそうな声音でキョーコの名を囁く。

『きょーこちゃん』

慈しむように。

『きょーこちゃん。愛してる』


違う!私はきょーこちゃんじゃない!!

今、こんなにも蓮の傍でその温もりを感じていると言うのに、蓮が思いの丈を込めて抱きしめているのは自分ではなく『きょーこちゃん』だなんて。
こんなにも蓮に惹かれていると言うのに、蓮の瞳に映るのは自分ではなく『きょーこちゃん』だなんて。

心が痛い。

蓮が自分のものにならないなら、他の誰かのもになんかならなければいい。
自分ではない『きょーこちゃん』の隣に立つ蓮に、作り笑顔で祝福を贈る日なんて一生来なければいい。

仄暗い嗤いを浮かべそうになり、キョーコははっと自分を取り戻す。

違う。この恋心をそんな醜いモノにしたくない。蓮を慕う気持ちを汚したくない。元々この想いが報われない事は百も承知だった筈ではないか。
大火傷を覚悟して蓮に身を任せたのだ。それにこんな卑しい想いは地獄まで持っていくと誓った筈ではないか。
『きょーこちゃん』が目の前に現れても、私は堂々と胸を張ってあなたの前に立っていたい。胸の中でだけは、蓮の事を想っていさせてほしい。
そう思っていた筈なのに、なんと意志の弱い事かと情けなく、醜い自分の心根にほとほと嫌になる。


キョーコの耳に届く、蓮の愛しい人への囁きが自分に向けられたものだとしたらどんなに幸せだろう。
蓮にこれほどまでに想ってもらえるきょーこちゃんが羨ましくて仕方が無い。妬ましくて仕方が無い。

蓮と体を重ねる度に、その後繰り返されるきょーこちゃんへの愛の告白にキョーコのの恋心が嫉妬でどんどんと汚れていく。


その度に、心の泉に毒がまた一滴垂らされる。


甘美な囁きを、自分への告白だと自分を騙してしまいたくなる。その感情が恋じゃなくてもいい。絆されただけでもいい。
例え今、蓮が自分を見てくれなくても、蓮に愛されていなくても。
いつか『きょーこちゃん』ではなく自分を目に映してくれる日が来るのではないか。

そんな思いに縋るように、キョーコは蓮の胸に擦り寄り意識を暗闇の中へと手放す。


だから、翌朝蓮目が覚めたとき

「おはよう、最上さん」

蓮にそう声をかけられる度に、毒を垂らされ漣を立てていた泉の水面が静かに収まる。

蓮の目には『きょーこちゃん』ではなく、『最上キョーコ』が映っているのだとキョーコは理解する。


「おはようございます。今朝の朝食はカリカリベーコンと目玉焼きです。久しぶりにパン食にしました」
「いつもありがとう」
「いいえ。さぁ、支度をして下さい。早くしないと社さんがお迎えに着ちゃいますよ?」


蓮に向ける笑顔が引き攣ってはいないか。不細工な笑顔になってはいないか。
内心ヒヤヒヤしながらキョーコはベッドから蓮を追い立てる。



ねぇ、敦賀さん。
私の事、嘘でもいいから好きって言ってくれませんか?
1度でいいから、最上さん、じゃなくて『キョーコ』って呼んでもらえませんか?


そうしてくれたら、私はこの恋心をこれ以上穢さずに、一生大切に抱いて行けると思うんです。




続く



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